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駒込ピペットと秋田の関係

2017-06-12 23:56:10 | 秋田のいろいろ
中学校の時か。理科の時間に、実験器具の絵入り一覧表が配られた。名称や使い方が試験に出題されることもあり、あなどれないわけだけど、いろんな実験器具があって、僕は見るだけでも楽しかった。
その中で、名称が不思議だったものが2つ。
1つは「ペトリ皿」。ドイツ人の発明者の名前にちなんだそうだけど、当時は知るよしもなかった。ちなみに「シャーレ」と同じもの。

もう1つが、ゴム球【正しくは「ゴム帽」。追記参照】が付いたガラスのスポイトみたいな「こまごめピペット」。
一覧表では「こまごめ」とひらがな表記されており、何のことだか分からなかった。元は「細かい米を吸うため」の道具なんだろうかと想像を巡らせた。


後に、「駒込ピペット」と漢字表記すること、それは東京の地名であり、そこにあった「駒込病院」で開発された器具であることにちなむのを知った。
※駒込病院は明治時代のコレラ流行を受けて設立。現在も都立駒込病院として存続。

海外でも「Komagome pipette」で通用するらしい。僕がペトリ皿を不思議に思ったように、Komagomeに悩む外国人もいることだろう。
また、吉本興業の20歳代の女性(お笑いではない?)タレント2人が、「こまごめピペット」というユニットを組んでいるそうだ。ユニット名の由来は知らないけれど、言葉の響きのおもしろさもあって命名されたのだろう。


インターネットとは便利なもので、最近、駒込ピペットのさらなる由来を知った。
※Wikipediaやがん・感染症センター都立駒込病院ホームページ(http://www.cick.jp/referral/history.html)を参考にしました。
駒込ピペットは、駒込病院長だった二木謙三(ふたきけんぞう。1873~1966年)という細菌学者・医師が1920年代頃に考案したという。
病原菌を含む検体を扱う現場において、安価で使い捨てられ、容易かつ安全に操作できる、当時としては画期的な器具だったようだ。
その二木先生は控えめな方で、自分の名前などでなく、勤務先の名前を付けたという経緯。


さらに、二木先生は秋田市の出身なのだった!
生誕地は秋田市土手長町、現在の千秋明徳町、秋田中央警察署の辺りらしい。
秋田藩の御典医であった樋口家の二男で、土崎の二木家へ養子に出され、現在の秋田高校の前身・秋田尋常中学校を卒業。以後、山口を経て東京へ行って、駒込病院へ勤務した。


二木謙三氏の存在自体、僕をはじめ多くの秋田の人は知らないと思うが、彼の有名な駒込ピペットを、その秋田の人が発明というか考案していたとは驚いた。
※もちろん、二木謙三氏は細菌学・医学の分野でも多大な功績を残している。
駒込病院と秋田中央警察署前に駒込ピペットの石像を建てたり、駒込ピペットのゆるキャラを作ったりしたらいいかも?!



と言っておいてなんですが、以下、駒込ピペット自体のこと。
僕は中学校の理科の実験で使ったのを最後に、駒込ピペットにはお目にかかっていない。
2時間続きの理科の授業の合間の休み時間に、他のクラスの生徒が理科室に乱入して、駒込ピペットで水鉄砲遊びをやらかした(ゴム球の中に液体が入るからやってはいけない)くらいの思い出しかない。
そういえば、ピペットのガラス部分は、サイフォンの原理を使った専用の洗浄機で洗うのが一般的なのだけど、中学校ではそんなもの見たことがなかった【下の追記参照】。適当に洗ってたんだな。

駒込以外にもいろいろなピペットが存在するが、その多くは、液体の量を正確に計り取るために使われる。
駒込ピペットにも目盛りは付いているものの、実はさほど正確ではない。100年前はそれでよかったのかもしれないが、現在はそうもいかず、しかも使い捨てならプラスチック製のほうが安くて使いやすい。
おそらく、今は駒込ピペットは多くの研究分野で使われなくなっているのだろう。せいぜい、スポイトの代用程度か。
中学校の理科では今も使うようだけど、現在ではそれが駒込ピペットのいちばんの活躍の場所かもしれない。
【2020年6月16日追記・文部科学省 国立教育政策研究所の「理科ねっとわーく」サイトで「スポイト、こまごめピペット」の説明ページを見つけたので追記】
ゴムの部分は「ゴム帽」という名称。そう言えばそうだった!(下記、ホールピペットで使うものはまん丸で「ゴム球」と呼ぶ)
スポイトとの違いは「スポイトはこまごめピペットよりも小さく、目もりのないものが多」い。
小中学校での扱いを説明するサイトだが、「洗うときは、ゴム帽で水を出し入れして中の溶液を洗い流し、その後ゴム帽をガラス管から外して水洗いする。」とあり、洗浄装置は使わなくてもいいのか。
「プラスチック製は膨張するので誤差があるが、割れにくいので小学校での使用に向く。」ともある。材質を問わず、こまごめピペットで計量すること自体、正確ではないはずだけど。(以上追記)


僕は大学ではそれなりに実験を行う機会があったけれど、上記のような事情から駒込ピペットは一度も使わなかった。
お世話になったのは、長いガラス棒の中央だけ膨らんだ「ホールピペット」。
吸い上げるのには、オプションのゴム球もあるのだけど、有害な液体でなければ口で吸うことも多い。
したがって、うっかりすると口に液体が入ってしまうことがある。慣れない最初の頃と慣れてきた頃の2度ほど経験したけれど、おいしくはなかった。

時々は「マイクロピペット」も使った。メーカーの1つの商品名は「ピペットマン」。
チャッカマンみたいな形状のプラスチック製の物体で、ボタンを押すだけで規定量を吸い上げてくれるという、便利な道具。小容量を計り取る。
形状からしてカッコよくて憧れていたし、実際、とても便利だった。
先端の液体が入る部分はチップと呼ばれ、使い捨て。だから洗浄する必要もない。
でも、貧乏な研究室では、チップを洗って再利用していた。(液体の性質や研究分野によっては、再利用はわりと行われているようだ)

マイクロピペットの先端がフォーク状に分かれていて、同じ量を複数の容器に同時に計って注入できるものもあり(オボカタさんも使ってた)、これもカッコよかった(そして高価そう)けれど、使う機会はなかった。

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2 コメント

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山手線 (FMEN)
2017-06-13 01:07:06
山手線の駅なのになかなかわかりにくいですよね。
山手線を東京と渋谷に引いた線より南半円の駅は有名でも北はあんまりな気がしますが。

秋田は死亡率や上小阿仁問題などで医療のイメージよくないですが、実はすごい先生たくさんだしてるんです。
内視鏡の神様とか脳の権威とか関節の名医とか。
病院も町長が私財をなげうちたてた病院とかがあります。
遠藤博士はノーベル当確らしいです。
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存在感 (taic02)
2017-06-13 23:39:15
駒込とか田端辺りって、存在感は薄いですよね。
駒込は庭園・六義園の最寄りだったりして、おもしろそうなエリアでもあるようです。

秋田は医療が遅れた土地ではないのでしょう。
住人の健康意識がイマイチというか、逆にそのせいで医療が進んだのか…
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