Sketch of the Day

This is Takeshi Kinoshita's weblog.

社会正義とプロフェッションへの愛

2005-06-01 | Media
TOWN & COUNTRY PLANning, April 2005, Vol. 74 No. 4, TCPA
*A CITY GARDENER / by Colin Ward
フィラデルフィアを中心に活躍したコミュニティ・ガーデナー”カール・リン(Karl Linn)”という人物(の死)にちなんで、故人について触れたコラム。プランニング畑の人間、例えば、行政官、プランナー、教師等にとって、リンのような実務家は大切な存在である、と筆者は説く。なぜなら、「少なくとも、公的行為としてのプランニングが熱望するものと、それをただ単に彼らのささやけき夢への脅迫(あるいは無関係なもの)としてしか見ようとしない多くの民間人の認識とのあいだの深い断絶に気づいているからである」。

また、「(リンは)私の社会的正義(social justice)への関心と職能(landscape design)への愛をいかに両立させるかについて示してくれた」と、リンの死を伝えた記者を引用する。政治的レジテマシーという点において、ランドスケープというのはつくづく強い、と思う。マイノリティのためのコミュニティ・ガーデニングとそれを通じてのコミュニティ・ビルディングはその好例だ。筆者の見解は全く否定する余地のないものであるが、一方で、上記の断絶があるからこそ、「プランニング」という領域が成立し、そのためのプロフェッションが成立しうるのだとも思っている。

歴史学、考古学、そして空間学へ

2005-06-01 | Japan
Tuesday, May 31, 2005
*巣鴨地区の遺跡発掘調査に関する研究会@高岩寺十福苑
に出席、豊島区教育委員会の橋口定志さんのご講演を拝聴した。実に色々なことを考えさせられた面白い研究会だった。役所の中で教育委員会(特に文化財系)というのは独特な雰囲気をもっていて、なにかこう皆さん熱意をもって楽しげに取り組まれていて好感がもてる。どこの役所の教育委員会もおしなべてそんな印象を受ける。歴史学(こと)と考古学(もの)がタッグを組むとものすごいパワーを発揮するなというのが新鮮な驚き。もったいないのは、こうした調査研究の蓄積と地理学、建築や造園、土木の学が十分にリンクしていないこと。考古学が面白いのはそれが即「場所」や「空間」の問題として認知される(わかりやすい)から。その点、歴史学は空間論的展開が弱いけれど(←あたりまえ)、その辺がうまくビジュアライゼーションされると土地や空間の「見方」がとても豊かになる。しかし、これはむしろ地理学、建築・造園などの空間学の仕事だろう。であるからこそ連携が必要なのだ。そんなことを考えながら今日のお話を聞いていた。以下、箇条書き。

■植木屋と飯屋のワンセット。行楽の一形態としての植木屋めぐり。
■発掘調査と巣鴨軒別絵図、そして植木屋の地割り(敷地計画)の復元。
■巣鴨地区と地形・水系、仙川上水との関係。街道筋の水収支はいかに。
■江戸時代の土地改変。建て替えの度に盛土した江戸の町屋。

話者の橋口さんの所属する江戸遺跡研究会は実に豊穣な世界を我々に垣間見させてくれる。こうした研究の成果を我々はもっと現在のまちづくりに生かしていく必要がある。オンラインの会報誌が、またすごいテーマが並んでいる。特に以下は考古学のパワー全開といったところ。

発掘調査にみる江戸城下町の形成にともなう土地改変:菊池真
第16回大会「遺跡からみた江戸のゴミ」
豊島区巣鴨遺跡(仮称)藤和不動産マンション地区の調査-近世巣鴨町の植木屋:梶原勝