たびびと

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約束

2013年05月27日 | コスタリカの風
翌日の昼、仕事に一段落をつけると、足早に大学へ向かう。
12時16分。大学正門前にたどり着く。

1年中快適な気候のコスタリカ。昼はさすがに暑い。
10分近く炎天下を歩くと、背中からわずかではあるが汗がしたたり落ちる。

「おっ、来たなセニョール。待ってたぞ。さあ、中へ行こう」
守衛のマルティンは、細い目でにっこりとほほ笑む。
しっかりと昨日の約束を覚えていてくれた。

大学の入口は普通の家のドア3つほどの大きさ。
ガラス張りの大きなドアだが、大学の入口にしては小さい。
小規模な大学なので、傍目からはとても大学には見えない。

入口が小さいのには、ちゃんとした理由がある。
守衛さんが不審な侵入者を確認できるためだ。

入口が小さければ、大人数が一度に通過できない。
仮に? 強盗団が押しかけても、入口が小さければそれなりの対応ができる。

ちなみに、この守衛のマルティンは、ほとんど全ての学生と教員の顔を知っている。
なりすましでの通過を許さない。




初めて入る私立大学。

美術大学だけあって、廊下はしゃれている。
天井はガラス張り。
廊下には所狭しと生徒の作品が並ぶ。まるで小型美術館のようだ。

入口を左に曲がりしばらく進む。右に曲がり、歩くこと15m、大学の1階のちょうど中心にたどり着く。
大きなロビー。吹き抜けがあり、開放感がある。
中にはすでに約20名の学生が団らんを楽しんでいる。

すでに昼食の時間に入っていて、生徒約10人は列を作っている。

「セニョール、こっちだ。まず、料理を見なよ」
とりあえず列に並ばず、列が向かう料理棚をのぞいた。

ガラス越しに、12種類ほどの大皿が並ぶ。
31アイスクリームあるいは、ミスタードーナッツの店内を想像してほしい。
アイスあるいはドーナッツにかわり、料理が陳列されている。

注文方法は好きなものを店員さんにお願いするだけ。
ミスタードーナッツと同じだ。

店員さんはわずかに2人。
生徒からの注文を聞き、それを皿に盛る。
大盛りにも対応してくれるようだ。

「食べたい料理を店員に言えば、それを盛ってくれるよ。
最後にレジでお金を払えばいいんだ。簡単だろ。

俺は入口に戻るよ。
仕事にもどらないとな。

お前みたいに危険なやつがいつ侵入してくるか
じゃ、また後でな」

静かに微笑みながら、マルティンは今来た道をもどっていく。

仕事中に、見ず知らずの外国人を食堂へ案内した私立大学の守衛。
ちなみに、ぼくはマルティンに、
「どこの何者なのか」
を明かしていない。
要するに、自己紹介をしていない。

まあ、変な身なりはしていないので、それで信用してくれたのかもしれない。

通常なら、身分証明書を提示しなければ、部外者は入れない。

「学長と面談予約のある〇〇ですが、私は文部科学省の教育審議官です…」

こんな感じで名刺と身分証明書を確認してもらう。
守衛は学長秘書に電話をする。このアポが本物かを確認。
こうした手続を経て、中に入ることができる。

ぼくの場合は?
バカ話をしておしまい。
ノーチェックだ。

いやらしい話で打ち解けると、amigoとして認めてもらえる。すると、大概のことは便宜を図ってもらえる。
ごくまれに「まじめ」なラテンアメリカ人もいる。
この手の話にまったくのってこない。
こういう場合はの正攻法でいくしかない。




すぐに仕事にもどるマルティンは仕事熱心ともいえるが、身元未確認のぼくを校内に案内し、食事の方法まで案内することを考えると、守衛しては落第なのかもしれない。

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