竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

ほろほろと泣き合ふ尼や山葵漬  虚子

2017-02-07 | 虚子鑑賞
ほろほろと泣き合ふ尼や山葵漬





今回は高浜虚子の「春」10句
掲句は虚子には珍しく徘味の厚い作
膨大な作品のなかより

花衣脱ぎもかへずに芝居かな

坂の茶屋前ほとばしる春の水

裏山に藤波かかるお寺かな

ほろほろと泣き合ふ尼や山葵漬

芳草や黒き烏も濃紫

草に置いて提灯ともす蛙かな

山人の垣根づたひや桜狩

藤の茶屋女房ほめほめ馬士つどふ

里内裏老木の花もほのめきぬ

春風や闘志いだきて丘に立つ

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朧夜にくづれかゝるや浪かしら  子規

2017-02-06 | 子規鑑賞
朧夜にくづれかゝるや浪かしら







今回は「朧夜」10句
25才の掲句を採る
現代の俳句では許されそうにない奇重ねが目立つ
そんな作品が多い(丈士)

年代 俳句 分類:季語

25 朧夜にくづれかゝるや浪かしら 時候-朧夜

25 朧夜になりても久し猫の恋 時候-朧夜

25 朧夜にものくひふかす舟の中 時候-朧夜

25 朧夜はこ歯黒どぶの匂ひ哉 時候-朧夜

25 朧夜を匂ふ春風松の花 時候-朧夜

25 此頃の夜の朧さや白き花 時候-朧夜

25 このごろの夜の朧さや白椿 時候-朧夜

26 朧夜に何やらものゝ遠音哉 時候-朧夜

26 朧夜や潮来をうたふ舟の中 時候-朧夜

26 朧夜やまぼろし通ふ衣紋坂 時候-朧夜


【朧】 おぼろ
◇「朧夜」(おぼろよ) ◇「草朧」 ◇「鐘朧」 ◇「影朧」 ◇「家朧」 ◇「谷朧」 ◇「橋朧」 ◇「庭朧」 ◇「灯朧」(ひおぼろ) ◇「朧めく」

春は大気中に水分が多いので、物の姿が朦朧とかすんで見える。朧は霞の夜の現象である。ほのかなさま。薄く曇るさま。
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 陵や春まだ寒き十日月 子規

2017-02-05 | 子規鑑賞
 
陵や春まだ寒き十日月 



今回は「春寒」10句

掲句は景がよく映っていて
子規の句としては上品な気風を感じる
私はこの句を採る(丈士)

年代/俳句/分類:季語

22 春寒し風の動かす床の軸 時候-春寒し

27 陸奥を出てまだ江戸の春寒し 時候-春寒し

30 松明持ちて春寒さうな丁哉 時候-春寒し

30 鈍色の命婦の袴春寒し 時候-春寒し

30 春寒や牛粛として車泣く 時候-春寒し

30 陵や春まだ寒き十日月 時候-春寒し

31 春寒し鶯移る江の東 時候-春寒し

32 春寒き椽に乾かぬ鋳形哉 時候-春寒し

32 春寒き机の下の湯婆哉 時候-春寒し

32 春寒き手を握りたる別哉 時候-春寒し

【春寒】 はるさむ
◇「春寒し」 ◇「寒き春」 ◇「春寒」(しゅんかん) ◇「料峭」(りょうしょう)

春になっても残る寒さ。「余寒」と同じであるが、「春寒」には「余寒」ほどの寒さの余韻はない。「料峭」は春の風(東風)により肌寒い様子をいう。
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蕪村集に春立つといふ句なかりけり  子規

2017-02-04 | 子規鑑賞

蕪村集に春立つといふ句なかりけり



今日は立春
子規の「立春」を季語に求めた句を10句
現今の俳句の表意を比べるとなんとも物足りない
丈士

年代/俳句/分類:季語

26 春立て鴨の心のいそがしき 時候-立春


26雪解や春立つ一日あたゝかし 時候-立春


26 我王の二月に春の立ちにけり 時候-立春

27 春立つや昼の灯暗き山やしろ 時候-立春

28 洛陽に春立つ二月三日かな 時候-立春

30 春立つ日御柩を迎へ奉る 時候-立春

33 蕪村集に春立つといふ句なかりけり 時候-立春



【立春】 りっしゅん
◇「春立つ」 ◇「春来る」 ◇「立春大吉」(りっしゅんだいきち)

二十四節気の一。陰暦1月の節で陽暦の2月4日頃。その前日が節分。暦の上ではこの日より春となる。
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移り香や御所より下る春の宵  子規

2017-02-03 | 子規鑑賞
移り香や御所より下る春の宵





今回は「春の宵」10句
筆者としては特に好みの句は発見されなかった
艶やかさを思わせる季語だが
子規は少々曝しすぎる感があるのでは・・・
分かりすぎてしまう

年代/俳句/分類:季語

26  面白さ皆夢にせん宵の春 時候-春の宵

26 じだらくに寝たる官女や宵の春 時候-春の宵

28 移り香や御所より下る春の宵 時候-春の宵

28 春の宵小万と書きし名札あり 時候-春の宵

28 紫の灯をともしけり春の宵 時候-春の宵

29 怪談に女まじりて春の宵 時候-春の宵

29 寝よとすれば門叩く也春の宵 時候-春の宵

30 小格子や遊女と語る春の宵 時候-春の宵

32 頭痛すと先づ寝る妻や春の宵 時候-春の宵

32 亡き妻のまほろし見たり春の宵 時候-春の宵



春(三春)時候 【春の宵】 はるのよい(・・ヨヒ)
◇「春宵」(しゅんしょう) ◇「宵の春」

宵には夜といういみもあるが、俳句の季題としては春の夜に入って間もない頃の初更の気分を詠む
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立たんとす腰のつがひの冴え返る  子規

2017-02-02 | 子規鑑賞
立たんとす腰のつがひの冴え返る





子規「冴え返る」10句 26才~29才

年代/俳句/分類:季語

26 君行かばわれとゞまらば冴返る 時候-冴返る

26 菎の水さえ返る濁りかな 時候-冴返る

26 冴返るけふにはありけり何年忌 時候-冴返る

26 寝て聞けば外は冴返る風の音 時候-冴返る

26 野辺送りきのふもけふも冴え返る 時候-冴返る

28 馬の息市冴返るあした哉 時候-冴返る

28 小城下や辰の太鼓の冴え返る 時候-冴返る

28 冴え返る空に愛宕の雲寒し 時候-冴返る

29 今返す冬の発句ぞ冴えかへる 時候-冴返る

29 立たんとす腰のつがひの冴え返る 時候-冴返る

春(初春)・時候 【冴返る】 さえかえる(・・カヘル)
◇「凍返る」(いてかえる) ◇「しみ返る」 ◇「寒返る」 ◇「寒戻る」 ◇「寒戻り」

余寒がきびしいさま。春になって、いったんゆるんだ寒気が、寒波の影響でまたぶりかえすこと。

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十四五羽鶏のつれだつ春日哉 子規

2017-02-01 | 子規鑑賞



十四五羽鶏のつれだつ春日哉



今日から2月なので春の季語から「春日」を選んだ
子規の句のデータベースには膨大な俳句が納められ絵いる

掲句を発見してオヤと思われはしまいか

鶏頭の十四五本もありぬべし

の名高い句がある 1900年の句会でのものだ
掲句は26才時の作 あとの句は没前2年のものだ

句意は全くことなるが 「鶏」「十四五」にはっとしたのは私だけではあるまい

以下は「春日」10句 年代/作品/時候ー季語

22 春の日は湖一はいに霞哉 時候・天文-春日

26 浅草に一日くらす春日哉 時候・天文-春日

26 浅草に一日暮れる春日哉 時候・天文-春日

26 十四五羽鶏のつれだつ春日哉 時候・天文-春日

26 大仏のうつらうつらと春日哉 時候・天文-春日

26 苣の木に雀囀る春日哉 時候・天文-春日

26 豆腐屋の根岸にかゝる春日哉 時候・天文-春日

26 はりものゝもみ衣匂ふ春日哉 時候・天文-春日

26 春の日や鼓のひもの幾ゆるみ 時候・天文-春日

26 春の日を一日眠る子猫かな 時候・天文-春日
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