MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『更年奇的な彼女』

2016-05-31 00:48:04 | goo映画レビュー

原題:『我的早更女友』 英題:『Meet Miss Anxiety』
監督:クァク・ジェヨン
脚本:クァク・ジェヨン
出演:ジョウ・シュン/トン・ダーウェイ/ジャン・ズーリン/ウォレス・チョン
2014年/中国

 プロットを的確に描き切れない映画監督について

 監督の演出意図は分からなくはない。主人公のチー・ジアを大学生の時から好意を寄せていたユアン・シャオオウにホームレスに絡まれていたところを助けてもらったチー・ジアは若年性更年期を患っていたこともありユアン・シャオオウと一緒に暮らすことになったのであるが、チー・ジアのルームメイトと関係を持っていたり、女性社長と一緒にいるところを目撃されたり、一緒に住んでいながらいかにも自分に興味が無いようにチー・ジアには思えたのものの、最後にユアン・シャオオウの想いが伝わって2人は結婚することになるという流れなのである。
 しかし観客にはユアン・シャオオウがチー・ジアが好きだということが最初の時点でバレバレで、大まかなプロットは良いのだが完成された脚本や演出が上手くいっているとは思えない。卒業後にユアン・シャオオウがチー・ジアの住んでいるアパートの近辺で座っている理由が他に考えられず、監督名がクレジットされた後に描かれる、ユアン・シャオオウの卒業式後の顛末も予想されたもので驚きがないのである。
 寧ろ本作で最も驚いたことはチー・ジア役のジョウ・シュンの吹き替えを藤原紀香が担当していたことで、私はてっきり友近がふざけ半分でしているのかと勘違いしていた。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ガルム・ウォーズ』

2016-05-30 00:05:11 | goo映画レビュー

原題:『Garm Wars: The Last Druid』
監督:押井守
脚本:押井守
撮影:ブノア・ボーリュ―
出演:メラニー・サンピエール/ランス・ヘンリクセン/ケヴィン・デュランド
2014年/カナダ・日本

「名付け得ぬ者」によってもたらされる戦争について

 原題にある「Druid」という言葉には説明を要するだろう。「ドルイド」の元々の意味は「キリスト教以前の古代のガリア(Gaul)およびケルト(Celt)族の間で信仰されていた予言と呪術を行なうドルイド族の僧」を指しており、本作においては「かつて創造主ダナンの声を伝えたとされる部族」ということを勘案するならば、空の部族のコルンバの女性飛行士であるカラと陸の部族のブリガの兵士であるスケリグと情報技術に長けていたことで辛うじて生き残ったクムタクの老人ウィドと、ドルイドの最後の生き残りであるナシャンが目指した「ドゥアル・グルンド」という聖なる森の中で見つけてしまったものとは創造主ダナンに代わる新たな創造主であり、つまるところ「キリスト」となる。
 姿を消した神の真実を探求する過程において争っていた部族の者たちが一時的にせよ結束出来たにも関わらず、新たな神を見いだしたとたんに人間たちが再び戦争を始めるという物語は皮肉が込められていて興味深いのだが、日本語吹き替え版は新しい神の名前は敢えて不明瞭にしたのであろうが、なかなかセリフが聞き取りにくい。
 その上、事件の発端となった、ブリガ族のリーダーが情報中枢にウィドとナシャンを導き入れてしまうくだりはブリガ族でなくても危険であることは分かると思う。バセットハウンドのグラや『ASSAULT GIRLS(アサルトガールズ)』(2009年)でも見られた、カラが拾うかたつむりなど押井守の作風を垣間見ることはできるが、字幕版でもう一度観る必要を感じる。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『レヴェナント:蘇えりし者』

2016-05-29 00:05:49 | goo映画レビュー

原題:『The Revenant』
監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
脚本:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ/マーク・L・スミス
撮影:エマニュエル・ルベツキ
出演:レオナルド・ディカプリオ/トム・ハーディ/ドーナル・グリーソン/ウィル・ポールター
2015年/アメリカ

「蘇えりし者」とは誰なのか?

 このような単調なストーリーで緊張感が途切れることなく観客に観せられる監督の力量は大したものだと感心してしまうのであるが、この「西部劇」の復讐譚には既視感がある。
 例えば、馬の扱い方などは『アンドレイ・ルブリョフ』(1967年)、一瞬、女性が浮遊しているシーンは『鏡』(1975年)、そして主人公のヒュー・グラスが亡くなった妻の亡霊を見るシーンは『惑星ソラリス』(1972年)と、本作はソ連の映画監督であるアンドレイ・タルコフスキーが作り出したイメージととてもよく似ており、そういう意味においてはリドリー・スコット監督作品のイメージをつなぎ合わせて撮った『テラフォーマーズ』(三池崇史監督 2016年)と制作スタイルは同じなのであるが、本作にはただ引用したという以上に「原作」を超えるクオリティーの高さを感じる。
 穿った見方をするならば、イニャリトゥ監督は、とかく眠気をもよおすタルコフスキー作品に対する「批評」として敢えてタルコフスキー監督同様に上映時間156分という長時間の本作を撮ったのではないだろうか。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『亜人 -衝突-』

2016-05-28 00:01:53 | goo映画レビュー

原題:『亜人 -衝突-』
総監督:瀬下寛之
監督:安藤裕章
出演:宮野真守/細谷佳正/福山潤/大塚芳忠/平川大輔/櫻井孝宏/洲崎綾
2016年/日本

進化する「ゾンビ映画」について

 実は今年のゴールデンウイーク前後の期間で上映されたアニメーション映画の中で最も感銘を受けた作品が『亜人』なのであるが、本作は3部作の第2弾で、物語の流れ上、前作を観なければ全く分からない点や、9月に上映される第3部を観なければストーリーも完結せず、何故か3週間限定という上映スタイルなど、内容は文句なく画のクオリティーも高いのになかなか他人には勧めにくい感じなところが残念なところである。もちろんいずれDVDで観ることが出来るようになるのではあるが、大画面で観賞するべき作品である。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ザ・シンプソンズ MOVIE』

2016-05-27 00:21:56 | goo映画レビュー

原題:『The Simpsons Movie』
監督:デヴィッド・シルヴァーマン
脚本:ジェームズ・L・ブルックス/マット・グレイニング/アル・ジーン/デイヴィッド・マーキン
    イアン・マクストーン=グレアム/ジョージ・マイヤー/マイク・リース/マイク・スカリー
    マット・セルマン/ジョン・スウォーツウェルダー/ジョン・ヴィッティ
出演:ダン・カステラネタ/ジュリー・カブナー/ナンシー・カートライト/イヤードリー・スミス
2007年/アメリカ

参加した脚本家の人数に相応しい多量のギャグについて

 ここでは内容には触れず、一度観ただけでは捉えきれないギャグをいくつか紹介しておきたい。

 リサ・シンプソンがスプリングフィールド・タウン・ホールで催した講演のタイトルの

「イライラさせる真実(An Irritating Truth)」はアル・ゴア(Al Gore)の講演のタイトル

「不都合な真実(An Inconvenient Truth)」から取られている。

 大統領はアーノルド・シュワルツェネッガー(Arnold Schwarzenegger)である。

 大統領が失職を恐れて思い出す過去の作品『おむつの精霊(Diaper Genie)』はおそらく

『ラスト・アクション・ヒーロー(Last Action Hero)』(1993年)を暗示しているであろう。

 マージ・シンプソンが縫っている「Nome Sweet Nome」というロゴは「楽しき我が家

(Home, Sweet Home)」というイングランド民謡のタイトルから取られていると思う。

因みに「Nome」とは彼らが避難した先のアラスカ州西部にある岬の名前である。

 ホーマー・シンプソンが家族を救い損ねてクレーンの鉄球で打ちつけられる場所は岩と家の間

なのだが、これはジレンマを表した表現「Between a Rock and a Hard Place」のベタな映像化である。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ズートピア』

2016-05-26 00:20:18 | goo映画レビュー

原題:『Zootopia
監督:バイロン・ハワード/リッチ・ムーア
脚本:ジャレッド・ブッシュ/フィル・ジョンストン
撮影:トーマス・ベイカー
出演:ジニファー・グッドウィン/ジェイソン・ベイトマン/イドリス・エルバ/シャキーラ
2016年/アメリカ

 偏見を克服する方法としての「芝居」について

 主人公のウサギのジュディ・ホップスが女性という立場や身体の小ささというハンディを乗り越えて警察学校を首席で卒業しながら、大柄な動物の「巣窟」である警察署で再び「駐車違反の取締り」という閑職に甘んじなければならず、しかしなおもその偏見に立ち向かう強靭な精神力を発揮するものの、そのジュディにしてもいつの間にか肉食動物と草食動物の違いに対する偏見を持っていたために混乱を招いてしまうという本作のテーマの明快さが良い。そのような偏見をどのように克服するかが本作の醍醐味となると思うが、冒頭で9歳のジュディが学芸会で披露した肉食動物と草食動物が仲良くなるという芝居を演じ、クライマックスにおいて事件の黒幕のドーン・ベルウェザーに対してジュディはニック・ワイルドを相手に再び「芝居」を演じることにより事件を解決するのである。つまり自分たちの素質をありのままに認めた上で、自分を客観的に見つめ素質の違う相手と上手く「芝居」を演じながら社会を築いていくことが生きるということなのである。
 『シュガー・ラッシュ』(2012年)のリッチ・ムーア監督と『塔の上のラプンツェル』(2010年)のバイロン・ハワード監督による本作はかなり期待して観に行ったが、いかんせんレック・イット・ラルフやラプンツェルと比較するならば主人公のウサギのジュディ・ホップスとキツネのニック・ワイルドの線が細いように感じてしまうのものの、ストーリーの展開の仕方は相変わらず素晴らしい。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『アーロと少年』

2016-05-25 00:22:59 | goo映画レビュー

原題:『The Good Dinosaur』
監督:ピーター・ソーン
脚本:メグ・レフォーヴ
出演:レイモンド・オチョア/サム・エリオット/アンナ・パキン/A.J.バックリー/ジェフリー・ライト
2015年/アメリカ

例え「良い恐竜」でさえ無理だと思う出来事について

 傑作を量産し続けているピクサー作品の新作はかなり期待値が高まっている状態であり、本作にとっては厳しい状況の中でリリースされてしまったと言える。
 6500万年前に隕石が地球に衝突することがなく、その数百万年後に「話せる」恐竜と「話せない」人間が交流するという設定は悪くはないと思うのだが、ストーリーそのものは平凡なもので、だからと言ってアーロやスポットのキャラクターが際立っているわけでもなく、ほとんど何も印象に残らない。それでも強いて印象的だったシーンを挙げるならば、クライマックスで土石流に流されたスポットをアーロが命がけで救出する場面であるのだが、恐竜だから大怪我をしながらも成しえたのか、あるいはアニメーションだから出来るということなのか定かではないとしても、ここら辺に本作の限界を見る。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)』

2016-05-24 00:25:48 | goo映画レビュー

原題:『名探偵コナン 純黒の悪夢』
監督:静野孔文
脚本:櫻井武晴
撮影:西山仁
出演:高山みなみ/林原めぐみ/池田秀一/古谷徹/天海祐希
2016年/日本

 「転がる観覧車」の扱い方の違いについて

 最初は演出ミスなのかと思ったシーンがある。記憶喪失になったキュラソーが警察病院で吉田歩美、小嶋元太、円谷光彦と一緒にオセロをして遊ぶのだが、キュラソーと元太のチームが勝ちそうだった時に、元太の不注意でオセロのコマが盤から飛んでしまい、ノーゲームとなってしまう。その時、風見裕也を含む3人の公安警察官が現れキュラソーが移送されることになる。目暮十三警部と公安警察の話し合いの後、歩美、元太、光彦の3人がテーブルを見るとコマが飛び散っていたはずのオセロゲームの盤上にはコマが元通りに整然と並べられているのである。
 ここが演出ミスだと思ったのであるが、ラストでキュラソーが「心変わり」したことを知った時、コマを元通りに並べたのはキュラソーの仕業だと思ったのである。見知らぬ自分のことを親切にしてくれて、3人と親しくなったきっかけとなる東都水族館の二輪式観覧車
の乗車時の転落事故の張本人である元太に対するお礼だったと考えるのが自然であり、なおかつ伏線と見なすべきなのである。
 ところで軸から外れて地面を滑走する観覧車のシーンなのであるが、偶然にも『ガールズ&パンツァー 劇場版』(水島努監督 2015年)においても戦闘シーンで使われていた。本作においてはもちろん水族館の来客たちの命を脅かすものであるが、『ガールズ&パンツァー』においてはあくまでも戦車と同じように武器のような扱われ方で、観覧車が転がって来たところで生徒たちが怪我をするような心配は全くなく、そこに『名探偵コナン』と『ガールズ&パンツァー』の決定的な作風の違いを感じるのである。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ガールズ&パンツァ― 劇場版』

2016-05-23 00:50:18 | goo映画レビュー

原題:『ガールズ&パンツァ― 劇場版』
監督:水島努
脚本:吉田玲子
出演:渕上舞/茅野愛衣/尾崎真実/中上育実/井口裕香/福圓美里/高橋美佳子
2015年/日本

アニメに潜む西洋コンプレックスについて

 女子高生と戦車を組み合わせて、大洗市街地戦や廃園となった遊園地を舞台にした戦闘が繰り広げられるシーンは最初の方こそ面白いと思って観ていたものの、さすがに吉田玲子の脚本だけあって物語に内容が無く、例えポール・ヴェルレーヌ(Paul Verlaine)の「秋の歌(Chanson d'automne)」が引用されていても、あるいはドイツ語、ロシア語、フィンランド語などが乱れ飛んでいても、それらの要素が必ずしも物語に奥深さをもたらすわけではない。
 ラストのオチも、大洗女子学園の戦車と大学選抜チームの戦車が遊園地で対峙していた際に、遊園地のアトラクションの一つであるクマの乗り物をきっかけに呆気なく大洗女子学園が勝利し、そのクマの乗り物は「ヴォイテク(WOITEK)」と名付けられて展示されることになるのであるが、このシリアヒグマは第二次世界大戦中にポーランド軍に所属した実在した兵隊クマで、そうなると「ボコ・ミュージアム(BOCO MUSEUM)」に展示されていたクマたちも体に包帯を巻いたものだらけで、どうやら少女たちが受けていてもおかしくない「傷」は代わりにクマが担っていたのかもしれない。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』

2016-05-22 22:40:32 | goo映画レビュー

原題:『映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』
監督:八鍬新之介
脚本:八鍬新之介
出演:水田わさび/大原めぐみ/かかずゆみ/木村昴/関智一/千秋/白石涼子
2016年/日本

大人と子供の動物を飼うことの意味の違いについて

 算数のテストで0点をとったことでママに叱られたのび太が家出をしていることをどのようにしてジャイアンやスネ夫やしずかちゃんが知ったのかよく分からなかったが、のび太のパパが家族旅行をする友人のためにハムスターを預かって世話をすることが、タイムマシンで7万年前の日本に行ったのび太が、複数の動物遺伝子アンプルを組み合わせてクローニングエッグに注入することで作ったペガとグリとドラコの3匹のペットの世話をすることのメタファーとして活きている。
 つまり大人にとっては何気ない行動が子供にとっては一大イベントと化すのであり、ここの演出は上手いと思う。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする