竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

白障子ひと日を閉づる音ひとつ  流伴

2017-12-31 | 

白障子ひと日を閉づる音ひとつ



真っ白に張り替えられた障子
冬座敷の設えは凛として清しい
小さくも音立てて閉じた障子は
有無を許さぬたたずまいだ
見事な一日の終わりである



癌句発表 2015/1/15 岳38-4
音ひとつひと日を閉じし白障子

下五を上五にでぃたことで
句意が明らかになった
またこの句意では「閉ず」の新かなでは
しまらないので「閉づ」とした
旧かな ならではの毅然さが出たようだ
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両耳に喰いついてくる寒九郎

2017-12-30 | 
両耳に喰いついてくる寒九郎



毎朝6時に散歩をしていたところ
医師に「週一度くらいが丁度よい」と助言された
毎日行うよりもこれがなかなか難しい

寒風吹きすさぶなかをトライした
両耳が喰いちぎられる感覚が達成感に繋がった
家人に云えばしかられそうだ



原句発表 2015/1/15 岳38-3

両耳に食いついている寒九郎
食いついている」を「喰いついてくる」に改めた

※ 寒・寒の内・寒四郎・寒九郎
 寒の入りの小寒から、寒明けの節分までのおうおそ三十日間が寒で、これを寒の内という。年間を通じて最も寒い時期。
 寒の入りから第四日目を《寒四郎》、第九日目を《寒九郎》といい、《寒四の雨》《寒九の雨》などの言葉がある。
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風花や殉死の墓の粗造り 流伴

2017-12-29 | 
風花や殉死の墓の粗造り




日光には有名な寺社が多いが
小さな名もない寺も数多い
そんな寺社を参内するのが好きである
判じ得ない碑文に目を凝らしたり
寺社の由来をたしかめたり興味は尽きない
境内の入口、門外に粗末な墓が並んでいたりもする
殉死者1墓である
殉死者の墓は門内には祀られないきまりのようだ
そんな時に風花が散ったりすれと
なんとも無常の哀れを感ぜずにはいられない
ひとつひとつに合掌するのはいうまでもない



原句発表 2014/1/15 岳37-3

粗づくり殉死の墓に雪冠る
雪の冠った墓で十分だと思ったが
風花のほうが私の心情に近いようだ
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斎場の屋に黒点寒鴉

2017-12-28 | 
斎場の屋に黒点寒鴉



自宅の近くに斎場がある
12月はこころなしか葬式が多い
通夜式の夕暮れ
烏が何匹も屋根に集まる
死者を送るのか はたは迎えるつもりか


原句発表 2014/1/15 岳37-3   
斎場の屋に喧し冬鴉
斎場と冬鴉は近すぎるとの評価だった
改作にも斎場は動かなかった
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対岸に老の大喝福寿草  流伴

2017-12-27 | 新年
対岸に老の大喝福寿草




元気な老人がこの朝の寒風のまかをウオーキングしている
行きかう道すがら会釈の挨拶を交わす

対岸に大きな声
なじみのアサトモだ
言葉は聞き取れないがその大声の挨拶は
何かを叱っているかのようだった

原句 対岸に老人の声福寿草
発表 2013/1/15 遊牧084
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矍鑠とわが杖のあり寒四郎 流伴

2017-12-26 | 
矍鑠とわが杖のあり寒四郎





朝のウオーキングはほとんど元気な老人ばかりだ
中にはトレッキングで使用するスティックも見受ける
できることを無理せずに行う
寒い朝 交わす挨拶はなんとも矍鑠がありがたい


発表 2013/1/15 遊牧084

矍鑠の語源にある
紀元48年、後漢という王朝が支配していた中国
馬援(ばえん)光武帝の勇将
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どの道も果のありけり冬銀河  流伴

2017-12-25 | 
どの道も果のありけり冬銀河



冬の夜空は神々しくさへある
来し方を辿ってみたりする
たくさんの邂逅 そして別れ
果てしないような道に思えていたものが
思い違っていたことに気が付く
見えるはずもない冬銀河がなんとも神々しい


発表 2012/1/15 岳35-3
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声高にあの世のはなし日向ぼこ 流伴

2017-12-24 | 
声高にあの世のはなし日向ぼこ



公園の日向には
お年寄りがいつも談笑している
健康の話、若い時の思い出話、
家庭内の愚痴などさまざまだが
いつしか黄泉の国の話まで
笑い声を交えての高い声が
現在の安息を語っている

傍らには猫まで
彼らの話も「あの世の話なのかもしれない」


原句発表 2015/11/15 遊牧101

日向ぼこあの世のはなし声高に
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冬蝶の黄泉比良坂八合目  流伴

2017-12-23 | 
冬蝶の黄泉比良坂八合目




冬蝶は凍蝶として越冬するものもあるが
そのまま死ぬほうが多い
飛んでいるのか浮いているのか
死んでいるのか眠っているのか
黄泉平坂八合目
進むか戻るかは創造主に委ねるばかり


発表 12/15/2016 遊牧107

「黄泉比良坂」(よもつひらさか)とは、日本神話に登場する「場所」である。島根県(出雲)に縁の地がある。
黄泉の国への入口
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寒月光やさしい嘘の見透かさる 流伴

2017-12-22 | 
寒月光やさしい嘘の見透かさる



冬満月 冬三日月 寒月
冬空の月はなんとも美しい
寒気の中で見上げる月には
だれもが素直に善人になっている
優しさがつく嘘は見透かされるが
それを責めることはない


発表 12/15/2016 遊牧107
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一つ星白磁に盛らる鰤大根 流伴

2017-12-21 | 
一つ星白磁に盛らる鰤大根



「一つ星」は北極星のこと
「鰤大根」とぶつけてみたがやはり違和感は否めない
推敲もままならない
冬空に手酌の熱燗という至福
皿にもこだわりたい


発表 12/15/2016 遊牧107

北極星とは、こぐま座α星のこと
北斗星という星は無い、
北斗七星(おおぐま座)全体のことを言う場合と、
北極星のことを言う場合がある
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彩あればあるほど哀し帰り花  流伴

2017-12-20 | 
彩あればあるほど哀し帰り花




時節はずれの狂い花とも
咲き遅れた戻り花とも
その花数は少ないのだが興をそそられる

その色はどの種類でも概ね淡い
彩が鮮やかだとなおのこと淋しい感じなのが不思議だ


発表 2015/12/2 遊牧107
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鳩の街格子窓より冬の蝶 流伴

2017-12-19 | 
鳩の街格子窓より冬の蝶



大正から昭和初期の東向島界隈
田山花袋の墨東奇談の舞台になっていた
「鳩の街」といわれた玉ノ井という遊郭があった

現在、その面影はほとんど消えているが
客が覗いた格子窓が残っていたりする

冬の蝶は心象だ


発表 12/13/2016 岳40-2
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間合いよく係船ロープに冬鷗  流伴

2017-12-18 | 
間合いよく係船ロープに冬鷗




港の舩溜まりには
係船のロープが係船柱に巻かれている
そのロープに鷗が行儀よく
一定の間隔で停まっていた
空はいまにも雪になりそうな曇天
風も強まってきた

発表 12/13/2016 岳40-2



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鰐口に宿をうかがふ冬の蝶  流伴

2017-12-17 | 
鰐口に宿をうかがふ冬の蝶



冬の神社には
参内の人影もほとんどなく
枯草や枝を落とした木々に風が冷たい
鰐口には夜来の雨が凍っている

冬の蜂が漂うように飛んでいる
鰐口の隙間を覗いている
冬越えの安住地を物色か


発表 12/8/2016 街123
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