MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『私はいったい、何と闘っているのか』

2022-06-30 00:48:26 | goo映画レビュー

原題:『私はいったい、何と闘っているのか』
監督:李闘士男
脚本:坪田文
撮影:神田創
出演:安田顕/小池栄子/岡田結実/菊池日菜子/ファーストサマーウイカ/SWAY/金子大地/伊集院光/白川 和子
2021年/日本

映画的な面白さについて

 原作の小説を書いたつぶやきシローの芸風が大きく反映されたように、本作は地元密着型のスーパーマーケット「ウメヤ大原店」に25年間勤めながら店長になれずに主任止まりの主人公の伊澤春男の心のモノローグがストーリーの大半を占めており、面白くなくはないものの、映画として評価するならば、唯一の見所は春男と2人の娘と沖縄へ旅行をした際にたまたま実の父親の金城正志が運転していたタクシーに乗り合わせた春男の長女の小梅の、春男と正志の会話でその事実を察した時に見せた驚いた顔くらいだと思う。
 春男が毎週カレーを食べに訪れる食堂のおばあちゃんのもとを春男の妻の律子が訪れるといった山場もないためストーリーにおける存在意義も希薄で、安田と同じ監督、脚本家がタッグを組んで制作された前作『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』(2018年)の方に映画的野心を感じた。


gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-110732


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『マイ・ダディ』

2022-06-29 00:40:38 | goo映画レビュー

原題:『マイ・ダディ』
監督:金井純一
脚本:金井純一/及川真実
撮影:伊藤麻樹
出演:ムロツヨシ/奈緒/毎熊克哉/中田乃愛/臼田あさ美/徳井健太/永野宗典/光石研
2021年/日本

「卵」にまつわる物語について

 牧師の御堂一男はガソリンスタンドでアルバイトをしながら、娘で中学生のひかりを一人で育てている。妻の江津子は2006年に恋人でストリートミュージシャンのヒロの浮気現場を見て傷心してたどり着いた一男の務める協会にいたところを一男に見つかり、イースターエッグの制作を手伝ったことをきっかけにすぐに結婚するのだが、数年後、娘を連れてヒロを目撃した江津子はひかりが一男の娘ではなくヒロの娘だと気が付き、その直後に交通事故で亡くなったのは今から8年前だった。
 もちろん一男もひかりもその事実は知らなかったのであるが、ひかりが急性骨髄性白血病を患ったことをきっかけに事実を知ることになる。当然、一男は江津子の浮気を疑うことになり、これが本作のテーマとなるのだが、もう一つのテーマとして「卵」にまつわるメタファーが隠されていると思う。
 ヒロの浮気現場を見た時に、江津子は買い物の内の一つである卵を蹴って割ったまま部屋を出ていくことになるのだが、その後は初めはイースターエッグの制作に失敗しながらも上手く作れるようになり、本作のラストはひかりが両親の顔を描いたイースターエッグを飾って終わるのである。つまり浮気と、それを赦す過程における「卵の復活」がストーリーの流れにおいて上手く絡まれば良かったのであるが、惜しいことに成功しているようには見えなかった。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-92657


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『神は見返りを求める』

2022-06-28 19:58:59 | goo映画レビュー

原題:『神は見返りを求める』
監督:吉田恵輔
脚本:吉田恵輔
撮影:志田貴之
出演:ムロツヨシ/岸井ゆきの/若葉竜也/吉村界人/淡梨/柳俊太郎
2022年/日本

「知性」と「感性」による映像の作り方の違いについて

 最初に前提として本作が本当に「映画」なのかどうかという問題があると思う。それは本作の三分の一を占めるであろう「YouTube的」映像が含まれている作品がはたして映画と呼べるに足るもなのか考える必要はあると思うからである。
 それでは「映画」と「YouTube」の違いをはっきりさせておかなければならないだろう。それは「純文学」と「エンタメ小説」の違いと例えてみても分かりづらいだろうから、趣味がDVD観賞という人には二種類いて、「映画」か「AV」かと言った方が分かりやすいと思う。言い換えるならば、「知性」に訴えかけるものと直接「感性」を刺激するものとの違いであり、それが主人公の川合優里がサイン会で少女に「その時だけ楽しめれば作品は歴史に残らなくても良い」と言われたことに対する答えにもなると思う。
 改めて本作が映画かどうか勘案してみるならば、「YouTube的」映画と答えたくなる。それは決して折衷案ではなく、感性至上主義のような作りのYouTubeを巡り、YouTubeの映像制作に関わる全てのスタッフが感情をむき出しにして相手に関わった結果が、主人公の田母神尚樹と優里が、田母神の会社の後輩の梅川葉も巻き込んで最後までお互いに嫌悪感を隠さない子供のような有様と、熟慮の無い撮影による優里の全身の大火傷と田母神が正体を暴いた覆面YouTuberに傘で背中を刺されてスマホを奪われるという救いようのない結末なのである。それは負の側面だけではなく、例えば、素顔を晒してかつて優里と一緒に踊っていたダンスを披露する田母神を見て反応する優里と、入院している優里の「でも、ありがとう」と言っている場面だけを何度も繰り返してスマホで見る田母神の条件反射的な感性も関わっているはずなのである。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/bikenews/entertainment/bikenews-261586


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『やがて海へと届く』

2022-06-27 23:00:59 | goo映画レビュー

原題:『やがて海へと届く』
監督:中川龍太郎
脚本:中川龍太郎/梅原英司
撮影:大内泰
出演:岸井ゆきの/浜辺美波/杉野遥亮/中崎敏/鶴田真由/中嶋朋子/新谷ゆづみ/光石研
2022年/日本

猫のポーチと青いシュシュ

 主人公の湖谷真奈は28歳でホテルのダイニングバーで働いており、彼女は5年前に東日本大震災で消息を絶った大学で知り合った親友の卯木すみれを忘れられずにいるのだが、二人の相手に対する認識には微妙なズレがあると思う。
 そもそも二人の出会いの場面を思い浮かべるならば、すみれは自分が落とした猫のポーチを持っていた真奈を見て、たまたま彼女が勧誘されていたクラブにすみれは半ば強引に真奈を誘って一緒に入会するのだが、真奈がすみれの思い出として取っておいたのは新入生歓迎コンパの飲み会で飲み過ぎた真奈にすみれが渡した青いシュシュである。おそらくすみれは真奈に対して「一目惚れ」で仲人してくれたポーチの猫に頭が上がらなかったはずで、真奈のすみれに対する想いは優しい親友なのだと思うが、真奈はそのことに気がついていない。真奈が同性愛に対してどのような意見を持っているのかは詳らかにはされてはいないものの、東日本大震災ですみれが亡くなったことで、真奈にとってすみれは永遠の親友でいられることは間違いないと思う。
 この微妙な関係を浜辺美波が相変わらずの絶妙な演技で表現するのだから、駄作になりようがない。

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https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-128915


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『大河への道』

2022-06-26 00:56:37 | goo映画レビュー

原題:『大河への道』
監督:中西健二
脚本:森下佳子
撮影:柴主高秀
出演:中井貴一/松山ケンイチ/北川景子/岸井ゆきの/和田正人/立川志の輔/西村まさ彦/平田満/草刈正雄/橋爪功
2022年/日本

足による地図の作り方について

 本作は伊能忠敬と天文学者の高橋景保を始めとする伊能組の地図製作の過程が細かく描かれており、足のサイズで距離を測ったり地図を書いている最中に墨をこぼしてしまったりと、当時の地図作りの困難さが改めて実感できるし、最初は何故神田三郎が伊能たちの地図作りに難癖をつけるのか分からなかったが、幕府から地図製作に多大な予算がついているとなると確かに「監視」をしたくなる気持ちは理解できる。
 本作のクライマックスは高橋景保が徳川家斉に部屋一面に広げられた完成した地図と伊能が履き尽したボロボロの形見の草鞋を見せるシーンである。大きな地図の美しさと小さな草履の汚さのコントラストに涙を誘われる。
 ところで中井貴一は間の取り方が抜群に上手く、『記憶にございません!』(三谷幸喜監督 2019年)では空回りしていたが、コメディアンとしてなかなかの才能があるのではないだろうか。

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『映画 おそ松さん』

2022-06-25 00:58:20 | goo映画レビュー

原題:『映画 おそ松さん』
監督:英勉
脚本:土屋亮一
撮影:小松高志
出演:Snow Man/髙橋ひかる/前川泰之/桜田ひより/濱田マリ/光石研/南果歩/榎木孝明
2022年/日本

ネタが尽きないギャグ漫画について

 まるで金のなる木のようにテレビ東京によって散々擦り倒されている「おそ松さん」であるが故に、実写でどのように演出しようともそう簡単に驚かされはしないと思って観に行ったら、驚かされたのは松野兄弟たちよりもチビ太を桜田ひよりが演じていたことだった。なるほど、その手があったのかという感慨に浸りながら楽しませてもらったのだが、トト子を演じた高橋ひかると共に間の取り方も上手く良質のコメディ映画に仕上がっていると思う。主題歌も素晴らしい。

Snow Man「ブラザービート」Music Video
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https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-131111


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『太陽とボレロ』

2022-06-24 00:58:28 | goo映画レビュー

原題:『太陽とボレロ』
監督:水谷豊
脚本:水谷豊
撮影:会田正裕
出演:檀れい/石丸幹二/町田啓太/森マリア/田口浩正/河相我聞/原田龍二/檀ふみ
2022年/日本

思い入れが強すぎると逆にしくじる映画監督について

 水谷の前作『轢き逃げ 最高の最悪な日』(2019年)が悪くなかったので本作もそれなりに期待して観に行った。作品の冒頭とラストのオーケストラの演奏シーンは悪くはないものの、終始違和感を抱かせるストーリーが逆に邪魔をしているのではないかとさえ思う。
 例えば、主人公の花村理子が父親から継いだ洋装店を退職した後に、敏腕のアパレルのバイヤーとして再び理子の前に現れた畑中善行が理子を口説いてラブホテルに誘い、理子もベッドインまでしておきながら急にコメディータッチになり畑中を殴って部屋から飛び出して理子は逃げるのであるが、これは監督の水谷がベッドシーンに照れてしまって笑いで誤魔化したようにしか見えなかった。
 あるいは弥生交響楽団の解散が決まって、逆恨みしたオーボエ奏者の牧田九里郎が鶴間芳文が営む中古車販売センターの車を夜中に破壊している最中に、ボンネットから足を滑らせた牧田は二本の前歯を失ってしまうのだが、そんな歯の抜け方をするのかというような感じだった。
 何よりも重要な役割(本人役)で出演している指揮者の西本智実が一言も喋らないというのは、水谷が期待していたような演技が無理だったのであろうが、違和感しか残らなかった。
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『はい、泳げません』

2022-06-23 00:59:16 | goo映画レビュー

原題:『はい、泳げません』
監督:渡辺謙作
脚本:渡辺謙作
撮影:笠松則通
出演:長谷川博己/綾瀬はるか/伊佐山ひろ子/広岡由里子/占部房子/上原奈美/阿部純子/麻生久美子
2022年/日本

ヒロインの水着姿を楽しむだけの作品について

 原作者は高橋秀美というノンフィクション作家なのだが、敢えて小鳥遊雄司という哲学者にした理由を勘案するならば、「頭でっかち」の人間が余計なことを考えずに感じることで泳ぐことを学ぶというストーリーにしたかったのだと思う(因みに哲学監修は國分功一郎)のだが、例えば、フランスの哲学者のガストン・バシュラールの『L'Eau et les rêves(水と夢)』について語る人間が羊水に関して無知ということはあり得ず、水泳のコーチの薄原静香の発言にはことごとく反論できるはずなのである。小鳥遊が抱える問題は知識ではなく経験だからである。
 ベースが間違っているために、ストーリー全体に説得力がないのだが、例えば、水族館にいる小鳥遊と事務所にいる静香が電話で会話している際の、静香が画面の「枠」を超えてくる演出は面白いと思った。だから本作で最も残念なシーンは作品の冒頭、2010年にカフェで小鳥遊と美弥子が談笑している際に、突然、美弥子の口に彼女の嫌いな納豆を無理やり入れてくる男女のカップルが、美弥子の口の中に正確に納豆を入れ損なっている点なのではないかと思うのである。
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『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』

2022-06-22 17:25:28 | goo映画レビュー

原題:『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』
監督:西谷弘
脚本:東山狭
撮影:山本英夫
出演:ディーン・フジオカ/岩田剛典/新木優子/広末涼子/村上虹郎/渋川清彦/西村まさ彦/山田真歩
2022年/日本

目に対する「コンプレックス」について

 アーサー・コナン・ドイルの原作ということでかなり期待して観に行ったが、何かの間違いではないかと思うことが多々あった。
 作品の性格上、詳細はさけるが、推理の仕方が「逆」なのではないかと思う。事件の元となった原因、つまり本作においては蓮壁紅が幼少の頃に世界有数の資産家である蓮壁千鶴男の家に何故連れて来られたのか最初に解かなければならないはずだが、それが後回しになったために悲劇が起こったのであり、主人公の誉獅子雄が他人の言動に点数を付けている場合ではないのである。
 さらに奇妙なのは大人になっても子供の時と大きさは変わらないという「目」に関する逸話である。この逸話は正確ではなく、冨楽雷太と朗子夫妻の1歳になる娘が行方不明になったのは2001年3月9日で、瞳を見ただけで約20年後に成人した娘を朗子は公衆トイレで偶然見つけ出したのであるが、さすがにこれは都合が良すぎるのではないだろうか? 実際に若宮潤一と紅は薬で眠らされ、冨楽雷太は疲れで眠ってしまったり、あるいは「魔犬」の「赤い瞳」などは目に対する監督の「コンプレックス」の表出のような気がしないでもない。

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https://news.goo.ne.jp/article/fanfunfukuoka/life/fanfunfukuoka-64421


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『コンフィデンスマンJP 英雄編』

2022-06-21 00:57:34 | goo映画レビュー

原題:『コンフィデンスマンJP 英雄編』
監督:田中亮
脚本:古沢良太
撮影:板倉陽子
出演:長澤まさみ/東出昌大/小手伸也/小日向文世/松重豊/瀬戸康史/城田優/生田絵梨花/江口洋介
2022年/日本

「英雄」を表現することの難しさについて

 コンゲーム(con game 信用詐欺 因みにコンフィデンス confidence の con と同じ語源)を完全に作り込むことの難しさを感じた。詳細は避けるが例えば、入室する際の暗証番号を指紋を採取することで盗みだすことは出来るが、番号の順番までは無理だと思う。
 それでも相変わらず良質の作品に仕上がっているのは、結局、衰え知らずの長澤まさみの弾けっぷりに尽きるような気がする。
 英雄編というタイトルは冒頭に出てくるベルトルト・ブレヒトの戯曲『ガリレイの生涯』から「英雄のいない時代が不幸なのではなく、英雄を必要とする時代が不幸なのだ」という引用から取られており、主人公のダー子はラストで一人一人の地道な生き方こそ英雄に相応しいと「説明」するものの、これは本来であるなら同じテーマで制作された『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(ジョン・ワッツ監督 2021年)のように映像で表現して欲しいところではある。

gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-116089


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