竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

ナーバスになる体脂肪春深し 福原幸江

2020-04-30 | 今日の季語


ナーバスになる体脂肪春深し 福原幸江

ナーバスは
ナーバスな状態」は「神経質な状態」という意味です。
したがって、落ち込む状態だけでなく、次の状態を表します。

晩春ともなると更衣も近く
ナーバスの意味を理解すれば句意は明解
女性ならではの句といえようか
(小林たけし)

【春深し】 はるふかし
◇「春闌」(はるたけなわ) ◇「春闌く」(はるたく) ◇「春更く」(はるふく) ◇「春深む」
花も散り、春も最中過ぎた頃を言う。夏の気配はまだ見られないが、どことなく春も過ぎたことが感じられる。

例句 作者

はんなりと稽古の袴春深し 岩佐久
失禁は仏の涙春深む 櫻本愚草
崖上の家が落ちそう春闌ける 中村里子
幕ひきの立ゐねむりや春ふかし 中村辰之丞
弘法の筆勢に春闌けにけり 山本良明
春ふかし肉親の情あらあらし 藤木清子
春深き牛舍にジョンレノンのうた 石井直子
春深くケセランパサラン増殖す 眞鍋呉夫
春深し地軸の老化はじまれり 中村浩治
春闌けし加齢の気配肩に来る 松本真津子
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濡れて重たき昭和の笠よ昭和の日 正木ゆう子

2020-04-29 | 今日の季語


濡れて重たき昭和の笠よ昭和の日 正木ゆう子

七七五の破調が句意の重さを強めている
昭和という時代
濡れて重たい この措辞が全てを語る
支えきれない重さに耐えてきた傘は
作者、日本国民の戦後の艱難辛苦を思わせる
(小林たけし)


【みどりの日】 みどりのひ
4月29日。昭和天皇逝去にともない、天皇誕生日をそのまま祝日として残し、自然を愛された昭和天皇を偲ぶ日とした。

例句 作者

和服着て身のひきしまる緑の日 酒井春青
天皇の日や少年は樹を降りず 菅原鬨也
書に倦めば水遣りに出てみどりの日 宮岡計次
傷ふかき山いくつ見てみどりの日 村沢夏風
昭和史のおほかたを生きみどりの日 千手和子
水神へ走る水音みどりの日 平井さち子
考える人は考え昭和の日 谷山花猿
途中まで数う列車や昭和の日 花房八重子
頑なに木瘤は朽ちず昭和の日 安西篤
頑なに木瘤は朽ちず昭和の日 安西篤

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竹落葉わが手をいつも倖せ逃げ 吉田未灰

2020-04-28 | 今日の季語


竹落葉わが手をいつも倖せ逃げ 吉田未灰

幸せ、倖せはめぐりあわせの事だと辞書にある
おちてくる竹の葉を受けようと
手を広げて待っている
掌に近づくとすっと逃げるように
向きを変えて地に落ちる
竹林にいて何度も何度も同じ動作をしている自分

ふと身の上を思ってみる
何度もつかみ損ねた倖せだがこうしてしっかりと生きている
そんな作者の強い意志を感じる
(小林たけし)


【竹落葉】 たけおちば
◇「竹の葉散る」 ◇「笹散る」
竹は古くから人々の生活と深く関わり合って来たが、風光の上でも欠かせない植物である。初夏に新葉が出ると古い葉が枯れ落ち、秋にはみずみずしい姿となる。

例句 作者

垣結ふや竹の落葉を払ひつゝ 尾崎紅葉
後より人の気配や竹落葉 豊田ふじを
竹落葉きりりきりりと一行詩 柴田いさを
しんかんと山閃々と竹落葉 広瀬直人
人の顔みたくなき日の竹落葉 橋 閒石
そこだけは踏ませたくない竹落葉 小林和枝(麦・華)
ひらひらと水の奈落へ竹落葉 小川湖月
竹落葉人を拒みて降るは何時 飯田蒼水
竹落葉猫の素足のうつくしく 関戸美智子
竹落葉踏む音だけの古墳みち 田村みや子
竹落葉速さのちがふ浦の舟 森野稔
雲の上歩くここちの竹落葉 田上多喜子
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育たなくなれば大人ぞ春のくれ 池田澄子

2020-04-27 | 今日の季語


育たなくなれば大人ぞ春のくれ 池田澄子

なんとも大胆な断定だろう
我が子への述懐を言いえて見事である
取り合わせの季語「春のくれ」がまた微妙な母親の感情を思わせる
育たなくなったら
はもう十分に育て上げた母親の自信だろう
春の暮 例句は多いが
こうした取り合わせには初めて遭遇した

(小林たけし)


【春の暮】 はるのくれ
春の夕暮れ。古くは暮春という意味で使われたこともあり、曖昧である。春の夕より少し遅い感じ。

例句 作者

いづかたも水行く途中春の暮 永田耕衣
入あひの鐘もきこえず春の暮 芭蕉
春の暮家路に遠き人ばかり 蕪村
春のくれ夫なき家に帰りくる 桂 信子
遠きより山かげ消ゆる春の暮 相馬遷子
傾城のうすき眉毛や春の暮 松瀬青々
病巣に朗報はなし春の暮 中原道夫
春の暮白き障子を光とし 橋本多佳子
鈴に入る玉こそよけれ春のくれ 三橋敏雄
ふる雨のおのづから春夕かな 久保田万太郎
薄紙も炎となりぬ春の暮 桂信子
蜜なめて黒瞳かがやく春の暮 桂信子
街角をけものの曲る春の暮 津沢マサ子
見えぬところに水湧き出でて春の暮 桂信子
軽みをば軽く見誤る春の暮 加藤郁乎
途方もなきものへ手をふる春の暮 恩田侑布子
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春の雪一本杉の一行詩 たけし

2020-04-26 | 入選句


春の雪一本杉の一行詩 たけし



角川俳句を購読している

加齢性黄斑変性症を病んでいるので

活字を読むのが苦手、縦横が直線に映らないので

活字はひとつづつ拾わないと読めない

そこでKINNDLEの電子書籍を活用している

自在に拡張機能があるのでなんとか読める次第だ



令和俳壇への投稿を続けているが

入選は波があってあまり芳しい成績ではない

今回、掲句が井上康明先生の「秀逸」を頂いた



投句用紙は巻末葉書に限られているので

ワイフに代筆を頼んでいるので、入選するとワイフが喜ぶのが嬉しい



選者が10人おられてそれぞれ、水仙句句 秀逸10句 佳作 72句を選んでいる

投句数ははかりしれないほどだと推測するが

推薦句、秀逸句であっても複数の選者に採られることは少ない

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逃水や利き足変えて追いかける たけし

2020-04-25 | 入選句


逃水や利き足変えて追いかける たけし


朝日新聞 栃木俳壇 石倉夏生先生の選をいただきました
私的には冒険の句でした

俳句は虚と実のはざかいを探って詠む
こんな風に句材を斜視してみなさい

この言葉が頭から離れない
掲句は少なからずそんな意識でできた句だが
成功したとの実感はまだ薄い

追いつくはずのない逃水を
利き足を変えたら違った結果が得られるだろうかとのはかない想い
求める道への遥かなる憧憬でもある
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見えぬもの追いかけてゆくしゃぼん玉 中村克子

2020-04-24 | 今日の季語


見えぬもの追いかけてゆくしゃぼん玉 中村克子

このしゃぼん玉を吹いているのは作者に相違あるまい
求道のように精進している作者の想い
深めれば深まるほど見えなくなってくる深い深淵
だからこその価値の尊さを知る
また新たな精進を誓う作者が浮かんでくる
(小林たけし)


【石鹸玉】 しゃぼんだま
石鹸水やむくろじの実を溶かし、その液を細い管の端につけて吹き、気泡を作る。日光に映じて美しい7色の光彩が現れる。春の子供の遊びである。

例句  作者

しやぼん玉夢潰えるに音のなき 金子孝子
空に出て色消ゆ焼跡のしやぼん玉 金子兜太
シャボン玉庭に宇宙の生まれけり 岡安仁義
しやぼん玉こゝろもとなくふくれけり 日野草城
しやぼん玉山手線の映り過ぐ 藤田湘子
流れつつ色を変へけり石鹸玉 松本たかし
鉄格子からでも吹けるしやぼん玉 平畑静塔
しゃぼん玉いつしかわが子遠くなる 山本静桜
石鹸玉格子もぬけず消えにけり 増田龍雨
しやぼん玉夕日を入れしまま消えぬ 加藤瑠璃子
負けた子が逆さまに立つシャボン玉 松本勇二
転た寝の只今石鹸玉のなか 大竹照子
転生の途中のやうなしやぼん玉 松下カロ
遊ばれて昭和に戻るしゃぼん玉 高橋修宏
韃靼の空まで届けしやぼん玉 水野二三夫
風のかたはら拾ひ出すしやぼん玉 伊東類
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大凧に大見栄をきる団十郎 たけし

2020-04-23 | 入選句


大凧に大見栄をきる団十郎 たけし


2016年5月23日 下野新聞俳壇 中田亮先生の選を頂きました

栃木の地方紙で購読者も多く俳壇の人気も高い
選者は二人おられて週替わりでの選になる
それぞれの選者を指定しての投稿なのだが選者を選ぶのは難しい

投句は葉書に3句を連記する
この頃は俳句ができたら構わず投句していた
数打てば当たるだろう
そんな不届きな初学時代だったが
入選すれば素直に喜んでいた
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春光や凛と墨糸寺普請 たけし

2020-04-22 | 入選句


春光や凛と墨糸寺普請 たけし

俳句歴、5年目の作品
たくさんの指南書を読み漁っていたころのもの
誰のどの本を読んでも納得して
すぐに影響を受けていた頃だった
この頃は飯田龍太に夢中だったように思う
大きな景、格調高い措辞に憧れていた

掲句は格調の高さは望めないが気に入っている作だ

2017年4月19日 産経俳壇 寺井谷子先生の選をいただきました
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春一番シャッター通りの赤ポスト たけし

2020-04-21 | 入選句



春一番シャッター通りの赤ポスト たけし

2018年4月18日 朝日新聞 栃木俳壇 石倉夏生先生の選をいただいた
もう4年も前のものだ
この頃は実景を捉えて、季語を選択するかたちが多かったように思う

宇都宮の大通り
商店は多いのだがほとんどがシャッターを閉じていて
往年の賑わいは微塵もない

そこを吹き抜ける春の一番風
さびれた街並みに昔ながらの赤い郵便ポストがあった
時代のうつろいをしみじみと感じた
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心ゆくまで老柳と空の話 鳴戸奈菜

2020-04-20 | 今日の季語


心ゆくまで老柳と空の話 鳴戸奈菜

口語の表意が直截にひびく
老柳と空の話を心ゆくまでとは
作者と柳の境遇が酷似している故であろう
空の話 見上げる空ではない
内容の無い話 どうでもよい話 だれも聞いてはくれない話
こう読み解いて来ると
決して穏やかな俳句ではなくなる
(小畑氏たけし)

柳 【子季語】
枝垂柳、糸柳、白楊、楊柳、柳の糸、川柳、遠柳
【関連季語】
柳の芽、柳絮、夏柳、柳散る、枯柳、掛柳
【解説】
柳といえば枝垂柳。春、柔らかい葉が煙るように美しいので春の季語とされる。街路や庭園、水辺などに植えられ、古くから、霊力のある木とされてきた。枝垂柳のほか、枝が上に向かって伸びる川柳などもある。

例句 作者

あおやぎの破調まるごと干してあり 吉浜青湖
あなたまかせで今日はゆれたい糸柳 神永千代子
いくたびも柳にとびつく無人駅 徳才子青良
やわらかな風に溺れて糸柳 中原えつ美
ゆつくりと時計のうてる柳かな 久保田万太郎
ワイパーの合間に透けて遠柳 浅野天一
学校の柳が髪を振り乱す 秋尾敏
廃城を柳が包み小武士の居 今井晶
時代劇橋のたもとに柳あり 山本敦子
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観音の山懐や鳥曇 松家京子

2020-04-19 | 今日の季語


観音の山懐や鳥曇 松家京子

作者は観音への参道をすすみ
観音への最後の石段を上っている
新緑に芽吹く木々の息遣いを感じる
参拝を丁寧に済ませて
上ってきた石段をふりかえると
眼下には真っ青な相模湾の
身上ぐる空には北へ帰る鳥の一団

私の大船出の実体験そのものだ
(小林たけし)


【鳥曇】 とりぐもり
◇「鳥風」 ◇「鳥雲」
秋から冬にかけて日本で越冬した渡り鳥が北へ去るころの曇り空。その頃の風を鳥風ともいう。

例句 作者

唄ひ出しさうな花束鳥ぐもり 前田典子
喫煙所の海へ向く椅子鳥曇 矢吹えり子
屋根裏の鳥曇なる司祭館 杉野一博
階段に足音たまる鳥曇 杉野一博
鳥曇りいま生きいるは定かでも 宇咲冬男
鳥曇り地球は一枚の厚紙 香坂恵依
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捨てられし田に豊穣の犬ふぐり たけし

2020-04-18 | 入選句



捨てられし田に豊穣の犬ふぐり たけし



2020/04/17 朝日新聞 栃木俳壇

石倉夏生先生の宴を頂きました



早朝、不定期だが週1回ほど今年25才になる孫が散歩につきあってくれている

自分にとってのこの1時間ほどの時間は

いろいろな意味で至福である



家族を顧みなかった長い時代

リタイアしてからの家族への慚愧と傾倒の働き



散歩のコースには捨田が散見されていて

その表情はさまざまだ

豊穣は本来収穫に冠する言葉だが

捨田の犬ふぐりの広がりを観て

抵抗なくこの言葉が浮かんだ



自分の老境とのひびきであったのかも知れないと思える
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木の芽風漆黒の膳拭き清め 桂信子

2020-04-17 | 今日の季語


木の芽風漆黒の膳拭き清め 桂信子

漆黒の膳とは何だろうか
作者は配膳を要する家業の人ではないとすれば
自宅での人寄せ、それも祝い事ではないかと想像する
開け放たれた広い厨つずきの板の間で膳をしっかり磨く姿が浮かんでくる
そこをわたる木の芽風、
祝い事は上首尾に終始するだろう
(小林たけし)


【木の芽】 このめ
◇「木の芽張る」 ◇「木の芽山」 ◇「木の芽雨」 ◇「木の芽風」 ◇「楓の芽」(かえでのめ) ◇「蔦の芽」(つたのめ)
春の木の芽の総称で、木によって遅速がある。楓の芽・桑の芽・蔦の芽など、一括して名木の芽という。きのめとも言うが、一般には山椒の芽をとくに「きのめ」という。

例句 作者

木の芽風アキレス腱をやはらかに 中山ひろ子
木の芽風フォークダンスの輪の中を 佐藤静水
木の芽風人に会ふ目の生き生きと 前田倫子

木の芽風無垢の青空分ち合い 川西茜舟女
木の芽風籬のつづく海岸線 増川*㤚
木木芽ぐむ伊和の狛犬火傷跡 安黒義郎
朴芽吹くまぼろしの相すでにもち 相葉有流
枝岐れ枝岐れして芽を吹けり 林徹
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くれなゐの水飛沫なり囀りは 石倉夏生

2020-04-16 | 今日の季語


くれなゐの水飛沫なり囀りは 石倉夏生

掲句に出会いあらためて「くれなゐ」の意をしらべると
なんとも雅な深い意味合いに感嘆した
「くれなゐ」を冠した小説、和歌などは
ほとんどが恋の様々を表意している
語感もの響きも美しい

掲句の「くれなゐの水渋木」は正に恋の騒乱なのだと分かる
作者のしかけにほとほと感心させられた一句だ
(小林たけし)


【囀】 さえずり(サヘヅリ)
◇「囀る」
春の鳴禽類の囀りをいう。地鳴きと区別して、高音を張ったり、声を長く複雑に続けて鳴いたり、色々な文句を交唱したりする鳴き方に言う。特に繁殖期における雄鳥の鳴き声をいう。



例句 作者

いしぶみの表裏に雨意の百千鳥 宇多喜代子
おおぶろしき弟のさえずりと聞くよ 末永こるり
さえずりの1/2のすりらんか 山本敏倖
さへずりや遍路の笠の花結び 吉田未灰
だんだんに囀りの木の濡れてきし 岡本高明
みほとけはいづち見給ふ百千鳥 上田五千石
サンドイッチの面積を囀りぬ 赤羽根めぐみ
一木の沈黙永し百千鳥 三橋敏雄
一樹にして森なせりけり百千鳥 山口青邨
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