広島カープ25年ぶりの優勝の瞬間が近づいている。そんな中、重松清がカープ初優勝の年を描いた『赤ヘル1975』を読了した。
1975年の広島に、中学1年生のマナブが転校してきた。野球少年のヤスや新聞記者志望のユキオという友人を得たマナブは、次第に広島の街になじんでいく。同じ頃、広島カープに初優勝の可能性が…。
という小説を読みながら、自分にとっての1975年を思い出していた。それはこんな話だ。
1975年の東京に、中学3年生のUが尾道から転校してきた。映画と野球が大好きなオレとイノさんはなぜかUと仲良くなり、受験勉強を口実に、親戚のマンションの部屋に一人で暮らすUの部屋に入り浸るようになる。
一方、最下位に低迷する巨人を尻目に快進撃を続ける広島カープ。カープの魅力を熱く語るUに感化されていくオレとイノさん。王さん、長嶋さん、ごめんなさい。オレたち広島ファンになりそうです。
10月15日、カープ初優勝の試合も学校帰りにUの部屋のテレビで三人で見た。夕暮れの後楽園球場、9回表にゲイル・ホプキンスが高橋一三から放ったスリーラン、その裏、ピッチャーは金城基泰。柴田勲のレフトフライを水谷実雄がつかみ、優勝が決まった瞬間は今でもはっきりと覚えている。
うれしいような淋しいような妙な心持ちの中で、もう巨人中心で野球を見ることはないだろうなと漠然と考えていた。
その後、Uとは些細なことでけんかをして卒業式まで口を聞かなかった。二人の仲をなんとか修復させようと骨を折り、たくさんの映画を一緒に見たイノさんとも高校が違ったことでいつしか疎遠になった。あれから40年余り、あの二人は今どうしているだろうか。
小説を読みながら、そんな出来事が思い出されて、何度か目頭が熱くなった。