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東アジア・ランドスケープ研究会に寄せて

2010-02-05 | East Asia
早速ですが、なぜいま東アジアなのかを考えてみました。それは、「国」という単位ではなく、「東アジア」という空間的スケールで括ってみると、新たにみえてくるものがたくさんあるから。にもかかわらず、それらはあまり研究されていないからだと思いました。例えば、東アジア域内では異なっているようにみえる各国の伝統庭園も、グローバルにみれば、東アジア的な特徴を兼ね備えているはずです。また、現代の土地利用やランドスケープにもアジア的な共通性が認められます。気候帯を同じくする地域では植物相や動物相が類似していることはいうまでもありません。欧州では、域内のミクロな違いをふまえつつも、欧州として括れる特徴を必死に見いだそうとする姿勢が顕著です。東アジアにもグローバルに主張しうる個性があると確信しますし、またそれを主張しないと世界の他ブロックとの競争に打ち勝てません。グローバルには「違い」を、東アジアにおいては「共通性」や「関係性」を見いだす研究が重要と考えます。

一方、東アジアぐらいのスケールで考えないと、対処が難しい現実的な問題もあります。ランドスケープ関連の分野に限ってみても、環境保全や公害の問題、海洋資源・生物資源の保全、生態系や生物相の保護、観光振興の問題しかりです。文化遺産保護の領域では、国境を超える世界遺産やカルチュラルルートと称して進んでいる取り組み、例えばシルクロードの保全再生などがその典型です。私見ではこの他にも、仏教伝播や文化交流に伴う関連遺産の保全、中国を起点に日韓にも広まったいわゆる「八景」の保全再生等も魅力的なテーマだと思います。

こうした東アジアのランドスケープの特質や生態系サービスの実態を十分に認識したうえで、それらを基調として各地域の開発や土地利用管理が行われることが期待されます。それには、東アジアで比較・共有可能な空間情報の「データベース化」とそれを支える評価の視点、いわば共通の「モノサシ」を用意することが急務です。この研究会が果たすべきミッションはそのあたりにあると考えています。

東アジア・ランドスケープ研究会ニュースレター Landscape East Asia, Vol.2 2010年2月発行に掲載された拙文です)

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