「帰らしてもらうよ」
「金払ってけ」
「ぼくはドリンクを頼んでない」
「払わないと出られないよ」
いつのまにか、後方に座っていた女性たちの姿が消えていた。
「女性が勝手に頼んだんだ。代金を払う必要はない」
「払わないならここからただで出られないよ」
「…」
沈黙が漂う。
こわそうなお兄さんが2人。
背中に悪寒がはしる。
「ただで」の言葉が加わった。
「脅しか、本当に暴力をふるうのか…」
自問自答だ。
無理やり突破しようとするとどうなるか。すぐに、つかまえられるだろう。
か細いぼくの力で2人を振り切るのは難しい。
意表をついて、思いっきりパンチ…なんてできるわけない。
「どうしたものか」
いくつかのオプションが頭をめぐる。
急に治安対策の鉄則を思い出す。
それは、「相手に抵抗しない」ことである。
これは唯一の例外時を除く絶対事項だ。
唯一の例外時というのは、性的虐待の場合だ。
今の状況はその例外には該当しない。
相手に抵抗したがゆえに、悲惨な結末をむかえた多くの事例を聞いた。
財布をひっこめるといった、ほんのささいな行為が命取りになる。
何人もの邦人関係者が殺害されている。
被害を受けるのは、無条件降伏をしないとき。
「自分は抵抗してませんよ」と相手が理解できるよう、細心の注意をしながら、強盗に対応をしなければならないのだ。
まだ人生を謳歌したかったぼくは2人に聞いた。
「いくら払えばいいの」
提示された金額は約80ドル。
「安くはないが、払えない額ではないな…」
少し冷静さがもどっていた。
暴力を振るわれ新聞沙汰になるとする。
とんでもない!
仕事も続けられなくなる。
かっこよい顔もだいなしだ。
まだ旅行の3日目。
明日は知人に会うため、ウルグアイへの移動を予定している。再会が楽しみだ。
けがをしての友人訪問は嫌。楽しい旅行を続けたい。
結論がでた。
安全策を選択。危険回避だ。
ぼくも手堅い日本人である。
財布から金を出し、右側の男性にわたした。
無言で2人は道を開けた。
「毎度あり」
とは言われなかった。
「金払ってけ」
「ぼくはドリンクを頼んでない」
「払わないと出られないよ」
いつのまにか、後方に座っていた女性たちの姿が消えていた。
「女性が勝手に頼んだんだ。代金を払う必要はない」
「払わないならここからただで出られないよ」
「…」
沈黙が漂う。
こわそうなお兄さんが2人。
背中に悪寒がはしる。
「ただで」の言葉が加わった。
「脅しか、本当に暴力をふるうのか…」
自問自答だ。
無理やり突破しようとするとどうなるか。すぐに、つかまえられるだろう。
か細いぼくの力で2人を振り切るのは難しい。
意表をついて、思いっきりパンチ…なんてできるわけない。
「どうしたものか」
いくつかのオプションが頭をめぐる。
急に治安対策の鉄則を思い出す。
それは、「相手に抵抗しない」ことである。
これは唯一の例外時を除く絶対事項だ。
唯一の例外時というのは、性的虐待の場合だ。
今の状況はその例外には該当しない。
相手に抵抗したがゆえに、悲惨な結末をむかえた多くの事例を聞いた。
財布をひっこめるといった、ほんのささいな行為が命取りになる。
何人もの邦人関係者が殺害されている。
被害を受けるのは、無条件降伏をしないとき。
「自分は抵抗してませんよ」と相手が理解できるよう、細心の注意をしながら、強盗に対応をしなければならないのだ。
まだ人生を謳歌したかったぼくは2人に聞いた。
「いくら払えばいいの」
提示された金額は約80ドル。
「安くはないが、払えない額ではないな…」
少し冷静さがもどっていた。
暴力を振るわれ新聞沙汰になるとする。
とんでもない!
仕事も続けられなくなる。
かっこよい顔もだいなしだ。
まだ旅行の3日目。
明日は知人に会うため、ウルグアイへの移動を予定している。再会が楽しみだ。
けがをしての友人訪問は嫌。楽しい旅行を続けたい。
結論がでた。
安全策を選択。危険回避だ。
ぼくも手堅い日本人である。
財布から金を出し、右側の男性にわたした。
無言で2人は道を開けた。
「毎度あり」
とは言われなかった。