MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ぼくは君たちを憎まないことにした』

2023-11-30 00:56:33 | goo映画レビュー

原題:『Vous n'aurez pas ma haine』
監督:キリアン・リートホーフ
脚本:キリアン・リートホーフ/ヤン・ブラーレン/マルク・ブルーバウム/ステファニー・カルフォン
撮影:マニュエル・ダコッセ
出演:ピエール・ドゥラドンシャン/カメリア・ジョルダーナ/ゾーエ・イオリオ/トマ・ミュスタン/クリステル・コルニル/アン・アズレイ/ファリア・ラウジア
2022年/ドイツ・フランス・ベルギー

「おまえたちが僕の憎悪を手に入れることはないだろう」

 原題を忠実に訳すならば「おまえたちが僕の憎悪を手に入れることはないだろう」となり、実際に本作は主人公のアントワーヌ・レリスの妻のエリーヌがたまたま訪れたコンサート会場でテロに遭って亡くなり、その後はアントワーヌとまだ幼いメルヴィルの日常生活が淡々と映されるだけで、まるでテロなどは無く、ただエリーヌがいなくなったように感じさせ、犯人などが映されることは全くない。それはもしも犯人などが映ったら大変な生活がさらに混沌としてしまうから用心しているような感じでさえあるのだが、このような覚悟ができるかどうかはなかなか難しいと思う。
 妻のエリーヌ・レリスが作品冒頭で運転する車の中で歌っていた(と思われる)、ステレオラブの「ロ・ブーブ・オスシレーター」を和訳しておく。エリーヌを演じたカメリア・ジョルダーナはシンガーソングライターでもある。

「Lo Boob Oscillator」 Stereolab 日本語訳

上から光を放つ月は自由だと私は信じている
屋根の上を照らす
月は自由だ

信じられているよりも自由で
月はあちらこちらと揺れ動く
私たちに見えない部分は重要ではない
そのうち現れるから
月が冷たい闇に沈む時
月が溺死するような印象を与える
移ろいやすい外見によって
すぐに立ち直る
疑われるようなものがあるが
想像以上に正しい
月は自由だ

月が照り返す光で影響を受けやすく吸収する
月は屋根を照らしあちらこちらと揺れ動く
変りやすく魅了し
時々眩しいときさえある
少し起き上がろうと思いながら
頭上に上る完璧で光り輝く円盤を
こうして目にする
想像上の光景の
儚く唯一で形だけのものを
月は一度ならず強い印象を与え
恐怖をもたらし錯乱させる

月は全ての頭上にある
月は全ての頭上にある
月は全てにおいて自由だ
月は全ての頭上にある
月は全てにおいて自由だ
月は全ての頭上にある

上から光を放つ月は自由だと私は信じている
屋根の上を照らす
月は自由だ
信じられているよりも自由で
月はあちらこちらと揺れ動く
私たちに見えない部分は重要ではない
そのうち現れるから

少し抜け出そうと思いながら
頭上に上る完璧で光り輝く円盤
想像上の光景の
儚く唯一で形だけのものを
月は一度ならず強い印象を与え
恐怖をもたらし錯乱させる

月は全ての頭上にある
月は全ての頭上にある

Stereolab - Lo Boob Oscillator / Miss Modular / Mountain / Delugeoisie - Live at Le Guess Who?
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/okinawa/region/okinawa-20231117191000


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『マーベルズ』

2023-11-29 00:52:25 | goo映画レビュー

原題:『The Marvels』
監督:ニア・ダコスタ
脚本:ミーガン・マクドネル
撮影:ショーン・ボビット
出演:ブリー・ラ―ソン/テヨナ・パリス/イマン・ヴェラ―ニ/ザウイ・アシュトン/ゲイリー・ルイス/パク・ソジュン/サミュエル・L・ジャクソン
2023年/アメリカ

バングルの「威力」について

 本作の「元ネタ」は『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(Everything Everywhere All at Once)』(ダニエル・クワン/ダニエル・シャイナート共同監督 2022年)のように個人的には思う。『エブエブ』が公開されたのが2022年3月で、ニア・ダコスタが本作の監督に抜擢されたのが2022年8月だからである。
 主演3人が本人の意志に反して入れ替わるというアイデアまでは良かったと思うが、後半になってよく分からなくなってくる。例えば、ダー・ベンがカマラ・カーンからもう片方のバングルを奪って両腕にバングルを付けて、宇宙に穴を開けようとするとそのエネルギーの大きさに自身の体が耐えられず崩壊してしまうのだが、その後、カマラが両腕にバングルを付けて威力を発揮してもカマラが「壊れる」ことがないのは話が噛み合っていないように見えるのだが、『ミズ・マーベル(Ms.Marvel)』や『ワンダヴィジョン(WandaVision)』というドラマを見ていないのでよく分からない。映画がテレビドラマと連携されるとなかなか今後映画だけで楽しむのは難しくなってくる。
 宇宙に開いた穴をふさぐためにモニカ・ランボーが「反対側」に回って穴を塞ごうとするのだが、塞いでしまったら自分が出られなくなることは火を見るよりも明らかなはずなのだが、このシーンもよく分からなかった。
 しかしラストで映されるシーンを見た限りでは次回作は面白くなりそうな気はする。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/moviewalker/entertainment/moviewalker-1168039


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『SISU/シス 不死身の男』

2023-11-28 00:56:32 | goo映画レビュー

原題:『Sisu』
監督:ヤルマリ・ヘランダー
脚本:ヤルマリ・ヘランダー
撮影:チェル・ラゲルルース
出演:ヨルマ・トンミラ/アクセル・ヘニー/ジャック・ドゥーラン/ミモサ・ビッラモ/オンニ・トンミラ
2023年/フィンランド

「塩の無いおにぎり」の「塩梅」について

 前評判がとても良かったのでかなり期待して観に行ったせいなのか、それほど感動することがなかったのは、例えば本作の発展形として『ランボー』(テッド・コッチェフ監督 1982年)や『マッドマックス』(ジョージ・ミラー監督 1979年)があり、本作はそれらがまとっている「装飾」を剥ぎ取ることで「原点回帰」を目論んだとされている。しかしこれは例えるならば塩の無いおにぎりを食べるようなもので、美味しいかと訊かれれば、本来の米の味がして美味しいという人もいるだろうが、個人的には「塩」の良さを知り過ぎてしまったためなのか「美味しい」とは思えなかった。まだ実話であるならば受け入れられただろうし、理屈に合わないシーンを見逃すことにやぶさかではないものの、絞首刑のシーンはどうしても無理があるように思った。
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https://news.goo.ne.jp/article/engineweb/trend/engineweb-3349655


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『OUT』

2023-11-27 00:58:20 | goo映画レビュー

原題:『OUT』
監督:品川ヒロシ
脚本:品川ヒロシ
撮影:Yohei Tateishi
出演:倉悠貴/醍醐虎汰朗/水上恒司/與那城奨/大平祥生/金城碧海/小柳心/与田祐希/じろう/大悟/庄司智春/渡辺満里奈/杉本哲太
2023年/日本

「ハミ出す」ことの意味について

 『首』(北野武監督 2023年)を観た後に本作を観てしまうと、それが存在するかどうかはともかく、ヤンキー映画の「フォーマット」から決して逸脱しないように注意を払いながら撮っている感じがして、画面に必要なはずの躍動感を相殺してしまおうとしている演出が本末転倒のように見えてしまう。例えば、井口達也が自ら壁に頭を打ちつけておでこから流れてくる血を皆川千紘が白いハンカチで拭こうとするシーンがあるのだが、明らかに血糊だけで傷が見当たらないところなどの緩い演出も惜しいと思う。
 それでも一人だけ異彩を放っていた俳優がいて、刑事を演じていたじろうで、どのヤンキーよりも狂気を感じた。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/moviewalker/entertainment/moviewalker-1167100


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『首』

2023-11-26 00:59:20 | goo映画レビュー

原題:『首』
監督:北野武
脚本:北野武
撮影:浜田毅
出演:加瀬亮/西島秀俊/浅野忠信/大森南朋/遠藤憲一/木村祐一/中村獅童/勝村政信/寺島進/桐谷健太/六平直政/荒川良々/寛一郎/小林薫/岸部一徳/ビートたけし
2023年/日本

「壮大なちゃぶ台返し」について

 新選組を男色の視点から描いた『御法度』(大島渚監督 1999年)はあくまでも秘め事として男色を描いていたのだが、本作はもはや当時は男色など当たり前だったという前提で描かれている。それは監督の解釈というよりも「軍団」を率いる北野武の資質の問題であろうし、実際に北野監督は既に『3-4X10月』(1990年)から自ら男色を演じていたのである。
 あれだけ首にこだわり、次々と首を切り落として観客の視線を集中させておきながら、ラストシーンにおいて羽柴秀吉(ビートたけし)が「光秀が死んだかどうかが分かれば、首なんかどうでもいいんだ!」と啖呵を切って光秀の首を蹴っ飛ばす壮大なちゃぶ台返しは、近年観た映画の中でもっともきれいに決まったオチだと思う。


gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/moviewalker/entertainment/moviewalker-1167767


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『スラムドッグス』

2023-11-25 00:59:07 | goo映画レビュー

原題:『Strays』
監督:ジョシュ・グリーンバウム
脚本:ダン・ペロー
撮影:ティム・オアー
出演:ウィル・フェレル/ジェイミー・フォックス/アイラ・フィッシャー/ランドール・パーク/ブレッド・ゲルマン/ウィル・フォーテ
2023年/アメリカ

やさぐれ過ぎた主人公について

 おそらくぬいぐるみのテディベアを主人公とした『テッド』(セス・マクファーレン監督 2012年)が大ヒットして続編まで制作されたから、喋れる犬もいけるだろうと目論んで本作は制作されたと思うのだが、興行的に失敗し、批評家にも嫌われている悲惨な状況である。
 しかし排泄物も含む最初から最後まで下ネタであることを理解した上で観賞するならば決して面白くないわけではないのだが、問題なのは主演を演じた二匹がテディベアレベルで可愛いかどうかとなると疑問を禁じ得ない。脇役の二匹の方が見栄えが良いので、その二匹を超える可愛さが必要だったと思うのである。
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https://news.goo.ne.jp/article/otocoto/entertainment/otocoto-otocoto_117481


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『ゴジラ‐1.0』

2023-11-24 00:59:27 | goo映画レビュー

原題:『ゴジラ-1.0』
監督:山崎貴
脚本:山崎貴
撮影:柴崎幸三
出演:神木隆之介/浜辺美波/山田裕貴/青木崇高/吉岡秀隆/安藤サクラ/佐々木蔵之介
2023年/日本

ただでは死なないゴジラについて

 予想を遥かに超えるVFXを駆使したスペクタクルに感動してしまった。銀座を闊歩するゴジラの足元も詳細に映されるのだが画面上だけではなく、音響も素晴らしくゴジラの号叫による震撼を体感できる。終戦直後ということでソ連を刺激することを避けるためにアメリカ軍が関わらず、「民間」で対処しなければならないという設定も上手いと思うし、『ミッション : インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』(クリストファー・マッカリー監督 2023年)のトム・クルーズばりの浜辺美波の列車内のアクションシーンも良かった。


gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/encount/entertainment/encount-540051


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『おまえの罪を自白しろ』

2023-11-23 00:59:29 | goo映画レビュー

原題:『おまえの罪を自白しろ』
監督:水田伸生
脚本:久松真一
撮影:中山光一
出演:中島健人/堤真一/池田エライザ/山崎育三郎/中島歩/美波/浅利陽介/山崎一/尾美としのり/尾野真千子/平泉成/金田明夫/角野卓造
2023年/日本

どうもスッキリしない話について

 どうもストーリーの流れがスッキリしない気がする。ストーリーに直接関係の無いことが気になってしまい、例えば、自転車に乗って子供と帰宅する途中で襲われた緒方麻由美は突き飛ばされたせいで頭頂部を切ったらしく頭から出血してしまうのだが、治療した後も血が付いた白いシャツを着たままでなかなか着替えないのは何故なのかよく分からないし、時代設定は2023年7月であるにも関わらず、宇田清治郎だけが何故かガラケーを使っているのもよく分からないのだが、一般的に国会議員とはそういうものなのだろうか?
 ネタバレしてしまうが、結局、深夜に掘り出そうとしたのだから、2年間も余裕があればなるべく人目に付かない日を選んで掘り出しておけば済んだ話のような気がするのだが。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/chuspo/entertainment/chuspo-802011


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『ガールズドライブ』

2023-11-22 00:58:06 | goo映画レビュー

原題:『ガールズドライブ』
監督:宮岡太郎
脚本:井上テテ
撮影:伴徹
出演:小栗有以/山内瑞葵/倉野尾成美/山﨑空/水野勝/大川航/久保姫菜乃/近藤雄介/若林拓也/鈴木Q太郎/西丸優子/吉田ウーロン太/小手伸也
2023年/日本

「フォトジェニック」について

 残念ながらストーリーの前半はスベっていると思う。特に渕上由佳が三人の男性に一人だけ連れ去られる理由とオチは明らかにスベっている。後半になって盛り返してきてはいるが、もう少し「冒険」しても良かったように思う。
 『めがみさま』(2017年)や『恐怖人形』(2019年)で松井玲奈や小坂菜緒を主演で撮った監督だけあって、演出は悪くはないと思う。普段の性格の正反対を演じる羽目になった山内瑞葵は熱演していたし、車が都内に入って追宮玲奈が乃木坂を探すという自虐ギャグも面白かったが、何よりも目を引いたのは津川歩美を演じた山﨑空ではなかっただろうか。特別に演技が上手かったという印象はなく、とりあえず佇まいが良かったと言うしかないのだが、次回作も見てみたいと思わされた。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/getnavi/entertainment/getnavi-https_getnavi.jp_p_922015


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『若草物語』(1964年)

2023-11-21 22:59:59 | goo映画レビュー

原題:『若草物語』
監督:森永健次郎
脚本:三木克巳
撮影:松橋梅夫
出演:芦川いづみ/浅丘ルリ子/吉永小百合/和泉雅子/浜田光夫/杉山俊夫/和田浩治
1964年/日本

昭和の夫婦のプレッシャーについて

 気になるシーンを書いておきたい。次女の高村由紀にフラれて瀬戸内へ記録映像を撮るために行った東京ニュース通信社に勤めるカメラマンの矢坂次郎の後を追って飛行機で飛び立った三女の高村しずかを飛行場で見送った帰りのバスで、親の言う通りに結婚していた長女の瀬川早苗は「私、瀬川と別居してチエコと一緒に住もうかしら?」と突然言いだし、それを聞いた四女のチエコが瀬川と喧嘩でもしたのかと尋ねると「何もないわ。何もないのよ。今までかて、これからかて」と答える。「誰もかれもと同じくらい楽しうて、同じくらい悲しうて、同じくらい嬉しうて」という早苗にチエコは幸せなんだから贅沢を言うなとたしなめるのであるが、早苗の漠然とした不安は夫婦に子供がいないことが原因だと思う。父親の再婚を期に3人の妹たちが早苗のアパートに住みつくようになり、最後には由紀が結婚し、しずかが恋人を追い家を離れると、いずれいなくなるチエコを我が子のように思えて一緒に暮らしたくなったという気の迷いが一時的にでも芽生えたように見えるのである。


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