狐目の縄文ヴィーナスとゐるおぼろ
茅野市の 文化財課 尖石縄文考古館 を
訪ねたのは10年ほど前の春だった
ローマのあの肉感的なヴィーナス異常に肉感的だが
いかにも日本的に香しくその違いに驚愕だった
眺めているうちになんとも暖かい安楽気持ちにつつまれてくる
その深い慈愛満ちたし眼差しは
千古に通じる真闇を見てきた
千古を通じてヴィーナスには
その狐目に映ったものはみなうつろにおぼろに過ぎ去った
一時間程の見学だったが他に見学者もいないこともあって
ヴィーナスとの対面は
悠久の時空を感じさせた
この気分こそ「おぼろ」に違いないと納得した
初案のまま7 2017/3/20
【朧】 おぼろ
◇「朧夜」(おぼろよ) ◇「草朧」 ◇「鐘朧」 ◇「影朧」 ◇「家朧」 ◇「谷朧」 ◇「橋朧」 ◇「庭朧」 ◇「灯朧」(ひおぼろ) ◇「朧めく」
春は大気中に水分が多いので、物の姿が朦朧とかすんで見える。朧は霞の夜の現象である。ほのかなさま。薄く曇るさま。
例句 作者
葛の桶朧の生れゐるところ 長谷川 櫂
嫁といふ不思議な人とゐておぼろ 清水美代子
おぼろ夜の昔はありし箱まくら 能村登四郎
おぼろ夜のうどんにきつねたぬきかな 木田千女
ふふみては酒の名を問ふおぼろかな 吉野義子
草朧九郎判官主従かな 岸田雨童
灯ともせば外の面影なき朧かな 富田木歩
自らを緊めて朧の壺の音 河合凱夫
朧夜や殺して見ろといふ声も 高浜虚子
朧夜の蛇屋の前を通りける 山口青邨