たびびと

世界を楽しく旅しましょう!

世界遺産観光地から開発途上国まで、世界各地の心あたたまる、すてきな風をお届けします。

交渉

2012年05月01日 | アルゼンチンの風
ナイトクラブの階段を降りる。
負けたボクサーがリングからおり、退場していく心境だ。

外に出る。光がまぶしい。

呼び込みを続けている男が目に入る。
話すことなく、黙ってその場を立ち去った。

100m歩くと、冷や汗かひいた。正常な感覚がもどる。
更に100m。ようやくお腹もすいてきた。

気分を一新しようと、街の人通りに目をやる。通りは何もなかったかのように平和。
昼時なので、背広を着る人が目立ち始めた。ランチの時間だ。

横断歩道をわたると警察官が交通整理をしている。

大臣、事務次官、局長などのお偉いさんと協議、会議を頻繁に持つ仕事をしている。
かけひき、交渉が得意になっていた。

「とりあえず、言ってみるか」
警察官を呼び止めた。

「お巡りさん、交通整理ごくろうさまです。忙しいところすいません。実は…」
まず相手の労をねぎらい、警官である立場を尊重しながら話しかけた。
警官は道の端へ行くように指示した。そしてぼくの話をじっくり聞いてくれた。

「よくあるんだよな。君、観光客だろ。証拠がないと何もできないんだよ。
観光局で相談してみな。何か力になってくれるかもよ」
すぐ先にあるビルを指差した。

観光情報を集めるついでに、その観光事務所に行くことを決めた。
ビルに到着。
エレベーターで5階に上がる。

今度の相談相手は女性。30代前半といったところか。
少し恥ずかしいが、今さら後にはひけないので、事細かに事情を話しはじめた。
彼女は笑うことなく、まじめに話を聞いている。

「ごめんなさい。でも、お金を取り戻すのは難しいわね」
同情してはくれたが、対応はできないと断わられた。
恐喝あるいは詐欺をしたという証拠がないからだ。
領収書ももらっていない。
あの場面で、「領収書お願いします」と言ったら、書いてもらえたのだろうか...

女性担当官に一連の話をしながら、被害を受けたのにもかかわらず、ウキウキしてきた。
初めて訪問する国で、詐欺の報告をしている自分の姿が何となくおかしかったからだ。
「生きてるなー」という自分を実感していた。躍動感まで感じていた。どこかぼくはおかしいのかもしれない。

人に相談したせいか、心もすっきり。
中華料理ビュッフェのお店に入り、無事の生還を一人で祝った。




翌日、その店の前を通るとる、男がまた声をかけてきた。
「今日もどうだ」

彼は昨日、店内で何がおきたかを知らないのだろうか。

「もうひっかからないよ」
彼は笑った。

君子危うきに近づかずだ。

この後、いろいろな経験を積み、大都会ほど、このようなぼったくりがよくあることを学んだ。



脱出

2012年04月30日 | アルゼンチンの風
「帰らしてもらうよ」
「金払ってけ」
「ぼくはドリンクを頼んでない」
「払わないと出られないよ」

いつのまにか、後方に座っていた女性たちの姿が消えていた。

「女性が勝手に頼んだんだ。代金を払う必要はない」
「払わないならここからただで出られないよ」
「…」

沈黙が漂う。
こわそうなお兄さんが2人。

背中に悪寒がはしる。
「ただで」の言葉が加わった。

「脅しか、本当に暴力をふるうのか…」
自問自答だ。

無理やり突破しようとするとどうなるか。すぐに、つかまえられるだろう。
か細いぼくの力で2人を振り切るのは難しい。

意表をついて、思いっきりパンチ…なんてできるわけない。

「どうしたものか」
いくつかのオプションが頭をめぐる。

急に治安対策の鉄則を思い出す。
それは、「相手に抵抗しない」ことである。
これは唯一の例外時を除く絶対事項だ。
唯一の例外時というのは、性的虐待の場合だ。
今の状況はその例外には該当しない。

相手に抵抗したがゆえに、悲惨な結末をむかえた多くの事例を聞いた。
財布をひっこめるといった、ほんのささいな行為が命取りになる。
何人もの邦人関係者が殺害されている。

被害を受けるのは、無条件降伏をしないとき。
「自分は抵抗してませんよ」と相手が理解できるよう、細心の注意をしながら、強盗に対応をしなければならないのだ。

まだ人生を謳歌したかったぼくは2人に聞いた。
「いくら払えばいいの」

提示された金額は約80ドル。
「安くはないが、払えない額ではないな…」
少し冷静さがもどっていた。

暴力を振るわれ新聞沙汰になるとする。
とんでもない!
仕事も続けられなくなる。
かっこよい顔もだいなしだ。

まだ旅行の3日目。
明日は知人に会うため、ウルグアイへの移動を予定している。再会が楽しみだ。
けがをしての友人訪問は嫌。楽しい旅行を続けたい。

結論がでた。
安全策を選択。危険回避だ。
ぼくも手堅い日本人である。

財布から金を出し、右側の男性にわたした。
無言で2人は道を開けた。

「毎度あり」
とは言われなかった。

アルゼンチンの罠

2012年04月28日 | アルゼンチンの風
コスタリカ勤務時、一週間の休暇をとり、アルゼンチンとウルグアイの観光旅行に行く。

観光3日目、ホテル近く、アルゼンチン旧市街地区の繁華街を歩いていた。
おみやげの店、飲食店、高級ブティックなど、いろいろなお店が立ち並ぶ。巨大な歩行者天国ゾーンもある。

数年前、通貨危機があり経済が破綻したアルゼンチン。
今はどうだろう。もう活気を取りもどし、市民は平静に生活しているように見える。新規通貨が発行され、旧通貨は価値を失った。
他人ごとではない。日本も膨大な借金がある。デフォルト、通貨切り下げ以外に切り抜ける道はあるのだろうか。今のままの財政支出状況を継続することは物理的に不可能だ。

時間は11時半。どこで昼食を食べるか、ブラブラしながら考えていた。
ホテルでの無料の食事があきていた。

「今なら昼間で特別料金だよ」
お兄さんに呼び止められた。
体格のいい、平たく言えば太っている、パンチパーマのお兄さん。天然パーマだ。中南米ではコロッチョという愛称で呼ぶ。

「どう、今。昼間だからすいてるよ」

左手を見上げるとナイトクラブのようだった。派手な看板は出ていない。
昼間なのでデイクラブと呼ぶほうが正しいのかもしれない。

昼間からやっているとは驚いた。
その日一日は首都ブエノスアイレスですごす予定。急ぎの用はなかった。

中米ホンジュラス、コスタリカとナイトクラブは何か違いがあるのだろうか。

「昼間なのにやってるの?」
彼は説明を始めた。

悪い人ではなさそうだ。

店内を見せてもらうことにした。
「中で休んでいく」とは言っていない。ハッキリとそのことを伝えた。

「いいよ。さあさあ」

入口を通り、階段で2階にあがる。左へ曲がり店内に入る。
もう一人の男性定員にぼくをバトンタッチして、彼は入口にもどっていく。

大きな部屋。中は豪華。赤いじゅうたんが敷かれている。でも、メキシコの新市街地区の設備ほどではない。
奥へ歩いていく。
日中だから、客はいない。当然だ。サラリーマンは仕事をしている時間である。

女の子が数人、店内でおしゃべりをしている。化粧をしている女性も一人。昼前なので、空気はよどんでいない。タバコの煙もない。

店を一周し下見は終了。
特に目新しいこともないようなので、帰ろうと向きをかえた。

「まあ、座って座って」
途中から案内に加わっていた女性が椅子をすすめた。

考えることなく、安易にすすめられたソファーに腰を下ろした。
豪華な黒いレザー調のソファー。すわり心地はよかった。

いきなり、カーテン後方から女性が5人やってきた。
ぼくを待っていた感じではなかったが、他に客がいない。暇なのだ。

女性陣がテーブルを囲む。

「飲み物注文するわね」
「…」

女性が右手をあげ、親指と中指で大きな音を鳴らす。
すぐにボーイが現れ、ぼくと女性全員の飲み物がテーブルに置かれた。

ぼくは了承していない。というよりも、一言も口をきいていない。

一瞬の出来事。あまりの展開の速さに、頭がついていかなかった。
ハッキリ断ることも忘れていた。
「こんなの頼んでいいと言っていないよ」
この言葉がでなかった。

置き引きにあった人がテレビインタビューに答えていた。
「最初は何が起こったのかよくわからず、あっけにとられちゃうのよ」
そんな感じだ。

「やられた」
我に返る。

恐怖感、不安感がぼくを襲う。
のんびり飲み物を飲んでいる場合ではなかった。

すぐに立ち上がり、階段に向かう。
突然男性2人が現れ、ぼくの前に立ちふさがる。

「これはまずい展開だな」
などと考えているゆとりはなかった。


多くの方に楽しい旅をしていただければと思います。
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無料の食事と中華ビュッフェ アルゼンチンの風

2010年04月12日 | アルゼンチンの風
中華ビュッフェの値段ですね。
何と、4.5ペソでした。
ホテルのミネラルウォーター代とそれほど変わりません。

この日からホテルのレストランではなく、中華料理店で食事をすることにしました。
中華料理ビュッフェのお店がホテル近くに2件あることを発見。それぞれのビュッフェ料理メニューは違います。というわけで、この2件に交互に通い、多種多彩な中華料理を最終日まで楽しみました。

一方、朝食はホテルのレストランを毎日利用し続けます。

レストランに入ると、ナイフ、フォークやグラスを並べている音が聞こえます。あの音が大好きです。なぜかワクワクしてきます。

一週間の滞在中、毎日決まったものを食べます。トーストにスクランブルエッグ、チーズをトッピングしたものです。
食後にオレンジジュースとホットミルクを飲むのも習慣になりました。

朝食初日、ボーイさんにマヨネーズを頼み、それをトーストにつけて食べました。

翌日レストランに入りボーイさんに挨拶します。
するとそのボーイさんが言いました。
「マヨネーズだよね」

僕の顔を見るとすぐに持ってきてくれました。
とても記憶力のいいボーイさん。サービス抜群でした。

というわけで、ここでもいくつかの教訓を導き出しました。

「食事無料」であっても「飲み物料金」は別。
レストランの飲み物料金は、大衆食堂での食事代とほぼ同等。
個人旅行の場合は、好みで、ホテル、大衆食堂のどちらで食事をするかを決めることができます。団体旅行では無理ですね。
大衆食堂で好きな食事を楽しみたい人は、全食事付のツアーを申し込まないほうがよいでしょう。

アルゼンチン旅行の帰りのことです。一つトラブルがありました。
アルゼンチンのブエノスアイレスの空港から出発する飛行機が1時間ほど遅れたのです。

チェックインカウンターで聞きなれない単語が含まれたアナウンスが何回も流れます。よく意味がわかりません。
耳を澄ますと周りの人の会話が聞こえてきました。到着予定の飛行機が遅延していることを理解します。

アルゼンチンからコスタリカへの直行便はなく、パナマで乗換え予定でした。
パナマに到着したとき、アルゼンチン出発が遅れたため、乗り継ぎにはぎりぎり間に合いません。
というわけで、パナマのマリオットホテル宿泊です。代金はもちろん航空会社払いです。10人くらいの旅客がホテル送迎バスに乗り込みました。

コスタリカに戻る日が1日遅れてしまいます。事務所に電話連絡をしてその旨伝えました。これで一安心。
国際電話は航空会社のサービスで1本まで無料でした。きちんと時間制限がありましたが…。

パナマに滞在したのは6年ぶり。つかの間の、そして予想外の一泊を満喫しました。

一流ホテルのビュッフェは格段においしかったです。パスタを小皿にとり試してみます。具の種類、量、味と大満足でした。

口直しもでき、鋭気を養い、コスタリカでの仕事に復帰することができました。

無料の食事と飲み物の料金 アルゼンチンの風

2010年04月11日 | アルゼンチンの風
ホテルのレストランで最初に食事をするとき、無料の食事についての説明を受けました。
若いモデルのようなウェイターさんが言うのです。
「飲み物は無料ではありません」

コスタリカの旅行代理店で今回のパック旅行を購入しました。そのとき、受け付けのお兄さんがはっきりアピールしました。
「滞在中のホテルでの食事は全て無料ですよ」

その記述のあるパンフレットも持参していました。

そのため、ウェイターさんに対する僕の反応は、
「???」
でした。

冷静になって少し考えてみます。
すると、事情を理解することができました。食事は無料。飲み物代金は別だということを。

このアルゼンチン旅行で、飲み物のことは経験していました。
でも、JTB旅物語のパンフレットで「全食事付」の宣伝を見たときに、そのことが思い出されませんでした。

ブエノスアイレスのホテルのレストランに戻ります。

お酒は飲まないので、ミネラルウォーターを注文します。
大瓶のおいしそうなミネラルウォーターがワイングラスに注がれます。

水代は4ペソでした。

ホテルはダウンタウン商業地区のすぐ横。抜群のロケーション。
周辺には多数のレストラン、ファーストフード店などがあります。スーパーやベーカリーもあります。

ある日、ホテルの食事が飽きたので、24時間オープンの中華料理ビュッフェのお店に入りました。以前に通りを歩いていて、とてもおいしそうな料理が窓から見えていたからです。期待して中に入ります。
たくさんの料理が並んでいます。お肉、魚、海老、イカ、チャーハンからデザートのアイスクリームまで。20種類以上はあります。ホテルでの食事が簡素であっただけに、余計に豪華に見えました。
店内は昼食時間後の2時であったにもかかわらず、結構混雑しています。
久しぶりに、時間をかけて、ゆっくりと食事を楽しみました。大満足です。

ところで、この中華ビュッフェの値段はいくらかだったのか想像がつくでしょうか。