団地の花壇には、植えられた草花と異なる植物が忽然と現れることがある。たいていは住人の誰かが、こっそり植えたものである。サツキの花壇に、ニョッキリ立ち上がっている花梨(カリン)は、たわわに実をつけるものの、収穫してよいやらわからず、毎年落ちて腐る。
実はこの花梨、隣家の長男さんが幼少の頃、悪戯で植えたものらしい。同居を強く望んだ父親との軋轢から、長男は疎遠になった。花梨を見るたびに息子を思い出す父親の日々は辛かったであろう。その父親も既に亡くなり、誰も住まない隣家の庭は荒れている。
一人生えといえども、一旦根付くと喜ぶ人も現れ、簡単に伐採できないものだが、他人の目や言葉を意に介さない人はスッパリと切ってしまう。今まであった草木が無くなると、それぞれの立場で騒動が勃発。気が弱ければ一方的に非難され、気が強ければ陰口を叩かれる。団地とはそんなもの。
我が家の庭の隅に、一体いつからあったのか記憶がないシュロが一人生え。姉からの榊を植えた時には無かった。親しい客の花壇で捨てられそうになったサツキを植えた時にも無かった。その後に根付いたのだろう。一旦根付くと愛着が湧くものだ。
しかし妻は邪魔らしい。たしかに葉っぱが開くとチクチクする。近づくことができないのだ。ならば、枯れてもいいと鉢植えを考えた。そうとう根っこを痛めたからダメかもしれないが、鉢植えのシュロにできたら良いなぁ、根付いて欲しい今日このごろなのだ。
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実はこの花梨、隣家の長男さんが幼少の頃、悪戯で植えたものらしい。同居を強く望んだ父親との軋轢から、長男は疎遠になった。花梨を見るたびに息子を思い出す父親の日々は辛かったであろう。その父親も既に亡くなり、誰も住まない隣家の庭は荒れている。
一人生えといえども、一旦根付くと喜ぶ人も現れ、簡単に伐採できないものだが、他人の目や言葉を意に介さない人はスッパリと切ってしまう。今まであった草木が無くなると、それぞれの立場で騒動が勃発。気が弱ければ一方的に非難され、気が強ければ陰口を叩かれる。団地とはそんなもの。
我が家の庭の隅に、一体いつからあったのか記憶がないシュロが一人生え。姉からの榊を植えた時には無かった。親しい客の花壇で捨てられそうになったサツキを植えた時にも無かった。その後に根付いたのだろう。一旦根付くと愛着が湧くものだ。
しかし妻は邪魔らしい。たしかに葉っぱが開くとチクチクする。近づくことができないのだ。ならば、枯れてもいいと鉢植えを考えた。そうとう根っこを痛めたからダメかもしれないが、鉢植えのシュロにできたら良いなぁ、根付いて欲しい今日このごろなのだ。
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