たびびと

世界を楽しく旅しましょう!

世界遺産観光地から開発途上国まで、世界各地の心あたたまる、すてきな風をお届けします。

不思議な男性

2012年08月09日 | ペルーの風
短い夜の散策が終了。
帰りは、迷うことなくホテルに到着。シャワーを浴びて、すぐに寝た。


朝の5時。
歯ブラシ以外の道具は全てかばんにつめ、朝食レストランに移動する。

お皿にいくつかのパンと果物が準備されているのを想像してレストランに入る。


驚いた。

何と、ビュッフェの食事が準備されていた!!

テーブルには多種類のパン、チーズ、ハム、シリアル、フルーツがならぶ。
卵焼き、ソーセージ、フレッシュジュースなどの料理は、奥のキッチンで作っている。料理を炒める音が聞こえてきた。

たった2人のために、早めにビュッフェの準備をしてくれたいた。

従業員が一人、レストラン内で準備をしている。

「Buenos dias」
元気な声であいさつする。

妻が喜んだ。
「チチャモラーダがあるわ」

赤いトウモロコシをジュースにしたもの。ペルー独特の飲み物だ。ここでしか飲めない。

ぼくもトライするにした。
少しあたたかい。ホテル内は暖房がきいているが、やはり寒さは感じる。冷たいフルーツジュースよりは、このチチャモラーダの方が体が温まる。あまりおいしそうではなかったが、そちらを飲むことにした。

「おいしいでしょ」
「…」

飲み物というよりは、トウモロコシのおかゆだ。味はそんなに悪くはない。

定番のパン、ハム、チーズを頬張っていると、一人の男性客が斜め前のテーブルについた。
昨晩、ホテル受け付けの女性が「他にもう一人、早朝の食事を希望している人がいます」と言っていたのを思い出した。

目があい、会釈をする。

「大変なことになりましたね」
50歳前後のがっちりしたその男性は、何と日本語で話しかけてきた。


なぜぼくが日本人とわかったのだろう…

一緒にいる妻は外国人。普通なら、外国人かと思うだろう。

もう一つの疑問。
なぜ、「大変だ」ということを知っているのだろうか…

突然の伝言

2012年08月07日 | 特別記事
出張から帰った次日、いつものように職場に出勤する。
「これ、あなたに。電話があったわよ」
受け付けで仕事をしている秘書から1枚の紙を受け取る。伝言だった。

「緊急なので、今日、オフィスに来てください。アンジェラより」

「オフィスか…」
頭のよい彼女らしい伝言だった。

何かのときに備えて、彼女には自宅と職場の電話番号を教えていた。

でも一体何があったのか。


まさか、妊娠 ?? (なわけはない。心あたりになるようなことはしていないから…)




その日の夜、ナイトクラブでぼくを待っていたのは…



レストランでの食事。無邪気な姿に魅かれた。
それから何回か、アンジェラとの楽しい日々を過ごした。

1ヶ月が経過する。

グアテマラ省庁の組織を把握し、本格的な業務を開始。
全国各地への出張が続く。
膨大な報告書とデータの取りまとめを、日本の本部から急きょ依頼され、その対応に追われた。


クラブに行けない日々が続く。
1週間、2週間…

広がる人脈。順調な調査活動。順調な業務の一方で、グアテマラ人との心のつながりを感じることができなかった。
なぜかはわからない。自分がグアテマラ人に受け入れられていないような感覚がある。心の奥底で拒絶されているような感じだ。

彼らに原因があるのか…
あるいはぼくの心の中にある…


アンジェラとホンジュラスの話がしたかった。


そんな日々をすごす中、職場の秘書から伝言を受け取った。


伝言の日付は1日前。
その日、平日ではあっが、ナイトクラブに行くことにした。

仕事は忙しかった。でも、彼女が職場に電話をしてきた。伝言まで残した。よほどのことに違いなかった。




夜9時。いつもの時間にいつもの席に着き、いつものソーダを飲んでアンジェラを待つ。
5分が過ぎた。彼女は来ない。




店内をぐるりと見渡す。アンジェラを探す。
彼女の姿は見えない。

「まだ時間が早いのだろうか。控室か家にいるのかもしれないな…」

ボーイがぼくに気づいて、近づいてきた。

「アンジェラを探してるんですね」
「ええ」

「彼女は今日の朝店を去り、ホンジュラスへ帰りました。しばらくもどらないと言ってました」
「えっ…」


自分の耳を疑った。

「アンジェラだよ」
「ええ、アンジェラです」

突然のことに返事ができなかった。
様子を察した彼は、何事もなかったように、隣のテーブル磨きを続けた。




まさか急にホンジュラスに帰るとは…

会えなかったこの一ヶ月に何かあったのだろうか…


グアテマラで出会ったホンジュラス人。
彼女と話をしている時間、この国での厳しい人間関係のことを忘れることができた。あたたかなホンジュラスの風に包まれていた。優しさと思いやりに満ちた彼女の心から特別な何かを感じていた。

かたい絆が芽生えたと思っていた。
だから、少しの間会えなくても平気だと思っていた。

そう思っていたのは、ぼくの方だけだったのかもしれない…
いや、そんなわけはない。彼女の微笑みと、抱きしめられたときに感じた愛情は、一線をこえたものだった…



「もう会えないのか…」

田舎の住所、電話番号は聞いていなかった。


彼女と会えないことよりも、ホンジュラスとのつながりが切れたことがぼくにはショックだったのかもしれない。


グアテマラは数年前まで内戦があった国。大勢のスパイがいた。密告があった。大量虐殺もあった。だから、人は人を信頼しない時期があった。

内戦が終結した今も、心の奥底を閉ざしてしまっているように思えた。みな、死ぬ思いをして危険をくぐり抜けてきた。身の安全のためである。

「はい内戦終了です。みんな仲良くしましょう。信頼しあいましょうね」
とはいかなのだろう。

苦い思いをしてきた彼らは、政治にも100%の信頼をおいていない。外国人のぼくに対しても…

思いっきりグアテマラ人の中に飛び込み、信頼関係をつくろうと努力しても、自分が拒否されている…そんなしんどさを、日々感じていた。苦しかった。

ホンジュラスのオープンな雰囲気がなつかしかった。
自分を表現できたなつかしい日々を思いだす。

そんな中、ぼくが最初に魅かれたのは、やはりホンジュラス人だった。
こんな心の中を察して、アンジェラは、ぼくのテーブルを選んだくれたのかもしれない。




短い間の小さな恋が早くも終わった。




その後も、時々、Le clubをのぞいてみた。
彼女が再び帰ってきて仕事をしていることを期待しながら…


彼女を探して、他のナイトクラブものぞいてみた。


彼女の長い髪の後ろ姿を再び見ることはできなかった。




コパンルイナスの田舎で、母親とのんびりすごしていのだろうか…
あるいは、また、どこかのクラブで踊っているのだろうか…




どこかの国で、のある日突然、また声がかかるかもしれない。

「となりに一緒に座ってもいいかしら」


後ろ姿

2012年08月05日 | 特別記事
もう2時過ぎ。お昼の時間はとうに過ぎていた。
客はぼくたちの他に2組のカップルのみ。


店内は、あまりきれいじゃない。
ずばり言おう。ハッキリ言って不潔だ。ハエも飛んでいる。
テーブルクロスはビニール製でしみもついている。

要するに、この店はデートに使うような店ではない。家族連れだって、この店は利用したくはないだろう。そんな店だった。

Zona viva というZona9、Zona10の流行りの店で食事をすればよかったと後悔していた。

彼女は何も気にすることなく、メニューをじっと見ていた。
「私はワンタンスープにする。ホンジュラスでもよく食べたのよ。とってもおいしかった」

ぼくはシーフードチャーハンを注文した。


待つこと5分。料理がきた。客が少ないせいもあるが、とにかく料理がくるのが早すぎる。まるでインスタント食品。注文する料理があらかじめわかっていたかのような速度だ。
まあ、ベースになるものを作り置きしているのだろうが…

「おいしそー」
彼女はおいしそうにワンタンを食べ始めた。

「お母さんといっしょによく中華料理店に行ったの」
彼女の無邪気な笑顔を見ているうちに、店のことはどうでもよくなった。

お腹がすいていたので、ぼくもチャーハンを食べ始めた。

彼女は出稼ぎのことを話してくれた。
グアテマラに来たのは、半年前。先にグアテマラに来ていた友人を頼ってきたそうだ。でも、そのホンジュラス人女性はグアテマラが肌に合わず、すぐにホンジュラスへ帰国した。

グアテマラでは、1ドル7ケツァル。ホンジュラスでは1ドル14レンピーラ。
アンジェラは一度ホンジュラスへ帰ったが、1ケツァルが2レンピーラに交換される。彼女はそれがとても「お得」だと信じていた。

物価が異なるので、そう単純にはいかない。でも、ぼくは反論することなく彼女の話をただただうなずきながら聞いていた。

彼女には病弱な母親がいる。有名なコパン遺跡の近くの田舎に住んでいる。その母親の養育費をグアテマラで稼いでいる。

「どうしてホンジュラスのナイトクラブで仕事をしないの」
「ホンジュラスは小さな国だから、ナイトクラブで仕事をしたら、すぐに誰かに知られてしまうの」

「サンペドロは大きい都市でしょ。あそこなら大丈夫だよ」
「そんなことないのよ。この世界はとっても狭いの」

ホンジュラスの話で盛り上がる。

時がたつのは早い。ナイトクラブで話をしているときの比ではなかった。
「5時には家にもどって仕事の準備をしないといけないの」
「そうか。残念だね。行こう」

タクシーで送った。

「楽しかった。またどっか行きましょう。今度お店にも来てね」
彼女は抱きついてきた。そして、痛いぐらいにぼくを強く抱きしめた。

「今日はどうもありがとう」

お店での別れとは違う、彼女の中の熱い何かをぼくは感じた。

彼女は、何回も何回も振り返りながら、家の中へと消えていった。

長い髪の毛が腰まで届いていて、歩く度に揺れていた。




「彼女と一緒に住むのは難しいよな…

現実的ではないが、チャレンジしてみるものいいな…」

そんなことを考えながら、タクシーに乗り込んだ。





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指示した方向

2012年08月01日 | 特別記事
「食事何がいい」
「何でもいい」

「どっちに行こうかなー」
「あっちでいいわ」


彼女が指差したのは、Zona9ではなくZona1の方角だった。

「流行りのレスランが集結しているZona9新市街地区とは逆の方向に行くのか…なぜだろう…
彼女はレストランのことを何も知らないのだろうか。あるいは、レトロな雰囲気が好きなのか…」

とりあえず、彼女の指示した方向をタクシードライバーにお願いした。


目的地を決めていない。
とりあえず、Zona1の中央公園前でタクシーを降りることにした。

「ここで止まってくれる」
運転手に支払をした。

赴任して1ヶ月、街のことはあまりよくわかならい。
彼女がZona1やZona9のことを知っているのか知らないのかは、ぼくにはわかならかった。

「少し歩こうか」
「ええ」


休みの中央公園はのどかだ。

首都グアテマラシティでは、地方からやってきた多くの先住民が出稼ぎをしている。先住民はインディヘナと呼ばれている。
女性は住み込みのお手伝いさん。男性は、3Kの仕事に従事している場合が多い。休日になると、中央公園やその周囲にある芝生で横になり、一日をゆっくり過ごす。

腰を下ろしておしゃべりをしている多数のカップルが目に入る。
通りでは、炭火焼きのトウモロコシが売っている。いい匂いだ。粒は日本より小粒。

中央公園には屋台、テーブルが立ち並び、多くの人でごったがえしている。
カップルだけでなく、お友達のグループ、家族連れもいる。
ほぼ全員が貧困層に属する人たちだ。

彼らを横目に歩きながら、通りに入る。
ファミリーレストランを通り過ぎ、道路を交差。右に曲がる。
しばらく歩いていると、小さな中華街があった。

Zona1なので建物が古い。
日本では、由緒ある神社など、歴史の長い物が観光地として好まれる。京都など、昔の景観がそのまま維持されていて、心が休まる。
が、ラテンアメリカは別。みな新しい物を好む傾向がある。日本人のいう、わびさびはよくわからない。

アンジェラがなぜZona1へ行くことを希望したのかは、ぼくにはよくわからなかった。


「この店でいいんじゃない。中華料理は大好きよ」
彼女は一件の中華料理店の横で言った。

「Zona9の方がしゃれた店があるし、料理もおいしいよ。今からでもいいから移動しようか」
「ここでいいわ。おいしそうよ」

彼女はぼくの右手をつかんで、中へ引っ張った。




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