竹とんぼ

先達の秀句を味わいながら
自得の一句を求めて多作多捨です
古希すぎの晩学で楽しみながらの遅々緩歩です

「売切御免」蕎麦に昼酒蕗の薹 たけし

2018-04-30 | 
「売切御免」蕎麦に昼酒蕗の薹




馴染みの蕎麦屋に見慣れた貼紙
「売切れ御免 蕗の薹あります」
毎年、春を告げる蕗の薹の天婦羅を提供する
十割蕎麦をたのんで
この天婦羅で昼酒の至福を味あう
ことになるのも毎年の決まりだ

初案 2018/3/8
「売切御免」蕎麦を待つ間に蕗の薹
待つ間はいらない
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奇書悪書ルーペ片手に春燈下 

2018-04-29 | 
奇書悪書ルーペ片手に春燈下 




終活なる言葉は他人事だと思っていたが
書棚には家人に見せられない書物が少なからずある

妻には許されるとしても
子供や孫には知られたくない

少しばかりの矜持と尊厳が氷解する
始末しようとするが
ページをめくりだして捗らない

初案 2017/3/14 
春燈下ルーペ片手に奇書悪書
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葉脈の陽の突き通る春紅葉 たけし

2018-04-28 | 
葉脈の陽の突き通る春紅葉




春、新緑の紅葉が美しい
私は錦秋の山よりもこの新緑を好む
若葉の初々しい葉脈を
春光が浮き上がらせる
見上げると折り重なった何枚もの葉が
濃く薄く影なしていて時間が止まる


初案 2014/4/15
濃く薄く日をかかえおり春もみじ
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自分史の戦中戦後山桜 たけし

2018-04-27 | 
自分史の戦中戦後山桜




春宵は人をやさしくするようだ
読み止しの本を整理したり
旧い写真を探してみたり
昔の日記を眺めたりする

小学校でのあの脱脂粉乳のミルクとコッペパン
街中で唄う傷痍軍人

自分史のなかはまだまだ戦後が克明だ
最近のきな臭さが気がかりだ

社案 2015/4/15
自分史の戦前戦後春燈下
季語を工夫し 戦前を戦中(昭和18年生)に正しく改めた
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サンパンの吃水線に春の潮 たけし

2018-04-24 | 
サンパンの吃水線に春の潮




サンパンは沖に停泊の船に
乗組員や物資を運搬する小さな舟だ
一昔前までは横浜港の埠頭にたくさんあった
岸からサンパンへは頼りない板が渡されていて
そこを荷物を担いだ荷役妊婦がひょうひょうと渡る

揺れる船につれて喫水線は定まらない

子供心に感動と憧れを覚えて見とれていた
時に気さくなニンプが乗せてくれたりもしたくれた


発表 2016/12/26
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春の雲心変わりの時効とも  たけし

2018-04-23 | 

春の雲心変わりの時効とも






真っ青な空に真っ白な雲が浮かんでいる
ほとんど形を変えずに
少しずつ動いているようだ

脳裏に残る来し方の残痕を
やさしく繕ってくれるようだ

心変わりも許されそうだ

初案 2016/2/11
春の雲心変わりも許しさう
時効を加えてみた
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空耳の遠く近くに春の風邪  たけし

2018-04-22 | 
空耳の遠く近くに春の風邪



春先の寒暖の差は大きく
寝込むほどではないものの
風邪気味の人は多く
私などはこの期間中ほとんど風邪をひいている

神経の異常な過敏さだろうか
空耳に反応して
家人にいつも呆れられる(笑)

2018/4/22
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春の雨ささず終ひのをんな傘 たけし

2018-04-21 | 
春の雨ささず終ひのをんな傘




別れ際にふり出した雨
差し出された傘を借りて歩き出す

濡れながら傘は開かないで小走りする
ついにささないままの傘
返すための再会はない

発表 2015/3/15
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春の雨一樹の仮宿逸れ鳥 たけし

2018-04-20 | 

春の雨一樹の仮宿逸れ鳥



北へ帰る鳥の群
なかには逸れる鳥もいるという
残り鴨などともいうらしい

気まぐれな春の天候
春雷とゲリラ豪雨に行く手を阻まれた
逸れ鳥が木立に潜んでいるような



初案 2013/4/15
春の雨一葉をゆらし逸れ鳥

一葉では身を護れない
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春炬燵幼きころの雨の音  たけし

2018-04-19 | 
春炬燵幼きころの雨の音




炬燵が我が家から姿を消したのはいつだったか
知人宅を訪ねても炬燵に招かれることはなくなっや

炬燵に入ると誰もが家人のようになる
心身が文字どうり温まる

春の炬燵にまどろんでいると
サワサワと雨の音
耳に残っている幼少期の雨音に変わらない



初案 2014/2/15

雨だれに齢さかのぼる春炬燵
齢さかのぼるが散文的だった
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春北風やまたもや届く訃の報せ たけし

2018-04-18 | 
春北風やまたもや届く訃の報せ




年々郵便物が少なくなってくる
高齢者向けの販促物も
購入を抑えていると減ってきた

ポストは新聞と町内の回覧板の受け取り用だ
時に葉書が来れば
訃報であったり欠礼通知だったり

今年はもう三度もこんな思いをしている

初案 2014/3/15
春北風訃報の葉書三枚目
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花は葉に媼ひとりの東慶寺 たけし

2018-04-13 | 
花は葉に媼ひとりの東慶寺



鎌倉の東慶寺は縁切寺として名高い
桜も葉さくらになると人影もまばらだ

新緑がまぶしいほどに輝いている
しっかりと和服を装った夫人にであう

物静かな物腰に
ひとりの女性の来し方を覚える


初案5/15/2013

花は葉に媼ひとりの東慶寺
「女」を「媼」に添削した
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花筏見澄ますさきに鯎かな   たけし  

2018-04-12 | 
花筏見澄ますさきに鯎かな




芭蕉記念館は隅田川沿いにあって
句会の後、連れ立って堤を散策した
散る桜は川面に流れて花筏をつくっていた

江戸の大川淵をそぞろ歩きとは行かないが
釣竿を凝視の釣り人が数人

花筏の陰からこちらを覗いているのは
うぐいのようだ
これは江戸の時代と変わらない


初案発表 2017/4/14
花の塵うぐい見澄ます竿の先
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春寒し結び目ゆるむ黒ネクタ  たけし

2018-04-11 | 
春寒し結び目ゆるむ黒ネクタイ




桜前線も北へ去って
ときには初夏のような陽気の日もある

知己の訃報が連絡網で伝わってくる
こればっかりは待ったなし
先送りは許されない

黒のネクタイは何度締めても上手に結べない
結び目のゆるみを気にしながら斎場へ向かう

春はもう終わりなのになんとも寒い


発表 2018/3/14

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狐目の縄文ヴィーナスとゐるおぼろ  たけし

2018-04-09 | 

狐目の縄文ヴィーナスとゐるおぼろ




茅野市の 文化財課 尖石縄文考古館 を
訪ねたのは10年ほど前の春だった

ローマのあの肉感的なヴィーナス異常に肉感的だが
いかにも日本的に香しくその違いに驚愕だった
眺めているうちになんとも暖かい安楽気持ちにつつまれてくる

その深い慈愛満ちたし眼差しは
千古に通じる真闇を見てきた

千古を通じてヴィーナスには
その狐目に映ったものはみなうつろにおぼろに過ぎ去った

一時間程の見学だったが他に見学者もいないこともあって
ヴィーナスとの対面は
悠久の時空を感じさせた

この気分こそ「おぼろ」に違いないと納得した


初案のまま7 2017/3/20 



【朧】 おぼろ
◇「朧夜」(おぼろよ) ◇「草朧」 ◇「鐘朧」 ◇「影朧」 ◇「家朧」 ◇「谷朧」 ◇「橋朧」 ◇「庭朧」 ◇「灯朧」(ひおぼろ) ◇「朧めく」
春は大気中に水分が多いので、物の姿が朦朧とかすんで見える。朧は霞の夜の現象である。ほのかなさま。薄く曇るさま。
例句 作者
葛の桶朧の生れゐるところ 長谷川 櫂
嫁といふ不思議な人とゐておぼろ 清水美代子
おぼろ夜の昔はありし箱まくら 能村登四郎
おぼろ夜のうどんにきつねたぬきかな 木田千女
ふふみては酒の名を問ふおぼろかな 吉野義子
草朧九郎判官主従かな 岸田雨童
灯ともせば外の面影なき朧かな 富田木歩
自らを緊めて朧の壺の音 河合凱夫
朧夜や殺して見ろといふ声も 高浜虚子
朧夜の蛇屋の前を通りける 山口青邨
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