原題:『初恋ロスタイム』
監督:河合勇人
脚本:桑村さや香
撮影:神田創
出演:板垣瑞生/吉柳咲良/石橋杏奈/甲本雅裕/竹内涼真
2019年/日本
SFの作風を邪魔する「難病」について
SF映画と思って観に行ったら「難病もの」だった。それはそれで構わないのではあるが、例えば、主人公で予備校生の相葉孝司が最初に時間が静止した経験をしたのは、おそらくもう一人の主人公で高校一年生の篠宮時音が病院で医師に自分の病名を告げられた午後12時15分だったはずで、孝司がわけがわからないまま公園辺りをさまよっていて、誤って噴水の水を浴びてしまい、それを見ていた時音が笑っているのであるが、何故その公園に時音がいたのかよく分からないのである。
ラブストーリーというのは分かるが、時音が患ったウィルソン病を治すために、孝司と時音が結婚して、孝司の肝臓の4分の1を移植するというのは話が重すぎる。それに引き換えもう一人の主人公である医師の浅見一生と終末医療のためにホスピスに転院しようとしている妻が孝司と時音と同じ時間が止まる経験をしているのであるが、詳細が描かれておらず物語が深まらない。
ラストシーンは手術をして一年が経って病気を克服した時音が孝司と一緒に海岸を歩いているのであるが、2人が手をつなぐ感じが夫婦のように見えず、演出、脚本に加えて主人公を演じた板垣瑞生と吉柳咲良の演技も残念な感じが拭えないのである。