ボグダノビッチ、75歳での復活に拍手
『ラスト・ショー』(71)『ペーパー・ムーン』(73)などを撮ったピーター・ボグダノビッチ13年ぶりの監督作。ボグダノビッチは、私生活も含めて波瀾万丈の監督人生を送ってきた人だけに、長いブランクを経た晩年に、息子のような年のウェス・アンダーソンとノア・バームバックのプロデュースで映画が撮れて、さぞやうれしかったのではあるまいか。
かつてコールガールをしていたハリウッドスターのイジー(イモージェン・プーツ)が、インタビューで“人生が一変した日”を振り返る。過去と現在を交錯させた、ニューヨーク、ブロードウェーを舞台にした群像劇。ウディ・アレンやロバート・アルトマンの諸作を思わせるところもある。
プーツの他に、オーウェン・ウィルソン、イリーナ・ダグラス、ジェニファー・アニストン、リス・エバンス、ウィル・フォーテらくせ者が揃い、懐かしのオースティン・ペンドルトン、かつてのボグダノビッチの恋人シビル・シェパードも登場する。とぼけた感じのウィルソンがなかなかいい。
最初はボグダノビッチに対する“敬老“気分で見始めたのだが、イジーを中心にした数珠つなぎの複雑な人間模様をてきぱきと処理し、往年のスクリューボールコメディーをほうふつとさせる出来栄えに、「ボグダノビッチって、こんなにコメディ撮るのうまかったっけ…」と感心させられた。これはうれしい驚きだった。
オープニングとエンディングに流れるフレッド・アステアの歌声、イジーが語るハリウッドの裏話、エルンスト・ルビッチ監督の『小間使』(46)からの引用、ラストにはあっと驚く役で某監督も登場と、元祖映画マニア監督ボグダノビッチの面目躍如たる小ネタも満載。ボグダノビッチ、75歳での復活に拍手を送りたい。
第27回東京国際映画祭『マイ・ファニー・レディ』オーウェン・ウィルソンとピーター・ボグダノビッチのティーチインを取材。(2014.11.3.)