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映画の王様

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『マイ・ファニー・レディ』

2015-12-14 10:05:53 | 新作映画を見てみた

ボグダノビッチ、75歳での復活に拍手



 『ラスト・ショー』(71)『ペーパー・ムーン』(73)などを撮ったピーター・ボグダノビッチ13年ぶりの監督作。ボグダノビッチは、私生活も含めて波瀾万丈の監督人生を送ってきた人だけに、長いブランクを経た晩年に、息子のような年のウェス・アンダーソンとノア・バームバックのプロデュースで映画が撮れて、さぞやうれしかったのではあるまいか。

 かつてコールガールをしていたハリウッドスターのイジー(イモージェン・プーツ)が、インタビューで“人生が一変した日”を振り返る。過去と現在を交錯させた、ニューヨーク、ブロードウェーを舞台にした群像劇。ウディ・アレンやロバート・アルトマンの諸作を思わせるところもある。

 プーツの他に、オーウェン・ウィルソン、イリーナ・ダグラス、ジェニファー・アニストン、リス・エバンス、ウィル・フォーテらくせ者が揃い、懐かしのオースティン・ペンドルトン、かつてのボグダノビッチの恋人シビル・シェパードも登場する。とぼけた感じのウィルソンがなかなかいい。

 最初はボグダノビッチに対する“敬老“気分で見始めたのだが、イジーを中心にした数珠つなぎの複雑な人間模様をてきぱきと処理し、往年のスクリューボールコメディーをほうふつとさせる出来栄えに、「ボグダノビッチって、こんなにコメディ撮るのうまかったっけ…」と感心させられた。これはうれしい驚きだった。

 オープニングとエンディングに流れるフレッド・アステアの歌声、イジーが語るハリウッドの裏話、エルンスト・ルビッチ監督の『小間使』(46)からの引用、ラストにはあっと驚く役で某監督も登場と、元祖映画マニア監督ボグダノビッチの面目躍如たる小ネタも満載。ボグダノビッチ、75歳での復活に拍手を送りたい。

第27回東京国際映画祭『マイ・ファニー・レディ』オーウェン・ウィルソンとピーター・ボグダノビッチのティーチインを取材。(2014.11.3.)

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『馬鹿まるだし』(64)

2015-12-14 09:23:07 | All About おすすめ映画

山田洋次喜劇の原点



 山田洋次監督の初の喜劇映画で「馬鹿シリーズ」の第一弾。この後『いいかげん馬鹿』(64)『馬鹿が戦車(タンク)でやって来る』(64)が作られました。まあシリーズとは名ばかりで、それぞれは全く別の話なのですが、ハナ肇との名コンビは『男はつらいよ』(69)の前まで続きます。

 終戦後、シベリア帰りの安五郎(ハナ肇)は、瀬戸内の小さな町の寺に転がり込み、住職の長男の妻・夏子(桑野みゆき)に一目惚れします。やがて町のボスとなった安五郎は、旅芝居の「無法松の一生」を見て、一文字違いの主人公・松五郎の姿に感動。以後、無法松を気取り、夏子に純愛を捧げます。

 安五郎がかっこをつければつけるほど滑稽に見えてしまうおかしさと悲しさは「男はつらいよ」の車寅次郎にも通じます。寅さんのルーツは無法松だといわれていますが、その間にこの安五郎がいるのです。桑野が演じるご新造さんも寅さんのマドンナの原点でしょう。

 ナレーションを植木等が担当し、最後は現代の寺の住職役で顔を出します。彼の実家は寺なので、この配役も一種のギャグでしょうか。最後まで安五郎に従う子分を犬塚弘が好演し、ハナ肇と渥美清や藤山寛美がからむシーンも見られます。ユーモアとペーソスが同居する山田喜劇の原点を楽しんでください。

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