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生かせ いのち

2011-09-23 15:48:29 | 高野山
 

Koyasan_sinpo
 生かせ いのち

                             藪  崇史 福岡県糟屋郡切幡寺 住職          

 仏道においてはさまざまな修行がありますが、一番の修行は仏さまを真似ることです。常に仏さまと自分を照らし合わせて日々の暮らしに役立てることが最良の修行となるでしょう。千寿観音さまは千の手と千の目を持ち、多くの人を一度にお救いくださる仏さまです。この仏さまを真似て生きて仏となった小さな菩薩さまをご紹介します。

 小学校二年生の千代ちゃんは、学校の帰り道に交通事故に巻き込まれ両目と両足をなくしてしまいました。しかも病院の検査の結果、血液の病に侵されていて、あと数年のいのちであることがわかりました。悲嘆にくれる母親に、優しく思いやりのある千代ちゃんは常に明るく接し、悲しむ母親にかえって励ますほどでした。

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怪我にも病気に負けず明るく振る舞う千代ちゃんの周りには入院患者が集まり、互いに励まし合っていました。

 その時、ふと悲しげにお母さんに言います。「私が千手観音さまだったら患者さんみんなを治してあげるのに。みんなに励まされても私は何にもしてあげられない」と涙こぼすのでした。母親は「千代ちゃん、千羽鶴を折って観音さまにお願いしてみようよ。千の手、千の目がなくても千羽鶴なら折れるはずよ」。

 千代ちゃんは恐る恐る手探りで鶴を折り始め、ようやく見事な千羽鶴を折りあげました。そして「いつも励ましてくれる患者さんに早く良くなるようにプレゼントするのよ」と言いながら、一番仲のいいおばあちゃんの病室に向かいました。おばあちゃんは「私の方がどれだけ元気づけられたかわからないのに」と涙を流して喜んでくれました。それからというもの、千代ちゃんは生きがいを見つけたかのようにせっせと鶴を折り、病院中の患者さんにプレゼントをしていきました。

 千代ちゃんのたった一つの願いは、自分が作った千羽鶴を見ることでした。臨終の際に患者さんたちが、今まで千代ちゃんが折った千羽鶴を持ち寄りベットに敷き詰められました。病にうならされながらその奇跡は起こりました。母親の手を握りしめ、「お母さん、怖いよ。目の前が眩しいよ」と絞り出すような声で言ったあと、こぼれんばかりの笑顔とともに「千羽鶴が見えてきたよ。こんなにきれいな千羽鶴を私が作れたんだね。お母さん、教えてくれて有難う」そう言って、再び弱々しいこえになり、「私、観音さまのところに行くから心配いらないからね。本当に幸せだったよ」お医者さまは幻覚を見たのだろうと言われますが、私は、観音さまに憧れ、観音さまのような人々に光をもたらした千代ちゃんに、千手観音さまが千の目の一つをくださったに違いないと思うのです。

 仏とともに歩むとき、本当の幸せを知ることでしよう。わずか十一歳で尊い命を失った少女は、仏とともに自らの命を生かし抜き、幸せだったと何度も感じ仏の国へ旅立ちました。人の一生とは、どれだけ命を生かすかが大切なのです。み仏の思いを、心に、言葉に、行いに。             合掌

 

参与770001-4228(本多碩峯)Sannrinn_01_4_5

 


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