MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『覆面系ノイズ』

2017-12-31 00:40:02 | goo映画レビュー

原題:『覆面系ノイズ』
監督:三木康一郎
脚本:三木康一郎/横田理恵
撮影:板倉陽子
出演:中条あやみ/志尊淳/小関裕太/磯村勇斗/杉野遥亮/真野恵里菜/中島亜梨沙/渡辺大
2017年/日本

「覆面」で見えない深層心理について

 主人公の有栖川仁乃(アリス、ニノ)は小学生の頃は榊桃(モモ)と一緒に帰宅する仲だったが、隣に住んでいた桃はある日引っ越してしまった。そんな時に仁乃が海岸で出会ったのが、当時咽喉の病気で療養していた杠花奏(ユズ)だった。
 時は流れて高校2年生になったニノは転校先で偶然ユズと再会することになる。一方でニノはヴォーカルオーディションで既に敏腕プロデューサーとして活躍していたモモとも再会するのであるが、何故かモモはニノと会うことを避けているようで、実際にモモは書類選考でニノを落としたはずだったのだが、モモのマネージャーの久瀬月果の余計な機転で再会してしまうのである。
 その後、ニノの声を巡りユズとモモの争奪戦が展開されることになる。ユズは自身の声を失ってからニノの声を求めるようになったのだが、モモは父親の借金の返済のために音楽を作るようになり、魂を売ったことに後ろめたさを感じており、それがニノとの再会をためらわせていたのである。
 この争奪戦は6年かけて作ったユズの「Close to me(僕に近づいてきて)」とモモが作った「Find You(君を見つける)」のどちらを選ぶのかというニノの選択に任され、ニノが「in NO hurry to shout(急いで叫ぶことはない)」、通称「イノハリ」というバンドで「Close to Me」を披露することになるのだが、ストーリー全体を通してみると恋愛話に終始してしまい、ユズの病気のことやモモの家庭環境のことなどがストーリーに絡むことなくおざなりのままなので全く深みが感じられない。
 バンドメンバーの悠埜佳斗(ハルヨシ)が告白することで珠久里深桜と交際することになるのだが、その喋り方でてっきりゲイだと思っていたので驚いた。


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『勝手にふるえてろ』

2017-12-30 00:10:23 | goo映画レビュー

原題:『勝手にふるえてろ』
監督:大九明子
脚本:大九明子
撮影:中村夏葉
出演:松岡茉優/渡辺大知/石橋杏奈/北村匠海/趣里/前野朋哉/古舘寛治/片桐はいり
2017年/日本

主人公以上に理解に苦しむ演出について

 主人公で花火を扱っているおもちゃ会社の経理を担当しているОLで24歳の江藤良香が絶滅した動物をこよなく愛する理由は、24歳で処女である自分自身が現代の絶滅危惧種と捉えているからであろう。行きつけのレストランのウェートレスや仕事帰りによく出会うおじさんなど一見良香は人懐っこいように見えるのだが、後半になって全てが彼女の妄想であることが分かる。
 そんな自分の人生を変えようと積極的に幹事になって平成19年度卒業の中学校の同窓会を開き、当時想いを寄せていた一宮と再会できて、絶滅危惧種の話で大いに盛り上がるのであるが、良香の名前を知らなかった一宮に幻滅してしまうのである。
 そこで良香は同僚で良香に積極的にアタックしてくる「二」と関わるようになるのだが、同じく同僚の来留美から自分の情報を得て「マウンティング」してくる態度にブチキレて妊娠したと嘘をついて1月17日付で休職してしまう。
 一人で自宅で過ごしていたがすぐに寂しくなってしまった良香は「二」に電話をするのだが、着信拒否されており、それでも彼が勤めている営業にわざわざ電話をして呼び出す。そのような良香を理解することは難しいがそのような人がいることは理解できる。しかし分からないのは本作のラストである。原作では良香が「二」の本名である霧島の名前を呼んで終わるのだが、それは一宮が良香の名前を知らなかったことと対照をなし、霧島に対する良香の本心を暗示していたはずである。ところが本作では最後に良香が「二」に向かって(卓球のラリーの音をBGMに)「勝手にふるえてろ」と言うのである。残念ながら私にはこの発言の意図が全く分からなかった。

 ラストがどうしても気になったので、もう一度観に行った。良香は一宮が自分の名前を知らなかったことに幻滅するのであるが、そもそも良香は一宮が学校でいじめられていることに気がついておらず、一宮は良香が誰よりも一宮のことを見つめていたことに気が付いていない。つまりいくら絶滅危惧種という共通の趣味を持っていたとしてもお互いのことを理解できないという厳しい現実が描かれているのである。
 ラストは良香が胸につけていた赤い付箋が雨で濡れた霧島の服に落ちて水が沁み込んでいった後に、良香が「勝手にふるえてろ」と言うのである。雨に濡れた霧島が寒さで震えているわけでもなく、やっぱり良香の「勝手にふるえてろ」という言葉は浮いていると思った。


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『泥棒役者』

2017-12-29 00:30:55 | goo映画レビュー

原題:『泥棒役者』
監督:西田征史
脚本:西田征史
撮影:相馬大輔
出演:丸山隆平/高畑充希/宮川大輔/石橋杏奈/ユースケ・サンタマリア/片桐仁/市村正親
2017年/日本

 勘違いされることと演じることの違いについて

 どうも泥棒「役者」というタイトルに違和感がある。何故ならば主人公の大貫はじめは相手に「編集者」や「絵本作家」や「屋敷の主人」に勝手に間違われているだけで自ら演じているわけではないからである。
 絵本作家の前園俊太郎の亡き妻である美希子の心理はともかくとしても、編集長の米村真由美が俊太郎の美希子に対する気持ちを理解していながら何故『タマとミキ』の続編にこだわり、続編でなければ新しい作品を描いても出版しないと突っぱねるのか、あるいは編集者の奥江里子がみんなで新作のアイデアを出し合っている時に、自分の案が採用されてとても感激しているのであるが、それはとても帰国子女とは思えない身振りではないのか。はじめの恋人の藤岡美沙がはじめを好きになる理由も含めて本作に登場する女性たちの本心が曖昧でよく分からない。もちろん監督の、女性の理解不足が間接的にしろ清水富美加の降板につながったわけではないのだろうけれど。


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『ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~』

2017-12-28 18:59:54 | goo映画レビュー

原題:『ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~』
監督:滝田洋二郎
脚本:林民夫
撮影:大嶋良教
出演:二宮和也/西島秀俊/綾野剛/宮﨑あおい/西畑大吾/大地康雄/竹野内豊/笈田ヨシ
2017年/日本

「厳しさ」のあり方の微妙なズレについて

 2002年、「麒麟の舌」と呼ばれる絶対味覚を持つ主人公の佐々木充はその才能が却って災いして中途半端な料理を客に提供することが出来ず自分自身の店を閉店に追い込んでしまい、今では口コミで出張で客に料理を提供している。充は児童養護施設「すずらん園」で育ったのだが園長の鈴木太一に料理人になることを反対され友人の柳澤健と一緒に園を去ったために鈴木の葬儀にも顔を出さなかった。そんな充のもとに『大日本帝国食菜全席』と呼ばれるレシピ集にまつわるある依頼が来たことからストーリーが展開していく。
 ネタバレになるために詳細は省くが、一緒に暮らしている園長の鈴木が幼い頃から絶対味覚を持っていたはずの充が料理人になることに強く反対する理由が弱いと思う。さらに自分の店を潰すほどに自分が提供する料理に厳しかった充が最後に店で他の料理人に優しく振る舞うようになってしまう理由が分からず、これでは実の祖父とは逆で、社会で生きていくために妥協したととられても仕方がない。あくまでもフリーの料理人として生きていくべきではなかったのか? 「良い話」にしようとする余り物語に無理があるのだ。
 ところで本作の企画は秋元康なのであるが、秋元は「ラストアイドル」も手掛けており、どうも「ラスト」にこだわっているようである。各分野の「総まとめ」に意外と必死なのであるが、本作や「バンドワゴン」などの興行的な成績が必死さに見合っていないところが気の毒ではある。


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『私んち』

2017-12-27 22:47:57 | goo映画レビュー

 2017年12月24日の『乃木坂工事中』の「妄想アワード2017」という企画の「クリスマス胸キュン ドラマ部門」は「理想的なクリスマス」をテーマに自ら脚本・演出・主演・選曲・キャスティングをこなして作品を作るというものだったのだが、齋藤飛鳥の『私んち』という作品が興味深かった。
 「付き合って2年になる30歳手前同士の社内恋愛を妄想」は休日に家でのんびりしている齋藤飛鳥の家に同僚の彼氏(忍成修吾)が訪ねてきていつものように料理を作ってくれている。今日はクリスマスなのだが2人とも誕生日や記念日などイベント事にはまったく関心がない。
 ところが今日は料理がいつもよりも豪華で有名店のスイーツまで用意している。彼氏は普段からいろいろと、特別高価なものではないにしてもプレゼントをくれるのだが、今日貰ったプレゼントは高そうなネックレスだった。

 彼が何故そこまで張り切っているのか分からなかったのだが、他の同僚が飛鳥のことを狙っているという噂を聞いた彼氏が飛鳥を取られるのではないかと不安になり、だから今日は他の男には負けないようなクリスマスにしようと奮発したのである。しかし飛鳥はいつものようにクールなまま、「じゃあ、これからも私を喜ばしてね」と応じるだけでもらったネックレスを身に着けることもなくケースにしまってしまうのである。
 当然のことながら「かなりドライ」「あいつ何なんだよ」「響かねぇ女!」と散々の言われようで、生駒里奈も「キュンキュンしなかった」と言っていた。飛鳥本人も「やっちまった感」を出して敢えて反論することもなかったがもっと映像を注意深く見るべきであろう。
 飛鳥はプレゼントをもらう前に「美人百花」という雑誌を読んでいるのだが、彼女が開いているページは「クリスマスジュエリー おねだリスト」でネックレスが写っている。

 そこへ彼氏がプレゼントしてきたものがネックレスなのである。つまり彼氏のプレゼントは今回に限らず「実用品」ではなく飛鳥の気持ちを理解しているという「証明」のアイテムなのであり、だから飛鳥はネックレスを身に着けないのである。
 そして最後にマライア・キャリーの「All I Want For Christmas Is You(クリスマスに私が欲しいのはあなただけ)」を流すのであるが、3分の短編の中でこれだけそつなく映像をまとめ上げる齋藤飛鳥の才能は侮れないものだと思うのである。


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『先生! 、、、好きになってもいいですか?』

2017-12-26 00:32:31 | goo映画レビュー

原題:『先生! 、、、好きになってもいいですか?』
監督:三木孝浩
脚本:岡田麿里
撮影:山田康介
出演:広瀬すず/生田斗真/竜星涼/森川葵/健太郎/中村倫也/比嘉愛未/八木亜希子
2017年/日本

「間違い」の是非について

 原作は人気コミックらしいのだが、同じコミック原作の他の作品とは一線を画す作品である。この露光過多気味で原色が飛んだ渇いた映像は今風のポップとは離れて、昔のATG作品を彷彿とさせる。
 どうも主人公の島田響が通う県立南高校の世界史の教師である伊藤貢作の「手」が気になる。それは数学教師の関矢正人に言われて日が暮れても教室に残って宿題をしている響を見かけた伊藤が響に近づいてきて差し出した手が不自然だったからなのだが、思い返してみると作品冒頭で千草恵の手紙を返してもらおうと伊藤がいる職員室に行った時に伊藤が手紙を返すために響に向かって差し出す手から始まり、その後、伊藤は響に、病院でイチゴミルクの紙パックジュースや伊藤の教員住宅でお茶など出したりするたびに手を差し出すのである。だから校舎の屋上で、普段は50点台しか点数を取れていなかった世界史のテストで97点を取って伊藤に対する愛の本気度を証明した響を抱きしめてしまった伊藤の「魔が差した」という言葉はまさにそれまで規則正しかった手の動きを間違えたという意味でリアリティーを感じるのであり、ラストで卒業した響を車で迎えにきた伊藤の手がようやく響の手とつなぎ合うことで本来あるべき場所に落ち着くのである。
 ところで本作には別の意味で間違いがある。第81回入学式を経て一年後の出来事が描かれているのであるが、教室の黒板に書かれている「9月27日火曜日」や「10月3日月曜日」という日付は2016年のものである。しかし響の机の上にある卓上カレンダーは2017年のもので、明らかにどちらかが間違っているのである。この間違いは本作の内容に有効に機能していないと思う。


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『カンフー・ヨガ』

2017-12-25 20:11:15 | goo映画レビュー

原題:『功夫瑜伽(Kung Fu Yoga)』
監督:スタンリー・トン
脚本:スタンリー・トン
撮影:ホーレス・ウォン
出演:ジャッキー・チェン/ディーシャ・パターニ/アーリフ・リー/ソーヌー・スード
2017年/中国・インド

ヨガの効果で「弛緩」させられたカンフーについて

 原題でも「カンフー・ヨガ」とある通りに本作はカンフーは出てくるものの、ヨガに関しては財宝探しの際にヨガの呼吸法で長時間息を止めることができるから潜水に便利だという程度でその後は全く利用されない。だから本作の「カンフー・ヨガ」とは中国とインドの暗喩と捉えるべきであろう。
 だから冒頭からインド象が現われたり、主人公のジャックがたまたま乗った車の中にライオンがいたり、ハイエナや蛇などインドを想起させる動物が出てきて最後に黄金の仏像の周りで出演者全員で踊り出すボリウッド風の演出はまさにジャッキー・チェンが求めていたものなのかもしれないのだが、老いのせいなのか肝心のカンフーの方がおざなりで、例えば、クライマックスにおいてインドの考古学者のアスミタが目の前で敵に捕らえられて顔にナイフを突き付けられているにも関わらず、ジャックがお構いなしに敵と戦っているという緊張感の無さに驚いてしまう。カンフーとヨガの対照的な性質が仇となった感が否めない。


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『ローガン・ラッキー』

2017-12-24 00:50:09 | goo映画レビュー

原題:『Logan Lucky』
監督:スティーブン・ソダーバーグ
脚本:レベッカ・ブラント
撮影:ピーター・アンドリュース
出演:チャニング・テイタム/アダム・ドライバー/セス・マクファーレン/ライリー・キーオ
2017年/アメリカ

「幸福」になるための中庸について

 脚の怪我でフットボール選手生命を断たれ、働いていた建設会社からも足を引きずっているという理由で解雇された主人公のジミー・ローガンと、彼の弟でイラク戦争の従軍中に左腕を失い今はバーテンダーとして働いているクライド・ローガンが仲間を集めて人生の一発逆転を目指す物語は『オーシャンズ11』(2001年)を撮った監督らしく、伏線も上手く回収しておりクライムサスペンスとして悪くはないのだが、結局のところ本作のテーマは作品冒頭でジミーと娘のセイディが一緒に歌ったジョン・デンバーの「故郷に帰りたい/カントリー・ロード(Take Me Home, Country Roads)」、ではなく「Some Days Are Diamonds」の歌詞の内容に沿ったもののように思う。以下、和訳しておく。

「Some Days Are Diamonds」 John Denver 日本語訳

君がいないで僕がどのように過ごしているのか君が訊ねるならば
僕は快適に過ごしていたと言いたいし、実際に快適なんだけれども
僕たちは二人とも真実を得ることが大変であることは理解している
もしも僕が真実を言ったとしても
それが必ずしも正確ではないんだ
ダイヤモンドのように輝く日もあれば
石のようにどんよりとした日もある
時々試練が僕を見逃さないこともあるだろうし
時々冷たい風が僕の芯を凍らせるように吹く
ダイヤモンドのように輝く日もあれば
石のようにどんよりとした日もあるんだ

鏡に写る僕の顔がますます僕自身に馴染みがなくなってくる
ますます僕が想像もしなかった何者かになるような危機を感じる
ダイヤモンドのように輝く日もあれば
石のようにどんよりとした日もある
時々試練が僕を見逃さないこともあるだろうし
時々冷たい風が僕の芯を凍らせるように吹く
ダイヤモンドのように輝く日もあれば
石のようにどんよりとした日もあるんだ

ダイヤモンドのように輝く日もあれば
石のようにどんよりとした日もある
時々試練が僕を見逃さないこともあるだろうし
時々冷たい風が僕の芯を凍らせるように吹く
ダイヤモンドのように輝く日もあれば
石のようにどんよりとした日もあるんだ

Some Days Are Diamonds

 ところでジミーの娘のセイディが当初リアーナ(Rihanna)の「アンブレラ(Umbrella)」を歌う予定だったのが、父親の姿を見つけて急きょ「カントリー・ロード」を歌いだした原因は、兄弟にアンブレラとは女性のヴァギナを暗示していると言われたことも原因になっていると思う。しかし実際にそんな解釈があるのかと思って、サビの部分を和訳してみた。

「Umbrella」 Rihanna 日本語訳

太陽が輝けば私たちも一緒に輝けるだろうし
私はいつまでもここにいられて
いつまでもあなたの友だちで
私が最後まで頑張れるとあなたは誓った
いつもよりも雨が降って来た
私たちはまだ想い合えることはわかっている
あなたは私の「アンブレラ」の下に立つことができる
あなたは私の「アンブレラ」の下に立つことができる

 太陽が輝いている間は友達だけれど「雨」が降れば両想いの恋人になれると捉えればアンブレラがヴァギナ(と「スタンド」している男根)であるという解釈は成り立つように思う。

Rihanna - Umbrella (Pepsi Smash)


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『オリエント急行殺人事件』

2017-12-23 22:32:20 | goo映画レビュー

原題:『Murder on the Orient Express』
監督:ケネス・ブラナー
脚本:マイケル・グリーン
撮影:ハリス・ザンバーラウコス
出演:ケネス・ブラナー/ペネロペ・クルス/ウィレム・デフォー/ジュディ・デンチ/ジョニー・デップ
2017年/アメリカ

エンディングで流れる名曲で救われる作品について

 このようなあまりにも有名なオチを持つミステリーをシェークスピアの戯曲のように翻案することは、さすがのケネス・ブラナーでも難しかったのではないだろうか。例えば、作品冒頭で主人公のエルキュール・ポワロがオリエント急行の車内に乗り込んでから部屋まで移動するまでの長回しや、天井から撮られる殺人現場など撮影方法に意味があるのかどうか微妙であるのだが、エドワード・ラチェットが殺されるシーンなど上手いと思わせるカットもあり、演出に関する監督のブレが感じられる。
 原作を知らない人ならば1974年制作のシドニー・ルメット監督版よりも本作を勧める理由があるとするならば、有名なオチの驚きを越えて正義の意味を問うからで、ポアロの選択は必然的に賛否が分かれるであろうが、それ以外にはミシェル・ファイファー(Michelle Pfeiffer)が歌っているエンディング曲の「Never Forget」が意外と名曲だと思うからでもある。以下、和訳しておく。

「Never Forget」 Michelle Pfeiffer 日本語訳

お願い
家に来るの?
私と一緒にいてくれるの?
面白いと言って欲しい
よくわかるよと言って欲しい
私と踊ってあげると言って欲しい
私にふざけた顔で笑いかけると言って欲しい
あなたの腕で私をこの上ないほど優しく抱きしめると言って欲しい
家に来るの?
私の家に来てくれるの?
恋人よ

私たちがあなたを忘れることはあり得ない
あなたがあなたを想い続けた私たちの心からいなくなることはあり得ない
私たちに抜かりはないはず

あなたはどのような夏の太陽でも忘れないはず
冬が来る前の
11月の日暮れに私をそばに引き寄せて

あなたの願いの全てを私に教えて欲しい
あなたが何を目標に生きていくのか全て教えて欲しい
あなたが家に来る時に
あなたが私の家に来る時に
恋人よ

悲しみに満ちた日々は明日になれば全て消えているだろう
ここにいればあなたは私を頼りにできるのよ、恋人よ
しっかりとした愛と優しさの私たちはみんな準備万端で
絶対にあなたを忘れない
あなたは故郷にいるのよ

Michelle Pfeiffer - Never Forget (From "Murder on the Orient Express" Soundtrack)


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「What's Good (The Thesis)」 Lou Reed 和訳

2017-12-22 00:14:25 | 洋楽歌詞和訳

Lou Reed - "What's Good (The Thesis)" (Official Music Video)

 ユーチューブでたまたまルー・リードの「What's Good (The Thesis)」のMVを見たら

「dislike」の数字が異常に多くてどうしてなのかと思って和訳してみた。

「What's Good (The Thesis)」 Lou Reed 日本語訳

人生とはマヨネーズ風味のソーダのようだ
人生とは部屋の無い空間のようで
人生とはベーコンの上に乗せたアイスクリームのようだ
それはつまり人生とはおまえがいないようなものなんだ

人生とは永遠のようなものだが
人生は永遠に苦痛と関わることになる
今や人生は生命を失った死のようなもので
それはつまり人生とはおまえがいないようなものなんだ

人生とはポニーに向かって読まれるサンスクリット語のようなもので
俺は心の目で自分の舌で窒息しようとしているおまえを見る
このような信心を知ることが何の役にたつというのか?
俺はずっとここにいるから
何が物事を急かせているのか分かっている

内容に深みのない映像を観ることが何の役にたつのか?
コンピューター化した鼻が何の役にたつというのか?
4月の蟹座の光輝が何の役にたつというのか?
まったく何の役にもたたない

殺し合わない戦争に意味があるだろうか?
降らない雨に意味があるだろうか?
おまえを傷つけることのない病気に意味があるだろうか?
まったく何の意味もないと俺は思う

俺が今考えているこれらの思いつきが何の役にたつのか?
まったく考えないでいる方がマシにちがいない
コンクリートの感情を持った発砲スチロールの恋人
まったく何も足りていない

生活のない人生に意味があるだろうか?
吼えるこのライオンが何の役にたつのか?
おまえは人生を愛していたが
他の者たちは毎晩人生を捨てていた
これは公平ではない
まったく正しくない

何の役にたつのか?
何の意味があるというのか?
何の役にたつのか?
何の意味があるというのか?
まったく何も足りていない

何の役にたつのか?
何の意味があるというのか?
人生とは良いものだが
まったく正当ではないのだから

 副題の「The Thesis」とは「テーゼ」で、ある判断や主張を提示することだが、ここで

「おまえ」と呼ばれている人物が神であることに気が付いたクリスチャンたちが「dislike」を

押しているのである。神をも恐れぬロックの詩人として面目躍如といえるだろう。


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