MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『聖の青春』

2021-07-31 00:50:29 | goo映画レビュー

原題:『聖の青春』
監督:森義隆
脚本:向井康介
撮影:柳島克己
出演:松山ケンイチ/東出昌大/竹下景子/染谷将太/安田顕/柄本時生/筒井道隆
2016年/日本

「究極のオタク像」について

 村山聖の風貌はネフローゼ症候群によるむくみなのであるが、少女マンガを愛読したり将棋以外にも囲碁や麻雀も得意で、対人関係は不慣れという点においても「オタク気質」があったように思う。しかしここまで将棋が強いから他のことは許されるわけで、ある意味究極のオタク像であるだろう。時々挟まれる誰もいない平原に一人佇む村山のシーンが寂寥感を増している。
 村山の最後の対局は1997年度のNHK杯戦の決勝で、相手は羽生善治なのだが、優勢だった村山は最後に悪手で負けてしまい、羽生との対戦を通算6勝7敗で終えている。どうもこの通算成績が気になるのだが、もしも村山が勝って7勝6敗だとしたら村山はそれで満足してしまい、次戦を考える必要がなくなるからわざと負けたように見えなくもない。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/moviewalker/entertainment/moviewalker-1010676


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『いのちの停車場』

2021-07-30 22:04:59 | goo映画レビュー

原題:『いのちの停車場』
監督:成島出
脚本:平松恵美子
撮影:相馬大輔
出演:吉永小百合/松坂桃李/広瀬すず/南野陽子/石田ゆり子/田中泯/西田敏行
2021年/日本

「最善の人生に見つけ方」について

 主人公の白石咲和子は大学病院の救命救急医として働いていたが、部下の行動の責任を代わりに取って退職すると地元の金沢市に戻って訪問診療医として働くことになる。
 訪問先の患者の最期を看取るというシーンが次々と続き、気が滅入ってくるのではあるが、ラストでは咲和子が脳梗塞で倒れた父親の白石達郎の世話をすることになり、疼痛の苦しみから楽になりたいという達郎の想いを叶える決断を下すことになる。つまり本作は安楽死の是非を問うているのである。吉永の全ての作品を観ているわけではないが、作品を通じて社会に問題提起するというのは珍しいのではないだろうか。あるいは前作『最高の人生の見つけ方』(犬童一心監督 2019年)ではしゃぎ過ぎたという反省があるのかもしれない。

 ところで吉永は62歳の医師という設定らしいのであるが、外見はともかく歩き方に老いを感じた。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/sanspo/entertainment/sanspo-geo2105250009


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『SEOBOK/ソボク』

2021-07-29 00:56:14 | goo映画レビュー

原題:『서복』 英題:『Seo Bok』
監督:イ・ヨンジュ
脚本:イ・ヨンジュ/ヨム・ギュフン/イ・ジェミン/チョ・ミンソク
撮影:イ・モゲ
出演:コン・ユ/パク・ボゴム/チョ・ウジン/チャン・ヨンナム/パク・ビョンウン
2021年/韓国

不老不死の「挫折」について

 不老不死のキャラクターを巡る物語という点や、最終的に不老不死を否定するという点においても本作は『Arc アーク』(石川慶監督 2021年)と同じテーマを扱っていると思うが、本作においては不老不死により人間の欲望もそれに合わせて限界を無くしてしまうことに危機感を持った組織がクローン人間のソボクの暗殺を試み、余命半年とも告げられた自身の脳腫瘍を治すためにソボクの警護を担った元国家情報院要員ミン・ギホンがソボクを守ろうと孤軍奮闘する。
 詳細は避けようと思うが、本作はトム・クルーズとダスティン・ホフマンが共演した『レインマン』(バリー・レヴィンソン監督 1988年)のSF版のように感じた。「超能力」を持つ純粋な性根の相手に対して何もしてあげられなくて「見放して」しまうところなど必然的な若者の挫折を描くアメリカン・ニューシネマの影響も感じる。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-83953


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『Arc アーク』

2021-07-28 00:58:41 | goo映画レビュー

原題:『Arc アーク』
監督:石川慶
脚本:石川慶/澤井香織
撮影:ピオトル・ニエミイスキ
出演:芳根京子/寺島しのぶ/岡田将生/清水くるみ/中村ゆみ/倍賞千恵子/風吹ジュン/小林薫
2021年/日本

人間の可能性を模索しないSFについて

 本作の主人公のリナは17歳で出産した男の子を捨てて、2年後にダンサーとして働いていたところでエマという女性に誘われて化粧品会社『エタニティ』で防腐処置を施した遺体に繋いだいくつもの糸を舞うように引っ張ることで亡くなった人物や動物の個性が引き立つポージングを作るという「ボディワークス」という仕事に携わることになるのだが、さらに10年以上が経ち、人間が不老不死になる「老化抑制技術」を実用化した仕事に移行していく。
 リナも不老不死の処置を受けて、外見は30歳のまま老後を迎えるのだが、17歳で産んだリヒトと出会い、リヒトを失ったことから不老不死の処置を受けることを止めて135歳になった頃に人生は終わりがあるからこそ意味を持つと達観するのであるが、これは既に聞き飽きた結論で正直がっかりしてしまった。
 なによりも「ボディワークス」の可能性に関して消化不良ではないだろうか? リナとリナの孫のセリを芳根京子が演じることが「ボディワークス」の完成形の暗示であるならば、これは人間の努力ではどうにもならない偶然頼みでしかなく、画面の特異さが活かされていないように思うのである。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/moviewalker/entertainment/moviewalker-1039772


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『リカ~自称28歳の純愛モンスター~』

2021-07-27 00:46:15 | goo映画レビュー

原題:『リカ ~自称28歳の純愛モンスター~』
監督:松木創
脚本:三浦希紗
撮影:白石利彦
出演:高岡早紀/市原隼人/内田理央/水橋研二/岡田龍太郎/山本直寛/尾美としのり/佐々木希
2021年/日本

実はベラだったリカについて

 主人公の雨宮リカはシリアルキラーとして描かれている。一度は逮捕して警察病院に入院させていたものの、看護婦を殺害して逃走したリカをどうしても逮捕したい刑事の奥山次郎は単独でリカの逮捕を目論む。
 幸運にも出会い系サイトでリカの足取りを掴めた奥山はリカをおびき出したのであるが、返り討ちに遭ってしまい、奥山の婚約者で同僚の青木孝子と、孝子の同僚の梅本尚美が奥山を探すことになる。
 奥山の居場所を知っているはずのリカが孝子たちに追い詰められた瞬間に彼らの目の前で飛び上がり壁を伝って逃れたのを見て、これはサスペンスではなくて「SF」であることを知ってがっかりしてしまった。
 なおかつこれだけの超能力を持っていながら意外と簡単に捕まってしまうのも逆に納得がいかないし、同じような境遇から奥山がリカに感化されるのはともかく、ラストで孝子もリカに感化される理由が説明不足で分からない。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/otocoto/entertainment/otocoto-otocoto_47671


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『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』

2021-07-26 00:52:48 | goo映画レビュー

原題:『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』
監督:江口カン
脚本:江口カン/山浦雅大
撮影:直井康志
出演:岡田准一/木村文乃/平手友梨奈/安藤政信/山本美月/佐藤二朗/堤真一
2021年/日本

演出上の限界について

 アクション映画としてとてもよくできていると思う。例えば、マンションの修繕工事のために組み立てられていたものの正に崩れようとしている足場を全速力で駆け抜けて行く主人公の佐藤明(ファブル)の両足をよそに、ヒロインである佐羽ヒナコの両足は本人の努力も虚しくなかなか動かないどころか、クライマックスにおいては宇津帆が仕掛けた地雷を踏んでしまい、完全に動きを止められてしまうのである。この2人の両足の対照性が本作のアクション性を引き立てているのである。
 ところが問題なのは佐藤明に対する佐藤洋子を演じた木村文乃のツッコミがいまいち観客の笑いを誘わないところである。本作と全く関係ないのだが、さきほどテレビでホラン千秋が鋭いツッコミで爆笑をかっさらっていた。つまりこれは「台本」と「魂の叫び」の違いのように思うのである。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-80753


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『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』

2021-07-25 21:48:58 | goo映画レビュー

原題:『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』
監督:池田暁
脚本:池田暁
撮影:池田直矢
出演:前原滉/今野浩喜/中島広稀/清水尚弥/橋本マナミ/片桐はいり/竹中直人/石橋蓮司
2021年/日本

力強い「意志の無さ」について

 本作を「アキ・カウリスマキ監督風」と例える識者がいる。確かに出演者たちに無表情を強いて「棒読み」をさせるところなど似ているのではあるが、アキ・カウリスマキは「天然」であっても、本作は戦争に反対することなく上の指示に諦念で盲従するだけの住民たちというアイロニーが込められている点において「意図」が感じられるのである。
 なかなかやりたくてもできない思い切った演出である。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-67870


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『名も無い日』

2021-07-24 00:58:12 | goo映画レビュー

原題:『名も無い日』
監督:日々遊一
脚本:日々遊一
撮影:高岡ヒロオ
出演:永瀬正敏/金子ノブアキ/オダギリジョー/今井美樹/真木よう子/井上順
2021年/日本

脚本と演出の「格差」について

 正直、ストーリーが全く掴めない。主人公の小野達也は写真家としてニューヨークを拠点に活動しており、弟の章人も東大を卒業後ハーバード大学へ留学するくらいのエリートだったのであるが、2016年の4月頃、実家に戻った達也は章人が新聞配達以外に家に一人で引きこもっている現場に遭遇することになる。しばらく一緒に暮らしたようで、達也は家を大掃除するのであるが、何故か捨てたものを章人はゴミ集積場から拾ってきて元に戻しているのである。章人は白内障を悪化させて右眼の視力を失ってしまっており、間違えることに対する強迫観念に囚われている。
 ところがその後、達也が章人に対してどのように対処したのか描かれないまま章人が亡くなった2年後の現在が描かれているのである。弟に対して冷たすぎないだろうか?
 このようにどれほど主人公が感傷に浸ろうが、全く同情できないのだが、映像そのものは悪くはないと思う。例えば、店の前で水を撒いている女性の前を達也が右側から歩いてくるのだが、左側から現れるのはゴミ収集車で、真ん中にいる女性の前で交錯するのである。
 達也と章人(=ゴミ)の対立の緩衝材として登場するのが、岡崎紗絵が演じる稲葉奈々で彼女は土から陶器を作り出し、それは「ゴミ」から有益なものを生み出す営みなのである。そして達也もまた写真により「無」から「有」を生み出す実作者ではなかったか。
 八木(中野英雄)の居酒屋で飲んでいる直子(大久保佳代子)がビールを同時に飲んで同時にグラスを置くところなど、とにかく映像に対する細かい配慮は文句のつけようがないのだから、もう少し脚本がこなれていれば良かったのにと思う。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-79456


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『アジアの天使』

2021-07-23 00:58:07 | goo映画レビュー

原題:『アジアの天使』
監督:石井裕也
脚本:石井裕也
撮影:キム・ジョンソン
出演:池松壮亮/チェ・ヒソ/オダギリジョー/キム・ミンジェ/キム・イェウン
2021年/日本

相互理解と外国語の習得について

 主人公の青木剛はシングルファーザーで仕事があるということで兄の透に誘われて8歳の息子の学を連れて日本の住居を整理して韓国のソウルを訪れたのだが、韓国語が全くわからずに透の仕事仲間とひと悶着起こしてしまう。
 どうもこの冒頭のシーンから個人的には違和感が生じてしまった。一般人ならばともかく剛は小説家で、言葉には人一倍敏感であるはずなのに韓国を訪れるのに基本的な韓国語のフレーズを覚えもせずに韓国に来てしまうということが考えられないのである。
 このことを反省して現地で韓国語の教科書を買って勉強するならばまだしも剛はその後も韓国語を勉強する様子は全くなく、それにも関わらず剛は「大事なのは相互理解」と言っているのだから片腹痛しとしか言いようがない。
 ところではっきり言うならばクライマックスで登場するアジアの天使はスベっているのではないだろうか?
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-81193


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『茜色に焼かれる』

2021-07-22 00:58:17 | goo映画レビュー

原題:『茜色に焼かれる』
監督:石井裕也
脚本:石井裕也
撮影:鎌苅洋一
出演:尾野真千子/和田 庵/片山友希/前田亜季/鶴見辰吾/嶋田久作/オダギリジョー/永瀬正敏
2021年/日本

芝居下手の人生について

 コロナ禍を扱った作品として個人的に知る限りは『真・鮫島事件』(永江二朗監督 2020年)、『女たち』(内田伸輝監督 2021年)に続き3作品目だと思うが、マスクに関して言うならば一番描写が正確だと思う。
 作品の冒頭で「田中良子は芝居が得意だ」という字幕が出る。その後、中学生の純平を育てるシングルマザーの田中良子の奮闘が掛かった諸経費がその都度明示されながらストーリーが進んでいくのであるが、ラストにおいて義父が入院している介護施設で一人芝居のオンライン公演をさせてもらうことになる。過去のアングラ演劇の経験を活かした「神様」という一人芝居は息子の純平さえ呆れるようなものだったが、それは逆に言うならば普段の田中良子は「お芝居」をせずに生きているという証左ではなかったか。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-76563


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