MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『セブン・シスターズ』

2017-10-31 23:36:18 | goo映画レビュー

原題:『What Happened to Monday』 仏題:『Seven Sisters』
監督:トミー・ウィルコラ
脚本:マックス・ボトキン/リー・ウィリアムソン
撮影:ホセ・ダヴィッド・モンテロ
出演:ノオミ・ラパス/グレン・クローズ/ウィレム・デフォー/マーワン・ケンザリ
2017年/イギリス・アメリカ・フランス・ベルギー

ポスト「ブレードランナー」の作品について

 『ブレードランナー 2049』(ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督 2017年)が2049年の世界を舞台としているならば、本作の時代設定は2043年から始まる。異常気象と急激な人口増加対策として開発された遺伝子組み換え食品の副作用による多胎児の増加、それに伴い執行されたいわゆる「一人っ子政策」、そして最後に明かされる「絶滅収容所」の存在など強烈なアイロニーが描かれている。
 しかし「一人っ子政策」を掻いくぐって2073年、30歳まで生き延びた主人公の「カレン・セットマン」を名乗る七つ子姉妹の物語はなかなか納得しにくい。原題「マンデーに何があったのか?」通り、マンデーの行方不明がメインストーリーの発端になるのだが、マンデーが他の姉妹を裏切る原因となる出来事が、子供の頃に、サースデーが無断外出をして指を欠損するほどの怪我を負ったことだった。七人で「カレン・セットマン」を演じている以上、全員同じでなければならずマンデーも父親のテレンス・セットマンに指を切られるのである。マンデーはこのことにかなり怨みを持っていたようなのだが、指を切られたのはマンデーだけではなく、実際にウェンズデーは指を欠損していたおかげで敵の指を切って欠損した部分に当てて相手の銃を使えるようになり敵を撃ち殺すことができたのだから役に立つことがないことはないのである。何よりもあれほど精密な姉妹の監視システムがあるのに、姉妹の誰もがマンデーに恋人がいることを知らないということに無理があると思う。
 いろいろと作品の粗を書いてしまったが、七姉妹を一人で演じたノオミ・ラパスと幼少時代を演じたクララ・リードの熱演は高く評価されるべきであろうし、愛の「奇跡」も含めたSF作品として発想の大胆さと「ディストピア」のヴィジュアルに関しては十分に堪能できると思う。


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『ブレードランナー 2049』

2017-10-30 23:12:57 | goo映画レビュー

原題:『Blade Runner 2049
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
脚本:ハンプトン・ファンチャー/マイケル・グリーン
撮影:ロジャー・ディーキンス
出演:ライアン・ゴズリング/アナ・デ・アルマス/ロビン・ライト/ハリソン・フォード
2017年/アメリカ

同じ過ちの繰り返しで創造される「ディストピア」について

 驚くべき作品である。前作『ブレードランナー』(リドリー・スコット監督 1982年)において主人公のリック・デッカードと、敵対するロイ・バッティとプリス・ストラットン、そしてヒロインのレイチェルという人物構図は、本作においてはリック・デッカードはそのままで、ロイ・バッティの代わりに「K」、プリス・ストラットンの代わりにラヴ、そしてレイチェルの代わりにアナ・ステリン博士が担っており、要するに本作は前作のヴァージョンアップというだけで「奇跡」と30年経過したという以外に進展がなく謎が解明されないまま前作のストーリーをほぼ踏襲しているだけなのである。同じ過ちを繰り返す人間の「ディストピア」の創造こそが本作のアイロニーであろう。
 しかし最後にヴァンゲリス(Vangelis)が作曲した有名なオリジナル・エンディングテーマを使わなかったのは何故なのか、「Tears in Rain」は使用していたが故に解せない。ラストはヴァンゲリスのエンドタイトルを聴きたかった。

Blade Runner - Theme End Titles (1982) Blu-Ray


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『バリー・シール/アメリカをはめた男』

2017-10-29 23:23:17 | goo映画レビュー

原題:『American Made』
監督:ダグ・リーマン
脚本:ゲイリー・スピネッリ
撮影:セザール・シャローン
出演:トム・クルーズ/ドーナル・グリーソン/サラ・ライト/ジェイマ・メイズ
2017年/アメリカ

撮られた証拠の行方について

 実在したパイロットのバリー・シールはその天才的な操縦技術を買われてCIAのエージェントからスカウトされて、大金を受け取る代わりに「ヤバい」仕事に携わることになる。
 しかしどうも腑に落ちないのは、裁判で1000時間の退役軍人にたいする奉仕活動を命じられた後、パブロ・エスコバルが送り込んだ刺客たちによって義理の弟のJBが乗った車が目の前で爆破されて暗殺されたトラウマを持ったシールがモーテルを転々と変えながら、これまでの自身の行動を独白して証拠の記録として残したヴィデオを何に使うつもりだったのかという点にある。何故かシールは収録したヴィデオを移動に使う車で一緒に運んでいるのだが、車が危ないことは分かっているのだからヴィデオは収録が終わり次第に例えば、妻のルーシーが住む家に送っておくべきなのである。この描写が事実に基づくものなのかあるいはフィクションなのかよく分からない。
 シールがCIAと関わるようになった時のアメリカの大統領がジミー・カーターで、シールを保釈した人物が当時のアーカンソー州知事のビル・クリントンで、その「甘い裁定」により事実上アメリカ政府に見捨てられたシールが暗殺された1986年2月19日頃のアメリカ大統領はロナルド・レーガンで、副大統領が後の大統領となるジョージ・H・W・ブッシュで、このように当時の歴代アメリカ大統領が全てシールと関わっていることが本作最大の驚きで、だからシールは原題通りに「特製のアメリカ人」であるのだろう。
機密指定のケネディ暗殺資料、存命者の名前以外公開へ=トランプ米大統領
ケネディ暗殺犯の記録も=機密資料の一部公開―CIAは先送り主張・米
トランプ氏、ケネディ暗殺文書の一部公開保留を指示 CIAなどの公開差し止め圧力に譲歩


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48グループと坂道グループの楽曲のクオリティについて

2017-10-28 00:27:00 | 邦楽

欅坂46 『風に吹かれても』

 『風に吹かれても』を最初に聴いた時に、この曲は本来AKB48用の曲だったのではないかと思った。島崎遥香の卒業ソングだった『ハイテンション』に似ているためだったからで、実際に作曲も同じシライシ紗トリのものだった。しかし『ハイテンション』よりも『風に吹かれて』の方が断然クオリティーが高い。そこで気になったのが最近の48グループの曲に関してである。例えば、最近のNMB48の曲名は「まさかシンガポール」でSKE48の曲名は「意外にマンゴー」と完全にやっつけ仕事の「捨て曲」だと思うが、「まさかシンガポール」が収録されたアルバム『難波愛~今、思うこと~』も、シングル「意外にマンゴー」もオリコンで1位になっている。つまりそれぞれのグループのファンの「レベル」を見計らってリリースされているのである。
 それに比較して欅坂46が『不協和音』後にメディアで披露した『エキセントリック』、『月曜日の朝、スカートを切られた』、『危なっかしい計画』そして『風に吹かれても』まで、欅坂46のファンでなくても聴きごたえのある楽曲ではないだろうか。
 もっともこれだけダンスのクオリティーを上げるためには固定メンバーでなければ無理なわけで、意外だと思われるが、例えば、『風に吹かれても』のライブパフォーマンスにおいて1列目と2列目が入れ替わる際に、平手友梨奈と長濱ねるのアイコンタクトの視線がチャーミングに見えるのは、同じパートで他のメンバーがダンスに気を取られてお互いの目を見つめ合うだけの余裕がないところにあり、さすが実質「2トップ」と言える。ブリッジの部分で今泉佑唯の背後に回り込むためにダッシュしている平手が可愛い。MVに関して言うならば、平手が「名探偵コナン」風のコスチュームなのは場面設定がマフィアの取り引き場所だからであろう。菅井友香の喜怒哀楽の激しさも面白い。

 危惧していることは48グループの楽曲のレベル低下がAKB48にも及んできているように感じることで、例えば、50枚目シングルとなる渡辺麻友の卒業ソングであるはずの『11月のアンクレット』が、渡辺の前のセンター曲『ラブラドールレトリバー』や小嶋陽菜の卒業ソングだった『シュートサイン』ほど良いようには聴こえないことで、もちろんいつものように100万枚を超える売れ行きを見せるのではあろうが、このままでは近いうちに48グループと坂道グループの立場が逆転するような気がする。
 しかしそもそも48グループのコンセプトは「クラスで2、3番目くらいの女の子」を集めるというものだったはずで、学校で一番の女の子たちを集めたような坂道グループに勝てる訳がないのではある。
 ちなみに特典映像は「Type B」が一番面白い。長濱ねるが運営側に重宝される理由がよく分かる。

欅坂46 Type B 特典映像『グループ発展祈願の旅 ~群馬編~』予告編


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「Falling Apart At The Seams」 Marmalade 和訳

2017-10-27 00:22:22 | 洋楽歌詞和訳

Marmalade - Falling apart at the seams

 10月22日にNHK-BSプレミアムで放送された『笑う洋楽展』でマーマレード

(Marmalade)の1976年リリースの「フォーリング・アパート・アット・ザ・シームズ」を紹介

していた。日本ではあまり馴染みのないスコットランドのバンドの曲を和訳しておきたい。

「Falling Apart At The Seams」 Marmalade 日本語訳

君が来るまで
僕の世界はガタガタだった
子供の頃の僕の夢はどれも
空っぽで無意味なものだったんだ

僕たちがキスをするまで
まるで雨が僕の願いを砂のようにしていたんだ
君を見つけるまで
僕は「過去の人」だったんだ

僕の鼻は平べったくて
自分がどこを向いているのかさえ分からなかった
そんな時
僕の人生に髪が光輝いた美の天使が現われたんだ

愛とは最も不思議な感情だ
だってまさに君にそばにいて欲しいと思った時に
君が変わっていくように思ったのだから
僕から顔をそむけないで

君が来るまで
僕の世界はガタガタだった
子供の頃の僕の夢はどれも
空っぽで無意味なものだったんだ

僕たちがキスをするまで
まるで雨が僕の願いを砂のようにしていたんだ
君を見つけるまで
僕は「過去の人」だったんだ

僕はただ光だけを見つめていた黒いマントを着た男のようだった
君がその男に生きる意味を取り戻させた時
影を取り除けたんだ

愛とは最も不思議な感情だ
だってまさに君にそばにいて欲しいと思った時に
君が変わっていくように思ったのだから
僕から顔をそむけないで

君が来るまで
僕の世界はガタガタだった
子供の頃の僕の夢はどれも
空っぽで無意味なものだったんだ

僕たちがキスをするまで
まるで雨が僕の願いを砂のようにしていたんだ
君を見つけるまで
僕は「過去の人」だったんだ


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「Young Love」 Sonny James 和訳

2017-10-26 00:10:29 | 洋楽歌詞和訳

Sonny James - Young Love - Country Music Experience

 10月15日にNHK-BSプレミアムで放送された『笑う洋楽展』ではソニー・ジェームス

(Sonny James)の「ヤング・ラヴ(Young Love)」が流れていた。以下、和訳。

「Young Love」 Sonny James 日本語訳

この広い世界のどこかには必ず
全ての少年や少女に相応しい愛が存在すると誰もが言う
そして僕は自分の愛を見つけたと思うんだ
君の抱擁の絶妙な感触が
今後僕の心に君以外の誰も占めることができないだろうと伝えるんだ

若い愛
初恋が
本物の熱愛で満たされる
若い愛
僕たちの愛が
深い感情を共有する

君の甘い唇のたった一度のキスが
君の愛が本物であると僕に教えてくれるんだ
僕はそれが本物だと感じることができる
僕たちはお互いに誓いあうだろう
君のための愛にしろ
僕のための愛にしろ
他のものはあり得ない

若い愛
初恋が
本物の熱愛で満たされる
若い愛
僕たちの愛が
深い感情を共有する


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テレビ番組がつまらなくなる原因

2017-10-25 21:03:53 | Weblog

永野ガチギレ、松本大志に生放送でビンタし批判殺到

 これは正直に言うならば、いわゆる「炎上商法」だと思う。例えばお笑い芸人の

永野が“空気”を読んで、俳優の松本大志の頬を本気で一度だけビンタをしていた

ならば番組内でウケていただけだろう。ところが永野は敢えて空気を読まず松本を

何度も本気でビンタをしたおかげで、たちまちニュースとなり結果的に大きく注目

されることになったこの「事件」が、松本が主演する舞台「クローズZERO」の

宣伝に大きく貢献したのである。だから世間の大顰蹙にもかかわらず松本は永野に

感謝しているはずだし、永野はお笑い芸人の責務を立派に果たしているはずなのだが、

相変わらずモラルとか何とかで間違っていることは絶対に許されないらしく、

多分こんなことの積み重ねでテレビは面白くなくなっていくんだね。


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「美術」の値段について

2017-10-25 00:17:57 | 美術

 上のスケッチ画は30×23センチ大で、エンパイアステートビルが黒のフェルトペン

で描かれたものである。これが競売会社ジュリアンズが19日のオークションに出され

1万6000千ドル(約180万円)で落札されたのである。

 何故この程度のスケッチ画が高値で落札されたのか? 実は作者がトランプ大統領

だからなのである。2017年10月21日付の毎日新聞夕刊によると1990年代に

トランプ氏が慈善イベントに出品したもので当時の落札価格は「100ドル以下」

だったらしい。大統領になったことで価格が160倍に高騰したのである。美術評論家

の一人はニューズウィーク誌に「細部にこだわらないトランプ氏の語り口や大きな

身ぶりが、描写の手法にも表れている」と語っているようだが、完全な悪口である。

たとえ慈善イベントであってももう少し丁寧に描けばいいとは思うのだが、

このようなやっつけ仕事でさえ高値がつく「美術」の値段とは「描いた物」よりも

「描いた者」の方が重要視されがちで斯くのようにいい加減なのである。


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『アトミック・ブロンド』

2017-10-24 19:29:09 | goo映画レビュー

原題:『Atomic Blonde』
監督:デヴィッド・リーチ
脚本:カート・ジョンスタッド
撮影:ジョナサン・セラ
出演:シャーリーズ・セロン/ジェームズ・マカヴォイ/エディ・マーサン/ジョン・グッドマン
2017年/アメリカ

成熟した「美少女ヒロイン」について

 このスタイリッシュな映像はどこかで観たことがあるなと思ったら、『エンジェル ウォーズ』(2011年)などを撮っているザック・スナイダーの作風そっくりなのであるが、これは脚本を担ったカート・ジョンスタッドが『300 〈スリーハンドレッド〉』などでスナイダー作品の脚本に参加していた影響があると思う。
 過去の名作を「サンプリング」することで上手くいった例として『猿の惑星: 聖戦記』(マット・リーヴス監督 2017年)を挙げたばかりだが、本作は「サンプリング」がアートか盗作かという議論が実際にされている。選曲に関しては文句のつけようはないし、例えば、『ストーカー』(アンドレイ・タルコフスキー監督 1979年)が上映されている劇場のシーンにおいて、その映画の暗喩としてロレーン・ブロートンが敵方に「ストーカー」のように追われていると解釈されているように見えるのではあるが、本作の最後で分かるようにブロートンは「科学者」と「作家」を翻弄する「ストーカー」と呼ばれる主人公を体現しているのである。
 しかし本作が本当に面白く見える理由はそのような理屈云々ではなく、ひとえに主人公のロレーン・ブロートンを熱演したシャーリーズ・セロンの「力業」によるものであろう。


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『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』

2017-10-23 00:15:11 | goo映画レビュー

原題:『War for the Planet of the Apes』
監督:マット・リーヴス
脚本:マット・リーヴス/マーク・ボンバック
撮影:マイケル・セレシン
出演:アンディ・サーキス/ウディ・ハレルソン/カリン・コノヴァル/テリー・ノタリー
2017年/アメリカ

「サンプリング」と「美少女」の組み合わせの妙について

 既に指摘されているように、『大脱走』(ジョン・スタージェス監督 1963年)や『地獄の黙示録』(フランシス・フォード・コッポラ監督 1979年)など過去の名作を巧みに「サンプリング」した演出に加え、クライマックスに向かうまでの怒涛の展開が素晴らしく、「猿対人間」という単純な構図ではなく人間同士、猿同士の間でも諍いが起こっていることに一筋縄ではいかないもつれた感情のリアリティーがあると思う。
 一つ気になったことはシーザーたちと行動を共にする人間の少女ノヴァの存在である。それはもちろん猿とオッサンだけしか登場しない画面では寂しいが故の「華」として登場させたのであろうが、やはり近年のハリウッド映画でブームとなっている美少女のヒロインたちの流れを汲んでいるように思う。


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