たびびと

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世界遺産観光地から開発途上国まで、世界各地の心あたたまる、すてきな風をお届けします。

おみやげ

2013年05月31日 | コスタリカの風
定食屋の味付けは家庭的。大学食堂は何となく洋風。
ぼくの好みはもちろん定食屋だ。

初めて大学食堂を利用した後、お弁当を持参するようになるまで、ぼくはどちらの食堂を多く利用しただろうか。

食事の好みは定食屋さん。
実際によく通ったのは大学の学食だ。

守衛マルティンとのおしゃべりが楽しかった。
大学の雰囲気もいい。
のんのびりとした優雅さを感じながらの昼食は、心が休まる。

こんな理由から、大学食堂の方を多く利用する。
もちろん、女子大生ウォッチングも忘れなかった。


守衛のマルティンと仲良くなった後は、顔パス。

「Hola」
と入口で声をかける。

彼は左手の手のひらを上にして、
「Adelante さあ、どうぞ」
と高級ホテルボーイのようなしぐさを見せる。

問題なく校内に立ち入ることができた。




ある日のこと、いつもの守衛マルティンがいない。

「Hola」
挨拶をして入ろうとると、

「関係ない人は入っちゃだめだぞ」
太っちょの見知らぬ守衛さんがストップをかける。

「食堂を利用させてもらってるんだけど。
マルティンはどうしたの。
いつも、彼から許可をもらってるんだけどな…」

奥からマルティンがやってくる。
「ああ、彼はいいんだ。俺のアミーゴだ。
いつもお昼を食べにくるんだ。面白くていいやつだ」

「おお、そうかそうか。悪かったな」
彼は道を開けてくれた。

マルティンと立ち話。
社交辞令である女の話で盛り上がる。




大学食堂はオプションが多い。
好きなものを言って、それをお皿に盛ってもらう。

魚、肉、野菜… 味付けは洋風だが、日本の洋風料理とはちがう独特のもの。
まあ、おいしく食べることができる。

私立大学なのでコスタリカ料理がメインではない。どこの国でも若者は洋風を好む。
コンソメの化学調味料の味がきついこともある。

それでも、マルティンとの会話が楽しみで、よくこの大学に通った。




コスタリカを離れて10年以上がたつ。
マルティンは、今でも守衛としてあの大学で仕事をしているのだろうか。

今度遊びに行ったら、ぜひ会いに行きたい。
みやげは、日本人女性の写真集を考えている。

税関でおとがめがなけばいいが…

握手

2013年05月29日 | コスタリカの風
マルティンが去るのを見届け、お昼の列に並ぶ。

たくさんの大型の観葉植物が置かれている。
大学構内は完全な建物内だが、まるで自然の中にいるような感覚。
雰囲気がいい。


店員さんにお願いしたものは、いつもと同じ。

野菜サラダ
ガジョピント(小豆入りチャーハン)
魚のフライ
ジュース

合計は1120コロン
約3ドルだ。
定食屋さんよりは少し高い。


料理の入れられたトレイを運び、空いている椅子を探す。
お昼の時間が開始されてから約20分が経過。食堂は混んでいる。

すみの方に空きを発見。ラテンアメリカ定番のプラスチックいすに座る。
テーブルもプラスチック。少しガタガタいうが、この手のことには慣れっこ。細かいことを気にしているとラテンアメリカでは生きられない。


食事を口に運びながら、食堂内の様子をじっくり伺う。
友達との会話を楽しむ学生たち。
美術系大学なので、ガチガチのアカデミックな感じではない。

それでも、大学は大学。ゆったりとした時間が流れている。
彼らの様子を眺め、学生時代のことを思い出しながら、のんびり昼食を食べた。


腹ごしらえをして食堂をあとにする。
トレイは特に運ばなくていいようだったが、一応店員さんのいるレジの横の机まで持っていく。

「セニョール、どうもありがとう」
ここは大学。
ぼくのことを「チニート(中国人)」と言ってバカにすることはない。

入口に到着するとマルティンが椅子に座ってこちらに気がついた

「どうだった」
「おいしかったよ」

「女はどうだった」
「ああ、よりどりみどりで満喫だな。でも、見てるだけじゃな」

「そうか。俺に任せとけ。今度、上玉を紹介してやるよ。
また明日も来いよ」

彼と固い、固い握手をして別れた。
ラテンアメリカの男性は、相手への思いが強いほど、握手の手の握りが強くなる。

恋敵との握手の場合は、敵意がこもり、さらに強く。


マルティンとの友情の余韻を右手に残して、大学を後にした。


約束

2013年05月27日 | コスタリカの風
翌日の昼、仕事に一段落をつけると、足早に大学へ向かう。
12時16分。大学正門前にたどり着く。

1年中快適な気候のコスタリカ。昼はさすがに暑い。
10分近く炎天下を歩くと、背中からわずかではあるが汗がしたたり落ちる。

「おっ、来たなセニョール。待ってたぞ。さあ、中へ行こう」
守衛のマルティンは、細い目でにっこりとほほ笑む。
しっかりと昨日の約束を覚えていてくれた。

大学の入口は普通の家のドア3つほどの大きさ。
ガラス張りの大きなドアだが、大学の入口にしては小さい。
小規模な大学なので、傍目からはとても大学には見えない。

入口が小さいのには、ちゃんとした理由がある。
守衛さんが不審な侵入者を確認できるためだ。

入口が小さければ、大人数が一度に通過できない。
仮に? 強盗団が押しかけても、入口が小さければそれなりの対応ができる。

ちなみに、この守衛のマルティンは、ほとんど全ての学生と教員の顔を知っている。
なりすましでの通過を許さない。




初めて入る私立大学。

美術大学だけあって、廊下はしゃれている。
天井はガラス張り。
廊下には所狭しと生徒の作品が並ぶ。まるで小型美術館のようだ。

入口を左に曲がりしばらく進む。右に曲がり、歩くこと15m、大学の1階のちょうど中心にたどり着く。
大きなロビー。吹き抜けがあり、開放感がある。
中にはすでに約20名の学生が団らんを楽しんでいる。

すでに昼食の時間に入っていて、生徒約10人は列を作っている。

「セニョール、こっちだ。まず、料理を見なよ」
とりあえず列に並ばず、列が向かう料理棚をのぞいた。

ガラス越しに、12種類ほどの大皿が並ぶ。
31アイスクリームあるいは、ミスタードーナッツの店内を想像してほしい。
アイスあるいはドーナッツにかわり、料理が陳列されている。

注文方法は好きなものを店員さんにお願いするだけ。
ミスタードーナッツと同じだ。

店員さんはわずかに2人。
生徒からの注文を聞き、それを皿に盛る。
大盛りにも対応してくれるようだ。

「食べたい料理を店員に言えば、それを盛ってくれるよ。
最後にレジでお金を払えばいいんだ。簡単だろ。

俺は入口に戻るよ。
仕事にもどらないとな。

お前みたいに危険なやつがいつ侵入してくるか
じゃ、また後でな」

静かに微笑みながら、マルティンは今来た道をもどっていく。

仕事中に、見ず知らずの外国人を食堂へ案内した私立大学の守衛。
ちなみに、ぼくはマルティンに、
「どこの何者なのか」
を明かしていない。
要するに、自己紹介をしていない。

まあ、変な身なりはしていないので、それで信用してくれたのかもしれない。

通常なら、身分証明書を提示しなければ、部外者は入れない。

「学長と面談予約のある〇〇ですが、私は文部科学省の教育審議官です…」

こんな感じで名刺と身分証明書を確認してもらう。
守衛は学長秘書に電話をする。このアポが本物かを確認。
こうした手続を経て、中に入ることができる。

ぼくの場合は?
バカ話をしておしまい。
ノーチェックだ。

いやらしい話で打ち解けると、amigoとして認めてもらえる。すると、大概のことは便宜を図ってもらえる。
ごくまれに「まじめ」なラテンアメリカ人もいる。
この手の話にまったくのってこない。
こういう場合はの正攻法でいくしかない。




すぐに仕事にもどるマルティンは仕事熱心ともいえるが、身元未確認のぼくを校内に案内し、食事の方法まで案内することを考えると、守衛しては落第なのかもしれない。

大学の学生食堂

2013年05月25日 | コスタリカの風
コスタリカ赴任直後の昼食事情を続けていこう。

もう一つの行きつけの店は、学生食堂。

コスタリカ事務所から歩くこと10分。
美術系の私立大学が事務所の近くにあった。

その建物の前の歩道は通勤経路。建物の前を毎日通る。
入口はそれほど大きくなく、建物も大きくない。
そこが大学とは夢に思わなかった。


なぜその建物に意識がいったのか?
何日か歩いているうちに、若い素敵なお姉さん、それも複数名が何人もその建物から出入りしているのに気がついた。
横のパーキング。同じく、何人もの美女が車から降りてくる。


気になったある日のこと。
建物前に立っている守衛さんに話しかけることにした。

ラテンアメリカには珍し細身の男性。
天然のパンチパーマがかかっているが、やくざのような雰囲気はない。


「セニョール、ここ、何なの」
「おー、ここか。ここは美術大学だよ。ほら、ここに看板があるだろ」

確かに、目立たないが小さな看板があった。


「大学っていうことは、もしかして、食堂なんかあるの」
「ああ、当然だよ」

「明日、ぼくも食べに来ていいかな」
「うーん..」
少し考えている。

「よし、特別だ。いいぞ。
本当は関係者だけだけど、明日、今の時間に来れば、俺が食堂に案内してやるよ」
「ほ、本当。どうもありがとう。楽しみにしてるよ」


日本では、大学や市役所の食堂などを、一般市民が利用するのは珍しくない。
でも、ここはコスタリカ。
日本と違い、治安状況がよくない。
原則として、部外者は大学内に足を踏み入れることはできない。
セキュリティーにはどの組織も気を遣う。

では、なぜぼくは許されたのだろう?

ただ運がよかっただけと思われるかもしれない。

いや、そうではない。

食堂のことを聞く前には、大切な布石があった。
アミーゴ(友達)になるには秘訣がある。

「セニョール、この建物には何人もの美人が入っていくけど、セニョールは何人の女性をたぶらかしたんだ」
「何言ってんだこのチニート(中国人)」


言葉はきついが、顔はニヤニヤしている。
女性ネタ、下ネタで、大概の男性とは一気に打ち解けることができる。
それにしても、見知らぬ日本人男性へ上記のような声かけをしたら、単なる狂人と思われ、無視されるのがオチだろう。しつこいと、警察に連絡されてしまうかもしれない…。

ちなみに、ラテンアメリが人は、アジア人を見ると、チニートと呼ぶ。
ぼくは立て続けに言葉をならべる。

「今通った女の子は何て名前なの」
「ああ、彼女ね。アリシアだよ」

「気に入ったな。紹介してよ」
「おー、そうか、ちょと待ってろ」

何と、彼は今通り過ぎたばかりのアリシアへ向かって大声をかける。
「おい、アリシア、ここのチニートが読んでるぞ」

振り返りぼくと守衛さんへ笑顔をふりまくと、足早に奥へと消えていった。

「残念だったな。他にいい女はたくさんいるぞ。
見ろ、そこにいるシルビアはどうだ」

他の女性友達と話をしているシルビアの手を無理やり引っ張り、ぼくの前へと連れてくる。
守衛さんとはとても仲がよそそうな女の子。

こんなたわいもないやり取りの後のことだ。
「実はこの建物なんだけどさ、何なの」

こうして先ほどの会話が成立した。

定番のお昼

2013年05月23日 | コスタリカの風
コスタリカ事務所に赴任した直後。
毎日通う大衆食堂。

これが、キューバだと様子は一転。
衛生状態がひどく、とても大衆食堂に入れない。
間違いなく、お腹をこわす。

一方のラテンアメリカ。
ホンジュラス、ニカラグア、グアテマラ、パナマ、コスタリカ、チリ、アルゼンチン、ボリビアなどでは、どこでも大衆食堂に入り、食事ができる。
食あたりをした記憶はない。

これがアジアになるとどうか。

カンボジアでの屋台料理。
一品が1ドル。おいしそうなヌードルだ。

奥の洗い場を見ると、すんごい色の汚水の中に汚れた皿が。
危険なのでトライすることはしなかった。

中米でも、危険そうな大衆食堂はもちろんある。
そこは、嗅覚をとぎすますして判断するしかない。




ホンジュラスでホームステイしていた家のお母さんは言っていた。
「海岸のレストランに行くなら、Bahia azulにしなさい。
調理場を見せてもらっけど、とても衛生的よ。
他はなってないわね。食べない方がいいわ」

「もしかして、全部のレストランの調理場を見せてもらったの?」

「そうよ。当然じゃない。さもないと、危なくて、外で食事なんかできないわよ」

おおらかな性格のホンジュラス人だが、お母さんの人柄は少し違っていた。
職業は先生で、かつて優秀教員として表彰されたこともあった。




コスタリカの定食屋さんの話にもどる。
この定食屋さんでは、特別メニューを頼んでいた。

特別といっても、特別に豪華なのではなく、特別に質素なものだ。

小豆を煮て塩味をつけたフリホーレス
ロシアンサラダ(真っ赤な野菜にマヨネーズをまぶしたもの)かマカロニサラダ
白米

である。

これに果汁100%ジュース。
日によって違うも味のジュースを頼む。
日本にはないたくさんのフルーツ。
はっきりいっておいしい。

事務所からは、灼熱の太陽の下を歩くこと8分。毎日昼休みに通う。
高級住宅地の一角。一軒家を改造した定食屋さん。20m南側には車の走る大通り。
この通りは何軒かの大衆食堂が並ぶ。

排気ガスがすごいので、ぼくはこの住宅街の一角にある食堂を好んで利用。
浮気をしたことは一回もない。

お昼は、お店近くのビジネスマンだちでごった返す。


毎日通うとどうなるか。

おまけ…はしてくれない。

お店の人にはすぐに顔を覚えられる。
外国人なうえに、注文するのは特別メニュー。

ぶっかりぼうなおばさんウェイトレスの決まり文句。
店に入る。

「いつものだな。フリホーレスとご飯と…」
一緒にぼくのメニューを繰り返す。

客でこんでいる時間帯。
早口だ。

仕事の都合で、昼過ぎのすいている時間帯に行くと、のんびりジョークを言うこともある。


ときおり魚を頼むこともあったが、大半は上記の定番メニュー。
日替わり定食の1000コロンよりやや安い。
850コロン。値引いてくれるところが、なかなか良心的。
当時のレートで約2ドル。安いものだ。