原題:『カツベン!』
監督:周防正行
脚本:片島章三
撮影:藤澤順一
出演:成田凌/黒島結菜/永瀬正敏/高良健吾/音尾琢真/徳井優/竹中直人/渡辺えり/竹野内豊
2019年/日本
「活動」の描写について
本作を日本の「活動写真」の物語というよりも、「活動」そのものにスポットを当ててみたいと思う。
例えば、主人公の染谷俊太郎と幼なじみの栗原梅子が便所の小さな引き戸から入ってタダで映画を観るシーンがある。そこに入ったり出たりすることで楽しみを見いだすのであるが、ある日、板が張り付けられていてタダで映画を観ることができなくなる。
入ったり出たりするシーンは他にもあり、俊太郎と茂木貴之が壁を境にしてタンスの引き出しを出し引きするシーンがあり、ここでも観客の笑いを誘うし、橘重蔵たちに捕えられた梅子が俊太郎に助けられた際に、すぐ隣はタチバナ館のスクリーンがあり映画を上映しているのであるが、そこへスクリーンを破って喧嘩しながら出てくる二人を観客が観ているシーンも「活動」といえるかもしれない。
フィルムをメチャクチャにされた青木館は苦肉の策として残って使えるフィルムだけをつなぎ合わせて作ったものを俊太郎の話術だけで「作品」に仕立て上げるのであるが、そのフィルムのつなげ方の出鱈目さがまさにそれぞれの作品の「出し入れ」なのであり、このような「活動」を見逃すべきではないと思うのである。