ひき続き、一般講演として、土浦協同病院の盛山先生のお話しについての感想です。
盛山先生は、とても人の良さそうな雰囲気の先生でしたが、「不適切な湿潤方法による被害。いわゆる“ラップ療法”の功罪」という題名で、かなり注目を集めていました。
以下まとめとして。
ラップ療法はMoist wound healingという近代創傷管理の理論にもとずいた治療法であり、適切に施行されれば、
早く治る。きれいに治る。痛みが少ない。手間がかからない。お金がかからない。
という画期的な方法です。
と言う話から始まりましたので、『否定派ではないんだ。』と言う事がわかりした。
現在、ラップ療法と言っても、ラップそのものを貼ると言うよりは、紙おむつをアナ空きポリ袋に入れて使う、OPWTと言う方法が主流になっています。
うちのステーションでも数年前から取り入れていて、現在は商品化されたモイスキンパットも合わせて使用し、効果が上がっています。
で、先生が言いたいことは、最近テレビや雑誌などで、ラップ療法のいいことばかりを誇張するために、医療者の正しい判断が無いまま、何でもかんでもラップを貼って、悪化させてしまうと言う事だそうです。
先生のスライドには、水痘に通販のラップ療法の被覆材を貼って、感染をおこし全身トビヒでとんでもないことになっている写真や、ヘルペスにラップを貼って悪化した例や、ASOの下腿のの創にラップを貼って重症化し、死に至った例などが挙げられていました。
褥創の例では、近医の指示で脊髄損傷のかたの座骨の褥創に、デブリを一切しないでOPWTを継続し、壊死組織が拡大して座骨 が露出している写真もあり、いわゆる悪い例ばかり見せて頂きました。(医師が断固デブリードマンを否定したため?)
(*デブリードマンとは、壊死した組織を外科的に取ってしまう処置の事です。以下デブリに省略)
先生は、
ラップ療法の適応は、壊死組織、感染のない増殖細胞である事。かつ、医療者の説明に十分な理解がある場合。
禁忌は、①壊死組織、感染のある炎症期創傷、
②末梢動脈疾患
③糖尿病などの易感染性の創傷
④原因不明のキズ
⑤持続的な便汚染のある仙骨・尾骨部褥創
⑥洗浄・処置が指示どうり施行できないと予想される場合
と言っていました。
②と③と④はわかりますが、①、⑤、⑥は、ちゃんとした管理をすれば、全然問題ないとおもいます。
むしろ、①と⑤はガーゼで処置するより、かなりの確率で改善しますし、⑥は誰がどんな方法でやっても、なかなか改善しないと思います。
昨日も書いたけれど、『何が何でも、ラップ療法だけでも直す!不良肉芽も自己融解を待てばよりきれいに治る!』という強硬派と、『衛生材料でもないものを使うなんてとんでもない。絶対ダメ!』という否定派のひと、私たちのように『別にこだわらなくても、いいとこどりでいいじゃん!』という中間派がいます。
私たちは、連携する皮膚科の先生とともに、OPWTでの治療法をやっていて、最近ではモイスキンパットを多く使いますが、経済的に大変な方や、浸出液が多かったり創が大きかったりしたときは、紙おむつ穴あきポリエチレンのパットを使用しています。
ただし、壊死組織がある時は皮膚科医にお願いしてデブリをしてもらいますし、このパットにユーパスタやプロスタンディンやその他の薬剤を塗ったりします。
フィブラストスプレーもスプレー後にこれらのパットで覆っています。
ガーゼだと、返ってガーゼ線維で創を傷つけたりしますし、体位交換でよれたりずれたりしますが、これだとあまりずれる事は無いですし、何より傷への摩擦抵抗が減少して、本当にしっとしたお肌になっていきます。
耳下腺腫瘍で、耳の後ろから頚部、顔面の一部の糜爛が広がっていた方の、苦痛の一つは、傷に貼りついたガーゼをはがす時の痛みや出血でした。
初回訪問と同時に、洗浄後モイスキンパットを耳がたにスリットを入れ、アズノールをたっぷり塗る処置に変えさせてもらいました。
奥様は、この方がやりやすいし、傷に貼りつかなくて良かったと、喜んでくれました。
糜爛は、数日で上皮化し始め、10日ほどでほとんど薄い表皮が張りました。
適応と監察、異常時はすぐに対応できる体制をとることが大切だと思っています。
会場は、もちろん県下の皮膚科医がたくさんいましたが、かなりの先生がラップ療法を在宅療養には必要であると感じているようでした。
ある医師が質問として「盛山先生は、悪化した例をたくさん見せて下さいましたが、逆に患者さんにラップ療法での治療を指示したことは無いのですか?」と聞きました。
『僕は、ラップ療法を否定しているわけではないので、もちろん改善例もたくさん持っていますが、今回は時間の関係で悪化例だけを見せるようにはなりました。ただ、自分から指示は…』と言葉を濁されていました。
増田先生の「感染例であっても、軟膏と併用すれば、十分効果は上がっています。」という発言もありました。
私も「医療用として製品化されたモイスキンパットはどうお考えですか?また、在宅では費用面や受診の困難な場合も多く、ラップ療法は在宅では重要な治療法です。」と発言しました。
先生は、「モイスキンパットも悪いとは思っていない。
医者でも、創を診れない医者はたくさんいるので、現場でたくさんの症例から、適応を判断できる看護師がいるのであれば問題ないと思います。」と答えてくれました。
つまり、ラップ療法自体は、皮膚科学会ではかなり認められていると言う事ですね。
ただし、使い方一つで、毒にも薬にもなるよと言う事のようです。
現在、間違った使い方をする人たちは、メディアの影響ををそのまま信じて、即行動に移してしまう方が多いです。
これはが『ラップ療法の功罪』と言う事のようです。
ちょっとばかり、題名が直接的過ぎてるみたいですね。
褥瘡学会でも喧々諤々だったそうですから、かなりホットな話題でした。
そういうわけで、全否定でなかった事は、すごくホッとしました。
あまりこだわりを持たずに、いいものどんどんとりいれたいなと思っています。
盛山先生は、とても人の良さそうな雰囲気の先生でしたが、「不適切な湿潤方法による被害。いわゆる“ラップ療法”の功罪」という題名で、かなり注目を集めていました。
以下まとめとして。
ラップ療法はMoist wound healingという近代創傷管理の理論にもとずいた治療法であり、適切に施行されれば、
早く治る。きれいに治る。痛みが少ない。手間がかからない。お金がかからない。
という画期的な方法です。
と言う話から始まりましたので、『否定派ではないんだ。』と言う事がわかりした。
現在、ラップ療法と言っても、ラップそのものを貼ると言うよりは、紙おむつをアナ空きポリ袋に入れて使う、OPWTと言う方法が主流になっています。
うちのステーションでも数年前から取り入れていて、現在は商品化されたモイスキンパットも合わせて使用し、効果が上がっています。
で、先生が言いたいことは、最近テレビや雑誌などで、ラップ療法のいいことばかりを誇張するために、医療者の正しい判断が無いまま、何でもかんでもラップを貼って、悪化させてしまうと言う事だそうです。
先生のスライドには、水痘に通販のラップ療法の被覆材を貼って、感染をおこし全身トビヒでとんでもないことになっている写真や、ヘルペスにラップを貼って悪化した例や、ASOの下腿のの創にラップを貼って重症化し、死に至った例などが挙げられていました。
褥創の例では、近医の指示で脊髄損傷のかたの座骨の褥創に、デブリを一切しないでOPWTを継続し、壊死組織が拡大して座骨 が露出している写真もあり、いわゆる悪い例ばかり見せて頂きました。(医師が断固デブリードマンを否定したため?)
(*デブリードマンとは、壊死した組織を外科的に取ってしまう処置の事です。以下デブリに省略)
先生は、
ラップ療法の適応は、壊死組織、感染のない増殖細胞である事。かつ、医療者の説明に十分な理解がある場合。
禁忌は、①壊死組織、感染のある炎症期創傷、
②末梢動脈疾患
③糖尿病などの易感染性の創傷
④原因不明のキズ
⑤持続的な便汚染のある仙骨・尾骨部褥創
⑥洗浄・処置が指示どうり施行できないと予想される場合
と言っていました。
②と③と④はわかりますが、①、⑤、⑥は、ちゃんとした管理をすれば、全然問題ないとおもいます。
むしろ、①と⑤はガーゼで処置するより、かなりの確率で改善しますし、⑥は誰がどんな方法でやっても、なかなか改善しないと思います。
昨日も書いたけれど、『何が何でも、ラップ療法だけでも直す!不良肉芽も自己融解を待てばよりきれいに治る!』という強硬派と、『衛生材料でもないものを使うなんてとんでもない。絶対ダメ!』という否定派のひと、私たちのように『別にこだわらなくても、いいとこどりでいいじゃん!』という中間派がいます。
私たちは、連携する皮膚科の先生とともに、OPWTでの治療法をやっていて、最近ではモイスキンパットを多く使いますが、経済的に大変な方や、浸出液が多かったり創が大きかったりしたときは、紙おむつ穴あきポリエチレンのパットを使用しています。
ただし、壊死組織がある時は皮膚科医にお願いしてデブリをしてもらいますし、このパットにユーパスタやプロスタンディンやその他の薬剤を塗ったりします。
フィブラストスプレーもスプレー後にこれらのパットで覆っています。
ガーゼだと、返ってガーゼ線維で創を傷つけたりしますし、体位交換でよれたりずれたりしますが、これだとあまりずれる事は無いですし、何より傷への摩擦抵抗が減少して、本当にしっとしたお肌になっていきます。
耳下腺腫瘍で、耳の後ろから頚部、顔面の一部の糜爛が広がっていた方の、苦痛の一つは、傷に貼りついたガーゼをはがす時の痛みや出血でした。
初回訪問と同時に、洗浄後モイスキンパットを耳がたにスリットを入れ、アズノールをたっぷり塗る処置に変えさせてもらいました。
奥様は、この方がやりやすいし、傷に貼りつかなくて良かったと、喜んでくれました。
糜爛は、数日で上皮化し始め、10日ほどでほとんど薄い表皮が張りました。
適応と監察、異常時はすぐに対応できる体制をとることが大切だと思っています。
会場は、もちろん県下の皮膚科医がたくさんいましたが、かなりの先生がラップ療法を在宅療養には必要であると感じているようでした。
ある医師が質問として「盛山先生は、悪化した例をたくさん見せて下さいましたが、逆に患者さんにラップ療法での治療を指示したことは無いのですか?」と聞きました。
『僕は、ラップ療法を否定しているわけではないので、もちろん改善例もたくさん持っていますが、今回は時間の関係で悪化例だけを見せるようにはなりました。ただ、自分から指示は…』と言葉を濁されていました。
増田先生の「感染例であっても、軟膏と併用すれば、十分効果は上がっています。」という発言もありました。
私も「医療用として製品化されたモイスキンパットはどうお考えですか?また、在宅では費用面や受診の困難な場合も多く、ラップ療法は在宅では重要な治療法です。」と発言しました。
先生は、「モイスキンパットも悪いとは思っていない。
医者でも、創を診れない医者はたくさんいるので、現場でたくさんの症例から、適応を判断できる看護師がいるのであれば問題ないと思います。」と答えてくれました。
つまり、ラップ療法自体は、皮膚科学会ではかなり認められていると言う事ですね。
ただし、使い方一つで、毒にも薬にもなるよと言う事のようです。
現在、間違った使い方をする人たちは、メディアの影響ををそのまま信じて、即行動に移してしまう方が多いです。
これはが『ラップ療法の功罪』と言う事のようです。
ちょっとばかり、題名が直接的過ぎてるみたいですね。
褥瘡学会でも喧々諤々だったそうですから、かなりホットな話題でした。
そういうわけで、全否定でなかった事は、すごくホッとしました。
あまりこだわりを持たずに、いいものどんどんとりいれたいなと思っています。