原題:『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』
監督:片渕須直
脚本:片渕須直
撮影:熊澤祐哉
出演:のん/尾身美詞/細谷佳正/稲葉菜月/牛山茂/新谷真弓/小野大輔/岩井七世/花澤香菜
2019年/日本
「絵」と「文字」がもたらす感動の違いについて
前作と言っていいのかどうか分からないが『この世界の片隅に』(2016年)に関しては既に書いた通りで、主人公の浦野すずが描く絵が本作自身にリンクすることでメタフィクショナルな効果をもたらすことに成功していた。
本作は元の作品に約40分の映像を追加したもので、元の作品にあったメタフィクショナルな効果は薄れているものの、例えば、遊郭で働く白木リンやてるちゃんのためにすずが紙やまっさらな雪の上に描く絵は確実に彼女たちの心の支えになって本来の絵の役目に徹したように見えるのだが、一方でリンが持っていたメモによってすずが夫の北條周作とリンの関係を心配しだし、この女性が描く「絵」と男性が書く「文字」がもたらす対照性が興味深い。