MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『人間失格 太宰治と3人の女たち』

2020-01-01 00:40:27 | goo映画レビュー

原題:『人間失格 太宰治と3人の女たち』
監督:蜷川実花
脚本:早船歌江子
撮影:近藤龍人
出演:小栗旬/宮沢りえ/沢尻エリカ/二階堂ふみ/成田凌/千葉雄大/瀬戸康史/高良健吾/藤原竜也
2019年/日本

「赤」に対抗する「青」について

 前作の『Diner ダイナー』(2019年)においてはストーリーの規模の大きさに演出が追い付いていない感じが拭えなかったが、本作のように等身大の主人公を描かせたならば蜷川実花監督は力量を存分に発揮できるように思う。
 そもそも太宰治という小説家は「女性」をエネルギーに変えて執筆の原動力としていたように思うのだが、本作で描かれる太宰は、例えば、太田静子、さらには太田を介してローザ・ルクセンブルクのような強い女性に惹かれ、強い女性が書いた著書や日記にインスピレーションを得ていたようである。逆に言うならばいくら強くても田部シメ子や山崎富榮には太田ほどの才能がなかったために、やがて太宰に疎まれ、田部からは上手く逃れられたものの、山崎からは逃げ切れなかったように思う。
 それを踏まえるならば太宰の正妻の津島美知子は、太宰が吐く赤い血に対抗するように子供たちも含めて顔に青い顔料を塗り、さらに庭には菖蒲を咲かせることで死から逃れたように思える。色彩に関しては監督の演出はいつものように冴えを見せる。
 個人的に沢尻エリカの俳優としての実力は認めるものの惹かれなかった理由は、沢尻にはユーモアが感じられなかったからである。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする