たびびと

世界を楽しく旅しましょう!

世界遺産観光地から開発途上国まで、世界各地の心あたたまる、すてきな風をお届けします。

びっくり仰天

2013年06月14日 | コスタリカの風
ある日の昼下がり。
この日もコスタリカの首都サンホセは雲一つない快晴だった。

家に書類を忘れてきたので、昼に家にもどることにした。
ちょうどロシータさんが家に来ている日だった。

家に帰るついでに、ロシータさん手作りのお昼も食べようかと思っていた。

家までは歩いて10分。往復で20分。
昼休みは1時間30分なので、家でゆっくり食事をとることができる。


突然のことなので、ロシータさんには連絡していない。


急ぐ必要はなかったが、とりあえず小走りで家に到着。食前のいい運動だ。
ベルは利用せず、自分の鍵で扉を開ける。


戸が開いた。
そして、リビングで見た光景は…


ソファーでごろ寝をしているロシータさん…だった。
体を横に、くつろいでテレビを見ている。

ドアが開いたことに気づく。
入口へ顔を向け、ロシータさんは叫んだ。
「セ、セニョール」

彼女はガバッと立ち上がる。

「ごめんなさいね。昼だから休んでいたの」
まるで犯罪者のような顔。

「いいさいいさ。そのまま寝ててよ。家に忘れ物があってね。
気にしないで。

昼には、もちろん休んでもいいよ。
仕事が終わったら、ロシータさんの家に帰るものいい。自由だよ。

ところで、料理はできてるかな。
今から家で食事をしていこうと思ってね」


恥ずかしそうに聞いている。
あまり気にすることはないということを繰り返すと、少しづ落ち着いてきたようだった。

大らかなラテン人にしては、珍しく謙虚な性格だった。




それ以来、何回か午後に帰宅する機会があった。
ロシータさんは…
仕事をしていた。

4時には仕事を終えて、家に帰っていることが多かった。
短時間の効率のよいアルバイトだったと思う。


そもそも、一人暮らしいの部屋の掃除、洗濯と食事の準備。
彼女にしてみれば、買い物がなければ、すぐに終わってしまう。


妻と結婚するまで、1年間来てもらえた。

自然現象

2013年06月12日 | コスタリカの風
お手伝いさんが家の炊事、洗濯、掃除を手伝ってくれる。
人件費は開発途上国なので、破格の安さ。
驚くことなかれ。1日約20ドル。何でもやってもらえる。

「家にもぜひ…」
というあなた、世の中はそんなに甘くはない。


お手伝いさんを雇用することは、よいことばかりではない。


ぼくの場合、数か月もすると、異変を感じるようになった。


週に2回ほど来てもらっていた。
マカロニサラダ、小豆を煮て塩味をつけた中米の主食フリホーレスなどの作り置きをしてもらう。


異変とは何か?


マカロニ、小豆の減り方が異常に早いのだ。

作ってある料理の量と、材料の減り具合を比較する。
どうみても釣り合わない。

タッパ一つ分のスパゲッティーサラダ。
パスタの減った量は1kg。

「ロシータさん、質問なんだけどさ。
このマカロニサラダの量なんだけど…」
とは聞かなかった。

いや、聞けなかった。
疑うのが申し訳なかった。

「昼ごはんは好きなだけ食べていいよ」
と言ってあった。

お昼に、マカロニサラダなどをたくさん食べていたのかもしれない。
と自分自身を納得させた。




本当のところ、なぜ異常な減り方をしたのかはわからない。
様々な可能性が考えられた。
一つ言えることは、このまま見過ごすわけにはいかなかった。


そこで対策をたてる。


異変に気づいた翌日、ぼくは調理してもらう材料のみを机の上に用意。
ロシータさんには、その材料のみを使うようにお願いした。
おまけに、棚にある在庫の量をロシータさんと確認。

「これで不自然な量の材料が減ることはないな」
完璧な対策をたてたと思っていた。

ところがどっこい、いくらでも持ち出しのチャンスがあることにすぐに気づく。




台所の棚に置かれた保管場所から持ち出すことは可能である。
料理を作る材料の中から持ち出すことも。

というわけで、とりあえずはロシータさんを信頼し、在庫の確認をすることはやめた。

気持ちの良い降参といったところだ。

ロシータさん以上に信頼できる人物を見つけることができなかった。
機嫌をそこねて、良好な人間関係を壊してしまうことにも不安があった。

アクシデント

2013年06月10日 | コスタリカの風
ロシータさんが炊事、洗濯、掃除に来てくれるようになってから、一か月が経過した。

ある日、朝、いつもより10分ほど早めにドアのベルが鳴る。
「今日は早いな…」
と思いつつ、ドアを開ける。

おはようのあいさつもそこそこに、ロシータさんは急いで口を開いた。
ぼくが出勤しなければならないことを知っていたからだ。

部屋に入ることも忘れて、入口にて早口でまくしたてる。

「セニョール、申し訳ない。
前回、靴下の一つがないのに気付いたでしょ?

仕事が終わって帰るときに気がついたのよ。

帰りに、管理人室に行って、靴下の片方が洗濯機周辺に落ちていないか聞いてみたの。

でも…
残念なことに見つからなかったわ。

大切な靴下をなくしてしまってごめんなさい」


そうだ。その通りだ。
すっかり忘れていた。


ロシータさんの言う通り。

前回ロシータさんがお手伝いに来てくれた翌々日。
靴下一足の片割れが消えていることに気がついた。

洗濯物は室内ハンガーにかかっている。
乾燥機は利用しない。皮膚にかゆみがでるからだ。

20畳以上ある巨大なリビングがある。
そこに巨大な組み立て式の室内物干しが置いてある。
室内物干しセットは前任者から無料で譲り受けたもの。

ロシータさんが来る翌日、洗濯した洋服はすっかり乾いている。
でも、ぼくは洗濯物をたたんでタンスにしまったりはしない。

そのままハンガーにかけたままにしておく。
下着、ワイシャツなど、かわいてから、ハンガーから取り、そのまま使っていく。


なぜかって?


たたむ、しまうの手間が省けるからだ。
生活の知恵だ。

ロシータさんがお手伝いにきた次の次の日。
2足目の靴下をはこうとすると、日本から持参した綿100%の黒い靴下の片割れが消えていることに気づいた。

翌日は、たまたま選択した靴下がそろっていた。
2日目に選択した靴下に問題があった。


ロシータさんの話をきいた後、次回から洗濯物を干すときの工夫についてお願いした。


ハンガーにかけるときに、靴下一足を隣同士にする。
不足に気づいたら、すぐに、洗濯機を貸してくれている管理人さんに靴下の紛失について質問する。

管理人さんはすぐに探してくれる。
洗濯機の中に残っているに違いない。

洗濯機は管理人さんから有料で借りていた。




その日の夜、マンションに到着。
しっかりとペアになってハンガーにかかっている靴下さんを確認。
安心して床に就いた。




効果はてきめん。

それからの約2年間、一度も靴下が紛失することはなかった。

人を動かす原則

2013年06月08日 | コスタリカの風
ロシータさんとシャワー室に移動する。
服を脱いで怪しいことをするわけではない。

「ロシータさん、これ見てくれる」
シャワー室の床に実際に使う量の洗剤をまく。

「量はこれだけでいいからね。
そしたら、これをたわしてこすってね…」

実際に使う量の洗剤を見てもう。
ついでに磨き方も。




言葉だけでは、ロシータさんには理解してもらえない。
だから、実際の洗剤の量を目で見てもらった。
おまけで、床の磨き方も。


山本五十六の有名な言葉がある。

「やってみせ 言って聞かせて させてみて ほめてやらねば 人は動かじ」
「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず」
「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」


人に何かの指示をだすときには、いつも、この言葉を胸にする。
教師、講師の仕事をしてきたので、この言葉は大変に役にたった。

うまくいかないときは、次のうちのどれか一つあるいはそれ以上の何かが欠けている。

やってみせる。
言って聞かせる。 
させてみせる。
ほめる。 

一度だけではダメ。
何回も何回も繰り返す。
そしてひたすらうくいったところをほめる。


人を動かすための本質的なことが述べられている。
シンプルだけど、いつも大切にしている言葉だ。

一見、簡単なことに思える内容だが、徹底するとなると、なかなか…。




ロシータさんは微笑みながら、の床のタイルを磨く姿を見ていた。

「そんな少しでいいの?
汚れが落ちないわよ?」

彼女の目線が語っていた。


「お掃除プロの女性に掃除の方法を教えているぼくは、一体、何者なんだろう…」
妙なことを考えながら、出勤前のスラックスに水がかからないよう、注意しながら床磨きを続ける。

最初のほめ言葉の時点で気をよくしてくけていたロシータさんは、最後まで笑顔を崩すことはなかった。



シャワー室の掃除

2013年06月06日 | コスタリカの風
前回、ロシータさんが仕事に来てくれた日の夜のことだった。
シャワーを浴びようと、シャワー室に入る。

8月というのに、すがすがしいあたたかさが続くコスタリカの首都サンホセ。
日本の夏に感じる、じめじめとした不快感はない。

当然、背中に汗をかかないので、ぬいだシャツはきれい。
もう一日きれそうなくらいだ。


中南米の人は湯船につかる習慣がない。
借りているマンションにも湯船はない。夜は毎日シャワーだ。

ゆっくりお風呂に入りたい人は、超高級ホテルに行くしかない。

シャワー室に入り、足の感触が何かおかしいことに気がついた。
床の材質は少しざらざらとしたタイル。すべらないように工夫がされている。

ところが、この日は足下にすごい違和感を感じる。
「一体何が…」


足元を見ると、ギョッとした。床、壁の下の部分が白い粉だらけ。
まるで、きな粉餅のようだ。

白い粉を手でさわり、間食や匂いを確かめる。

コカイン…

ではない。

白い粉の正体は、クレンザーだ。
足場がクレンザーだらけ。

一人暮らしで、シャワーを使うのは一日に一回。この程度で床は汚れない。
カビも生えない。

こんなレベルの使用頻度。
にもかかわらず、ロシータさんさはたっぷりクレンザーを利用して、風呂場を磨いてくれた。

磨いたというよりは、クレンザーをまいて、水で流しただけのような気もするが…。

床に散乱しているのは、ロシータさんが使用したクレンザー。
かなりの量の洗い流しの白い粉。不気味だ。

雪がつもっているような錯覚に陥る。
っていうのは、さすがに大げさだが、とにかくすごい量の粉。

これでは、クレンザーはあっという間になくなってしまう。
体にもよくない。

少量でしっかり磨くという基本的な使い方を理解していないように思えた。




2回目の今日、言わねばらないな最重要事項はこのクレンザーのことだった。

「ロサさん、風呂場のことなんだけどさ…
とってもピカピカに磨いてくれてありがとう。
まるで、新品のようだったよ。

実はね、ぼくは体が過敏体質なので、洗剤、クレンザーをたくさん利用すると、体がかゆくななるんだよ。
だから、シャワー室の床や壁を磨くときには、クレンザーはもう使わないで、ただ磨くだけでいいんだけど、大丈夫かな?」

「Si、Senor
わかったわよ

少なめでいいのね」

これだけで洗剤の量が少なくなることはない。

どうしてだかわかるだろうか?