果物料理と果物食品加工

ビタミン・ミネラルに果物の仄かな香りに目覚める フルーツソムリエ

五観の偈  (二)

2011-04-22 20:26:20 | 高野山

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五観の偈 (二)
             星島 光雅
 仏教では、食の心の重要性を理解していただく「五観の偈」という教えがあります。
五観とは、食する前に五つの項目を一つ声を出して唱え、その意味を心の中で観想する作法です。偈とは真実の言葉と理解していただいて結構です。今回はその第二項と第三項についてお話します。
 第二項は、「二つには己(おの)が徳行(とくぎょう)の全(ぜん)か欠(けつ)か多(た)か減(げん)かをとれ(付れ<はか>)」と唱えます。その意味は、食べ物を頂戴するにあたり、果たして自分がその食べ物をいただくだけの徳行があるのか、ないのかをよく考えてみなさいということです。もう少しわかりやすくいいますと、今この食事をとるにあたって今日一日を振り返り、この食事をいただくだけの良い行いをしたかどうかを考えてみなさいということです。ある意味では大変厳しい教えです。
 今食べようとしているこの食事は、前回第一項で申しましたように、食材一つにしても多くの人たちの労苦を得て、しかも、動植物の命を有り難くいただいたもので、そのことによって私たちは生かされているのです。食事を頂戴する自分も納得ができ、自分以外の人たちにも喜んでいただける一日を過ごすことの重要性を説いた教えです。

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 第三項目は、「三つには心を防ぎ過(とが)を顕(あらわ)すは三毒に過とぎず」と唱えます。その意味は、自分自身が本来持っている清らかな心から離れて、うまいとか、まずいという気持ちを持ったならば、それは貪(とん)・瞋(じん)・癡(ち)の三毒、煩悩から生じた心の思いであるから、くれぐれも食べ物の味に執着しないよう心がけ、有難くいただきなさいということです。
 私の自坊がある町でも最近どんどん新築家屋が増え、そのための共働きのご家庭も多い現状です。そのような状況の中で、お母さんは夕方五時まで勤め、夕食の準備のために急いで買い物をし、家で待っている老夫婦や子どもたち、ご主人に美味しい夕食を食べてもらおうと、限られた時間で急いで食事を作り上げます。そして「どうぞ召し上がれ」といったときに、品数の不平や味付けの不満、おかずの好き嫌いなど、作ってくださった方への感謝の心を忘れた自分勝手なことを言ってくる家族が多いという話をよく耳にします。まさに戦後のめざましい経済的高度成長、すなわち物質中心の文明がもたらした負の遺産というべき、相手を思う優しさを失った日本中どこにでもある家庭の一例です。
 それは第三項目の偈文に示されているとおり、「貪」、とはもっとおいしものを食べたいという貪りのこころであり、「瞋」とはこのような食べ物しかないのかといういかりの心であり、「癡」とは自分だけ満たされたいという自己中心的な考えの心です。これを仏教では「三毒」と申しております。この三毒によって、私たちは日頃思い悩み、苦しんでいるといわれています。
 三毒に気付き、その熱を冷ますために仏道修行―――たとえば仏さまにお経を読んだり、座って自己を見つめ瞑想したりする修行があるのです。皆さまぜひ、自分の日頃の生活を振り返り、心を点検してみてください。
    南無大師遍照金剛
筆者は岐阜県中津川市寶心寺 住職
 
参与770001-4228(本多碩峯)

ひたすら祈り続けております

2011-04-02 19:52:47 | 高野山
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 この度の東日本大地震と大津波、またそれらに伴う災害によって被災され、肉親、親族を亡くされた方々、着の身着のまま逃げ出され、避難所において言語に絶する苦難の生活を強いられておられる方々に、心からお見舞い申し上げます。

 肉親やお連れ合いを突如として失われ、あるいはまたいまだ消息をつかめない方がいて、、ご心配をなさっておられる被災地の方々のご心痛を思うと、いても立ってもおられない深い悲しみを覚え、ひたすらお大師さまのみ前で亡くなれた方のご冥福を祈り、不明の方々のご無事を念じ続けております。

 日々の報道の中で被害地の想像を超えた悲惨な状況を見聞きする度に、すぐさまにでもお訪ねし、被害に会われた方々をお慰めし、少しでもお手伝いもさせていただきたい気持ちに駆りたてられますが、現状ではそれも叶いません。

 ただし宗団をあげて被害に会われた方々の心の痛みを癒し、できる限りの支援のお手伝いをさせていただきたいと存じます。

 ご自身やお寺がこの災害に遭われながら、ご自坊を被害者の方々のために開放し、お世話を続けていただいている被災地のご住職や寺族の方々の献身的なご奉仕に厚く感謝申し上げます。

 この度の災害に遭われた方々が、逆境にありましても、お大師さまへのご信仰のともし火をなお一層堅固に保持なされまして、一日も早く復興が成し遂げられ、心穏やかな日々が再来いたしますよう、ひたすら念じあげております

  高野山真言宗管長

 総本山金剛峯寺座主       松長  有慶

参与770001-4228(本多碩峯)