竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

虎落笛期限の切れた置き薬 たけし

2021-01-29 | 入選句


虎落笛期限の切れた置き薬 たけし

2021年1月29日 朝日新聞 栃木俳壇 石倉夏生先生の選をいただきました

昔といっても戦後しばらくのことの記憶だが
家々には富山の置き薬があった
その風習は現代にも残っていて
置き薬の会社がいくつかあるようだ
最近はドラッグストアが発展してきているので
家庭用の常備薬を各戸が選んで常備薬として保管していることが多い

富山の薬売りや置き薬会社は薬効期限の切れたものは回収するが
家庭の常備薬はうっかりすることが少なくない

掲句は常備薬を置き薬と捉えて
寒夜に発熱して薬箱を覗いても鱈期限切れの薬だった
おりから外は強い風、電線がうなり声をあげていた
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海をまた忘れるために葱刻む 渡辺誠一郎

2021-01-28 | 今日の季語


海をまた忘れるために葱刻む 渡辺誠一郎

この海は海神の眠る悠久の海だろうか
人それぞれに海への思いはあるのだろうgは
作者の海は悲しい憎い恨めしい海なのだ
手元の葱を一心不乱に刻む
それでもその懐旧の憎悪は鮮やかのままだ
(小林たけし)


【葱】 ねぎ
◇「ひともじ」 ◇「深葱」(ふかねぎ) ◇「根深」(ねぶか) ◇「葉葱」 ◇「葱畑」 ◇「根深引く」 ◇「葱洗ふ」 ◇「冬葱」 ◇「青葱」
ネギの原産地は不明だが、中央アジア北部の野生種が中国西部で栽培化されたとされる。日本では古くから栽培されるが、香りに癖があるところからその好悪が分かれる。しかし、朝の味噌汁や葱ぬた、薬味などに欠かすことの出来ない冬の野菜の定番である。

 例句 作者

折れてひかる葱の裸の夜明けです 山中葛子
昔から太陽はあり葱畑 桑原三郎
根深葱かざし一行詩の破片 瀧春樹
死にたしと言ひたりし手が葱刻む 加藤楸邨
泥葱の泥を比べて買いにけり 石川正幸
泥葱の白い部分にある煩悩 佐藤正賢
泥葱も階段上がつて来るなり 松林尚志

混沌の夕ぐれに浮く葱の白 三浦ミヨ子
火の国の葱の白根に落着きし 西野理郎
煮れば香る葱よりわが名疲れたり 横須賀洋子
父母未生以前青葱の夢のいろ 中村苑子
男の首絞めたり葱を作ったり 大畑等

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青臭き本の背表紙夜の秋 たけし

2021-01-27 | 入選句


青臭き本の背表紙夜の秋 たけし



角川俳句2021年2月号 令和俳壇 五十嵐英彦先生の選をいただいた

書棚には棄てきれない書籍があふれている



学生時代に夢中になったもの

ビジネスのノウハウ書

己を高めるための啓蒙の書籍



いまから思えばどれもが青臭い

青臭さというのは目的、ターゲットを

睨むと匂うもののようだ

夢中になっていた頃を懐かしいと思うのだから

枯れつつある自分を諾首するほかはない



本句の季語は少々不満でいる いずれ納得の季語を俳号したい



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晩成の意地の一願初天神 さとう野火

2021-01-25 | 今日の季語


晩成の意地の一願初天神 さとう野火

晩成の意地
この一語に作者の思いの深さを思わずにはいられない
青年期からの志が晩年になってまだ熱い
そして一願である
必ずやの成就を信じたい
(小林たけし)

【初縁日】 はつえんにち
◇「初水天宮」(はつすいてんぐう) ◇「初金比羅」(はつこんぴら) ◇「初十日」(はつとおか) ◇「初甲子」(はつきのえね) ◇「初大黒」(はつだいこく) ◇「初卯」(はつう) ◇「初愛宕」(はつあたご) ◇「初天神」(はつてんじん) ◇「初辰」(はつたつ) ◇「初妙見」(はつみょうけん) ◇「初寅」(はつとら) ◇「初弁天」(はつべんてん) ◇「初巳」(はつみ) ◇「初庚申」(はつこうしん) ◇「初帝釈」(はつたいしゃく) ◇「初亥」(はつい) ◇「初地蔵」(はつじぞう) ◇「初薬師」(はつやくし) ◇「初虚空蔵」(はつこくぞう) ◇「初閻魔」(はつえんま) ◇「十王詣」(じゅうおうまいり) ◇「初聖天」(はつしょうてん) ◇「初観音」(はつかんのん) ◇「初大師」(はつだいし) ◇「初弘法」(はつこうぼう) ◇「初不動」(はつふどう)
その年の初めに各地の神社などで開かれる縁日。「初水天宮」「初不動」「初天神」等々。

例句 作者

初観音人形焼を買ふ列に 瀧 春一
初天神妻が真綿を買ひにけり 草間時彦
下駄ひきて初金毘羅の石だたみ 村沢夏風
紅すこし初天神といひて濃く 上村占魚
正月の末の寒さや初不動 久保田万太郎
卯の札やことにゆゝしき額髪 松根東洋城
初寅や貴船へ下る小提灯 前田青雲
たわたわと降りくる鳩や初不動 山口青邨
山門の根深畑や初大師 村上鬼城
舟着きも靄の佃の初巳かな 長谷川春草
空手の子初天神に拳解く 増田直子

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粕汁や明治の文士髭ゆたか 中西夕方紀

2021-01-25 | 今日の季語


粕汁や明治の文士髭ゆたか 中西夕方紀

句意はなんとも平明だが
粕汁も文士の髭も
遠くなつかしいものになってしまっている
そんな哀惜の感覚がある
髭ゆたかな明治の文士が物知り顔で
粕汁を食している姿を想像するだけで愉快にもなる
粕汁はもう消滅季語に近いところに位置している
(小林たけし)


【粕汁】 かすじる
味噌汁に酒の粕を加えたもの。

例句 作者

粕汁にぶち斬る鮭の肋かな 石塚友二
粕汁にあたたまりゆく命あり 石川桂郎
粕汁や裏窓にある波がしら 千田一路
粕汁や蓋を浮かせて沸きたちし 富安風生
粕汁や野の風遠くわたる音 水原秋櫻子
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動(やや)もすれば鮟鱇だったかもしれぬ 長井寛

2021-01-24 | 今日の季語


動(やや)もすれば鮟鱇だったかもしれぬ 長井寛

じゃんけんで負けて蛍に生まれたの 池田澄子
に匹敵するか
澄子は女性だから蛍
作者は男性である
じゃんけんの勝負はともかく
「ややもすれば」が言いえて妙だ
ややもすれば人が鮟鱇に食われるのだ
(小林たけし)



鮟鱇】 あんこう(・・カウ)
日本周辺の大陸棚に分布する深海魚。体長は30~150cm。つかみどころのない粘液質の大きな体は、「吊るし切り」でさばかれる。身よりも内蔵が美味で、とも・ぬの・肝・水袋・えら・柳肉・皮を「鮟鱇の七つ道具」という。なかでも肝臓の「あんきも」は珍重される。主にちり鍋で食べる鮟鱇鍋は冬の鍋料理の代表格。

例句 作者

取り出せし鮟鱇の肝さくら色 吉川遊壺
吊されし鮟鱇何か着せてやれ 鈴木鷹夫
吊されてより鮟鱇の面がまへ 大野崇文
鮟鱇もわが身の業も煮ゆるかな 久保田万太郎
鮟鱇の骨まで凍ててぶちきらる 加藤楸邨
鮟鱇の津浪を起しそうな口 八牧美喜子
鮟鱇の愚にして咎はなかりけり 村上鬼城
鮟鱇の渾沌たるを吊しけり 太田寛郎
鮟鱇の身も世もあらず吊るされし 矢倉澄子
吊鮟鱇末期の水を腹に溜め 青木つね子
鮟鱇のその次の世も鮟鱇か 遠藤若狭男
鮟鱇の肝に箸入れ雪来るか 林 佑子
鮟鱇の口の中なる黒き海 服部早苗
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もたれあう敗残兵のごと枯蓮 たけし

2021-01-22 | 入選句



もたれあう敗残兵のごと枯蓮 たけし

朝日新聞 栃木俳壇 石倉夏生先生の選をいただきました
今年から新聞俳壇ぼ投句はこの俳壇だけにしました
全国紙の俳壇の選者の選を全員から一度ならず頂いたこともあって
掲載日に一喜一憂することから解放することにしました
此方の俳壇は選者とも親交があり
句会をともにする知人も多いので消息欄の様相もあるので継続している

掲句は枯れの蓮のたたずまいを詠んだもの
夕暮れ、逆光の中の黒い蓮の茎、破れた葉のうらぶれた様子が
敗残の兵に重なってみえた
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氷りつつ西日の粒子かくれなし 松澤昭

2021-01-21 | 今日の季語


氷りつつ西日の粒子かくれなし 松澤昭

冬落暉の速さに早々と家路につきたいが
冷たい空気が速度を速めておそってくる
くれなんとする西の空
そこからの光には氷の粒子がおびただしく発せられているに相違ない
(小林たけし)

【凍る】 こおる(コホル)
◇「氷る」 ◇「冱てる」(いてる) ◇「凍つ」(いつ) ◇「冱つる」(いつ) ◇「冱つ」(いつ) ◇「凍む」(しむ)
本来は、水分などが寒気にあって凝結することをいうが、季語としての「凍る」はもっと広い寒気の感じとして用いられることが多い。月凍つ、風凍つ、嶽凍つ、鐘凍つ、鼻凍つ、凍晴、凍曇など。「冱てる」は凍ると同意。寒気にあって水分などが凝結すること。様々な用例があるが、語感や見た目による季語の斡旋にも意を払いたい。「凍む」は、こおりつく、寒さでちぢみ上がるという意味だが、転じて身がひきしまることにも用いられる。「凍る」よりも自分自身に引きつけた、より感覚的な季語。

例句 作者

すぐ氷る木賊(とくさ)の前のうすき水 宇佐美魚目
傘を刺す地の茫々と氷る前 松澤昭
朴大樹氷りついたる影となれ 松澤昭
漣に九州氷る舌ざはり 松澤昭
凍らんとするしづけさを星流れ 野見山朱鳥
蒲団まで凍てし固さの狩の宿 檜 紀代
夕凍みの聳ゆる暗さ甲斐の国 廣瀬直人
ねむるべしかの沼もいまはこほりをらむ 木下夕爾
氷る夜の文殊に燭をたてまつる 川端茅舎
夕凍みや目白のひそむ裏の畑 飴山 實
夕凍みの人去らしめる轍かな 鈴木慶子
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かいつぶりさびしくなればくぐりけり 日野草城

2021-01-19 | 今日の季語


かいつぶりさびしくなればくぐりけり 日野草城


鳰の湖沼での生体をみている作者
ふいと水に潜るさまをみて
餌をみつけての潜水ではなく
さびしくなって耐えられずに姿を消したのだと理解する
実は作者がさびしさにうちひしがれているのだろう
(小林たけし)


【鳰】 かいつぶり
◇「鳰」(にお) ◇「かいつむり」 ◇「にお」 ◇「におどり」
もっぱら湖沼や川に浮かぶ小さな鳥。尾はほとんど退化し、体は丸く、首はやや長い。潜水が得意。昔は、淡海の湖(琵琶湖)に多く棲息したと言う。留鳥で1年中見られるが、水鳥として冬の季語に入る。ルルルルという寒そうな鳴声も冬の印象を付加する。

例句 作者

鳰の声夕づく湖の衰へぬ 角川源義
鳰の子が親の水輪の中にゐる 水原秋櫻子
鳰二つ対ひあひゐてなくなりぬ 後藤夜半
淡海いまも信心の国かいつむり 森 澄雄
鳰がゐて鳰の海とは昔より 高浜虚子
息ながく潜きさびしき鳰ならむ 西嶋あさ子
さざなみのところどころのかいつむり 中村わさび
かいつぶりさびしくなればくゞりけり 日野草城
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をちこちの薄暮寒気に洗はるる 松澤昭

2021-01-18 | 今日の季語


をちこちの薄暮寒気に洗はるる 松澤昭

暮れ合いの薄暮である
作者はきっと歩いているのだろう
冬の日暮れは早い
日暮れと共に肩をすぼめるように寒気がおそってくる
変わる街並、そのどこもが寒気に洗われて冷たい色に変わった
(小林たけし)


寒し】 さむし
◇「寒さ」 ◇「寒気」 ◇「寒冷」
漠然と、寒いこと、またその程度を言い、寒き朝、寒き夜などと用いられる感覚的な冬の季語。しかし、「寒」の字を付した熟語は秋・春にも多く、さらに転じて貧しさ、賤しさを現すこともある。用例には「寒さかな」を座五に据えたものが多い。


俳句           作者名

ある夜月に富士大形の寒さかな 飯田蛇笏
くれなゐの色を見てゐる寒さかな 細見綾子
てのひらに群盗伝の寒いかな 松澤昭
ひかり降る寒さへ犀の口ひらく 岡田一実
ふろしきのなかの近江の寒さかな 松澤昭
まのあたりみちくる汐の寒さかな 久保田万太郎
まのあたり地かげりゆく寒さかな 八木絵馬
ローソクの一本ふえし寒さかな 国兼よし子
三面鏡の一面鬼女となる寒さ ましお湖
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かまくらや小声で点す絵ろうそく(丈子)

2021-01-16 | 


現代俳句協会の第6回インタ^ネット句会

229人 724句 がえんとりーのマンモス句会
前回は締切日を失念して参加できなかった
今回はホントカという信じられない結果だった
10点句は総合3位タイ
7点句は総合15位タイ

半泣きの子に大泣きの雪ふぁるま
は大量の俳句の中から見いだせなかった、きっと⓪点句だったと思う
それにしてもこいつは春から縁起が良い

10点
特:中村テツ
特:岩本夏柿
並:健央介
並:せいち
並:くんせい
並:早紅羅
並:羽夢
並:ふぉとんはるか
[No.1] かまくらや小声で点す絵ろうそく(丈子)
【選評】
ほのぼのとしてそして温かみを感じる。(せいち)
いつもの年なら賑やかなのでしょうか 治まるといいねコロナ(早紅羅)
温かく懐かしく鮮やかなイメージです。(ふぉとんはるか)
景がはっきり見えて来ます。(岩本夏柿)

7点特:桜井水
特:諸葛孔明
並:みづき美郷
並:本町ゑみ
並:たいぞう
[No.683]  聖堂は島の日時計福寿草(丈子)
【選評】
俯瞰されたような光景に福寿草の取り合わせ、うまい句だと思う。(たいぞう)
長崎をイメージした。長い歴史を知る聖堂に、今は、平和で幸せな時間が流れている喜びを福寿草が象徴している。(みづき美郷)
コロナ禍の中、ほっとする一句(本町ゑみ)
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鰭酒や寡黙な父のよく喋る たけし

2021-01-15 | 入選句
鰭酒や寡黙な父のよく喋る たけし





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今年はじめての朝日新聞栃木俳壇で掲句が入選しました

同時に昨年度の年間十傑の発表があり

<strong>再会にはねあがる語尾葛ざくた

 が選ばれていました

俳句を始めて今年で10年目になります



晩学に小さな応え冬いちご



こんな句も作りましたが

今日の気持ちの投影のようです
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不器用に生きて一日の足袋洗ふ 鈴木萩乃

2021-01-14 | 今日の季語


不器用に生きて一日の足袋洗ふ 鈴木萩乃

毎日が同じことの繰り返し
不器用に生きてきた来し方を
宜うような沁みじみとした読後感がある
この一日をつみいで足袋を洗っている
(小林たけし)

【足袋】 たび
和服着用時に防寒用に足を包むもの。鎌倉時代は皮製、江戸中期辺りより木綿製の足袋が作られた。現在はナイロン製などもある。元来、着用しないのが礼であったが、後に礼装にも用いられるようになった。常には男性用は紺、女性用は白が一般的だが、礼装用は男女とも白。

例句 作者

足袋かさね穿いて死神よせつけず 富田潮児
千足袋を飛ばせし湖の深さかな 前田普羅
白足袋を皺無く履きて人嫌ふ 岡本 眸
けふもはく娑婆苦の足袋のしろかりき 飯田蛇笏
悪役となる足袋きつき控室 北 光星
脱ぎすてし足袋の白さに雪降り出す 内藤吐天
足袋ぬいでそろへて明日をたのみとす 細見綾子
亡き師恋し片足立ちて足袋履けば 肥田埜勝美
足袋つぐやノラともならず教師妻 杉田久女
硝子戸の中の幸福足袋の裏 細見綾子
いづれともなきところにて足袋を穿く 阿部青鞋
つんと立つ足袋のつま先世阿弥の忌 吉川明子
もう逢へぬ人の白足袋眼裏に 軽部美喜枝
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宙吊りにわが手袋と鵠と 宇多喜代子

2021-01-13 | 今日の季語


宙吊りにわが手袋と鵠と 宇多喜代子


鵠は白鳥ともコウノトリとも
それと作者の手袋が宙吊になっているらしい
手袋が鳥に咥えられているぼだろうか
ちょっと難解
(小林たけし)


【手袋】 てぶくろ
◇「手套」(しゅとう) ◇「マッフ」 ◇「マフ」
手や指を寒さから守るもの。毛糸で編んだものが主流だが、皮革も好まれる。「マッフ」は両側から手を入れて暖める円筒形のもので、小物入れを兼ねたものもあるが、現在ではほとんど使用されない。

例句 作者

左右なき手袋こそは哀しかり 山﨑十生
左手の手袋がまた汚れている 近恵
手袋が立っているなり犬死あり 谷山花猿
手袋とるや指輪の玉のうすぐもり 竹下しづの女
手袋にかくれて数えきれぬ指 渋川京子
手袋に五指を分かちて意を決す 桂信子
手袋に故郷の山河嵌めて恋 鈴木竜骨
手袋に閉じ込めている感情線 中里良
手袋の五指恍惚と広げおく 対馬康子
手袋の片一方に難がある 田中朋子
手袋の過去を電車に忘れけり 村山久子
手袋や東京駅に棲むこだま 市川葉

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鰭酒にさすらひ人の如く酔ひ 五所平之助

2021-01-12 | 今日の季語


鰭酒にさすらひ人の如く酔ひ 五所平之助


さすらひ人の如く酔う
たのしく賑やかな酒席ではない
旅の途中の小さな宿で
思いがけなくふるまわれた鰭酒か
何も語らず、何も聞かず
ただ気持ちの良い酔い心地が感じられる
(小林たけし)

鰭酒】 ひれざけ
◇「身酒」(みざけ)
河豚の鰭を焦がすほどにあぶり、熱燗酒に入れたもの。蓋をして数分おき、火でアルコール分を飛ばしてから飲む。「身酒」は鰭ではなく河豚の身を入れたもの。

例句 作者

鰭酒も春待つ月も琥珀色 水原秋櫻子
ひれ酒にすこしみだれし女かな 小絲源太郎
鰭酒の密談めける一隅よ 永方裕子
鰭酒や海へ出てゆく夜の雲 斎藤梅子
鰭酒や逢へば昔の物語 高浜年尾
鰭酒や身ぬちにすこし無頼の血 渡辺文雄
鰭酒に憂き世の命玩ぶ 亀山幽石
鰭酒やころり往生文句なし 三枝隕水
鰭酒や暗夜に星のこぼるる音 北村益夫
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