竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

猫抱きし女の隠る梅雨しぐれ 流伴

2017-05-31 | 
猫抱きし女の隠る梅雨しぐれ



梅雨空がしぐれもように変わってくると
黒猫と来ぬ人を待ちわびている女は
来るかも知れない男を驚かそうと物陰に隠れる

あの足音は・・・
その期待が裏切られるのはいつものことなのだが

隠れ滝勤行僧の諷経かな



夏の山歩きはきついが
夏ならではの達成感は変えがたいものがある

屋久島で飲んだ滴りは天然の「ゐのちの水」だった
羊蹄山からの北海道の原野の眺望には思わず歓声をあげた

日光の「寂光の滝」では修行僧の勤行の諷経に感動した

ひと足にひとつの記憶浜の夏


素足で砂浜を歩くと
昼の熱い砂の感触
夜の驚くほどの冷たさ

それぞれに青春があった
やはり裸の季節 裸の時代が甘酸っぱい
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忠魂碑苔むす文字のさみだるる 流伴

2017-05-30 | 
忠魂碑苔むす文字のさみだるる



どこの町にも忠魂碑がまつられている
たいそう立派な霊園のようなものもあるが
村はずれにひっそりとしたものもある
大概はちかくに小さな公園があったりして
老人達がゲートボールなどをしている

おりからの梅雨じめり
苔むす文字を洗っている


知らぬ街背丈のばしてサングラス


サングラスをかけると人格がゆるくなる
普段よりも活発に勇気をもったりする
自分の欠点がみな隠された気分になるのだろうか

背の低い人は背丈が伸びたようなふるまいである


雨意の空もう泣いている桐の花


桐の花はなんとも雨によく似合う
空が曇ればもう泣きだしている

こんな可愛い少女がむかし居た
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常在戦場複眼四翼おにやんま 流伴

2017-05-29 | 
常在戦場複眼四翼おにやんま




鬼ヤンマを今でもときおえい見かける
子供時代を思えば
鬼ヤンマを持っていればヒーローだった

あの獰猛な顔立ちそして鋭い歯は剣のようだ
大胸筋は思い切り張っていて
複眼は八方を見逃さない
背には四枚の丈夫な翼

常在戦場 油断はない

籠枕江戸の丈夫になつてをり


籠枕して座敷にごろ寝
開け放しの縁側からはさわやかな風
小さな風鈴の調が交じる

粋に浴衣を着こなした面長の婦人が
団扇で風を送りながら私を見つめる
その顔はおもいきり優しい


若竹の疎まれがちの真直かな


若竹の成長は早い
真直ぐにひたすら天を目指す
わき目をふることもない
この真直
疎まれることが次第に多くなる

直は曲に勝つことは無いという矛盾
これも哲学だ
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万災に富士の泰然大南風 流伴

2017-05-27 | 
万災に富士の泰然大南風



富士山にのぼったのは高校生の時だった
生徒会主催で80人程の参加があった
あの時の感動は一生ものとなった

富士山の裾野を12回に行程を分けて歩いたのはほんの数年前だ
子供らや孫をともなってのドライブもあった

鍾乳洞や地滑り、噴火口のあとなど
万古万災は数限りない

何事ものみこんで泰然自若
やはり富士山は日本の一番だ


どよめくは無音の歓声川ほたる



毎年のように6月は旅行をする
結婚したのが6月だった事もあるが
夏に入る前の少しおちついた季節である

ほたるの宿もいくつか経験している
バスで団体のほたる狩もあるが

川の蛍を漫ろしながら鑑賞するのが素敵だ


梅雨曇り田に飄然の番い鴨


今日は梅雨曇りの空が重い
窓から見る田圃は
早苗田が植田にかわえいかけるところだ
これが青田になるのも時間はかからない
田圃の呼び名は一年中変化するのが面白い

田水が揺れている
なんと番いの香もではないか
珍しい
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サル目ヒト科海月に勝る才ありや 流伴

2017-05-26 | 
サル目ヒト科海月に勝る才ありや






古代の海月には骨があったとの報道があった
海月も他の生物と同様に進化をつづけて現在の形地で生息している
水族館でその優雅な舞うような動きをみていると
何もかも忘れて無が無心の状態になる
きっと海月はつねに無が無心でいるのだろう
ヒトが求めるものを海月は常に備えている

魂抜けば石の一塊霾ぐもり


墓守が途絶えると墓石は
魂祓いの読経をして粉砕される
道路の基盤の砂利の代わりになることが多いと聞いた
少子化がつづけば当然の帰結だが
なんともやりきれない
おりから空は霾ぐもり

不器用が面かんばん蟇


蟇のあの不格好なふてぶてしい顔は仮面だ
あの顔の奥には賢いしたたかな頭脳が納められている
彼らの誕生の不思議、蝌蚪の生態の不思議
子孫を絶やさない強さの不思議
不器用な面持ちは
本来この星の主の「てらい」なのかも知れぬ
あなどってはならない
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青葉風祓ひ終えたる宮土俵 流伴

2017-05-25 | 
青葉風祓ひ終えたる宮土俵




近くの神社には土俵がある
この季節
神官のお祓いが氏子の前で行われ
赤子の無病息災の儀式もある
夏本番には祭の奉納相撲もある
この土俵の前ではみな善男善女ばかりだ

七変化褒め言葉には百の耳



誉め言葉には誰もが相好をくずす
稲も草木も声をかけ誉めてやると
成長が早く花も実もよく付くといわれる
紫陽花はたくさんの耳をもっているように見える
誉め言葉にはいよいよその耳をひろげているはずだ


でで虫のオートキャンプを先駆ける


でで虫は家を背負ってどこへでも移動する
家に帰るという行動が不要なのだから
その行動はすこぶる自由である
昨今オートキャンプが盛んなようだが
ヒトはいずれ帰ることからは解放されることは無い
でで虫をまねることはできても超えることはない
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噴水の天辺にまだ忘れもの 流伴

2017-05-24 | 
噴水の天辺にまだ忘れもの



噴水の幟方はさまざまだが
思い切り高くいせいよく伸びあがって
しばし留まるような一本の柱みたいなものが好きだ
そんあ噴水に遭遇すると必ずその天辺を凝視する私がいる

そうなんです
あの天辺にたしかに忘れ物がまだあるのです

大仏の男ぶりなど白子丼


鎌倉へ行くと必ずと云ってよいほど白子丼をいただく
生のものと釜茹でを半分ずつ盛り合わせたものが良い

先日 吟行のときも食したが
連れだちの話は大仏の「男ぶり」で盛り上がっていた

風の名をひとつひろふや端居して


夕間暮れ
日が落ちていっときの涼しい風が吹き渡る
縁側に座って庭を眺める
思い出したように風鈴が小さな音をきかせてくれる

気の利いた風の音をひとつひろいたいのだが
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炎昼やスキンヘッドのミュージシャン 丈士

2017-05-23 | 

炎昼やスキンヘッドのミュージシャン







ストリートミュージシャンの記憶は傷痍軍人だった
母に手を繋がれての墓参りでよく見かけた
白い募金箱へなにがしかの硬貨を入れた記憶がある

現代のストリートミュージシャンはアーチィストだ
炎天でギターをかき鳴らして自己陶酔
観客がいるいないは気にしている風もない

つきささる日の目風の目薄衣



もっとどっきりの写真をと思ったが
慎ましく和服のうすものを採用した

日の目は夏の日差し
風の目はうすものをつきぬける風の気持ち
好奇の目はつきささっている

牧牛に呼び名のピアス雲の峰


先年の句の改作
自分なりには得心の作品だが
「だからどうした」と云われ堂
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てっぺんに汗も涙ものぼり棒 丈士

2017-05-22 | 
てっぺんに汗も涙ものぼり棒






初夏の公園
のぼり棒に抱き着いて上へ上へとよじ登ろうと
小さな子供が頑張っている
孫が同じころ天辺までの乗ったが
嬉しい涙と汗
そして下りる時の恐怖の涙と大声
昨日のように覚えている


勝鬨を上ぐ自画自賛鶏頭花


鶏頭の花はなんとも厚ぼったくて暑苦しい感じだ
声はださないが
自画自賛の勝鬨を上げ続けている
空気の読めない存在なのかもしれない

やはらかな角に一徹蝸牛


蝸牛のあの形
そして顔つきと角
あの柔らかな角に何万年と変わらない
頑固さが秘められている
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赤褌(あかふん)に輩(やつ)の幻影夏まつり 丈士

2017-05-21 | 
赤褌(あかふん)に輩(やつ)の幻影夏まつり






あとらこちらで夏祭りの様相の報道が目立ってきた
妻の弟が先日、舌癌で70歳を待たずに亡くなった

祭が大好きで全国に通用する半纏と赤褌で
全国の神輿を担いでいたい

友より弟よりここは輩(やつ)と呼びたい

片陰や托鉢僧の包も飯



鎌倉へよく出かける
季節を問わず若い修行僧や托鉢僧に行きかう
夏の昼下がり、木陰で「包み飯」をほどく托鉢僧を発見した

涙目の抑えきれずや夕蛙


涙目を抑えきれないのは蛙ではなく
家路へととぼとぼ歩く幼年期の自分
おりから蛙の声が一斉に鳴きだした
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足利学校唱和の論語風薫る 丈士

2017-05-20 | 
足利学校唱和の論語風薫る




二本最古の学校と云われる足利学校
薫風がここと良く吹き渡る庭園を散策する

風に乗って聞こえる唱和は
「論語」の一説
シノタマワク・・・

さくらんぼ二枚舌には転がらず


さくらんぼ は高級な果実になって久しい
子供や女子には
機嫌取りの手段としては外れない

二枚舌には転げない
さてどう感じて頂けようか

男唄をんなばかりが暑気払ひ


夏日、真夏日もそろそろだ
暑気払いは男たちの都県だったと思っていたが
現在では女子のほうが幅を利かしている
そこで「男唄」を渋く唸っているのだから
男の居場所はますます狭くなっている
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どこに美意識つづまりきわむ水着 丈士

2017-05-19 | 
どこに美意識つづまりきわむ水着



もう女性の水着に美意識はない
水に入ると解けたり脱げたりするので水には入らないのだとか
水着で町を歩く女性もいるのだとか

これは治安の良い平和の証明だなどと云ったりする者もいるらしい
慎ましさ こんな日本語をしならく聞いたことは無い


軒つばめ空家と知るや知らざるや


私の家の南側の家が空家になってほぼ1年ほどになる
今年も燕がやってきて軒に巣作りをしている
空家とは知る由もないのだろう

鎌首を上げ田打機の大回り


田植えがどこも終わって一面の早苗田が広がっている
今の田植えはもな機械作業だ
方向転換の時は
大きく鎌首のような前方を持ち上げて旋回する
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水ぼたる吐息ほのかに点しけり 丈士

2017-05-18 | 
水ぼたる吐息ほのかに点しけり




蛍の幼虫はなんともグロテスクで
夏の夜を有限の世界に誘ってくれるあの蛍にはつりあわない

その幼虫を「水ぼたる」と名付けた先人の詩心に脱帽する
水中にいて真夜中にはポッと吐息のような光を放つという


カーネーション乳首はふたつ母五画


カーネーション一つ
乳首はふたつ
母の字は5画



青葉風自転車担いで一両車


晩春から初夏にかけて
青春を謳歌のころは自転車でどこへでも出かけた
時には自転車ごと山間の一両車にのせてもらったこともあった
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夏の月国境のない世界落地図 丈士

2017-05-17 | 
夏の月国境のない世界落地図




対戦が終わってほぼ4半世紀
不穏な風の勢いが止まらない
目に見えない国境を
「見える化」するような動きさへある
戦後はいつのまにか戦前の様相でさへある

季語夏の月」は句意に相応しくないが
悲しんでいる夏の月があるのだから許されよ

青岬元気な晩節ままならず

晩節はいつからを云うのか
本人はその自覚はないのだが
役場から高齢者だの
後期高齢者だのとの通知が来て自覚させられる
そんなに厄介な存在なのか
ありあまる元気の使い方に難儀している

大仏にとまらぬ懺悔余花の雨


桜に酔いしれた時が過ぎると静けさや落ち着きが戻ってくる
鎌倉の大仏の半目の前に佇むと
いつしか罪を詫びている自分がいる
おりからの雨も何故かうれしい
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夏雲をみな押しのけて熱気球 丈士

2017-05-16 | 
夏雲をみな押しのけて熱気球



たおやかに夜の藤波笙に揺る

歳々に年早まるや竹の秋
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