たびびと

世界を楽しく旅しましょう!

世界遺産観光地から開発途上国まで、世界各地の心あたたまる、すてきな風をお届けします。

アイスクリームの洗礼

2011年06月06日 | アンコールワットの風
前日の夜、ブルーパンプキンというお店でバニラアイスを食べた。

「添加物は入っていません。厳しい品質管理のもと作られています」
というパッケージの言葉に惹かれて、1リットリル入りのバニラアイスを購入することにした。

お店からホテルまでは徒歩で20分。外は日本の真夏日。
ホテルに到着するまでに、アイスがとけてしまう。
また、汗をかいて、のどが渇いていたこともあり、お店の人に質問をした。

「このアイス、このお店で食べてもいいですか」
「もちろん大丈夫よ」

お店の人は、大きなお皿に、このどでかいアイスの箱をのせ、2つのスプーンを添えて、席に持ってきてくれた。

2階で通りを見ながら食べようと思ったが、強いエアコンがきいていたので、1階のカフェテリアコーナーでこのアイスを食べることにした。

このお店はとても清潔で、サービスもいい。
グラスにお水を入れて持ってきてくれた。
日本では当然だが、ここアンコールワットでは、飲み水は有料。
レストランで食事をしても、無料の水がでてくることはあまりない。

トイレに行こうとしたところ、
「今断水しているので使えないの。ごめんなさい」
これは少々ショック。
公衆トイレが街中にはない。トイレ目的でカフェテリアに入る観光客もいるだろう。

しかし、トイレは数分後、使えることになった。

アイスはバニラビーンズの入っていてとてもおいしい。
妻と半分ずつ食べた。
白砂糖たっぷりだが、まあたまにはいいだろう。

そして帰り。
ここからが問題だ。

歩いて5分が経過。強い吐き気がぼくを襲う。
朝食があまりにおいしいので、慢性的な食べ過ぎ状態だったこともある。
しかし、この吐き気は何かがおかしい。

食べ過ぎを後悔しながら、途中で何回か休む。
そしてシヴァ通りを左折して国道6号は入り100メートルほど過ぎたところで、何とぼくは食べたばかりのアイスをもどしてしまった。

少しすっきりしてホテルに到着。
しかし、吐き気は続いている。

ベッドに横になるが、再度強い吐き気を感じ、トイレに。
2回ほど吐いた。

微熱もある。恐らく食中毒だろう。
明日は一番楽しみにしていたベンメリア遺跡見学。この体調では無理だろう。
運転手Vuthさんには、謝るしかない。学校の仕事を休んで案内をしてもらう予定だった。
「少しばかりの謝礼を支払った方がいいかもしれないな」
などと思いながら眠りについた。

そして翌朝。
体調は今一。下痢もある。
でも遺跡見学にはいけそうだ。

朝食を控えめに食べていると、何と下痢がもれてしまう。
急いでトイレに。そして部屋で着替え。

その日は替えのパンツを持参して見学に行くことに。
ズボンの替えは半ズボンのみ。微熱があるので、Tuktukの風が体にあたると寒い。というわけで、少し匂いの残る茶色のズボンで遺跡見学に出発することになった。

道ではくこと、そしてズボンに下痢がついてしまうこと。

初体験の多いアンコールワット旅行となった。


ウクレレ アンコールワットの風

2011年05月30日 | アンコールワットの風
途中、不思議な日本人グループに出会う。
ウクレレのような楽器を手にする男性。
そして、スペイン語の歌を奏で始める。
「はずかしいから離れよう」
と笑っている同行人。
こんな明るい日本人グループは珍しい。
また、中には韓国人らしき人も一緒。
アジア人同士仲がいいのはとても素晴らしいと思う。

途中、もう一人のチップを直接受け取れなかった子どもと再会する。
「チップ」
彼はまたチップを要求してくる。
恐らく、渡したチップの半分をもらっていないのだろう。

仲間が数人いたので、襲われることも想定し、少しばかり警戒をした。

シェムリアップから同行する遺跡の説明をしてくれる公式ガイド。
ベンメリア入口にいる道案内だけの公式ガイド。
遺跡内にたむろする道案内の子ども非公式ガイド。
これら3種類のガイドがベンメリアに出入りしている。

なぜ子どもが遺跡内をうろうろできるのか不思議だ。
しかし、アンコールワット周辺の世界遺跡区域内の遺跡横には、民家があった。
そこで、冷たいドリンク、果物を観光客に販売しながら、父親の生計を助けている。

最後の遺跡見学の地ベンメリア。
今回の旅行で最も気に入った。


ここで旅行情報。
地球の歩き方にはチャーターの車、公式ガイドでの旅行が必須と書かれている。
地雷などの危険もあるという。

でも、ぼくはTuktukという荷台つきのタクシーを利用。
片道2時間。山賊や地雷の危険はまったく感じない。

道路の両サイドに広がるシェムリアップの田舎の景色、人々の生活を楽しみながら、飽きることはなかった。
途中、現地人が購入する果物、軽食も楽しめる。

ガイドの説明が必要なく、外の風を長時間受けるのが好きな人はTuktukでいいかと思う。
途中にロリュオス遺跡があるので、そちらと一緒にいくのもいい。

Tuktukチャーター代は35ドル。4人乗れる。4人でも同料金。

ホテルで聞くと、車のチャーターは70ドル。ガイドは確か35ドル。こちらはガイドさんを乗せるので、後ろの席に2人か3人同乗できる。何人でも料金は同じ。

トラバスやHISなどでは、日本で申し込みができる。一人100ドル程度の見学料。
安心、安全だが、いかに日本の旅行会社の価格設定が高価であるかがよくわかる。

この遺跡にはアンコールワット共通の入場券は必要ないが、5ドルの遺跡入場料を払う。

チケットブースにとてもきれいなトイレが整備されていて、ぼくはここでゆっくりとくだっていたお腹を休めることができた。個室が異様に大きく気持ちがいい。
ところが、このベンメリア見学。
ぼくは、前日の夜、この遺跡見学を中止にしなければならないと思っていた。



うるさいガイド アンコールワットの風

2011年05月23日 | アンコールワットの風
この遺跡に到着したとき、すぐに女性のガイドが遺跡内付近までぼくらを先導した。
地球の歩き方にも、ガイドのことについて言及されている。
とても静かな女性で、ルート以外のことは何も話をしない。

遺跡について説明する訓練は受けてないようだった。
しかし、その女性は、遺跡内部の巨大な石の山の入口付近で、一人の子どもに、ぼくと妻の案内を依頼した。
言葉がわからないので正確にはわからない。しかし、ぼくにはそのように聞こえた。

公式ガイドたちは、生活のすべがない子どもたちに、わずかな収入のチャンスを与えているようだった。当然、そのときは自分たちのチップ収入がなくなる。
その子どもたちの貧しさのレベルを知っているのだろう。

通常なら、ぼくはこのような子どもたちを無視する。
ゆっくりと、静かに遺跡を見学したいからだ。
また、内部は確かに巨大な石の山だが、見学のための木でつくられた道が所々に整備されていて、そこを通れば危険はなく、内部をぐるりと一周できる。

「今チップをわたせるだけのお金を持ってないんだ。また今度きたとき案内してね」
と、はっきり言うと、たいがい、この手の非公式ガイドはすぐに去る。

しかし、この日は、つかず、離れず、このガイドのまとわりを許すことにした。

英語、日本語を混ぜながら、簡単な説明をしている。
ガイドブックを読みながら、こちらは自分のペースで歩く。

内部を一周。
出口前で座って本を読んでいると少年が言った。

「この先で遺跡見学ルートは終わりだよ。チップ」

「プリーズ」の言葉は入っていない。

さっきまで案内していたときの無邪気な顔ではない。
取り立てやのすごみのような感じもある。
こうなるのはわかっていだので、いつもの個人旅行では、完全無視。
でも、今日は最初からチップを払ってみようと思っていたので、しばらく付き合うことにした。

黙っていると、何回も「チップ」の言葉を繰り変えす。
途中から合流したもう一人の子どももチップをねだる。
この子は何もしていない。

「お父さんとお母さんはいないの」
「いるよ」
「仕事してないの」
「してる」
「何の」
「山で木を切っている」
「兄弟いるの」
「弟が一人」
「ところで、歳いくつなの」
「12歳」
「今日学校は」
「掃除の日だから授業はないんだ」

両親のことを聞くと、表情が暗くなる。何か問題があるのだろうか。

「悪いね。お金持ってないんだよ」
どう反応するか待っていた。

「チップ」「チップ」
繰り返すが、さっきまでのすごみのようなものはない。

ベンメリア内部に、なぜかそのときは観光客が一人もいない。
「このようなことをしていると、近くの子どもなかまに囲まれて身ぐるみを剥がされてしまうかもしれない。」
そんなことにも警戒しながら、子ども非公式ガイドの表情をみる。

「悪いね。そろそろ行くから」
静かに立ち上がり、出口へ歩きはじめる。

そして、かばんから1ドル紙幣数枚を取出し、手ににぎる。
渡そうと振り返ると、彼はやはり3メートル後方からついてきていた。
途中から合流した子どもは既に姿を消している。

「はいこれ」
「半分はもう一人にね」

彼はお金を手に取ると、お礼も言わず静かに走り去っていった。

この後、ぼくと妻は、出口付近で休み、果物と水を飲む。

そして再度、遺跡内を巡り、遺跡の外をぐるりと一周した。



ベンメリアの魅力 アンコールワットの風

2011年05月16日 | アンコールワットの風
映画「天空の城ラピュタ」のインスピレーションを宮崎駿氏に与えたという噂のあるベンメリア。事実は定かではない。

しかし、アンコールワットとともに、最も気に入ったのがこのベンメリアである。

遺跡群の中では、巨大の方に入るだろう。
しかし、この遺跡はまったく修復作業が行われていない。
それがまた、この遺跡の特異性に貢献している。

遺跡の入口から約200メートル、灼熱の太陽の下、赤土の上を歩く。
しか、遺跡内部に入ると、そこは別世界。
密林のジャングルの中にいるような錯覚に陥る。

タイムスリップだ。

見学を終了し、出入り口近くの石段の上で、崩れたがれきの山を見つめていた。

後方では、見学を終えたイギリス人らしき一人旅の男性が、携帯で写真の編集らしきことを行っていた。
周りには、認可をうけた遺跡の公式ガイドの女性が2人。
そして汚れた古服に身を包んだ子どもが数人。
このうちの一人は、このイギリス人男性の遺跡見学の案内をしていたようだった。

このベンメリアでは、入口から公式ガイドが遺跡内を案内してくれることがある。
詳細な説明はないが、内部のルートを指示してくれる。
遺跡は広大なうえに、崩れた大きな石、かべが内部ではそのまま放置されており、県がルートの案内板もない。だからガイドがいると確かに助かる。

公式ガイドの他に、何人も子どもが旅行者を案内している。
公式ガイドも、途中からこの子どもガイドに案内をバトンタッチすることがある。

西洋人は、一般的に貧困街の子どもたちとはコミュニケーションをとらない。しかし、この男性は異なっていた。

家族のこと、ガイド女性のマニュキアのことなど楽しそうに話をしていた。

そして最後。
彼が立ち去ろうとすると

「チップちょうだい」
案内をした少年が言った。

男性は両手を広げる大げさなジェスチャーで返した。
「チップかい?」

しずかに左手をポケットに入れる。
そして現地の1000リエル紙幣を取り出した。
1ドル約4000リエルで街中でもドルが流通している。

「I have only this one. ぼくはこれしか持っていないよ」
そして、堂々と、威厳をもって、この子どもに渡した。

子どもは手にとったお札をしみじみと眺め、とても嬉しそうだった。
周りの公式ガイドも笑っていた。

この1000リエルで、とうもろこしなら3本。
絞りたけサトウキビジュースなら1杯が購入できる。

通常の西洋人はこのような非公式ガイドを無視する。
当然まとわりつく子どもには相手にしない。
チップを求められても、毅然とした態度で「No」だ。

しかし、この男性は、ユーモアあふれるジェスチャーで、通常1ドル以上のチップのわずか4分の1のチップで、この場を全員の笑顔にして、静かに立ち去った。

スマートな彼の対応に、ぼくはただただ感心をしていた。


危険な予感 アンコールワットの風

2011年05月09日 | アンコールワットの風
出国は2011年3月20日。

大地震、原子力発電所事故のため、計画停電が実施。
空港までの交通手段も不確定。

ぼくは今回の旅行を中止にすべきかどうか迷った。

職場まで、いつもは電車、徒歩で約1時間。
しかし、鉄道の運休により、自転車で通うことになる。

自転車に乗りながら考える。
旅行に行くべきか、中止にするべきか。

日本を出国すると、原子力発電所の事故により、帰国できない可能性もある。
それでいいのか。
しかし、まとまった休みがとれるのは、今回が最後。

そんなことより、空港までの交通手段が確保できない。

予約した成田空港行リムジンバスは運休。
私鉄各線も主要時間以外は運休。

それでも、ぼくは旅行中止の決断はしなかった。
数日で落ち着くのではという期待とともに。

自転車で職場までは約40分。
その間、約30の信号のある交差点を通過する。
そきで、驚くべき事態に遭遇する。

何と、計画停電で点灯しない信号機を除いて、ほぼ全ての信号が、何と、ぼくが渡る瞬間に赤になる。
これは1日ではなく、毎日続く。
こんなことは人生初めてのことだ。
渡る信号がすべて赤。

「これは旅行に行ってはいけないというメッセージなのでは」
そう思うようになった。

そして妻にも相談。

しかし、結論は旅行に行こうということだった。

万が一の長期滞在、あるいは妻の母国への移動の準備のため、クレジットカードの引き落とし銀行に多額の送金を実施。
そして、リムジンバスが運休のことも考え、成田空港近くのホテル予約の準備も行う。

しかし、リムジンバスは、19日からの運行を確認。
無事、成田空港行きの交通手段を確保した。

そして、結論から言うと、今回の旅行は素晴らしいものとなった。

個人旅行での観光地。
通常は、ぼったくりが遭遇するが、そんな被害には一度も遭うことがなかった。
こんなことは珍しい。

信号の赤は、一体何だったのだろう。
急がず、慌てず、一歩ずつ進みなさいというアドバイスだったのだろうか。