Sketch of the Day

This is Takeshi Kinoshita's weblog.

園芸・景観計画シンポ@山東農業大学

2005-07-07 | East Asia

Thursday, June 30, 2005
無事成田に帰還。今日は成田で一泊して明日の早朝青島へ。夜、プレゼンの準備(←またかよ)。

Friday, July 1, 2005
ソウル経由で青島へ。青島空港で韓国のメンバーと合流して、クルマで泰安へ。400キロの距離を約5時間で走り抜けた。日本の感覚では明らかにクルマで移動する距離ではないが、彼らにしてみるとどうってことないという感じである。20時頃、シンポジウム会場の山東農業大学のゲストハウスに到着。

Saturday, July 2, 2005
朝早くから会議。会議の主題は「人間的、科学的、芸術的な造園園芸景観をつくりだすために」。園芸系の研究者、実務者と同席する貴重な機会だった。僕は「Pastoralism in Context」と題して講演。東アジア文化圏にある我々は、欧米のパストラリズムが市民社会により獲得・受容されたものであるという点を見落とし、パストラリズムの形態だけを東アジア諸国の都市空間に恣意的に導入する一方で、東アジアの伝統的な庭園様式の近代化を怠った点を指摘した。

これに対して、18世紀の風景式庭園、ピクチャレスク概念の起源は中国(庭園やそれ以前の詩人達の見立てた風景)にあるのだ、という意見を中国人の研究者からいただいていささか驚いたと共に、あらためて中国人の文化感覚というものを思い知らされたような気がした。僕は、いわゆるシノワズリが西洋文化に多大な影響を与えたことを確認しながらも、それが西洋自然主義の起源であるとする意見には賛同できなかったのであえてその点は言明を避けた。

これは、日本でも最近川勝平太のような人が英国庭園の起源は自然を尊重した日本庭園にあると言っていたりして、とうてい賛同できるものではない。どちらが先かなんてことはこの際重要じゃない。問題は「いまの風景」がいかなる「根拠」や「説得力」をもちうるか、いかに「リアリティ」を与えうるか、ということである。起源論をもち出したのは、そうなっていない(根拠がない)ということを言いたかったからだ。

Sunday, July 3, 2005
中国国家風景名勝区(いわゆる国立公園)及び世界遺産(自然遺産)指定の「泰山」(標高1532m)に登る(ただしバスとロープウェイ使用)。山岳全体がひとつの芸術作品であり文化財である。昼休み、お世話になった朴教授の研究室を訪問。午後、新学期から学生1万人が通学することになるという「山東農業大学新校区」を視察。すばらしい設備。

市街に戻り「岱廟」を見学。歴史に浸る。岱廟と泰山はワンセットの文化財で、古来中国の皇帝達がそうしたように、泰山参りは岱廟を起点に参道を歩くのが本来の姿。岱廟で写真集と孔子の名言をあしらった日めくり、及び玉製の彫り物2つほどを購入。夕食後、泰安市で一番の高級デパート「銀座商城」で陶製の人形を土産に購入。

Monday, July 4, 2005
山東省の西南に位置する曲阜市にある「孔廟」「孔府」「孔林」を見学。ずさんな管理状態。中国政府は文化財の保全・整備にお金をもっと廻すべきである。世界遺産が泣く。19:10泰安駅発の夜行列車が1時間30分遅れで出発。車内泊。

Tuesday, July 5, 2005
朝6時過ぎに青島駅着。サウナに入り朝食をとり、皆と別れてホテルを探す(僕以外の日本・韓国のメンバーはこの日帰国。僕だけ5日の便がとれなかったので1日延泊)。幸い、あたりをつけたホテルに空室があり午前中からチェックインできた。一休みして市内へ。今日は中国出張中唯一のフリーな日。

「青島海浜風景区」内(www.qdseaside.cn)にある魯迅公園、第一海水浴場等を見学。海沿いの遊歩道を歩いて租借時代の別荘地「八大関景区」へ。蒋介石の旧居宅「花石楼」等を見学。超高級住宅地で、いまではホテルやレストランになっている地所も多い。うっそうとした樹木や街路樹に覆われた敷地は最低でも200~300坪はあろうか。公園も至る所に配され、街角毎に警察官が立っているので安心して歩ける。花石楼で建築関連の写真集と絵はがきを購入。

一旦ホテルに戻り、朴さんと連絡をとるもつながらず、タクシーを呼んでもらい、一人で「桟橋」「中山路」へ。「天主教堂」「旧総督府(ドイツ)」等を見学。ドイツの建築様式をもつ租借時代の歴史的建造物群が残念ながらしだいに巨大な高層ビルに変わっていっている。修復を行っている登録建築物や旧様式風に改築するホテルや商業ビルなどもありかろうじて雰囲気が保たれている。

Wednesday, July 6, 2005
午前中、ホテル近くの「五四広場」を見学。沿道緑地帯(メタセコイアの5本列植)が気持ちいい木陰をつくりだしている。林床ごしに忙しいクルマの往来がみえる。ウィークデイの午前中だがゆっくりと木陰でくつろぐ人々あり。手入れの行き届いた公園の緑の芝生越しにそびえ立つ摩天楼。その多くは高級高層住宅や大手企業のオフィスビル。中国でもこのような風景が状態となりつつある。朝早くから係員によって芝刈りやゴミ拾いが行われ、手入れが行き届いている。かたや世界遺産、国の重要文化財に指定されている、貴重な歴史的文化財が荒れ果て、おざなりの維持管理しかされていない。この、新旧文物に対するケアの「質」の差がまずは大きな問題。

ついで、色々な面での都市のビジュアル面での「格差」。これも著しい。当然のことながらそこに住む人々の見かけの印象も異なる。経済特区に指定された都市や発展著しい都市と内陸部の小村、小都市の環境や景観の質の差は歴然としている。この、たぐいまれな「歴史の国」が経済に呑み込まれていく姿を見るのは辛い。どん欲な資本の目がギラギラと世界中からこの国に注がれている。みよ、世界の製造業が集中する中国の大都市郊外部はいまや「世界の工場」である。自国ではサステイナブルとか言って快適な暮らしをしている連中が、中国で荒稼ぎ。。。国、がだめなら、せめて研究者が発言すべき時ではないか。韓国の仁川(インチョン)経由で成田へ。

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