こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
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在宅医療勉強会その1 「尾道方式」

2010-09-09 22:25:47 | 訪問看護、緩和ケア
今夜は、年にいちどの神奈川県皮膚科学会在宅医療勉強会へ行ってきました。

この会は、毎年皮膚科の往診医である「いずみの皮膚科」の増田先生にお声かけしてもらって出席しています。
神奈川県皮膚科医会の勉強会でありながら、在宅医療の仲間として、訪問看護ステーションも呼んでもらえるのは、すごくうれしいことです。

毎年すごい講師の先生方が、本当に面白い講義をしてくれるので、スタッフも心待ちにしているのです。
憧れの日本褥創学会の真田弘美先生にも、ここで何度かおあいしたり、直接質問できたりと、私たちにとっては毎回すごく勉強になります。

そして今日の講演は二つ。

特別講演 「地域医療連携における在宅医療と多職種協働 ~開業医のチームが可能にする高度在宅医療」
   尾道市医師会会長・片山医院院長  片山 壽 先生

一般公演 「不適切な湿潤療法による被害・いわゆる“ラップ療法”の功罪」
   土浦協同病院 皮膚科医長 盛山 吉宏 先生


面白しろそうですよね~。
題名見ただけで絶対聴きたいと思いました。

一つ目は、地域でかなり完成度の高いチーム医療をしていることで有名な、あの「尾道方式」の先生です。

そして、一般公演のテーマ!

「“ラップ療法”の功罪」という文字に目が釘ずけに。
ラップ療法は、昔は私たちも見向きもしませんでしたが、数年前からそのエビデンスや、実際に活用して成果を上げている人からの話も聞いて、私たちもとりいれてやっていますし、それなりの成果もあげています。

ただ、この療法には「何が何でもラップ療法だけで、デブリもしないで自己融解させて治す!」という強硬派と、「絶対そんなものは認めない!」という反対派と、「うまい具合にいいとこどりで使えばいいじゃん。」という中間派がいて、皮膚科学会でも褥創学会でも論争の絶えない治療法です。

これが最近テレビや雑誌でさかんに取り上げられるようになって、いいことばかりを並べたてるメディアの影響で、かなりの弊害も出てきており、中間派の私たちにとっても興味しんしんのテーマなんです。

・・・が、「“ラップ療法”の功罪」と言う文字には、かなり否定的なイメージがあり、あんまり一方的なら意義申し立てをしようと意気込んで出席しました。

まずは、特別講演。
尾道でのチーム医療のすごいところは、医師会が主体となって地域の中核病院や訪問看護ステーション、ケアマネなどとスクラムを組んで、かなり集中的な在宅高度医療を提供しているところですね。
うちの地区は、医師会がこんなに各科の先生と連携して一人の患者さんのために、何度も会議をひらいたり、在宅医のチームで退院前診察をしたり、何人もの在宅医や病院の医師やレジデントや、複数の訪問看護STの看護師などと一同に会して往診したりはできませんから・・・。
まして、大きな病院の医師が退院した患者さんの家にちょくちょく診察に訪れたり、会議に何度も出席したなんて話はついぞ聞いたことはありません。物理的にも無理があります。

数人の先生が、それぞれのスタンスで在宅医療をやっていますし、チーム医療としてはすごくいい活動をしていると思っていますが、さすがに15分ずつとはいえ、そうそうカンファレンスを全員でするというのは難しい話です。

片山先生は言います。
「在宅に移行する時は、タイミングをはずさない。『もうちょっとこれが落ち着いたら』ではだめ。すぐに動くこと。」と。

これは、確かに同感です。
一日、二日延ばしにしているうちに、結局帰ることが出来なくなってしまった患者さんをたくさん見てきました。
やっと連れて帰ってきても、すぐに亡くなられてしまった時には、「こんなに良く見てもらえるのだったら、もっと早く連れて帰ればよかった・・。」と泣かれるご家族もいます。


「高度在宅医療は、高いQOLを提供できるものでなければいけない。」
本当にそう思います。
QOL。
その人らしい暮らし。いつもの生活。家族の声。穏やかな笑顔。
在宅の一番素晴らしい所は、それを提供出来ることだと思います。

でも、それにはそれを支えるプロがいないと出来ないわけで、そういう試みをいろんなところで、いろんな人たちが頑張っているんだなとおもうと、すごくうれしいことですね。

尾道方式はもちろんすばらしい在宅医療であるとおもいますが、これに関しては地域性や人口、病院の数、エリア、医師のスタンスなどいろんな条件が全く違いますので、そこそこの地域に一番良い方法を模索して、作って行く必要があると思います。

片山先生は、一人15分でカンファをやって、毎日のように往診しているそうですが、たとえばめぐみ在宅の先生方は、一人の患者さんにたっぷり時間をとってお話しますし、往診はあるていど定期的に訪問しています。(病状や経済状態によって、増やしたり減らしたりもしています。)


その地域で一番求められる方法が、あると思うのです。

ただそれには人材の確保と、高い志を持った在宅療養のプロフェッショナルの育成が必須なのだと思います。

高い志といっても、頭でっかちの理論だけじゃなくて、医療者である前に、人としての優しさや想いやりや礼儀がないと、独りよがりの自分のための援助になってしまうので、そこだけ間違えないような教育が必要ですよね。

片山先生の最後の言葉がとても心に残りました。

『医学は科学。 医療は物語』

なるほど。
誰もがみな主人公・・・。っていうことでしょうか?

一般公演の「不適切な湿潤療法による被害・いわゆる“ラップ療法”の功罪」に関しては、明日ゆっくり書きますね。
面白かったので。