こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
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在宅の褥瘡について、あれこれ考える。その2

2015-02-14 23:53:39 | 訪問看護、緩和ケア
明日書くといったからには書かねばなりません。
今日は、夕方から3時間半に及び防災の初動シュミレーションを区役所でやっていて、これもなかなか考えさせらてたのですすが、今日はやはり在宅褥瘡の続きです。

うちはラッキーなことに、開所当時から素敵な腕のいい皮膚科医と連携できていて、この18年相当数の在宅の褥瘡患者さんを治癒の方向に持っていくことができました。
とはいえ、どうにもならない終末期の褥瘡や、在宅での限界例などもありました。

また、いろいろな患者さんの褥瘡と向き合う中で、主治医や皮膚科医の同意や協力もあって、随分といろんなことを試させてもらったし、新たに導入させてもらったものも多くて、本当にありがたい環境にあったと思います。

在宅の褥瘡で一番多いのは、仙骨部で、ついで大転子部、踵、腸骨部あたりに多く見られるようです。

ではなぜ仙骨部が多いかといえば、上向きで寝ていた時に、一番体重が係る部分だからです。そこに、おむつを使用していると、便や尿で汚染されますし、そのおむつをなかなか変えられなければ蒸れとかぶれであっという間に褥瘡となります。
一般的には、ここで「体位交換をしましょう。おむつ交換を豆にしましょう。」になるのですが、ここで体を引きずったり、おむつを無理やり引き抜いていたりすると、良くなるどころか、褥瘡の周囲の皮膚の下に断裂が起こって、ポケットと呼ばれる状態になります。

この原因であるズレや圧迫、湿潤環境をそのままにしていくら外科処置をしても、どんどん褥瘡が拡大していき、どんどんポケットが広がっていくわけです。

ですから、布団の人はベットにして高機能タイプのエアマットを導入したり、ポジショニングを工夫したり、入浴や洗浄などで皮膚の清浄を図ったり、おむつ交換を頑張ってもらったりと、一つ一つ環境因子を改善方向に持っていきます。

ですが、これがうまく行く人ばかりとは限らないのが在宅です。

介護者の状況によっては、1日に1回しかおむつ交換していなかったとか、数日に1回しかしていなかった人もいて、びっくりしたりします。

いくらデブリをしてお薬を塗っても、そのガーゼの上からおしっこやうんちが付いたままになれば、そりゃあ屎尿便パックにしかならないので、良くなるわけもありません。

ここ近年、ガーゼの弊害も一般的に知られることになり、各社競って褥瘡用のドレッシング材が出されていて、しかもちゃんと保険適応にもなっていますから、ケースバイケースでそういうものをチョイスしていければ、より治癒の促進になるとは思うのです。

よく褥瘡ができて病院を受診すると、不良肉芽の浸軟させるためにゲーベンクリームが出されます。これを不良肉芽の上にたっぷり塗って、柔らかくなった汚い組織を少しづつ落としていく薬で、入院中とか入所中でよく管理できる場所ではとっても効果的だとは思うのですが、この薬はブロメラインなどと同じで健常な皮膚に炎症を起こすことも知られています。ですから、たっぷりゲーベンを塗ったガーゼを仙骨部に絆創膏でビッタリ貼って、おむつ交換が少ない環境で置くと、ガーゼと薬と浸出液と尿でパックされた褥瘡の周囲が真っ赤にかぶれたりするのです。
さらに、この状態で上手に体位交換が出来なかったり、ベットのギャッチアップ、ダウンを繰り返すと、皮下が剪断され7ポケットも形成されます。

こういう褥瘡は浸出液も多いので、ビッチャビっちゃになりますが、これはこれでしょうがないわけで、ここにガーゼを厚く乗せるとガーゼが浸出液を吸う代わりに傷がドライになる傾向になり、さらにガーゼの厚さが圧迫の原因になり、ガーゼの部分が血流障害を起こしたり、ガーゼの繊維で傷をつけたりすることもあります。
これは、デュオアクティブなどの創傷被覆材でも起きることがって、そのドレッシング材の形に圧迫痕が残ることをよく見ます。

浸出液の多いデブリ後の褥瘡などは、吸水性の高いユーパスタとかが、結構良いような気がします。ただ、ユーパスタはやはり傷をドライ傾向にするので注意は必要だと思います。
抗菌効果でいえば、ユーパスタよりヨードコートとかカデックスなどのほうが徐放効果で殺菌力は継続するそうです。
他にもいろいろあるのですが、どれを使うかは主治医が決めるわけですから、それを使うしか私たちは方法がないわけです。
ただ、その環境や介護力、家族関係などの背景からチョイスしてもらえないとよくはならないし、時間が長引くだけだということです。

また、高齢者は栄養状態もあまりよくないですし、病的骨突出や介護状況の差が大きいので、長い目で見ていくことも必要だと思います。
浸出液は多くて当たり前で、徐々に収まっていくし、デブリをしてもスラフはできるわけで、無理に急いで取らなくても、必要な処置をしていれば、ちゃんと綺麗になってくるわけで、いじりすぎるのもかえって良くないと思うのですが、どうなんでしょうね。

そういえば、先日のセミナーで「最近褥瘡などの創傷に入浴や足浴をしてはいけない、と言われることが多くなったけれど、経験的にはよくなった人はいても悪くなった人はいないので、どうなんでしょうか?」と質問してみました。
この日の講師である形成外科の先生は「僕も悪くなった人は見たことがない。よほどの場合以外、入浴や足浴は効果的だと思うし、どんどんやっていいと思います。」と言われました。
一体何が本当かはわからないけれど、骨や体腔に達するような褥瘡以外は、綺麗な環境できちんと入浴なり足浴をして、ちゃんと泡立てた石鹸でよく洗い、シャワーできっちり流してから処置をしたいな・・と思います。(これも主治医しだいですが)

これはあくまで私が思ったことなので、実際はそれぞれケースバイケースでちゃんと分析、評価してみてくださいね。

在宅の褥瘡について、あれこれ考える。その1

2015-02-13 01:01:34 | 訪問看護、緩和ケア
本当に、お久しぶりです。
最後に更新してから、なんと2ヶ月も経ってしまいました。
いろんなことがありすぎて、PC開くこともできず、いろんなこと書きたいのに、伝えたいのに、結局そこから逃げてしまう毎日です。
今日は、久しぶりにパソコン開いたので、最近思うこと書こうと思います。

褥瘡のこと、いろいろ考える機会がありました。

神奈川県在宅皮膚科勉強会が主催する在宅褥瘡研究会には、毎回声をかけていただいて、本当に勉強させていただいています。
去年の秋の時だったと思うのですが、講演のなかで平成26年の診療報酬改訂の在宅患者訪問褥瘡管理指導料についての説明がありました。
簡単に言うと、在宅褥瘡チームによる在宅での褥瘡治療が行われた場合は、所定の計画に乗っとて行うと管理料を加算できるよ、というものです。
ただし、このチームは他職種であること、専門の医師がいること、そして在宅褥瘡管理に係る専門的知識・技術を有する褥瘡管理者がいることが義務付けられています。
この褥瘡管理者は、認定看護師はもちろんですが、日本褥瘡学会のセミナーを受講し、d2以上の褥瘡の症例報告を5例提出して審査を通過した医師または看護師のことです。
この時の講師の先生から、ぜひ皆さんとってくださいと言われ、すぐにその気になりました。
実際、管理者になったとして、この算定基準を満たすチームができるかどうかはわかりませんが、自分がこの地域で褥瘡管理者として在宅の褥瘡に向き合っていきたいという衝動に駆られたわけです。(そう、私は褥瘡を見ると治したい!病になるんです。)

そんなわけで、1月に新宿で開かれた日本褥瘡学会の在宅褥瘡セミナーに早速参加して、つい昨日郵便局から5症例と申請書類を投函してきました。結果は、まだ先の話ですが、おかげでしっかり復習したり、いろんな情報を知ることができました。

褥瘡と一口に行っても、病院や施設で管理する褥瘡と、在宅の個別の環境や家族背景に大きく左右される褥瘡管理とでは、本当に月とすっぽんくらい違うわけです。

褥瘡だから絶対治すのかといえばそうではなく、現在の病状や家族の意思、予後など含めて「治すことにとらわれない」褥瘡もあるので、最初にそこをある程度見極めないと、医療者だけが空回りすることにもなります。

患者さんやその家族が何を求めるのかにもよるのです。

とはいえ、基本私たちはなんとか治そうとします。
ここには、やはり在宅患者をとりまくチームプレイが重要になります。
これがうまくいかないと、褥瘡もちゃんと治ってくれません。

正直、褥瘡は環境に起因するものが大きくて、介護力や介護知識、介護環境が整わなければ、どんなにいい薬を上からぺたぺた塗っても良くなりませんから、これはもう私たち訪問看護師やケアマネ、ヘルパー、訪問入浴のスタッフなどの力が絶対的に大きいわけです。
なので、褥瘡の治療をする医師との間に信頼関係がないと、なかなか円滑に治療が進みません。

褥瘡を治療するにあたっては、まずその在宅の環境をアセスメントして、その原因を知ることから始まります。
これには、ブレーデンスケールとか、OHスケールとか、在宅版K式スケール、褥瘡危険因子評価表などがあって、点数化していくことで定期的に評価していくわけです。
そして褥瘡そのものを評価するものにDESIGNがあります。
重症度分類と、経過表とがあって、最近では経過表はDESIGN-Rで評価しています。

面倒くさいのですが、これらをちゃんとつけながら、写真もとって管理していくと、いろんなものがちゃんと見えてきますし、あとて振り返った時に、なるほどよくわかります。

なんか、ごちゃごちゃ面倒な話ばかりですが、ここから私が言いたいことなのです。
でも・・、もう真夜中丑三つ時になってしまったので、続きは明日ということで、ごめんなさい。

イベントいろいろ

2014-12-13 00:49:00 | 訪問看護、緩和ケア
なんだかんだ、もがいているうちに、今年も終わりですね。
勉強会はじめ、イベントいろいろありましたが、今日は年に一度の瀬谷区訪問看護連絡会主催の在宅医療・介護セミナーでした。
瀬谷区訪問看護連絡会は、瀬谷区内の訪問看護ステーションと、瀬谷区ケアマネット、区の高齢障害担当、基幹病院の聖マリアンナ医科大学横浜西部病院ホームケアとで構成されていて、毎年ケアマネやコメディカル対象に医療・介護のセミナーをやっています。
12回目の今年は「統合失調症」をテーマに、区内の精神訪問看護ステーションからのケース発表と、長谷川式の長谷川先生の息子さんである長谷川浩先生の講義「統合失調症におけるアドヒアランス」を目玉に、行政からの精神疾患に対する制度・社会資源の紹介など盛りだくさんのセミナーとなりました。
精神疾患と訪問看護は、切っても切れない関係です。
精神訪問看護の指定をとっていなくても、実際訪問が始まったら実は精神疾患も持っていましたとか、介護者が精神疾患をもています、なんてことは普通にあるからです。

ケアマネやヘルパーも同じで、今日も「認知症の母親のケアマネですが、息子さんが統合失調症で支援が必要で、自分が抱えることではなくても、ずっと関わってきている。」という発言があったりしました。

そういう関わり方では、大切な情報がもらえないまま、かと言ってほおっておくわけにも行かず、途方に暮れてしまうわけで、どこにどうやって支援を繋げるのかなど、ケアマネさんたちも知りたいお話です。

とはいえ、精神疾患の関わり方といっても、長い目で見つつ身近いスパンで目標設定しながら関わるとか、疾患を理解した上で、長い時間をかけ受け入れてもらうとか、なかなか抽象的で実際ケースバイケースで関わる難しさがありますよね。

とにもかくにも、100名くらいは参加者がいたと思いますが、年々盛況になっているこのセミナー、来年はもっと趣向をこらせたらいいなぁ・・と思っています。

そういえば、11月29日には「訪問看護サミット2014」に行ってきました。
泉区の管理者と一緒に、1日目の午後からパネルディスカッションと記念講演を聞き、企業展示を見てきました。
企業展示って本当に面白くて大好きです。
その時期の最維新の情報が手に入ったりしますし、ケアに関してもたくさんのヒントがみつかります。
そして一番嬉しいのが、サンプルをたくさんもらえること。

あっちのブース、こっちのブースでいろんなサンプルもらって、うちの患者さんに紹介できるものはないかと見て回るのは、なかなか楽しいです。

ちなみに、今回は事前に決めていたパルスオキシメーターのパルソックスを2台購入しました。パルスオキシメーターはピンからキリまであって、1万円程度の安いものから上はきりがありませんが、大体4~5万円前後が医療者が使うものじゃないかと思います。
最近は、JIS企画がないとダメってことで、安いパルスオキシメーターが投げ売りされたりしているらしいですが、うちは呼吸器の患者さんも多いし、故障しにくいものじゃないと困るので、あまり安いものは買いません。

それと、本を一冊書い、サンプルはあちこちでもらい、テルミールのアイスを食べ、名刺交換をして、最後には足のマッサージ器を買ってしまいました。
一緒に行った管理者も、会場で会った管理者も、みんなで買っちゃいました。
看護師って、思いっきりhがいいんだなーと感心したりして・・。
だって、いくら安くなってるって言っても、9万超なのでやっぱり思い切った衝動買いですよね。
まあ、自分へのご褒美ということで、夫と毎日使っています。

パネルディスカッションも、記念講演もすごく面白かったので、いくつかのキーワードをここでご紹介しようと思っていたのですが、さすがに夜中になってしまったので、近日中にまた書こうと思います。

自分の知らないこと、知らない世界、知らない言葉。

なるべくたくさん吸収したいなと思います。

手枷足枷、動きが取れない今日このごろですが、なるべく出ていきたいなーと思っています。

いつか・・・。

2014-10-28 23:39:30 | 訪問看護、緩和ケア
秋の柔らかな日差しが、窓越しに小さな陽だまりを作り、ベットの足元を優しく温めています。
随分とやせ細った腕が、ピンクの花柄のパジャマからすっと伸びて、電動ベットに寄りかかったままで、ハードカバーの本をしっかりと支えていました。
すっかり真っ白になった髪は、無造作に一つにまとめられていて、肩の横に流れています。
「こんにちは、お加減いかがですか?」と部屋に入ると、パタンと本を閉じて、柔らかな笑顔で迎えてくれるのです。


私も、来年初めには孫が生まれる年齢になりました。
時々、友人とも「年をとったね。」なんて話をします。

それでも、老人と呼ばれる年齢までは、まだも少し時間がかかります。

もし、その年齢まで命があったとしたら、どんな年寄りになっているのかと、時折考えてしまいます。

今までの人生で出会ったたくさんの人々。
この仕事おかげで、お年寄りと呼ばれる人々にも、人並み以上に接する機会がありました。


だからこそ、こんな年の取り方をしたいな・・と思うことがたくさんありました。
もちろんその反対も・・です。


100歳を間近にして、今でも静かに本を読む時間を持ち、豊富な知識や話題を持って、なおかつ相手に不快感を与えない女性に、スタッフはすっかり憧れています。

いつもニコニコ笑顔を絶やさず、「ありがとう。」をたくさんくれる可愛らしい人もいます。

たぶん・・自分の生きてきた人生そのものが、そこに凝縮されて来るのだと思います。

それでも老いてゆく自分を受け入れていくのは、時には悲しかったり、辛かったりするのかもしれませんが、私が出会った素敵な人生の大先輩たちを目標に、素敵な老人を目指したいと思っています。
たとえ、認知症になったとしても、少なくともニコニコ可愛い人でいたい。

いつも穏やかな笑顔を忘れず、「ありがとう。」の気持ちをもって、誰のせいにもせず、誰を羨むこともなく、泣いたり騒いだり、大声を上げて威嚇することもなく、周囲の人々に感謝の気持ちを持ち、悪口や陰口を決して言わず、痛いときには痛いと言って、出来ない時には誰かに委ねて、それでも自分を卑下することなく、今ある自分を認めて精一杯生きる。
そんな年寄りに私はなりたい。


確かに面倒だけど・・・

2014-10-08 23:58:33 | 訪問看護、緩和ケア
介護保険では必ずつきものの担当者会議。
確かに面倒ですよね。
ケアマネのお仕事の中でも、担当者会議の日程調整も大変だし、会議そのものよりも、終わったあとのまとめやらプランの変更やらで、かなりの時間と労力を余儀なくされますから・・。(ーー;)
私は、元来事務仕事が苦手なので、ケアマネに必要な書類を揃えたり、まめに細かく支援記録を書いたり、この担当者会議をやったり、正直とてもしんどいので、3人ほどしかケアマネ業務はしていません。

そんな私が言うのはなんですが、やっぱり担当者会議は大事です。

大きく状態が変わって、環境のこと、これからのこと、サービスの変更もろもろ必要な時に、担当者全員が同じ方向で支援をできるようするためには、お互いの情報交換と、目標の共有を図る必要がありますから。

だから、関係するサービス事業所に連絡をして、家族にも了解をとって、一同に会して会議をするための準備をして・・と大忙しとなるわけです。

なので最近では、サービス導入時にケアマネさんが紹介がてら同席して、「これを担当者会議にしてください。」と言われることが多いです。

サービス導入時はそれでいいのですが、経過の中で急変や状況が大きく変わったとき、看護師としてはみんなに状況理解をして欲しくて、さらにはプランを考え直して欲しくて、担当者会議しませんか?って提案することがあります。

多くはケアマネさんも状況をわかっていて、そうしましょう!ということになりますが、ちょっと迷惑そうにされることもあって、困ってしまうことがあります。

「この時間しか設定できませんでしたから、そちらもこの時間に合わせてください。」とか言われてしまうと、なかなかそこに時間を合わせるのは至難の業となってしまいます。

まして、病状変化があって緊急訪問やら点滴やらといろいろあって、今後も病状不安定な患者さんの場合だと、出ないわけにはいきませんよね。
「時間は決まっています。出れないなら紙面照会でいいです。」と言われても、こんな状況で紙面でどうするのか、状況をちゃんと伝えなくていいのか・・と考えてしまいます。

結局担当看護師は出れないので、私がなんとか出るように調整したりしますが、今問題がどこにあって、どのサービスの情報や見解が必要なのかを考えれば、まずそこから都合を抑えるのが筋だと思うのだけれど、どうも視点が食い違うこともあって、時間調整に四苦八苦したりします。

実際の担当者会議でも、進行の仕方にもいろいろあって、全体を把握出来ている熟練したケアマネさんだと、本当にスムーズに話が進みますし、最初に設定した時間内にきちんと収まります。
これは慣れの問題かもしれないけれど、担当者会議に「あ〜でもないこーでもない」で1時間以上も(下手をすると2時間近くも)延々とかかってしまう場合もあって、いつ抜けようかそわそわしちゃうことさえあります。
会議の進行の仕方も、もっとケアマネ研修でやったほうがいいのかもしれませんね。

実際、担当者会議の時期が重なったりして、沢山ご利用者さんを持っているケアマネさんは本当に大変ですから、なるべくしのごの言わずに出たいとは思っていますが、たまーにちょっと「?!」と思うこともあって、つぶやいてみまいた。

なので、逆に困難事例を山ほど抱えて、てきぱきと奔走しているケアマネさんには、本当に頭が下がります。
何より、信頼できるので安心して訪問看護を提供できます。

訪問看護もそうですが、現状何が問題で優先順位はどこにあるのか、問題をどのように解釈して意見をまとめ目標をたてるのか、を自分の中で整理できていることが大切ですね。








万年人手不足

2014-09-24 23:44:37 | 訪問看護、緩和ケア
この業界、万年人手不足で看護師さんは金の卵状態です。

大きな病院の人事担当者は、地方の看護学校まで青田刈りに出かけ、結構な支度金を積んで勧誘するなんて話も聞いたことがあります。

そんな現状をビジネスに変えて、医療職の就職斡旋会社がひっきりなしに電話をかけてくるし、お金あげるから転職しよーよ!みたいなCM作ったりもしています。

おかげで、働きながら他のもっと条件のいいところはないかなーと待っているNSは結構いるのかもしれません。
登録しておけば、好条件で支度金までつけて話を持ってきてくれるわけで、売り手市場のこの業界では結構な登録数になるんじゃないかと思います。

でも、でも・・・
うちが求めているのは、訪問看護をやりたい人なわけで、優先順位が好条件一番の人では、たぶん難しいと思うのです。

そこで求められるのは、スキルはもとより強い志なわけです。

訪問すれば1対1で向き合わなければならないし、そこに正しい知識と経験とスキルがなければ、患者さんを危険な方向に導く可能性もあるし、深く傷つけてしまう可能性だってあります。

でも、それを恐れて向き合えないのであれば、これはもう訪問看護はできません。
怖い怖い、わからない、不安、自信がない。
では済まないのがこの仕事です。

それでもなぜ、この現場で頑張っている訪問看護師がいるのかといえば、それは魅力的だからです。
たくさんの出会いのなかで得られる、熱い思いであったり、深く考える時間であったり、看護をするという喜びであったりするわけで、その場所が在宅にあることで、その関わりはさらに患者さんを取り巻く人々にも広がっていくからです。

なーんて理屈っぽくなりましたが、要するに訪問看護をやってみたい!やりたい!という人が欲しいのです。
斡旋会社は一度利用しましたが、やはり短期で止められてしまい、もう二度と使う気にはなれません。
人を介してではなく、自分で扉をたたいて欲しいのです。
訪問看護がやりたくて扉を自分で叩いた人で、訪問看護が嫌いになった人は今までうちの職場ではいませんでした。
うちを退職しても、どこかで訪問看護を続けています。

訪問看護がやりたい人、手を挙げてくださいな。

孤独の受け止めは人それぞれ

2014-09-24 00:01:50 | 訪問看護、緩和ケア
ひとりで暮らすこと、ましてや一人で死ぬことはどれほど不安なのだろうか。
絶対に怖いし、不安だし、さみしいに違いない・・と、ついつい思ってしまうのだけれど、最後まで一人の方が楽な人だっている。

うん十年前、私は6年ほど一人暮らしをしていて、そりゃあ、気は楽だったし今から思えばストレスなんてほとんどなかったように思える。
でもその間に恋人と別れたりして、一人の生活が続くに連れて「私って悲しいほど自由だわ・・」なんて浜省の歌の題名を自分のテーマにして自虐ネタにしていたりした。
つまり私には、到底一人で死んでいくなんて事はできっこない。

これまでだって、何人かの独居の方のお見取りもしてきたけれど、みなヘルパーさんが入っていたり、近所の人が顔を覗かせてくれたり、縁者が来てくれたりしていた。

でも、看護師と医師以外は来て欲しくなくて、ずっと一人でフラフラになっても洗濯したりタバコを吸ったりしていて、毎日吐血や下血をしても、放っておいてほしくて、看護師にも用が済んだらとっとと帰って欲しくて・・・そして一人で逝ってしまった人がいたときに、最後が一人は悲しい話ではないのだと納得した。

もちろん不安はあったと思うけれど、それよりも一人でいることを選んだのは、やっぱりひとりが良かったのだろうとしか思えない。

選択肢はいっぱいあったし、経済的にも問題はなかった。

ただ、頼れる人はいなかったのだと思う。

誰かに委ねるということは存外難しくて、赤の他人に特に体を晒すことや、家の中で活動されることは、やはり抵抗はあるのだろう。
突発的に倒れて亡くなる場合は別として、これから近い将来の死に方を考える時に、なかなか選択するのは勇気がいるとは思うのだけれど。

そうは言っても、私なんて入院中は恥ずかしいより痛いほうがずっと勝っていて、座薬は毎晩お願いしていたので、これも気力の問題なのかな・・。

などなど、いろんな過去を背負って生きてきた人と縁あって出会って、その人の最後の時間そばにいさせてもらう仕事をしていると、毎回色々と考えてしまう。

先日100歳近いおばあちゃんが、いよいよ老衰で危ないという時に、ふと目を覚まして「お迎えが来たけど、断っておいたよ。」と言って笑った。
それから、おばあちゃんは何日もあちらとこちらを行ったり来たりしているけれど、いまだに頑張れているのは、基礎体力なのか気力なのか、家族の力なのか・・。
本当にすごいことだと思う。

ちなみに、先日在宅皮膚科勉強会で管理栄養士の先生がこんなことを話してくれた。
「高齢者は糖はほとんど使わないのよ。よく寝たきりの人でやせ細っていて、食事も取れず点滴もろくにしていないのに、ずっと頑張っている人がいますよね。
あれは、ケトンを使っているんです。だから高齢者に糖はいりません。炭水化物はいらないからタンパク質と脂肪が大事!」

みんなで顔を見合わせて納得。
なるほど-。目からウロコが・・。

日野原先生も食事で炭水化物はほとんどとっていないのだそうです。
そしてステーキを食べて今日も元気。

話が飛んでいるけれど、老衰と言われる域に達すると、死は悲壮感が薄れ、大切な儀式のような、どこか優しい時間のなかに置かれているような気がするのは私だけなのか・・。


死を前にすると、たくさんのことを考えてしまいます。


在宅CVポート管理のおさらいをしてみた。

2014-09-14 23:40:22 | 訪問看護、緩和ケア
先日あまり関わりの少ない病院から、在宅IVHの患者さんをお引き受けしたときのこと。
初回訪問に伺って、ルートと針の差し替えをしようとして物品を確認していたら、フラッシュ用の生食が見当たりませんでした。

ご家族に聞いても、これが全部ですとのこと。
しょうがないので、その日はルートの液を針に満たして刺し替えをして帰りました。

すぐに病院連携室に連絡し、フラッシュ用の生理食塩水がなかった旨を伝えると、連携室のナースは「それは必要ですか?今までどこのステーションにお願いしても言われたことがなかったですが・・」とのお返事が・・。
うーむ・・

これって私がおかしいの?

いやいや、そんははずはない。
近隣の病院からは、必ず生食は頂いていますし、第一フラッシュしないのはおかしいですよね。
いろいろ調べてみても、やはり針は生食でプライミングしてからポートに刺し、逆血確認してフラッシュしてからルートに接続でいいはず。

よくよく聞くと、まだ配属されて短いとかで、特に大きな病院ではポートの差し替えはドクターがするそうなので、よくわからなかったようです。
お願いをして次の受診時にはちゃんと持たせてくれました。

それにしても、ほかのステーションさんはどうしていたのかなぁ・・。

これでやれって言われればそれでやるのか、黙ってどこからか調達していたのか、なんで黙ってやっていたのかが一番の不思議でした。

うちの新人さんも臨床にいたのがだいぶ昔で、日進月歩の医療処置は不安です・・。と言っていたので、急遽株式会社メディコンさんにお願いして、ポート管理の勉強会をしてみました。

ポートは一般的にほとんどの場合鎖骨下に設置します。

                       
皮下にこんな感じで埋め込まれているわけですね。

このまあるいポートの中心部にセプタムと呼ばれるシリコンゴムの部分があって、このシリコンゴムの下が薬液を注入するための空洞になっていて、そこに針を刺すわけです。

ポートからは鎖骨下静脈にカテーテルがつながっていて、このカテーテルの先端部がオープンエンドカテーテルかグローションカテーテルかによって、管理方法が違ってきます。

先端をスパンと垂直に切っただけの筒状のカテーテルをオープンエンドカテーテルと呼び、このタイプはカテーテル内で血液が固まりやすいのでヘパリン生食を充填することで血が固まって詰まることを防ぎます。
一方、先端は閉鎖していて側面に切込が入っており、注入するときと吸引するときに弁のようにスリットがひらくものをグローションカテーテルといいます。
これは注入、吸引時以外は弁が閉鎖しているため血液が固まって詰まることがないので、生理食塩水の充填だけで大丈夫です。一般的にはこのカテーテルが多いように思います。

ポート自体も逆流防止弁があるものとないものとがあり、逆流防止弁のあるタイプのポートで逆血をしようとすると弁が壊れることがあるので、どのタイプのポートが入っているか、カテーテルは何を使っているかは、事前の確認が必要ですね。
ただ、一般的には逆流防止弁のないタイプのポートとグローションカテーテルを使っていることがほとんどなので、手技としては穿刺時には軽く逆血を確認後フラッシュを必ず行うことが必要です。
ネット検索すると、逆血を確認したピストンは、血栓を押し込まないよう新しく交換するというものがありましたが、在宅では抗がん剤を注入するわけでもないので、うっすら逆流が見られたら、そのまま押していいとのことでした。
また、この時のフラッシュはパルシングフラッシュといって、生理食塩水を数回に分けて注入をします。これは、カテーテル内で乱流を起こし洗浄力を高めるもので、この方法でフラッシュを確実に行うことで閉塞を予防することができます。

そういうわけで、必ず針を交換するときには生食ピストンを針に接続してプライミングをし、穿刺後は逆血確認、パルシングフラッシュ後にルートを接続します。

                 

ちなみに、ポート用の針もたくさんありますが、最近多いのがメディコンのヒューバープラスノンコアリングニードルです。
これは、針刺し事故防止のため、抜針時に両翼をつまみながら抜くことで、自動的に針が折り畳まった翼の中に収納されるものです。

でも、これ今まで大嫌いだったんですよね。
なんというか、穿刺時も抜針時もうまく力が入らなくて、すごくやりづらく感じていました。
でも、どうやら正しい持ち方がわからなかっただけみたいです。
持ち方の説明書もいただき、みんなで実際デモを行い納得しました。


まあ、現実的には人それぞれ体の状態も皮下脂肪の量も違い、固定方法も個別に考える必要がありますが、とにかく一度初心に戻って振り返るのも必要ですね。

病院と違って、新しい機器が入るたびに説明してもらえるわけではありませんから、追っかけ勉強しないとついていけなくなりますね〜(^_^;)

そうそう、在宅皮膚科勉強の今年のお題で「褥瘡の栄養管理」がとても面白くて目からウロコでしたので、また近いうちにご紹介しますね。
それではこのへんで。

ご無沙汰ですが、せん妄のこと。

2014-09-07 17:38:38 | 訪問看護、緩和ケア
ブログの更新を忘れているわけじゃやないけれど、書かなくちゃ!って言う強迫観念は薄れて、ずっと放置していました。
マイペース、マイペース。

9月1日から仕事に復帰して、結構辛いんじゃないかと思いきや、一日お仕事しても横になりたいとか、痛いとかいうのは全くありません。今のところ・・。

で、1日から初回訪問をして普通の訪問も入れて、すでに新患さんの相談が毎日のようにあるのは、ありがたいやら焦るやらの日々です。

そんな中でも、ポートのフラッシュをめぐり???という事が有り、サイドお勉強をしなおそうじゃないかと、来週の勉強会も企画しました。

そして、昨日は近くのクリニックで「せん妄」のお勉強会があり、参加してきました。

主催はめぐみ在宅クリニックですが、講義は岡山大学のせん妄対策チーム精神科リエゾンチームの皆様方です。

今回は、がんターミナル期のせん妄にどうアプローチをするかというものでした。
DVDを見てから「せん妄」とはどういうものか、認知症との鑑別、薬物療法の簡単な講義をうけ、お休みを入れてグループごとにアプローチ方法をロールプレイでやってみるというものでした。

グループは3人ずつ、患者家族役、医療者役、観察者になって交互に体験するというものです。


実際、せん妄と認知症とどこが違うか言ってみてといわれると、ちょっと言葉につまる私でしたが、なるほどすこしですが理解できましたので、復習がてら簡単にまとめてみます。


せん妄は、何か原因があって、注意障害や意識障害があらわれます。
通常は短期間で、日内変動があり、時に幻覚があったり、意味不明の行動をとって家族を驚かせます。

昨日まで普通だったおじいさんが、まるで夢遊病のように「家に帰らなきゃ」などと言って外に行こうとしたり、壁に虫が這ってるなどと見えないものが見えたり、日にちがわからなくなったりします。
昼夜が逆転も多く見られ、夢うつつの「寝ぼけた」状態と言われています。

よく入院した夜から急に不穏になって、壁におしっこをしようとしたり、会社に行くと言って点滴を引き抜いたりしたひとが、自宅に帰るとケロリと治ってしまったりすることがありますよね。これも典型的なせん妄で、環境の変化や不安な医療行為を除去して治ったということですね。


評価ツールはたくさんあって、ネットで「せん妄・評価ツール」でたくさんヒットしてきます。
中でも、福島大学の先生のPDFはすごくわかりやすかったので、見てください。

せん妄の評価のポイントは
1.日にち・場所の障害(見当識障害)がある。
2.単語の再生の遅延がある。(たとえば、「梅・車・はさみ」を繰り返させて、しばらくあとからもう一度聞いても繰り返せなかったり、なかなか出てこなかったりする。
3.計算の障害  100から7を順番に引いてください。ができない。

脳波を取ると、徐波と呼ばれる特殊な波形が出ます。


認知症の場合は、時間をかけて潜在性に進みますが、せん妄は数時間から数日のあいだで原因を除けば消失します。
認知では近時記憶障害であり、せん妄では注意集中困難となります。

また、せん妄の中でも過活動型せん妄と低活動型せん妄、混合型せん妄があり、低活動型せん妄はしばしば見落とされます。
ターミナル期の患者さんに多く見られるせん妄は、低活動型せん妄なのだそうです。

せん妄は引き金となる直接因子と起こりやすい素因である準備因子、促進・遅延化させる促進因子が有ります。

準備因子としては、高齢で認知機能障害が有り、重篤な身体疾患があり、頭部疾患の既往や過去にもせん妄を起こしたことがあるなどです。
こういう因子を持つ方に、不用意に睡眠薬などを投与することでせん妄を引き起こすことがあります。
このため、せん妄ハイリスク患者のための睡眠導入が必要となります。

直接因子は①身体疾患 ②薬剤 ③手術で、オピオイドも注意が必要です。

促進因子としては、痛みや拘束や脱水や苦痛などで、精神的な不安や抑うつからも促進されます。
また、手術室や入院、場所の変化、明暗、騒音なども要因となり、不眠や睡眠障害も因子の一つです。

これらの因子をなくしていくことだ第一の治療であり、原因を見極めて環境を変えたり、もとの病気の治療をしたり、上手な声かけをするだけでもおちついたりします。


たとえば、昼夜逆転して昼にウトウトしても、昼に寝かせるのではなく、昼夜のメリハリを付け、昼は明るくして日時のはっきりわかるカレンダーや時計を置き、何気なく日付や時間を意識つけたり、よるは真っ暗にせず足元の明かりをつけて、自分が今どこにいるかをわかるようにしておくなど、意識の混乱がないような環境を作ることも大切です。

また、医療的には血液検査などで、電解質以上や代謝異常がないかなど、意識障害をきたさないような管理が必要になります。


それでもひどい時には有効な薬剤がありますので、内服や場合によっては注射でも治療できます。薬剤名に関しては、ここでは書きませんが、レセプトが通るもの通らないものがあるし、病気によっては使えないものもありますから注意が必要だそうです。

そういうお勉強を聞いたあとで、家族がせん妄状態となり、「頭がおかしくなったのではないか?」と不安がる家族に、ちゃんと説明して安心させることができるような練習・・ということで、ロールプレイをやってきました。

みんな役者でさながら家族の不安と驚きを表現していましたよ。(^_^;)
もちろん、医療者役もどうしたら分かり安く理解していただけるかと、パンフレットを見せたりしながら、短いドラマを演じていました。

半日かけての勉強会でしたが、岡山大学の精神科チームの先生方は、とても謙虚でしかもハートの熱い先生方でした。





救急要請で考え込んだ。

2014-06-25 00:01:03 | 訪問看護、緩和ケア
しばらく前の事。
ターミナルで自宅療養中の患者さんから電話がありました。
痛み止めを飲んで寝てしまい、目が覚めたらお母さんが息をしていないというのです。

読んでも、揺すっても起きないし、息もしていない。
助けて!!

悲痛な声に、私はすぐに彼女の家に向かいました。

私が着くと同時に、お母さんのケアマネさんも到着しました。
救急要請は済んでいるとのこと。

ご高齢で血圧も高かったお母さんです。
最近では足の調子も悪いと聞いていました。

動転している彼女の布団のすぐ横で、籐椅子に座ったままのお母さんは、すでに心肺停止の状態で亡くなっていました。

彼女が眠っているあいだに、おそらく突然に、あっという間に逝かれてしまったのでしょう。

その時点ですでに少なくても30分以上は経過していると思われ、私はそのまま救急隊を待つこととしました。

一瞬蘇生を考えなかったわけではないのですが、警察の介入を考えたときに動かさない方がいいのでは・・とも思いました。

やがて、救急隊がどやどやと入ってきました。

そして、なんのためらいもなく、救急蘇生を始めたのです。
AEDも作動しながら、娘さんに延命措置の希望を聞きました。

彼女は、まだ生きる望みがあるのなら、たった一人の身内なのだから、助けて欲しいと懇願しました。

私は、蘇生をしている救急隊を見ながら「え?私は心肺蘇生をしなければいけなかったの?」と愕然としました。

救急隊は、近くの病院に連絡するとき「死後硬直もなく、紫斑もありません。」と言っていました。

もしかして、これがサイン?
蘇生をするかどうかのサインなの?

そして、お母さんの心臓は、AEDの力でなんと鼓動を再開したのです。


救急車に乗った親子を見送ったあと、蘇生すべきだったのか、しなければいけなかったのか、気持ちがザワザワとして落ち込みました。

在宅では、通常ご自宅で亡くなられると、静かに医師の死亡確認を待つのが当たり前になっています。
もちろん、元気だった人が突然目の前で倒れれば、私だって咄嗟に心臓マッサージを始めますが、このシュチュエーションでいきなり心マをはじめることは、在宅の医療関係者ではしないと人のほうが多いのではないかと思います。

そしてお母さんは、一晩だけ人工呼吸器を付け心臓を動かし、意識を取り戻すこともなく翌日亡くなりました。

娘さんは、かなりの量の麻薬パッチと座薬を使い、IVHのバックを持ちフラフラになりながら病院に行き、家で待機するよう言われ帰宅していました。

搬送の時、救急隊の救急救命士に、娘さんがそういう状態であると告げたとき、「そんな情報はいらない!」と履き捨てるように言われたことも気がかりでした。

案の定、救急車に乗るために慌てて準備をして、両脇を抱えられて階段を降り、車に向かうフラフラの彼女に救急隊は「早くして!」と大きな声で呼びました。
「走れないんです!」そんな声は聞く耳は持たず、「早く乗ってください!!」という声に、ヨロヨロと走りながら乗り込んで行きました。



この状況で、私たちが、するべきことはなんだったのか?

正直、お母さんの年齢や、呼吸停止をしてからの時間を考えれば、たとえ心臓が動いたとしても、植物状態は免れないとも思いました。
そして、その母親を自分の命さえ危うい娘さんがみられるのかといえば、あえて苦しみを増すばかりではないかとも思いました。
けれど、お母さんを思う気持ちや、生きてさえいてれればと思う気持ちが、彼女の支えににもなるとも考えました。
目の前で母を助けてと願う娘さんの気持ちは痛いほどわかります。

でも、呼んでも答えることのない母親の姿を、
呆然と見守るしかないという現実はどうなのだろう。

救急隊は、亡くなった人を乗せるわけにはいかないのだそうです。
でも、蘇生をしながらなら乗せることができるのだそうです。

救急隊が、死亡していると判断するのはいつなのか、現在問合せをしています。
そして、私たちはどうすればよかったのかも。


私たちは、患者さんの急変でもよく救急車を呼びます。

そしてよく感じるのは、救急救命士の中に、時々ひどく不遜で失礼な態度の人がいるということです。

救急救命士は、命の現場で一分一秒を争う仕事だから、そんなことは許されて当たり前だと思っているような、ひどく上から目線の不遜な態度の人。

そんな情報はいらない!

救急隊から見れば、いま心肺停止の人が最優先なのはわかるけれど、その家族の状態だって、とてもじゃないけれどわかっててもらわないと困るのです。

今生きている、この人の方が私たちは大事なのですから。

こういう言われ方は、私たちはかなり毎度のことなので、あるステーションでは、救急隊に口を聞かなくてもいいように、用紙を作ってそれに簡単に書き込んで渡すだけということをしていると言っていました。

なんだか、ずっと後味が悪くて、私の気持ちのどこかに、まるで魚の小骨が刺さっているような不快感で、しばらくはザワザワとしていました。
今回のことは、管理者仲間や連絡会やらでみんなに一緒に考えてもらっています。

ほとんどの人は、私と同じ対応をしたと言っていましたし、実際どうすればよかったかを知りたいと言っていました。

さてどんな回答がくるのか、それを待ちたいと思っています。

大阪 呼吸セミナー <吸引チューブの一件も・・>

2014-05-10 22:58:47 | 訪問看護、緩和ケア
認定呼吸療法士の更新のための講習、近場でいよいよ見つからず、6月いっぱいの期限を前に、大阪まで行ってきました。
内容は、人工呼吸器に関連することが多くて、在宅現場の私にはあまり興味が持てない・・と言ったら怒られるかな(^_^;)。
でも、その中でも興味深い話はあって、安全な気管内吸引の話のなかで、以前にも問題となっていた<吸引チューブの根元を折るか折らないか>という話が出てきました。

そう、あれは随分以前、吸引カテーテルは根元を折り曲げてはいけないことになったと書きました。
なぜなら、急に圧をかけることで気管内の粘膜損傷を起こしやすいからだと。

でも昨年、吸引指導講習の報告で、よくわからないけれど、また根元を折る方が良いという指導に変わったとお伝えしました。
この時、講師の先生に聞いたら、「そうなんですよ・・。私たちもそう指導するように言われたので・・」ということで、はっきりした答えは聞けませんでした。

何なんだ、どっちなんだと思っていたら、今日の呼吸セミナーでその話が出てきたわけです。

「安全な気管内吸引」コヴィディエングループジャパン 日本コヴィディエン株式会社クリニカルサポート課看護師 小川 加奈絵先生のお話の中です。

日本呼吸療法医学会の「気管吸引のガイドライン2013」では、「挿入中は吸引を止めておく」方法になっていますが、一方では「吸引圧をかけながら吸引する」という意見もあり、賛否両論ではあるようです。

では何故「挿入中は吸引を止めておく」のかといえば、圧を最小限でかけるので、低酸素血症のリスクが低くなる。しかし、上部にある分泌物を下部に押し込んでしまう可能性があるということです。

逆に「吸引圧をかけながら吸引する」場合、分泌物を吸引しながら挿入することで、効果的な吸引ができる反面、吸引時間が長くなり低酸素血症を起こすリスクが高くなる。

ということで、どちらがいいということではなく、ケースバイケースでより効果的で安全な方法を選択してけば良いということのようです。

大切なのは、アセスメントをして必要最低限で行うこと。
チューブを挿入する長さ、太さを適切に選択すること。
きちんと解剖・生理を理解し、気管分岐部をつついたり、気道を擦ったりしないこと。(迷走神経反射や、気管内肉芽形成を起こさないために)
1回の吸引時間は10秒以内とし、吸引圧も150mmhg以下とする。
感染対策を遵守すること。

というわけで、気道の上の方に痰が貯留しているような場合は、最初から圧をかけて吸引して、まだ下の方にある場合は圧をかけないで挿入する(根元を折ったり、穴を塞いだりして)など、聴診や触診でのアセスメントによって決めればいいのだと思います。

それから言えば、口腔内から咽頭部にかけて、ゴロゴロ痰が見えるような場合に、なにもわざわざチューブをおる必要があるのかな??とも思いますよね。


最近でも、コメントでこの件の質問がちょくちょくあるので、ちゃんと説明できるようになって良かったです。

で、最後の講義は神戸協同病院の山本昌司先生の「呼吸に関する解剖・生理のABC」という基本のお話でした。

人には言えないけど、何度聞いてもよくわからなかった基本のABCですが、ものすごくわかりやすい先生でしたよ。
なんだか、怒っているんじゃないかと思うくらい、力強い大きな声で、ガツンガツンと説明してくれた「酸塩基平衡」。
本当に苦手な部分ですが、なんかうっすらわかったような・・。
時間が短すぎたので、もっと一から十までこの先生に聞きたかったなー。今日一日、全部この先生なら良かったのにー。
なんてことを思いながら(ほかの先生に失礼ですよね)大阪での講習を終えました。



ちなみに、金曜日の夕方に大阪上本町(うえほんまちです。かみほんちょうではありません。)のホテルに着いて、昔大阪に住んでいた頃時々来ていた鶴橋まで、散歩がてら行ってきました。
鶴橋って、大阪にある大きなコリアンタウンです。
駅からそのままガード下の韓国街に直結していて、その周辺はもう焼肉で白くモヤモヤと煙っています。
四方に連なる焼肉屋さんの呼び込みや、細い路地に出ているちぢみやキンパの屋台、色とりどりの布地のお店や、キムチ屋さんなどなど。

  

珍しいキムチを四種類位買ってプラプラしていたら、匂いに負けて禁断のひとり焼肉に手を出してしまいました。
なんか、やっぱり淋しいかも。カウンターで中年のおばはんがビール片手に肉を焼く・・・。(ToT)

翌日は、朝からセミナーだったので、セミナー終了してから、新幹線の予約時間までのわずか1時間半のあいだに、難波で降りて早歩きで道頓堀まで行き、法善寺をちらりと覗いて帰ってきました。


                 


なんだかどっと疲れたセミナーでした。
もっと自由な時間があれば、京都とかも見れたんだろうけど・・・。
早く自由になりたいですわ。ほんまに。

詐欺にもいろいろあるらしい。( ̄▽ ̄;)

2014-04-25 00:08:51 | 訪問看護、緩和ケア
先日のこと。
スタッフが、独居のおばあさんを訪問すると、なんだか様子がおかしかったので、よくよく聞いてみると、どうやら騙されて、気落ちしていたことがわかりました。
ある日、おばあさんのところに、一本の電話が。
なんでも、古い洋服なんかを買い取ってくれるということ。
死んだおじいさんの、仕立ての良い背広が洋服ダンスいっぱいにあって、捨てるには忍びないし、かといってデザインは古くて人にあげれるわけもなく困っていたところ。
十円でもいいかと思い、査定してもらうことにしたそうです。
やって来たのは、みるからに危ない世界の方のよう。
山盛りのスーツやらなんやら、果たして査定の結果は・・0円だったそう。
いくらなんでも、買いますって言ってきたのに。でも、怖くてなにも言
えず引き取ってもらうことに。すると、他に貴金属も見せろと言い出したそうな。
結局、おじいさんの形見のカフスボタンとか、小物もみんな0円でもってってしまったそうです。
なんだ効率の悪い詐欺ですね。

高齢者相手に、こんなことしてて、情けなくならないのかなー、

とにかく、自分たちの患者さんにも、注意喚起しないとね。

指示書を貰えない理由

2014-02-22 19:42:21 | 訪問看護、緩和ケア
すっかりご無沙汰しました。(ーー;)
リフォームが、大雪の影響でどんどん伸びてしまって、今だにとなりの息子のアパートとの二重生活が続いています。
食事は姉が義母、私が義父の分を作ってそれぞれ運んでいます。
トイレは、二階にありますが、夜は階段昇降が危ないので、夜は二人で同じポータブルトイレを使ってもらっています。
水も1階では使えないので、それもいちいち運びます。
なんてことをやっているので、夕食の後片付けが終わると、私はヘロヘロになっているわけです。
たぶん、なんだかんだであと4日から5日はかかるんじゃないかと思っています。
早く出来上がらないかな〜。
そうそう、大工さんはすごいなーと感心しています。
ひとりでどんどん家を壊したり作り直したり・・・。
大工さんの大ファンになってしまいました。\(^^)/

話は変わって、本題です。


訪問中のご家族の健康相談などをしていると、そのご家族から訪問看護を受けたいと言っていただくことがよくあります。

ご高齢の夫婦となれば、患者さんの奥さんだったり旦那さんだって、それこそいろんな病気を持っていてもおかしくはありません。

Aさんの奥さんも、介護疲れもあって、あちこち体の不調を訴えて、体重もどんどん減って、食事が取れなくなっていました。
冷えもひどくて、足先も循環障害で真っ青です。

もっと自分の相談に乗って欲しい。
看護師さんにアドバイスをもらったり、足浴をして足のケアをしてもらったり、状態観察をしてくれたら、本当に安心できるのに。
そんな話を受けて、ケアマネさんと相談して主治医に訪問看護を希望する旨を伝えてもらいました。

すると、「僕には、訪問看護の必要性がわからない。」と簡単に却下されました。
その後も、ケアマネさんからお願いしたりしましたが、やっぱり「僕は書かない。」とのことでした。

それじゃあ、ほかの科でかかっている先生に書いてもらえばいいのだけれど、ご本人はどうしてもその先生に書いてほしいとこだわっています。

ある日、その先生から電話がかかってきて「ボクはよくわからないのだけれど、訪問看護ってどういうことで入るの?」と聞いてきました。

話の中で、やはりこの奥さんの件でかけてきたようでしたので、担当の看護師が変わりました。

訪問看護を何故希望されているのか、病気への不安や介護のストレスで、かなりナーバスになっていることや、末梢の循環状態も悪く、フットケアも希望されていること、なにより精神的な支援を必要とされていることなどを、丁寧に話しているのを、私もそばで聞いていました。

電話を切ったスタッフは、半分憤慨して半分情けなさそうな顔をしていました。

「先生なんて言ってたの?」

「精神的な支援が必要なら、僕は内科だから精神科に行って書いてもらって。デパスも出さないようにしているんだ。僕が書くことはできない・・・・。
だそうです!」


ひぇー!!
びっくりでした・・・。

内科の患者さんは、精神的な不安を抱えていないということでしょうか?
不安を抱えたら、精神疾患になるんでしょうか?
街のお医者さんとしての自覚あるんでしょうか?
内科のお医者さんは、不安に対応してはいけないのでしょうか?


でも、実はこういうタイプのドクターたくさんいます。
医師会では、ホームドクターを持ちましょう!みたいなキャンペーンを以前やっていましたが、そういうホームドクターとして、いろいろな健康面での相談や、心の支えとなってくれる先生は本当に少なくなっているんです。

「僕は糖尿病以外のことは知らない。関係ない。」って言っちゃう先生もいます。

大きな病院では専門外来でそんな言葉をよく聞きますが、開業したら街のお医者さんとしての役割があると思うのだけれど、本当に困ってしまいます。


どちらにしても、こういう主治医との連携は困難なわけで、他にかかっている先生にお願いするしかないようです。
本当は、主たる病名の主治医と連携関係にあるべきだとは思うのですが、ケースバイケースですね。
時々こういう話を聞くたびに、どうやったら訪問看護を分かっていただけるのか、本当に悩んでしまいます。






本末転倒でしょうに。

2014-01-23 20:54:35 | 訪問看護、緩和ケア
退院調整にかなりに時間をかけ、在宅スタッフには区担当ケースワーカー、病院連携室のMSW、ケアマネ、訪問看護師の綿密な調整から始まりました。

気管切開、IVH、離開創、経済的な困窮・・・

吸引指導に点滴の管理、頻回の緊急訪問を経て、やがて体調は改善していきました。
フラフラだった足腰は、IVHのバックをぶら下げて散歩できるようになり、この頃から経口摂取の訓練を開始しました。

長い長い時間をかけ、ヘルパーも看護師も、歯科医師も主治医も、みんなで気切の閉鎖とIVHの抜去を目指しました。

何度も担当者会議を繰り返し、栄養士も入り大きなチームとなりました。

その甲斐あって、やがて気切は閉鎖され、とろみ水から始まった訓練は順調に進み、二度と経口摂取はできないと病院で断言された食事を、3食とれるようにもなりました。

その間にも、次々と不幸が彼を遅い、歴代の主治医も担当者もチームスタッフもずっと彼を支え続けてきたのです。

でも、あるとき、どこかで道を間違えたようです。

その人は、今は毎日ビールを飲み、朝から酔っ払っています。

ヘルパーは公費で入っていながら、ビールは自分で買いに行きます。
最初は、時々だったビールがどんどん増えて、ヘルパーの前でも飲酒をし、そのビール缶はヘルパーが片付けます。

うるさいのは看護師だけです。

おかしいでしょう?こんなことのために、みんなで頑張ってきたんじゃないはず。

寂しくて朝から飲むんだという彼の言葉を間に受けて、さらにヘルパーさんを送り込むのは理解できなかったし、「それはおかしい!」と言い続けて、ケアマネさんに煙たがられたスタッフは、とうとう担当をおりました。

これが、希望を叶えたと入れるのでしょうか??

彼は、話し好きで人と関わることが好きです。
お酒だって、やめようと思えばやめられるはず。今までもそうでしたから。
でも、お酒が重なる理由はどこあるのか・・・。

もっと違う支援の仕方があるはずだし、寂しくて朝から飲んで、デイサービスで寝ているなんて、絶対におかしいでしょう。

本末転倒。

介護保険は何のためにあるのか。

看護師はうるさい。細かい。鬱陶しい。
と思うのは、いったい誰なのか・・と。



公費と介護保険が作り上げたのは、アルコール依存症だったなんて、申し開きできないと思うのだけれど・・。

でも、今度は私が引き継ぎました。
さて、どんな作戦をたてようかな。
思案中です。


足にご用心 PADとCLI

2014-01-22 22:25:51 | 訪問看護、緩和ケア
先週、恒例の在宅皮膚科医会主催の勉強会に行ってきました。
今回のテーマはフットケアと末梢血管障害に分かれていて、とにかく足についてたくさんお勉強をしてきました。

その中でも、神戸医科大学形成外科の寺師浩人先生の末梢血行障害のお話は、目からウロコのお話だったので、ご紹介します。

足の先端や踵が紫色になって、やがて黒くなって腐っていく・・。

こういう病変の原因は、糖尿病が原因だったり、踵などは褥瘡だったり、冬場などは動脈硬化による血流障害だったりします。
今回は、この末梢血行障害の専門的かつ最新のお話でした。

こういう足の病変を見たときに、まず考えるのはこれが褥瘡なのか、重症下肢虚血なのかの判別が、その後の明暗を分けるのだということでした。

その前に、今まで私たちはそう言う末梢の動脈閉塞に伴う足先の病変をASOと呼んでいました。
ASO 閉塞性動脈硬化症
ところが、この呼び方がまかり通っているのは日本だけなのだそうで、世界的に通じる疾患名は、末梢動脈性疾患PADなのだそうです。
そして、そのなかで重症の下肢虚血がCLIと言われています。

そうか、ASOとはもう言わないんだ~。でも、ネットなどではASOで検索したほうが圧倒的に出てきます。
でも、専門医療機関だとやはり「PADとは・・」に変わっていました。

話を戻します。

この説明に入って最初のスライドは、禿げたおじさんの頭のカサブタでした。

何故、ツルツルに禿げたおじさんの頭の傷が治りにくいか・・。

その訳は、傷は毛根から上皮化するからだそうで、禿げてしまうと毛根がないので、産毛とかからそろそろと治ってくるので、なかなか治らないのだそうです。

反対に足の底はエクリン汗腺から上皮化するそうで、糖尿病などで自律神経障害を合併すると汗をかかなくなって、ドライになってやはり上皮化しにくくなるのだそうです。

褥瘡であれば、環境を整え除圧、栄養、外科処置をおこなうことで、上皮がが正常に行われるわけです。

でも、CLIなのに、褥瘡と同じ外科処置を行ったら、血流がないのに新たに傷をつけるので、そこからどんどん壊死が進行して、あっという間に切断する羽目になったりします。

なので、そこの鑑別診断が最も重要となるのです。
病院であれば、ドップラーによる血流の確認ができるし、ABI,SPPなのどの血流検査ができるので確定できるのですが、在宅はそんなものはないので、所見で判断するしかありません。

どこを見るか。

1)下肢の動脈を触知する。必ず両足。
 大腿動脈から始まり膝窩動脈、足背動脈そして一番重要なのが後脛骨動脈です。
後脛骨動脈が足首から下の血管の元なので、これが触れればCLIではないですし、足背動脈が触れていても、後脛骨動脈が触れなければCLIということになります。

2)痛み。
CLIは、激しい痛みを伴います。
そりゃあそうです。血流が止まってしまって、そこから先が腐っていくわけですから、輪ゴムをぐるぐる巻きにしているようなもんですよね。
間歇性跛行と言って、歩いていると痛みで足を引きずってしまいます。
特徴的なのは、足を下げると痛みが緩和し、上げると痛みます。
3)Red Ring Sign
踵の褥瘡かな??と思っているとそうじゃないのが良くわかります。
中心に白い壊死した部分があり、その周囲が輪っかのように綺麗な赤いふちどりになっています。けれど、それは毛細血管が充血して見えているだけで、よく見ると肉芽がありません。
褥瘡だと、白色壊死組織とか黒色壊死組織とかはあっても、その周囲の赤いところには、プツプツと肉芽が存在します。

たぶん、普段そう言う足の創を見慣れている方は「あれか!」とわかると思います。

この3点で、即デブリをしても良い褥瘡なのか、絶対いじっちゃいけないCLIなのかを判別するのです。
肉芽がある=血流がある=褥瘡 なのです。
その他にも、CLIは皮膚が冷たい、毛が生えていない、変形がない、皮膚が平滑でテカテカしている、足の指と踵が高発部位、慢性的で重篤な感染がないなどが挙げられていました。

CLIであれば、まずは血流を再建しなければ、創は治らないばかりか悪化の一途をたどるのです。

最近、問題になっているのは術後のバンテージやストッキングです。
血栓予防でとても重要なツールですし、下肢のリンパ浮腫でも使われます。
しかし、きちんと既往歴などを確認しないと、ものの数時間で下肢の壊死を招くことがあるのだそうです。
全身の重度の動脈硬化、血管の石灰化などがベースにあると、ただでさえ血流は悪くなっています。そこにもってきて平均15~20mmhgと言われるストッキングを履いたらどうなるかということです。
これはSSPという皮膚還流圧を測ると明確になるようですが、在宅にはありませんから全身の血流の状況で判断しないといけないですね。

ちなみに、心臓や血管のOPE後などに、急に足先が紫色になり、激しい痛みを訴えた場合、コレステリン結晶塞栓症を疑がわなくてはいけません。
足先が紫色で大理石みたいにムラムラした模様になり、これをBlue Tou Syndrome というそうです。

これに関しては、現状でも皮膚生検をして確定診断をすることが多いそうですが、寺師先生は生検は禁忌!と言っていました。
病院医師からは、今でもやっているし大丈夫だ、という反論もありましたが、10人中1人でもそのリスクがあるのなら、絶対やめるべきだと言っていました。

なるほどー。
CLIの診断が付けば、寺師先生はステロイドを開始し、血流障害の原因がわかれば再建術をしてから、創の治療を開始するのだそうです。

その間壊死した足先はドライになっていきますし、血流が回復すれば指先も自然脱落するそうです。血流があるから自然脱落は起こるのだということでした。

そして、最後に一番みんながざわついたこと。
「腱や腱膜に達した創は、入浴も足浴も禁」だと言うのです。

シャワーで流すのはいいが、水圧がかかり腱に沿って細菌感染が広がるということでした。

これは寝耳に水でした。

今までもずっと足浴や入浴は進めてきただけにびっくりです。

やはり医師からも疑問だという意見が出ましたが、これも「ほとんどの人が改善しても、そういうリスクがわずかでもあれば、それはNOなのである。」との見解を崩しませんでした。

褥瘡も最近入浴禁止という説もあるそうで、うーんこれはどっちなんだろうか〜。

現場経験では、ほとんどの患者さんが褥瘡でもCLIで炭酸浴で著しく改善してきましたし、昨年の形成外科の勉強会では、その先生もエビデンスがある!炭酸浴は効果がある!って言っていましたから、この話で全部やめちゃう気にはなりませんでした。

ただ、今後腱の露出した創に関しては、医師と十分に相談していきたいと思っています。

時期としては、PADまっさかりの冬なので、皆様足先に十分注意してください。

後脛骨動脈触知をお忘れなく。