MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『そして、生きる』

2020-01-13 00:47:37 | goo映画レビュー

原題:『そして、生きる』
監督:月川翔
脚本:岡田惠和
撮影:山田康介
出演:有村架純/坂口健太郎/知英/岡山天音/萩原聖人/光石研/南果歩
2019年/日本

人生に憑りつく「ファンタジー」について

 主人公の生田瞳子は3歳の時に交通事故で両親を亡くし、父親の兄で理髪店を営む和孝に引き取られて育つ。幼い頃から地元の盛岡でモデルなどの活動をしていた瞳子が思い切って受けようと思っていた東京でのタレントオーディションの日時は2011年3月12日だったのだが、上京しようとした当日に東日本大震災で被災したのである。
 同じ城東大学の学生だった清水清隆とは宮城県の気仙沼市において学生ボランティアとして活動していた時だった。清隆も幼い時に父親を病気で亡くし、小学生の時には母親が首を吊って自殺したために親戚に引き取られて育ったためなのか瞳子と気が合い交際するようになったのだが、清隆は就職先の商社を出社した日に辞めてしまい、NPОに所属してフィリピンで活動することになる。しかし同じ頃、瞳子はタレントオーディションの最中に自分が妊娠していることを知り、自分の夢を諦めるのみならず、清隆の仕事の邪魔にならないように知らせずに一人で育てる決心をするのだが、流産してしまうのである。
 清隆は仕事で商談中にフィリピンでテロに遭い、怪我を負って帰国を余儀なくされるのだが偶然空港にいた瞳子の友人でボランティア活動も一緒だったハン・ユリと再会し、交際するようになり、瞳子は高校の後輩で太陽光パネルのセールスをしていた久保真二と結婚することになる。
 ところが清隆のショップ経営に元々自由奔放だったユリは性格的に合わず、別れることになり、和孝がガンで亡くなる時期に瞳子の出産と詐欺による真二の逮捕が重なり、瞳子の身辺もぐちゃぐちゃだったのだが、2019年の春に娘を連れた瞳子と清隆は再会するのである。
 テレビドラマを2時間強の劇場版にしたために映画としての見どころはないのであるが、ボランティアのあり方と結婚のタイミングというものを考えさせられる。社会人になる前にボランティアという「ファンタジー」に憑りつかれると人生をダメにしてしまうという気仙沼を地元に理髪店を営む坂本昌幸の発言は重いし、好きだけでは結婚に至らず、相手のことを想えば想うほどなおさらなのである。


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