こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
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「あきらめさせないパーキンソン病治療」を聞いてきた!

2013-09-30 22:35:28 | 訪問看護、緩和ケア
先週、パーキンソン病の講演会に、スタッフ8人で行ってきました。

一般講演はとにかく、特別講演は本当に感動ものでした。

東海大学医学部 内科学系神経内科准教授
 高橋 裕秀先生「あきらめさせないパーキンソン病治療:その実践」

ちなみに、主催は大塚製薬で、パーキンソン病の新薬で24時間血中濃度を安定的に保つことで、パーキンソン病のスイッチのon/offの改善が画期的に改善されるという「ニュープロパッチ」の紹介から始まりました。

そうですよね。
パーキンソン病の患者さんは、スイッチのOFFが恐怖なのです。

本当にこれが効果的なら、うちの患者さんたちだって、すごく良くなるかも・・・。
今後の成果に期待しつつ、高橋先生の講演です。


高橋先生のお話では、現在特定疾患となっているパーキンソン病は、近い将来特定疾患から外される可能性が高いということでした。
パーキンソン病の患者数の増加で、国が負担する医療費をかなり圧迫していることに起因するらしく、もっと希少疾患を手厚くするためにも、検討されているらしいのです。

先生は言います。
「パーキンソン病は、どんどん進行して、10年後には歩けなくなる。と思っていませんか?
そんな説明をする医者がまだいるのが現状です。
でも、諦めてはいけない。病状に見合った治療をすれば、10年経っても社会参加をすることはできます。」と。

先生は、パーキンソン病の初診時の動画をずっと撮っています。
そして、治療の経過も撮影しています。

初診時、前傾姿勢で腕を振ることなく、小さく片腕を震わせながら、すり足歩行をする患者さんも、車椅子で連れてこられ、両脇を抱えられてやっと立ち上がる患者さんも、1ヶ月後の診察時の動画では、みなスタスタと歩いているのです。
そんな動画をなん例も示しながら、適量のLードパを中心に管理することで、社会復帰ができるのだと力説されていました。(それでも効果がなければ、DBSという脳刺激手術があります)
社会復帰まで行かなくても、日常の生活が普通に営めれば、必要以上に医療費や介護保険を使う必要もなくなり、国の負担をも減らすことができ、たとえ特定疾患から外されてもなんの問題もなくなるというわけです。

私たちには処方に関することはよくわかりませんが、Lードパがパーキンソンの薬だということは知っています。
けれど、日本で一般的に使用される容量よりも、かなり多い量のL-ドパを、1日数回に分け生活状況に合わせて量を変えて処方するそうです。
L-ドパは副作用の多い薬という認識は、全くナンセンスで一番安全な薬であり、ジスキネジアさえ注意して投与すれば、とても効果的であるとしています。

実際の動画を見て、感嘆の声が上がったのは言うまでもありません。

先生は、検査内容も病状から判断して、一般的によく行われているMRIなどの検査も、全く必要のない検査は最初からやらないと言っていました。

何を疑って、何を検査し、何を使うか。
シンプルで的確、これぞ名医って感じでした。

けれど、看護師の私たちが一番感動したのは、患者さんに対する先生の姿勢でした。

診察室に入ってくるときの足音、姿勢、ごくわずかな指の震に気づくのです。
そして、今までの先生がちゃんと聞いてくれなかった、患者さんの訴えにきちんと耳を貸し、そこから真実を見抜く力。
はっきり物を言うし、他の先生に対しても、「そこが違う!」と言っちゃう先生。
でも、患者さんに対して、「俺が治す!」という信念が感じられる素敵な先生でした。

現在横浜近辺では、パーキンソン治療の専門家を求めて、東京の大学病院などに通っている方が多いそうです。

でも、この地域の人の病気は、この地域の病院で治すべき、と先生は言います。

そのために、地域に分けて講演活動をされているそうですが、残念なことにこの日集まった医師は10名にも満たなかったと思います。

それも、神経内科の先生はほとんどいらしゃらなかったのではないでしょうか。

先生は、現在若くて意気込みのある医師を集めて、事例検討会を主催していると言います。
本当にこういう意気込みのある先生が、沢山育ってくれれば、今苦しんでいる人たちがどれほど救われるかと思うと、「先生たち、ちゃんと勉強してよ!」と思ってしまいます。

うちの患者さんの多くは、スイッチのオン・オフに苦しんでいたり、主治医の心無い言葉に怒ったりしています。
まずは、もっと患者さんの声を聞いて欲しい。
パソコンの画面ばかり見ていないで、患者さんに触れて欲しい。

先生が怖くて、何も言えない患者さん、たくさんいますから。
無神経内科なんて陰口、患者さんから叩かれたりする先生もいますし・・。


本当に偉いのと、偉そうなのとは、こんなに違うんだな〜。と思いました。


これでいいのかな?

2013-09-26 22:54:06 | 訪問看護、緩和ケア
どこのサービス事業所でも同じだけれど、人が変わるとその事業所の雰囲気や方向性も変わってしまいますね。
いい意味でも、悪い意味でも、「あれ??今までこんなことはなかったのにな・・。」なんてことがあって、よくよく考えるとトップが変わっていたり、担当者が変わっていたりします。

特に、連携のあり方などは、一番よく感じるところです。

「あ・うん」の呼吸で欲しい情報をお互いがやり取りできていたかと思えば、いくら伝えようとしても、何故かうまく伝わらなかったり、肩すかしをくらったり・・。

時には、すごく険悪な空気になってしまったりすることもあって、その間合いの詰め方に四苦八苦することもあります。


そういえば、電話の対応など、基本的な礼儀の部分でも、ちゃんとしているところと、驚くような対応をされるときがあります。
これは、個々の常識の問題かもしれないけれど、自分の事業所のスタッフが会話している時の話し方は、なんとなく聞こえてくるだろうに・・とか思います。

今日もうちの事務が憤慨していました。

「いつもお世話になっております。○○訪問看護ステーション事務のです。ケアマネの○○さんいらっしゃいますか?」
「いません!」
「え?いらっしゃらないのでしか?」
「いません!」
「もうお帰りになったのですか?」
「そうです!」

憮然とした声でそう言われたそうです。

「いません。」は、在籍していないのか、今たまたま席を外しているのか、もう帰ったのか。
この電話は、急を要するのか、あとでいいいのか。
かけ直せばいいのか、かかってくるのか。

全くわかりませんよね。

こんなのはもう論外ですが、いつもの連携先なのに、毎回毎回折り返しの電話をもらうのに、電話番号を聞かれるのもなんだなぁと思ったりします。

折り返し電話をするために、相手の電話番号を聞くというのは、一般的には常識ですが、同じ案件で何度もやり取りしていたり、まして日常的に連携関係にある相手に、電話番号を毎回聞くなんて、失礼な気がして私にはできません。
聞きなれた相手の事業所名ですし、すぐに一覧から探し出せばいいだけですから。


そんなことでいちいち腹を立ててもしょうがないとは思いますが、なんだかちょっと気持ちが凹んだりするのは私だけでしょうか??


そういえば先日、最近あまり関わりの少なくなった事業所の、よく知らないケアマネさんに、訪問看護のご依頼があったことを連絡しました。
ご家族からのご相談で、近所のクリニックが訪問診療を受けて、そこからの指示書で訪問が決まり、ご家族とも連絡を取って、医療保険での訪問看護で入ることになったのです。

電話をするとまず「え??訪問看護ですか??・・どこから指示書出たんですか?」という意外な言葉。

「あ、○○クリニックからですが・・。」
「え?僕は、そこじゃなくて△△クリニックを紹介したんですけど。」
「奥様が、ご自分で調べてこちらを選ばれたそうですが・・聞いていませんか?」
「あ、でもご家族が選ばれたのならいいんじゃないですか。」
「で、○日に初回訪問で入ります。医療保険での訪問看護になりますので、よろしくお願いします。」
「あ、そうですか。はい。」

そうして、そのケアマネさんからのご連絡は、その後一度もありません。
○○クリニックにも、そのケアマネさんからは、一度も連絡はないそうで、一体連携とかをどう考えているのかなぁ・・と首をかしげるばかりです。

(第一、どういう根拠で在宅の主治医を選んで紹介しているのか、まして受け入れの可否も確認して紹介しているのか、その後の経過も把握できていないのは変ですね)

普通はどこのケアマネさんでも、たとえ医療保険で入るにしても、必ず連携体制でお互い情報を交換しますし、多くの場合は医師や訪問看護の初回訪問に同席されるのが普通です。

そうでなければ、病状や今後の方針などを予測して計画するのは難しいのじゃないかと思うのですが・・。

いいのかな??
これから訪れるであろう、終末期のいろいろな変化を、もう把握しているのかな?
たくさんの不安を抱えている患者さんや奥様に、どうやって向き合っていくのかな??

時々、ありゃりゃと思うことがありますが、まあ色んな人がいるということですね。


今は、新患さんが立て込んで、勤務表とにらめっこの毎日ですが、お仕事いただけることは、ありがたいことなので、一生懸命頑張りたいと思っています。

嫌なことばかりじゃないし、昨日の夕方急遽入った95歳のおじいちゃまに、今日はとっても喜んでもらえて、「家族にも見せない笑顔を見せて、よっぽど気持ちよかったのね。毎日来てほしいって、言い出すんじゃないかしら。」と娘さんに言ってもらえました。
ずっと私の手を握って離さなかったおじいちゃんの顔を見て、嫌なことも吹っ飛びました。





地域のいろいろ

2013-09-19 23:32:32 | 訪問看護、緩和ケア
今日は一日、ばたばたとして過ごしました。
審査会に行って、新患さんの初回訪問に行って、お弁当を取りに行ってから、瀬谷区・西部病院訪問看護連絡会に滑りこみ、合間にみんなでお弁当を食べてから、ケアマネと訪問看護師の交流会まで、なんだかめまぐるしい一日でした。

本年度の瀬谷区訪問看護連絡会は、区の高齢障害課の働きかけもあり、「ALSの支援」をテーマに例年より拡大枠で行うことになっています。
連絡会は、有志の訪問看護ステーション管理者と区の高齢障害課、西部病院ホームケア、ケアマネットから3名、さらに今年は強い味方として、毎回横浜リハビリテーションセンターから3人の出席があります。

ALSに関しては、名前だけはかなり有名になって、時々メディアでも取り上げられます。
ルー・ゲーリック病なんて言われていたこともあるようです。
世界の頭脳ホーキンス先生や、日本では徳田虎雄さんなど、現在もこの病気と闘っています。

神経難病として、不治の病として、絶望的な宣告を受けた人々が、それでもなおその苦難と戦っているわけですが、その支援はといえば、苦難と向き合う人の前では、本当に無力感でいっぱいになります。

医療職ですら、手探りのような支援ですから、病気そのものを知らないケアマネジャーや介護スタッフは、一体どうすればいいのか、何がわからないのかもわからない状態だと思います。


私たちの地域にも10名以上の患者さんがいると言われており、今後高度医療の進む中、在宅に戻られる方はどんどん増えていくのだと思います。
そんなわけで、今年は区の依頼もあり、ALSに焦点が絞られたのです。

そして、プレゼンの順番は、一周回って、とうとう私に回ってきてしまいました。

なので、この連絡会が始まるまでに、毎回スライドの原案を作っていかなくてはならず、あれもこれも中途半端に手をつけている私の首は、どんどんしまっていくわけです。

今回は、その会議の終了後そのままケアマネと看護師との交流会に数メートルだけ移動して、グループでの話し合いが持たれました。

会場を見渡すと、なるほど知らないケアマネさん、やたらたくさんいます。

もちろんいつも見慣れたお顔もたくさんあって、ちょこちょこ情報交換などもしつつ、グループディスカションとなりました。

が、時間的にかなり少なくて、実際発表したグループは3箇所くらいでしたか、ちょっと物足りない感じが残りました。

もうちょっと地域で、関係性について話し合えればいいのにな・・なんてことを考える暇もなく終了しました。

地域の中で、これだけのケアマネさんのなかで、実際組んで仕事をするのは、本のひとにぎりですよね。

いい関係性で、あ・うんの呼吸でタッグを組めるケアマネさんがもっと増えたら嬉しいのだけれど。

より温かい地域になれますように。



在宅皮膚科勉強会

2013-09-17 23:26:17 | 訪問看護、緩和ケア
今年も、神奈川県の皮膚科学会主催の在宅皮膚科勉強会がありました。
去年の勉強会は「疥癬」で、とても面白くてこのブログにも報告させてもらいました。
けれど・・
残念ながら、今年は緊急当番で私は出席できず、参加した4人のスタッフからの伝達講習となりました。

なので、伝達の伝達ということになります。

今回は、褥瘡についての最新の情報を聞かせていただくというとで、かなりワクワクしました。

基本的なことは置いといて、体位交換の時間についての検証結果は興味深いものでした。

褥瘡の予防のための体位交換ですが、ずっと昔から2時間おきと習ってきましたが・・・
なんとこれはかなり昔の、しかも動物実験の結果から導き出されたものだそうで、人間で検証したわけではないのだとか。
で、実際人間様で近年検証した結果、概ね4時間を超えなければ、問題ないことがわかったそうです。

しかも、今では競って褥瘡予防の耐圧分散マットの開発が進んでいます。

もともと、在宅では夜間の体位交換なんて「やらなくていいです。」と言っていた私たち。
やっぱりそれでいいという裏付けが出来たわけですね。

そうです。褥瘡は清潔なおむつと、清潔なリネン類、適切な耐圧分散マットと、確実な保清がなされれば、どんなに寝たきり高齢者でも、ほとんど出来ないのです。
一度出来てしまうと治すのに時間を要しますし、栄養状態にも左右されますから、とにかく作らない!のが一番の治療というわけです。

で、もし出来かけてしまったら何がいいのか。

私たちは、ちょっと赤くなっていたり、薄ーく皮がむけたりすると、アズノールとかアズノールボチとかを塗ったり、骨突起部や表皮剥離にフィルム材を貼ったりしています。

で、今回の先生曰く「ボチがいい。」とのこと。

ボチとは亜鉛華軟膏のことです。

白くてべっとりしていて、一件石膏のように見えますが、これはとてもすぐれもので、在宅でもいろんな使い方をしてきました。

うちの皮膚科往診医は、ステロイド剤の上にボチシートで重ね塗りをする処方を良くしますが、本当によく治ります。

で、今回の先生曰く、「ボチはべっとり分厚く塗る。そして、無理に落とそうとせず、そっと洗い重ね塗りをする。」ということでした。
確かに、ボチは油性なのでとにかく落ちにくので、オリーブオイルとかでそっと拭き取らないと取れません。
でも、これは無理に取らない。

そして、ポイントと思われるのが、おむつ交換の回数を、減らすということです。
尿の回数を、その人ごとにチェックして、可能な限りあいだを開ける。
(もちろん濡れて汚れれば変えるのは原則ですが。)
不要なおむつ交換をしないことで、おむつ交換をする際の連れや摩擦を避けるわけです。

今は、吸収量がよくて皮膚に優しいおむつもたくさんありますから、うちでは夜間のおむつ交換は、便が出ない限り無理に介護者が起きてしなくてもいいですよ(^-^)と言っていましたから、これも嬉しい報告です。

あとはポジショニングですね。
きちんと除圧をする。

モルテンから出ている「セロリ」という除圧クッションが、介護保険の適応になるし、おすすめとのことでした。

また、それでも出来てしまった褥瘡の処置に対して、私たちはモイスキンパットを使用していますが、この先生はモイスキンパットと同様の使い勝手で、もっと安価なものがるよと教えてくれたそうです。

それはスミス・アンド・ネフュー ウンド マネジメントのメロリンという衛生材料です。

先生曰くモイスキンパットよりかなり安くて、効果は同様とのことでしたので、探してみると、アスクルでも扱っているものでした。

構造的には似てはいましたが、写真で見る限りモイスキンパッドよりかなり厚いですね。
この厚さが、仙骨などでは逆に圧迫の原因になりそうで、ちょっと不安です。

中心部はコットンとポリエステルで、高分子吸収体は使っていないようで、その分厚みが出るし安くなるということなのでしょうか。

とにかく、褥瘡は廃液管理が重要で、ドライになりすぎず、ぐちゃぐちゃにもならないように管理することが大事ということです。

ちなみに、ガーゼは論外です。まず使いたくないですね。

で、価格を比べてみましたが、先生が言うほどそんなに大きな価格差は感じられませんでした。
これから、メーカーにも確認するつもりですが、厚さや使いかってを考慮して、それでも安さが勝つようなら、ウチでも取り入れてみたいと思っています。
というわけで、新しい情報はどんどん聞きたいし、取り入入れられるものならば、取り入れていきたいなと思っています。


呆然・・

2013-09-16 22:03:31 | 訪問看護、緩和ケア
ある日の緊急当番、初日から夜間の救急搬送から始まり、日中も救急搬送をし、翌日には夜間にカフティポンプのトラブルで緊急訪問、その翌日も日中の緊急訪問などで、ちょっと嫌な<憑き>を感じていました。

こういう時の週末は、予期しないことが起こるのです。

深夜1時半、緊急電話の賑やかな着信音に、あわてて飛び起きると、携帯からはYさんの息子さんの声がひどく慌てて飛び込んできました。

「今、母がベットから半分落ちていて、吐いていて・・。もうだめだと思うんです。もう、だめだと思うんです!どうしたら・・どうしたらいいか。病院に連絡どうすればいいのか・・。」

「落ち着いてね、私が病院に連絡するからあなたは救急車に電話して!」
「は、はい!わかりました。」

声は緊張と不安でパニック状態になっているのが分かりました。


あとは救急隊に任せるしかありません。


結局、その夜Yさんは、帰らぬ人となりました。

その夜、電話を切ってから私は呆然としていました。
眠気はどこかに行っていしまって、ただ「こんな最後を迎えさせたくはなかった。なんで、こんなことになったんだろうか・・」
そして、誰も頼る人もいない、あの息子さんは、今ひとりでどんな思いでいるのかと・・

どうにも収まらない動悸を、安定剤で押さえ込んで眠りにつきました。

本当に、ぎりぎりの線で頑張っていたのを知っています。
食事の支度から、インシュリンの調整、オムツ交換に通院の介助。

いろんな試練があって、いろんな問題を抱えて、それでも最後まで自分で看取ると言っていた息子さんです。

認知症もどんどん進み、病状もあまり芳しくはなかったけれど、それでも頑張っていた・・

10日ほどまえに、愛犬に逝かれてしまって、とても落ち込んでいた息子さんです。

往診医の話は何度も出ました。
でも、踏み切れなかったのには、きっと経済的なことも理由にあったかもしれません。

でも、もう少しあと押しすれば、せめて検屍などということにはならなかったのではないか・・。

あんなにひとりで頑張っていたのに・・。

担当の看護師に伝えました。
本当によく支えていましたから、その衝撃はかなり大きかったと思います。
随分と落ち込んでいました。

私たちの思いはいつも一緒です。

穏やかに、見送るご家族も納得できる最後を迎えられるようにするということ。

だから、往診医に移行するタイミングや、状況の変化に早く対応できるように、先回りして環境も調整していくのです、

でも、こんなふうに突発的に起こる出来事には、本当に無力です。
呆然としてしまいます。

せめて、残されたご家族の話を聞くことぐらいしかできないのです。

そして、一生懸命介護してきた息子さんが、自分を責めることのないように、それだけは伝えていかなければなりません。


思いゆえに重くなる。

2013-09-04 19:52:49 | 訪問看護、緩和ケア
うちのステーションの気風というか、そういう仲間が集まってしまったというか・・。
みんな自分の受け持ちの患者さんに、本当に真剣に向き合っていきます。

難しい患者さんになればなるほど、皆真剣に悩むのです。

でも、それが時として大きな重さとなって、担当者自身にのしかかっていく事があります。

出口の見えない八方塞がりの受け持ち患者さんを、なんとかできない焦り。
どんなに自分が頑張っても、当の患者さんやご家族にわかってもらえない焦り。
一緒に支援する仲間との些細な言葉のやり取りで、思わず傷ついてしまう悲しみ。
それらすべてを、自分が抱えてしまうことの恐さと重さ。
そして、それを分かってもらえない孤独感。

ゴメンネ。
うまく声をかけてあげられなくて。
ちゃんとフォローしきれていないね。

時々噴出する、そんな苦しみを抱えたスタッフを、支えきれていない自分に私もまた焦りを感じてしまうのです。

でも、私は信じています。

絶対に、乗り越えられる。

もちろん、一緒に足並みを揃えて、一緒に考えていくから。
絶対に、ひとりで悩まないで。
できれば、声に出して私に伝えて欲しいけど、思わず流してしまう涙。
一人にしないように、支えていきたいと思っているから。

でも、でも、もしこの辛い状況を乗り越えて、最後までこの患者さんを見送ることができたら、きっとものすごく成長するのだろうと思います。

一緒に頑張るから、乗り越えて一回り懐の深い訪問看護師になって欲しい。
ていうか、きっとなれると信じているから。


「苦しんでいる人を支えるのは苦しい。誰かを支えようとする人こそ、一番支えを必要としています。」

これは、連携先のクリニックの院長のキャッチフレーズです。
昔、いのちの授業で講演をした先生に、講演を聞いた学生が感想文に書いた言葉だそうです。

本当にそう思います。

だからみんなで支えあわなければいけないのです。

みんなで分かり合って、みんなで支えあって、乗り越えていこうね。

どうか、曇り空に綺麗な晴れ間が見えますように。




プロの仕事だね!

2013-09-02 22:04:50 | 訪問看護、緩和ケア
毎日、心身ともにくたくたで、PCを開ける気力もない日が続いていましたが、今日はすごく嬉しい話を聞いて、ちょっと元気が出たし、久々に伝えたい!と思いました。

何気なくうちのヘルパーさんとケアマネの会話が聞こえてきました。

ヘルパーA「○×さん、最近お肌ピカピカになりましたよねー。やっぱりあれですね。お風呂。」
ケアマネ「そうそう、すごいよねー。16%から57%だものね。みんな頑張った!やっぱお風呂だよねー。」

「???なんのこと?誰のこと??」

改めて説明を聞いてものすごく嬉しくなりました。

実は、○×さんは介護拒否がとてもひどい方です。
その日のご機嫌しだいで、布団をかぶって返事もしません。
認知症はかなり進んでいて、感情失禁も激しく、かなり攻撃的な方です。
特に入浴拒否は激しくて、ヘルパーさんの声掛けにも、10回に1回か2回しか入ってもらえない状況が数年続いていました。

そのため、夏場は汗疹も悪化して、痒くて痒くて皮膚をバリバリとかきむしる状況でした。

そんななか、改善案を検討したそうです。

まず、時間は絶対に変動させないということです。
そして、訪問したヘルパーは「ご機嫌ノート」を必ずつけることとしました。
これは、認知症のご利用者様の訪問中の様子と、声掛けの内容などを書きながら、経時的な変化も簡単なグラフ化するものです。

ヘルパーさんが、入った時の様子、声かけ、その反応を大まかに記入します。

いつ、どのような状況で、どのようなアプローチをした時に、○×さんが入浴してくれるかを、そこから読み取ります。

すると、声掛けのタイミングと回数がとても重要だということがはっきりしました。

感情の激しい方で、ひどく拒否をされるとヘルパーさんもそれ以上おすすめできずに、ほかの活動に置き換えてしまいがちです。

でも、短期記憶がかなり短く、感情の変化も多いので、会話の中で頃合を見て再度おすすめすると、すんなりと入ってくれることが明確化されました。

活動に入っているヘルパーによって、その声掛けの回数やタイミング、上手に誘導する流れが違うことから、全員で声かけを増やし誘導方法を検討した結果、2回に一回以上の確率で入浴することができたのです。
その結果が、皮膚トラブルのないピカピカのお肌というわけです。

当然、声掛けが上手になれば、関係性も向上するわけですから、この歴然とした結果を聞いて、本当に嬉しくなりました。

こういうことって、言うは易しですが、実際活動するスタッフに徹底してもらうって、すごく大変なことだと思うのです。

プロとして、認知症を理解し、検証してアセスメントする。

今の介護職に、最も欠けているものではないかと思います。

ちなみに、このご機嫌ノートの活用は、うちのケアマネからの提案です。
でも、当のヘルパーさんの意識が低ければそれは実行にいたらなかったでしょう。

サービス責任者の統制力と、スタッフの意識改革のなせる技と、わたし的にはとても評価できるお仕事と思いました。

できれば、これをきちんとまとめ、症例報告をして欲しいとも思いましたし、うちのヘルパーをみんなにつかってもらいたいと強く思いました。


在宅の仕事は、まだまだグレーゾーンが多くて、無資格者だけでも成り立ってしまう場所があることはこの前も書きました。
しかし、こういう専門的な検証ができて、統計的なアセスメントができ、その結果を成果に結び付けられるということが、介護職の専門家だと思うのです。

今、在宅医療はかなり進歩してきています。
その進歩について行くために、訪問看護師も日々勉強をしなければなりません。
しかし、在宅はあくまでの生活の場ですから、きちんとした知識を持った介護職の育成が早急に望まれるのです。
そこがスキルアップしなければ、医療だけでは在宅を支えることはできません。

うちのヘルパーさん、ブラボーです。
そう拍手を送ると、すごく嬉しそうに「頑張ります!」笑顔で答えてくれました。
やっぱ。プロだねェ。