竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

木曽山へ流れ込みけり天の川   一茶

2016-10-31 | 一茶鑑賞
木曽山へ流れ込みけり天の川




天空を流れる天の川は、
まるで木曽山に流れ込んでいるかのように見える。〔季語〕天の川

一茶の木曽路での旅吟だがその時代の空は
現代の何倍も澄み切っていたはずだろうから
天の川の川幅も広く大きかったと思われる
川下が木曽山にかかっていたのかも知れない

夜道を旅する一茶の孤独が際立ってくる
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秋寒や行く先々は人の家   一茶

2016-10-30 | 一茶鑑賞


秋寒や行く先々は人の家

秋も深まり寒くなってきた。
しかし、私には住みつく家もなく、
行く先々はみな人の家で、
寂しさがいっそう増していく。〔季語〕秋寒

秋の深まり、旅の途中なのだろう
行けば行くほどに寂しさも深まっていく


秋寒し/秋小寒
秋の半ばを過ぎるころの寒さのこと。
特に朝夕に感じることが多い。
少し寒いという感じで本格的な寒さではない。
 
秋寒し には印象ふかい秀句が多い

日のにほひいただく秋の寒さかな  惟然 「菊の香」
秋寒し藤太が鏑ひびく時  蕪村 「蕪村句集」
秋寒し編笠着たる人の形  芭蕉 「梅郊句集」
秋寒し此頃あるる海の色  夏目漱石 「漱石全集」
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秋風に歩いて逃げる蛍かな  一茶

2016-10-29 | 一茶鑑賞


秋風に歩いて逃げる蛍かな  一茶


夏の夜を彩った蛍も、秋風が吹くころになると飛ぶ力もない。
風に追われてよろよろ逃げるように歩く姿は、何とも哀れでならない。〔季語〕秋風

蛍が歩いて逃げるとは・・・
蛍は一茶の人恋しさの比喩であろうか
秋風を季語にして秋の蛍の哀れが鮮やかだ

ゆらゆらと秋の螢の水に落つ  寺田寅彦
この句にも同じような鑑賞ができる
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仰のけに落ちて鳴きけり秋の蝉   一茶

2016-10-28 | 一茶鑑賞
仰のけに落ちて鳴きけり秋の蝉   一茶



秋の蝉も、いよいよ命を終えようとしているのか。
とまる力も失い、土の上に仰のけに落ちてジージー鳴いている。〔季語〕秋の蝉


上の句形は八番日記のもので、七番日記には、
【仰のけに寝て鳴にけり秋の蝉】(あおのけにねてなきにけりあきのせみ) とあります。

同じ句を何年もかけて推敲しているわけで、
一茶は即興で詠んでいるように見えても実際は納得するまで苦労をしているのですね
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けふからは日本の雁ぞ楽に寝よ   一茶

2016-10-27 | 一茶鑑賞

けふからは日本の雁ぞ楽に寝よ




はるばると海を渡ってきた雁よ。
今日からは日本の雁だ。安心してゆっくり寝るがよい。〔季語〕雁

青森の外ケ濱に降り立った雁を詠んだものだそうです。

長い渡りを経てやってきた雁よ、
今日からは日本の雁だ。
動物にあたたかく優しい視線を向ける一茶ならではの句ですね。
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名月をとってくれろと泣く子かな 一茶

2016-10-26 | 一茶鑑賞


名月をとってくれろと泣く子かな

名月を取ってくれとわが子が泣いてねだる。
親として、それにこたえてやれないじれったさ。
〔季語〕名月

ひとつ家に遊女も寝たり萩と月 芭蕉

この芭蕉の句との甚だしい乖離に安堵する
無理を云って困らせる吾子の可愛さが目に浮かぶ
芭蕉の覚めた感性とは大きく異なる
芭蕉よりも一茶を好む俳人は多い
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有明や浅間の霧が膳を這ふ 一茶

2016-10-25 | 一茶鑑賞


有明や浅間の霧が膳(ぜん)を這(は)ふ


夜が明けても、まだ空に月が残っている
早立ちのために食膳につくと、
浅間山の方から霧が流れてきて
膳のあたりを這っている。
〔季語〕霧

浅間山には何度も行ったが、遅くまで騒いでいて
朝食はいつも宿の人に呼ばれる有様で
この一茶の旅情にはほど遠い

俳句には不真面目は相応しくないのだと今さらのように納得する

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秋うらら背筋の伸び代たしかむる

2016-10-19 | 入選句
秋うらら背筋の伸び代たしかむる



猛暑、酷暑が彼岸すぎまで続いたが
その後は台風の連続襲来
もう異常とはいえない地球の変調のようだ
そして秋をとおりこしての寒波があったり

秋うららは貴重な一日となった
朝の散歩をしていると公園に太極拳のサークル
私も思い切り背筋をのばしてみた


入選 2016/10/19 朝日新聞 栃木俳壇 石倉夏生選
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秋日差し鑿あと深き石の蔵

2016-10-12 | 入選句
秋日差し鑿あと深き石の蔵



栃木県は大谷石の産地で県内にはその建物が多く現存する
古ければ古いほどに味わい派増す
現代ではほとんどが機械や重機を使用しての作業だが

旧い建物は全てが人力だ
石倉の壁面の細かい鑿のあとが
秋の日差しをうけて美しい


入選 2016/10/12 朝日新聞 栃木俳壇 石倉夏生選
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罪ひとつうすらふ心地赤い羽根

2016-10-10 | 入選句
罪ひとつうすらふ心地赤い羽根




人にはだれしもたくさんの過ちがある
時には思いがけずに犯している罪もある
天地の神に対しても
恥じることは数えきれない
少額の募金で救われたような心地を味わった経験はみなありそうだ

赤い羽根をみる機会が減っているが
現在は町会でまとめて募金の集金がある


入選 2016/10/10 下野新聞 速水美稲邨選
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