ロシア・ウクライナ戦争から、台湾有事の可能性、災害・疫病などとの戦いを冷静な視点で、軍事の専門家として分析していて、とても参考になりました。
素人は戦略を語り、玄人は兵站を語ると言いますが、この本の基本は兵站を語っていますので、完全な玄人の書いた本です。
ウクライナ侵攻時に、なぜロシアは、キーウを目指し、そして失敗したか。
キーウを目指すことは、はじめから予測されていて、その根拠は道路事情とトラックの数だったとのこと。国境に展開した部隊の補給に何台のトラックが何往復しないといけないか計算できるので、部隊が進撃できる距離がわかるのです。それを計算すると、キーウまでの距離が限界で、一気にそこを落とすことがもっとも効率が良かったと言うのです。
2014年のロシアのクリミア半島併合時には、動けなかったウクライナ軍を米国の教育部隊が入り、5年をかけてウクライナ軍を戦える軍隊に作り替えていたこともロシアの誤算でした。
そして、ギリギリの補給路を攻撃されたため、ロシア軍の進撃は停滞してしまったのです。
中国による台湾への上陸作戦は、上陸適地が少ないことと、上陸部隊に補給できる船を中国は十分に持っていないので不可能であると指摘されています。台湾への侵攻は脅しでしかなく不可能な作戦であるので、他に注力すべきだと指摘しています。
尖閣問題や、敵基地攻撃能力・災害派遣の事象についても、国際法に乗っ取った対処方などが紹介されていて、よく解りました。
子供のような主張に乗せられることなく、冷静な眼で情勢を見極めていきたいと思います。