原題:『HUMAN LOST 人間失格』
監督:木崎文智
脚本:冲方丁
出演:宮野真守/花澤香菜/櫻井孝宏/福山潤/沢城みゆき/千菅春香
2019年/日本
人間として失格することの意義について
太宰治の『人間失格』を原案に冲方丁が大胆にSFアニメーション作品に仕立て上げたもので、意外と難解であるが、時代設定が昭和111年ということで西暦にすると2036年で昭和天皇は135歳で存命となる。遺伝子操作(Genetic manipulation)、再生医療(Regeneration)、医療用ナノマシン(Medical nano-machine)、万能特効薬(Panacea)の四つの医療革命(通称GRMP)により平均限界寿命は120歳になっており、日本は無病長寿大国になっているのである。
このような世界において人間の死とは「ヒューマン・ロスト」と呼ばれ、異形の怪物「ロスト体」になり、彼らは他の健康な人間を巻き込もうとするためにパトロール隊が見まわっているのである。
主人公の大庭葉蔵は絵を描きながら「アウトサイド」で毎日を辛うじて生きているのだが、友人の竹一に誘われ「インサイド」への突入を試みるものの、阻止されたのみならず、ロスト体になった竹一を殺してしまい、それにも関わらず葉蔵はロスト体から人間に戻れる「アプリカント」だったことが分かる。
そもそも「インサイド」の「S.H.E.L.L.」と呼ばれる管理ネットワークの創設者である堀木正雄は死を忘れた人間社会は間違いであることに気がつき、ネットワークを壊そうとしているのであるが、一方で、柊美子は人間の可能性を突き詰めた理想の社会を求めている。2人の間に挟まれた葉蔵は自分を殺してロスト体になっては元の人間に戻ることを繰り返すことで社会の均衡を保とうと決心するのであるが、この「人間失格」を現実の問題としてどのように捉えればいいのか難しいところではある。
(大庭葉蔵が描いた柊美子)
(葉蔵が目撃した地獄の馬は映画『ブレードランナー』のユニコーンを想起させる。)