今まで、読まず嫌いしていたことを後悔しました。
めっちゃ、おもしろいやんけ!
わたしの持論に、文句なく面白い小説の条件は、ストーリーやキャラクターが魅力的なことより、書いてあること自体が面白いことであると言うのがあります。
その典型が、この本でした。
平たく言えば、えげつない内容です。
しかし、それが最も面白い小説の条件だとおもいます。
表題作「死者の奢り」は、医学部の解剖実習用の人間の死体を、アルコールプールが新しくなると言うので、古いプールから移し替える作業を行なうのです。その作業メンバーがベテラン作業員と、アルバイトの主人公の文学部学生と、女子大生の3人なのです。
芥川賞「飼育」は、撃墜された米軍機の搭乗員の黒人を捕らえて村で身柄を預かることになるのですが、子供である主人公たちは、黒人を飼うという感覚なのでした。
もう、設定だけで、おもしろいこと確実じゃないですか。
6編の短編が載っていますが、どれも濃厚な味わいで、はずれなしです。
この当たり率100%の短編集というのは、もしかしたら初めて読んだかもしれません。
作者の写真を見て、つまらなそうと思っていた自分はアホでした。