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擬木に何が起こったか

2021-04-21 22:39:37 | 秋田の地理
「擬木(ぎぼく)」という言葉と実物は、どの程度一般に浸透しているのだろうか。
本物の木や木材を模して、別の材質で作ったもので、公園や庭など屋外でよく使われる。材質は芯を金属、外側はコンクリートのほか今はプラスチックもあるそうだ。日本では戦前から使用例がある。

全国的にはどうか知らないが、秋田市内では公共空間で擬木をわりと目にする。
僕が擬木という名前を知ったのはずっと後だけど、擬木の存在を知ったのは、おそらく小学校入学前後、1980年代前半のはず。身近で新たに擬木が設置されたのを見たから。それが、
(再掲)土手長町の旭川左岸
通町橋から五丁目橋にかけて、土手長町通り(県道233号~28号)の歩道に面した旭川との仕切りが、擬木になった。
それ以前の姿は、記憶にあるようなないような、写真を見たのか、白っぽいコンクリート製だったような気がする(調べれば分かるはずですが、調べていません)。【2023年11月23日追記・ネットで写真を拝見した、1973年8月の三丁目橋付近では、一般的な白いガードレールが設置されていた。記憶にある白いコンクリート柵は一丁目橋付近で1980年代前半なので、場所・時期による違いがありそう。】

子どもの目には木そのものに見えたが、少ししてどうもニセモノの木だと感づいた。
周りの大人の反応を耳にしたのかもしれないが「人工物を、あえて天然物っぽく作るのは、いかがなものか」というような感想も、持ったような持たないような。

おそらくそれと同じ頃かその後、近くの広小路の歩道と千秋公園外堀の間の柵も、よく似た擬木になった。ここはそれ以前は、コンクリートの柱に、横方向の金属パイプが付いたような柵だった。
再掲)穴門の堀の浮きデッキから(今は移設され無用の長物になってしまった)
旭川と千秋公園お堀の擬木柵は、同じ物かと思っていたが、比べると微妙に違う。
縦方向の短い部材は、旭川が3本、お堀が2本で1組。それぞれの間隔はお堀のほうがやや広そう。太い部材は旭川のほうがより太くどっしり見える。旭川の縦の太い部材の天面は、円形ではなく横方向が面取りされている。

土手長町通り、広小路、旭川はいずれも秋田県管轄(千秋公園は市)だから、当時の県が決めたのだろうか。
一方、秋田市のほとんどの街区公園の名称表示や公園の仕切りの柵などでも擬木が用いられているが、それも同じ頃から設置が始まったのではないかと思う。
(再掲)
秋田市の街区公園の表示板は、2009年までは擬木で新設されていたが、2010年代以降の新設公園では使われなくなった
そんなわけで、今も擬木は現役の資材ではあるが、昔ほどは使われなくなったのではないだろうか。1980年代は、全国的に擬木を公共の場で採用するブームがあったのか、秋田県・秋田市で局所的なブームだったのか。


ところで、いつこうなったのかは知らないが、土手長町通りの歩道と車道の間の仕切りも、擬木を柱に間にチェーンを張ったものになっていた。2016年以降は一部の擬木が傾いて、部分的にプラスチックの視線誘導標(デリネーター)に交換されている。
(再掲)擬木とデリネーターが混在

秋田駅西口から広小路をまっすぐ進んだ突き当りの丁字路が「広小路西」交差点。突き当たった左右が土手長町通りで、その向こうが旭川。十字路っぽく橋が架かっているが、歩行者専用の大町公園橋(=昔の幸橋(さいわいばし)の後継)。
今年3月中旬、その突き当り
土手長町通りの歩車道の仕切りは、広小路西交差点部分だけは、擬木+チェーンではなく、すべて擬木製の柵が設置されている。これは今まで漠然と認識はしていた。川や堀と似ているが細かい縦方向の部材がない仕様で、縦の部材の天面には夜に点灯しそうなものが載っているが、点灯しなそうな状態。

上の写真では赤いコーンが置かれ、しかもそこの柵がゆがんでいるように見えません?
3月15日頃だったと思う。コーンを設置しながら、柵の具合を見ている人たちがいた。擬木に何が起こったか?
反対面の歩道側から

横から

車が衝突したのだろう。
いちばん傾いたここが衝突点?
擬木柵と車道の間にある縁石も傾いている。
擬木の横方向の部材は、表面にヒビが入り、中の金属が少し見える箇所も。

丁字路でないと勘違いして川側へ進入しようとしたのか。曲がろうとして操作を誤って衝突したのか。
ニュースや噂にならなかったから、人的被害はなかったのだろうけれど、柵がこうなるくらいだから、昼間などタイミングによっては大事故になったかも。
そして、ここがこの柵でなかったら(周りと同じデリネーターと鎖など)、歩道に突っこみ、橋に乗り上げ、最悪川に落ちていたかもしれない。
ここに限れば、擬木の柵でとりあえずは正解だった。

1か月以上経っても、このまま。自重でさらに傾いて、歩道をふさがないかちょっと心配。修理せずに交換するということか。どうなる?

※この後、6月15日頃に工事が行われ、壊れた部分の擬木柵が新しくなった


もう1つ、秋田市管轄の公園(と市道)の擬木。
新屋の「大川端帯状近隣公園」は、製紙工場(十條パルプ)の排水路を、工場廃止後に公園として整備した細長い公園。秋田市内の桜の名所の1つ。
悪天候で桜はいまいち
元排水路だから、周りより掘り下げられた公園であり、その水際まで一部下りられる構造だったり、危険な箇所の立ち入り規制のため、擬木の柵が多用されている。
所により幹がバッサリカットされた桜もあったが、花は見事
水路沿いの細い市道との境も、擬木の柵。改めて見ると土手長町・旭川のとは少し違い、さらに太く見える。表面の色が濃く、光沢があるタイプも混在している。その一部で、
破損した擬木
柵が外側(水路側)に傾き、部材の一部が外れて落ちてしまっている。ほぼ同じ壊れかたのものを、少なくとも3か所確認できた。
擬木に何が起こったか?

道路が狭いから、広小路と同じような勢いのいいぶつかりかたは考えづらい。かといって、ちょっとかすったぐらいではこうならないだろう。除雪作業時に、ドーザで雪もろとも押してしまったのか。
柵が壊れたことによって、人が下へ転落する危険はさほどなさそう。でも、部材が散乱し、中の金属がむき出しになったのは、みっともないし、子どもが触れるなどすれば危ないかもしれない。


これら以外でも、表面がはがれているものもある。コンクリートや中の金属の劣化もするだろう。30年も経てば、擬木も交換を検討しないといけないようだ。

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5 コメント

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地産地消? (FMEN)
2021-04-21 23:49:39
今は定かかわかりませんが、これ秋田県内の会社も制作してるとかいう話が。
ユーチューブで91年頃のCMに横手だかのエクステリア会社が擬木制作をして金沢公園に付けたとかいうのを見たことあります。

つまり、地産地消として大事に作るべき使うべきなのかも。
逆に危ない場所は優しいフォルムでなくメタリック感ある怖い造りにしたほうが?
返信する
Unknown (Unknown)
2021-04-21 23:50:44
経年劣化でしょうね。

町内会が設置する場合もあるし、自治体で設置する場合もあるし、町内会が自治体に請願でというケースもあるので、これらが入り組んでいると、いつまで経っても放置になりそうなので、早めの対処をお願いしたいところです。

場所にもよりますが、こういう基金なども作っていいかもしれません。
返信する
コメントありがとうございます (taic02)
2021-04-22 21:07:45
>FMENさん
左官の流れを汲む技法のようで、けっこうあちこちで作っているのかもしれません。
道路用の金属柵、案内サイン、路面ブロックなんかは、ある程度メーカーが絞られているのと対照的です。
それなら、秋田杉っぽい見た目とか、工夫することもできそうです。もちろん、公共の場の柵や仕切りとしての機能はしっかりと。

>Unknownさん
弱ってはいるでしょう。この調子では、数十年内にあちこちで不具合が出るかもしれません。
新屋の公園だと、喫緊の危険はないし、道路か公園か紛らわしい場所ですし(こういう時こそ西部市民サービスセンターの出番)、まさに早めの対処・継続的な状況把握はしてもらいたいです。
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擬木メーカーです (わずー)
2021-10-14 16:14:21
擬木はコンクリートとプラスチックがあります。コンクリート擬木メーカーは弊社を含め日本に数社しかありません。(30年前は30社以上ありました)
公園建設需要が少なくなったことと間伐材を公共事業で使うことが強く推奨されたことからだと考えています。見た目は30年前と変わりませんが素材が格段に長持ちするものになっています。壊れたものはもちろん、補修などにも予算をつけてもらえたらと思っています。
返信する
コンクリート擬木 (taic02)
2021-10-14 21:07:14
貴重なお話をありがとうございます。
コンクリート製メーカーがそんなに減っていたとは存じませんでした。プラスチック擬木が増えたのは、いろいろと事情があるのですね。
本文中の市街地だけでなく、あまり人が行かない自然公園のような山中でも古い擬木があったりします。いずれはなんとかしないと、危険です。
新設需要は減っても、そういう潜在的な需要はありそうです。がんばってください。
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