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広く浅く

秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

東洋のナポリ

2010-12-18 20:50:17 | 旅行記
前回に続いて、九州旅行記の鹿児島市のお話です。
鹿児島市といえば桜島。
その名のとおり、昔は「島」だったそうだが、大正時代(1914年)の噴火で、大隅半島と陸続きになった。しかし、鹿児島市内からは錦江湾(鹿児島湾)に浮かんだ島のように見える。
桜島というのは「島」の名で、山としては正式には「御岳(おんたけ)」と呼ぶらしい。さらに御岳は北岳・中岳・南岳という3つの峰から構成される。いちばん高い北岳が標高1117メートル。

以前、鹿児島を訪れた時は、悪天候で下半分しか見えず、いつかはその雄姿を見たいと思っていたのだけれど、今回は天気に恵まれた。
市中心部を流れる甲突川(こうつきがわ)から
このように、市街地からも美しく堂々とした桜島を眺められた。
“横に長い”山なので、1つの山でも連山のような迫力があり、日の当たり方の関係上、特に午後になると、ごつごつした山肌が手に取るように見えた。

忘れてはいけないのが桜島は活火山だということ。
市電に乗っていると、ヤシ並木の向こうに桜島がそびえる、鹿児島らしい光景の場所を通ったので、下車。徒歩で戻って桜島を見ると…
中洲通り「荒田」交差点から
ヤシと桜島の組み合わせに感動したが、山の上空にあるもくもくした白いものって…
最初、雲かと思ったが、雲とは動きが違う。風に乗って流れながら徐々に薄くなっていく。これって噴煙?
しばらく様子を見ていると、
新たなもくもくが
山の右側(南岳)から、グレーの煙状のものが立ち上ってきた。やっぱり噴火してるんだ!
煙が湧き出す速度は思ったよりゆっくりで、じわじわという感じ。火口や火が見えず、煙だけなので、山の裏側で煙を焚いているかのようにも見えた。
そして、風に乗って山の右後方に流され、拡散して色が薄くなっていくようだ。
この間、わずか数分。一連の流れとしては思ったよりも早い展開で、特に爆発音などは聞こえず、静かだった(「空振」がある場合もあるそうだ)。

山が噴火しているのを初めて見て、感動したが、イメージしていた噴火とは少し違った。
山によって噴火の仕方や火山灰の質が違うこともあるだろうし、仮に火柱が上がる大噴火などならのんびり見ている場合ではないのだけど。


活火山の近くに大きな都市が位置する鹿児島市のような例は、世界的にもまれであり、ベスビオ火山を望むイタリアのナポリに似ているので、鹿児島市は「東洋のナポリ」と呼ばれている。
桜島の周辺に住んでいる皆さんにとっては、噴火は日常のことであるが、やっかいなものでもある。降灰被害があるからだ。
天気予報では桜島上空の風向き予報があり、それによって洗濯物を外に干さなかったり、傘を持って出かけたりするようだ。風向きの季節変化のため、夏は鹿児島市側、冬は反対の大隅半島側(=鹿児島市から見て桜島の向こう側)によく降灰する傾向があるとのこと。(つまり上の写真のように冬は山の右後方に流れていった煙が、夏場はこちらに向かって襲いかかるということになるのだろう)
桜島はここ数十年は比較的活発に噴火しており、特に近年は活発で、今年は12月9日現在で894回と過去最多の記録を更新中。

降り積もるといえば、雪も同じだが、雪は冬だけだし、今は気象情報でわりと正確に予想がつく。仮に放っておいても融けて水になる。
でも、噴火は季節を問わないし、風向きはともかく噴火の回数や規模までは予報できないし、融けてなくなるわけではない。衣類や建物が汚れてしまうこともあるし、こちらの方が大変そうだ。


実際、いろいろな工夫がされているようだ。以下にご紹介する。
まず、報道によれば、鹿児島市は市立小中学校の教室にクーラー設置を進めているという。夏の降灰時に窓を開けられないからだ。(真夏日が多い地域だから、既に設置されているかと思ったが、そうでもないんだ)
そして、天文館周辺でアーケード街が発達しているのは、灰の影響を受けずに買い物してもらうという意図もあるようだ。

中心部の国道の歩道にいた車(機械?)【19日追記】ナンバープレートがないので、やっぱり「機械」扱いかな
国土交通省という表示があり、なぜか無人でアイドリングしていたが、歩道の清掃をするもののようだ。
車道用の散水車や清掃車はどこでも見るが、歩道用のは初めて見た。
回転するブラシがついている

これはわりと有名だけど、
鹿児島市内各所の道端にこれがある
同じ大きさの袋だけが置かれており、ゴミ捨て場ではない。表示を見ると、
「宅地内降灰指定置場」
各家庭に積もった灰を袋に入れてここに置けば、市が回収してくれるのだ。
灰を入れるのは、厚手のレジ袋みたいな「克灰袋」。
一定量の降灰があった地域の家庭に市から無償配布されたり、市役所でもらえる。
克灰袋
市のサイト(http://www.city.kagoshima.lg.jp/_1010/shimin/4kankyoricicle/eisei/_33253.html)には、同じデザインで透明な袋と黄色い袋の写真が出ているし、上の写真でもその両方が出されている。違いは何だろう?

以前は、「降灰袋」と呼んでいたそうだが、今は「克灰袋」なのだそうだ。
そういえば、秋田ではあまり使わないが、青森などでは「克雪(こくせつ)」という言葉を行政などが使う。雪や火山灰の被害に打ち克とうという意味合いなのだろう。
「克灰袋」の読み方だが、「かつはいぶくろ」としているサイトなどもあるが、鹿児島市総合案内コールセンターのサイト(http://www.33call.jp/faq2/userqa.do?user=faq&faq=03&id=4005001&parent=399)や「デジタル大辞泉」では、「こくはいぶくろ」とかな表記されているので、これが正式なようだ。

なお、鹿児島市では、レジ袋を二重にしたものに火山灰を入れて出してもいいそうだ。
鹿児島市でもレジ袋削減運動は行われているようだが、この点ではまだ使い道がありそうだ。


それから、大量に降灰があることを「ドカ灰(どかばい)」と呼ぶそうだ。
偶然なのか、雪国で短時間に大量に降雪・積雪することを「ドカ雪(どかゆき)」と呼ぶのと同じだが、「~ばい」と九州弁みたいでおもしろい。
ハトの歩いている辺りの地面は火山灰?
皆さんが清掃してくれるおかげか、市内ではほとんど灰が積もっている場所はなかったが、一部の空き地や公園では火山灰らしきものが残っていた。


勝手に撮らせてもらった、
お墓
上の写真のように、屋根がついたお墓が一部にあった。(周囲にあるような、一般的な墓石も多かったが)
もう少し簡素なトタン屋根だったり、いくつかのお墓をまとめて1つの屋根で覆った自転車置き場みたいな形式もあるようだが、鹿児島では屋根つきの墓石がある。
これも、火山灰からご先祖を守る気持ちが込められているようだ。(ただし一種のステイタス的なものでもあるようで、降灰がない地域でも見られることがあるようだ)


次はバス好きの方以外にはあまり知られていないようだし、直接的に降灰と関係するのかはよく分からないが、
鹿児島市交通局(左)と比較のため旧秋田市交通局(右)のほぼ同型の大型路線バス(日野ブルーリボン)を比較してみる。(秋田市の方が若干新しいと思われるが1990年前後の製造)
【2014年5月6日追記】写真の鹿児島市営バスは、1989年式とのこと。旧塗装の最後の世代で、2013年ですべて廃車になったそうだ。
 
ヘッドライトの形やバンパーは年式やデザイン上の違いとして、ほかにも違いがある。
反射して分かりづらいが、フロントガラスとワイパーに注目してほしい。
鹿児島のは1枚ガラスでワイパーが重なるように配置されているのに対し、秋田市のはガラスもワイパーも左右に分かれている。

路線バスのフロントガラスは、2枚に分かれているのが一般的なので、鹿児島市の方が珍しい。
鹿児島市交通局では、何年か前まで、このような独自仕様のガラスとワイパーを採用していたそうだ。

上記の通り、理由は明確ではないが、降灰時の拭き取り能力や視界確保を狙っていたのではないだろうか。
ただし、市営バスでも同年代の中型バス、それに鹿児島市内を走る民間会社のバスは、以前から標準タイプの2枚に分かれたフロントガラスとワイパーだし、市営バスで最近増加している新しい大型バスは標準仕様で導入していたので、有効性や費用対効果はさほどなかったのだろうか。
(なお、正面のウインカーの位置も違い、秋田市の方が高いが、おそらく積雪時の視認性確保だろう。秋田市営バス以外でも、雪国のバス会社の車はこの位置についていることがあったが、最近の新車ではあまり見られないようだ。)



なんやかんやあっても、桜島は存在感のある美しい山だと思った。
鹿児島市は山が街に迫っており、急な坂の途中に住宅地が広がっている。夕暮れ時、その1つに上ってみると、街並みの向こうに夕日に照らされた桜島が噴煙を上げていた。
【19日追記】こうした山というか丘が、「シラス台地」なのかな?
東洋のナポリ
続きます
コメント (8)
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