原題:『素敵なダイナマイトスキャンダル』
監督:冨永昌敬
脚本:冨永昌敬
撮影:月永雄太
出演:柄本佑/前田敦子/三浦透子/峯田和伸/松重豊/村上淳/尾野真千子/嶋田久作
2018年/日本
ダイナマイトで情念に変わった愛情について
1970年代から1980年代にかけての「昭和感」が上手く表現されていると思う。要するに昭和のアンダーグラウンドのカルチャーは写真家の荒木経惟とイラストレーターの横尾忠則によって成り立っていたのであり、主人公の末井昭は若者たちの「情念」を刺激することで金を稼いでいたのである。
末井昭は就職先で知り合った近松さんのイラストの才能に惚れており、牧子と結婚していながら笛子と付き合った理由は、笛子と近松さんが似ていたからであろうし、たまたまレストランで一緒にいた男性を末井が突然殴った理由は、その男が自分の父親の重吉に似ていたからだと思う。
自分の母親が浮気相手の青年とダイナマイトで心中したことが末井のコンプレックスを形成していたのではあるが、ラストを観ると母親の富子は息子たちに結核をうつさないこと、つまり自分の死体にさえ触れさせないことと後腐れがないように全てを片づけるためにダイナマイトで自爆したように見える。息子のコンプレックスとは裏腹に富子は息子想いの良い母親だったのではないだろうか。