こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
在宅緩和ケアのお話や、日々のあれこれを書き留めます。
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不公平だと思うこと。

2013-01-30 22:35:25 | 訪問看護、緩和ケア
冬に入ってすぐ入院した、ある患者さんの訃報が届きました。

独居で気ままな彼は、人生の大半を思うがままに生きてきたのだと思います。

親戚中からは、とうの昔に縁を切られました。
気にいらなければ怒鳴り散らし、モノを投げつけ、病院に行けば早く診ろと受付を脅し、保護で入ったヘルパーは恫喝してあれこれと指示したりしていました。
やがて、障害を負った彼はドクターショッピングを繰り返すようになりました。
タクシーを呼びつけ、受診しては捨て台詞を吐いて次の受診をする。

もう、誰も止められませんでした。

そして、最後に入った入院先で、暴言を吐き続けたあげく、たったひとりで旅立ったのです。

でも、それは彼が望んだこと。
誰の迷惑もかえりみず、言いたいことだけをいい、気に入らなければ怒鳴る毎日の中で、それでも自分の意思を押し通した彼。
もし、日本に今の制度がなければ、確実に遥か昔に行き倒れていたはずの生涯。
でも、彼には住むところも与えられ、食事も医療も介護も、ドクターショッピングもすべて思うように国が与えてくれました。

彼を不幸な人とは思えませんでした。
最後は、暖かな病室で人生を閉じることができたのですから。

一生涯を働き詰めで来ても、わずかな国民年金で、医療も食事も最低限で我慢して、病気になっても介護サービスすらろくに受けられない人たちもいます。

医師にかかるのも、まずは生活費の残りを計算しなければ受診できないのです。

どんなに介護が大変でも、施設や入院はできないから、最低限度にサービスを導入するのです。

「この人の介護にお金をかければ、介護する私たちの、あすのご飯が食べられなくなる。」

と言わせているのは、一体なんなのでしょうか。


障害者手帳を持つ知り合いは、毎日出歩いていても、毎日ヘルパーを入れ放題。
家の中は、チリ一つなく綺麗に片付けられ、毎日干された布団が暖かく準備される日々。
障害ヘルパー枠のギリギリまで使う権利を持っているのです。

でも、なるべく自分で、誰の迷惑にもならないように、「お国に申し訳ないから。」と清貧を極めている人もいるのです。

最低生活の保証は、絶対に必要です。
それを否定しているのではあありません。
分別を持って、きちんとその中でまっとうに暮らしている人もたくさんいます。

けれど、年金暮らしの生活が、国の言う最低限度の生活レベルよりも下回ってしまうことが、どれほど多いかを知っているのでしょうか。

なぜ、必死に働いてやっと暮らしている人たちが、国の保護対象者よりも苦しいのでしょうか。

あまりにも不公平な現実を見すぎてしまって、どうにも怒りが収まらないのです。

社会の中でタブー視されてきた現場です。
けれど、現実をもっと検証していかなければいけないし、本当はそれをきちんと見極める機関を作らなければいけないと思います。

でも、今の現状は保護課も障害福祉課も、見てみないふり、言うがままで支払いをしているのです。
税金の垂れ流し状態です。

本当に、今助けなければいけないのは誰なのかを、誰も気にしていない現状で、この国の未来はどうなるのでしょうか。

少子高齢化が進むなか、やがて、私たちも働き続けた挙句、一番苦しい場所に置かれてしまうのかもしれません。

認定審査会のように、受給者の調査と審査会を行うとか、何か歯止めが必要なのです。

不公平な社会であってはならないと思います。


久々にびっくり。

2013-01-29 23:03:11 | 訪問看護、緩和ケア
もう何年も前に、看護サマリや指示書をケアマネさんに全部見せていいのかどうか、すごく問題になりましたよね。
連携ツールとして使用してもいいのではないかと言う意見と、あくまでも医療上の個人情報で、病院と訪問看護ステーション間の機密文書であるべき、という意見でいろいろもめました。

病院も他にケアマネに対する書式がないので、病院によってはコピーして渡すところもありましたが、多くはあくまでも看護師宛としているところが多いようです。

訪問看護ステーションとケアマネとの連携関係が良好で、もらった訪問看護側が内容を確認の上、連携上必要と判断すれば、同行訪問時お見せすることはありますが、基本あくまでも病院から訪問看護ステーションあてに渡されるものとして定着しています。
昔は、勝手にケアマネが開封してしまい、よくもめたりしましたが、今ではそういうことはすっかり無くなっていましたが・・。

今日、初めて連携する事業所のケアマネさんが、基本情報などを持ってステーションに挨拶に来てくれました。
患者さんが今日退院したので、預かったサマリと指示書も持ってきてくれたのですが、デスクに戻って書類を確認していると、なんとその2通の封筒がきれいにハサミで開封されクリップで止められていたのです。

え??

ご家族は開けないですよね・・。

でも、開封したなんてケアマネさんは一言も言っていませんでした。
もし、ケアマネさんだとしたらこれは困ったことですね。

何度も言うようですが、病院から訪問看護ステーションに充てた文書です。
しかも、ぴったりと封がしてあります。

自分宛でない手紙は、普通の感覚では開けません。

明日確認しますが、うーん・・ここから始まるかとおもうと、ちょっと気が重いです。


お知らせ

2013-01-29 21:56:00 | 訪問看護、緩和ケア
お知らせです。
横浜市瀬谷区近隣で、以下のテーマに興味のある方。
どうぞ、ご参加ください!



           

瀬谷区医療・福祉セミナーは、今週の金曜日と迫っていますが、当日参加でも構いませんので、ぜひどうぞ。


もう一つお知らせです。

ヘルパーさん と PT、OTを募集しています。

一緒に楽しく働きませんか。
詳しくは、瀬谷区メディカルセンター訪問看護ステーションまでご連絡ください!

土曜日は、市場が楽しい。

2013-01-27 21:57:20 | 旅行・グルメ
どこに行くのが好きかと言われれば、世界各国どこに行っても必ずある市場。

市場は本当にワクワクします。

旅行に行っても必ず寄りますが、日常の中でも市場、もしくは活気のある商店街や魚屋さんは、時々無性に行きたくなるのです。

というわけで、昨日は築地へ行ってきました!

朝9時半に家を出て、10時半前には着きました。
通り沿いの立ち食いのお店の前には人だかり。
街全体が、行き交う人とざわめきとで、ものすごいエネルギーを発散しています。
とはいえ、私たちが入れるのは場外市場ですから、きっと市場はすごいことになっているのでしょうね。


                  

人垣を縫いながら店をのいてあるくのは、本当にワクワクします。



今回すごく気に入ったもの。
ジンジャエール  

ここは何屋さんなのかな?

メインは西京漬けのお店のようです。
西京漬けは我が家の大好物なので、もちろん購入しました。
今回はメダイと銀だら。
メダイがめっちゃくちゃ美味しかったです。

で、その横で若旦那?みたいなお兄さんが試飲させてくれました。

アメリカのジンジャエールで、まだ日本にはほとんど入っていないそうです。

ジンジャーがそのまま沈殿していて、なんとも爽やかでいい香り。
一つはプレーンで、もう一つはそこにジャスミンティーをブレンドしたものです。
これがまた、なんとも上品で美味しい。

プレーンの法は、お酒でわると美味しいよとのこと。
なんで割ると美味しい?
「渋めの赤ワイン」とのこと。

帰りに購入した赤ワインでわると、いい感じで何倍でも飲めちゃいそうなカクテルになりました。

このジンジャエル1本300円。
ウィルキンソンも大好きですが、値段は3倍ですね。

でも美味しいので4本ずつ買ってきました。

そして市場でお楽しみの食事。
あちこちブラブラしながら、知らないお店に飛び込みます。



メニューは、中身が何かを英語表記。
やはり外国人の観光コースなのでしょう。
美味しく丼をいただき、「今日の夕飯は、さっきの西京焼きだね。」と娘と話していたら、板さんが「これ食べてごらん。」ってチーズをひとかけくれました。

「チーズの西京漬け。」

クリームチーズの後味に、お味噌のいい香りがふわり。
「ごちそうさまでした。」

やっぱり市場は最高です。

そして今日は、昨日お泊まりから帰ってきて、すっかり落ち着いた雰囲気になってしまったうららさんを連れて海軍道路に行っってきました。

昨日までワンコ仲間とずっと遊んでいたので、一匹ではちょっとさみしそう。

   

ワンコはいても、飼い主さんによっては嫌がる方もいるので、ドキドキしながら声をかけたりします。

今日は、柴犬くんと少し遊びました。
コーギーくんとパピヨンちゃんには、全く相手にさませんでしたが、それなりに楽しめたのかな??



今回のお泊りで、ワンコ仲間といることでちょっと大人になった感じのうららさん。

たくさん遊びに連れて行ってもらって、すごく満足そうだったので、時々お泊りに行かせてあげようとおもいます。

時間がない!!

2013-01-25 23:48:10 | 訪問看護、緩和ケア
朝から新患さんの初回訪問が長引いて、次の患者さんまで猛ダッシュ。
その訪問を終えてステーションに帰ると、いくつもの電話や新患依頼、往診調整や退院前訪問の調整。
早口であちこち電話をして、あとはスタッフにお願いして、車に飛び乗りました。

途中車を寄せ、連携室に電話をしてから、山下公園のメルパルクまでなんとかたどり着きました。

今日は横浜市訪問看護連絡協議会の定例会&賀詞交歓会なのです。

定例会では、特別講演として慶應義塾大学大学院経営管理科専任講師 大藪 毅先生の「訪問看護ステーションにおける人的管理」があり、次に定例会テーマとして「横浜市における定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスの現状」がありました。

これはちゃんと聞いておきたかったので、なんとしても出席したかったのです。

学問としての訪問看護経営の研究はまだまだ始まったばかりとのこと。
管理者として、どのようにスタッフの支援をすればいいのか。
モチベーションとコミットメントの違いなど、とっても面白い内容でした。

いろいろな例をあ上げて説明をしてくださったのですが、人を採用するにあたり、就職説明会などで夢と希望に満ちた若者を採用した場合と、クチコミで社員の後輩やら知り合いなどを採用した場合と、どちらが長く会社に貢献するかというと、実は圧倒的に後者が多いのだそうです。
まあ、紹介者も変な人は連れてこないでしょうが、紹介されて就職した人も、変な辞め方するわけにいかないという歯止めもかかるわけで、なるほどなーと思いました。
人材派遣会社からの斡旋では、訪問看護がやりたいというよりも、看護師としてより高収入で楽な仕事、家から近い仕事などのカテゴリーでピックアップされた人が来るので、何度か私も面接しましたが、やっぱり訪問看護がやりたいと言って、来る人とはモチベーションが違います。

モチベーションとは、今現在目の前のやる気で、コミットメントとは仕事を続けるに当たり長期的なやりがいなのだそうです。
なあるほど。

そうそう、訪問看護は職務性より職人性が強いということです。
病院の看護師は職務性が要求されます。
職務性とはプロフェッショナルであること。これは分割的業務をきっちりバッチリできるということです。
分割的とは、一連の工程のある一部分のことで、反対に職人的とは全ての工程を一人でやる「何でもやる一貫性」なのだそうです。

こういう表現をするのは、とても学問的ですね。
実感として、経験として内容自体は日頃そうなのだと理解していましたが、なるほどお勉強になりました。

「定期巡回云々・・」に関しては、現状課題が山積で対象者は非常に限られており、今後検討し改善しなければ、たぶん期待するほどの結果にはならないと感じました。
なにしろ、医療者でないオペレータの采配や、訪問看護の相談抜きで勝手にプランニングしちゃうケアマネ、デイやショートを使うと減算される報酬や、ほかのサービスを入れたら、すぐに足が出てしまい返って高額になってしまうなど、とてもとても使い勝手が悪すぎます。

対象としては、軽度者で医療ニードの低い、不安や転倒などの多い患者さんや、服薬、安否確認など短時間の訪問が頻回に欲しい方くらいでしょうか。
あとは、訪問看護が医療保険ならなんとかタイアップできるかも。
でも、そうなると全部丸めで医療費も削減したいお国の思惑とはちょっとかけ離れたりして・・。

とまあ、そんな感じでした。

賀詞交歓会はそのまま7階まで上がり、港の夜景をバックに、なかなかの盛り上がりを見せ楽しい時間を過ごせました。
でも参加者めっちゃ減っていて、なんだかなぁ・・・。


8時に終了して、家には9時前に到着しましたが、うららは昨日からお泊りに行っているので、なんだかまが抜けた感じです。
うららさんはといえば、バイオレットファームで一日遊んでもらって、ほかのワンちゃんとも共同生活をして、すごく楽しく過ごしているようです。
バイオレットファームのブログにも登場しました。

明日はどんな表情で帰ってくるのか、とっても楽しみです。

外泊中のうららさん。


ちゃんとメールで近況を教えてくれます。

捉え方の問題?

2013-01-24 21:21:48 | 訪問看護、緩和ケア
がん告知はごく普通に行われるようになった昨今でも、予後告知はなかなか難しくて、医師の中でもはっきりと宣告する人もいれば、予後告知はあえてしない先生もいます。

ある患者さんが、激しい医療不信を持ち、絶望感から人との関わりを極端に避けるようになりました。

その原因を聞いて、考え込んでしまいました。

ガン宣告はもとより、必死に病魔と戦ってきた末に、あるとき主治医がこう告げました。

「残念ながらもう、治療の方法は残されていません。しかし、この抗がん剤を使えば3ヶ月は延命できると思います。使わずに自然に任せるのであれば1ヶ月です。あなたは、どちらを選択しますか?」

選択肢は与えられたのです。
2者択一。
けれど、それはいのちの期限を選ぶものでした。

実際に、こういう説明はよく行われていると思います。

こんな話を聞いて、ショックじゃやない人なんているわけもないし、目の前が真っ暗になるとはこういうことではないかとも思います。
それでも、その絶望のあとに人それぞれ受け止め方が変わってくると思います。

こういう告知を、「本当のことを言ってくれてありがとう。残りの時間を自分なりに有効に使います。」という人もいます。
「しょうがない。ここまで来たら腹を決めます。」と言って、どちらかを選択する人もいれば、民間療法を選ぶ人もいます。

でもその言葉自体に激しく憤る人もいるのです。

「医師が何故、全くの素人にその選択を迫るのか?3ヶ月と1ヶ月どちらがいいかなんて、答えられるはずがない。それを選択するのは専門家の医師のはずじゃないのか?!なぜそんな非道なことを言えるのか?!」

私たち医療者側は、その人の残された時間を大切にして欲しいと思っています。

じゃあ、どう伝えればこんな怒りに転換されないのでしょうか?

伝え方?言葉のソフトさ、語彙の選び方?表情?

どんな言葉に変えても、それは命の終わりを告げる宣告であることは間違いがありません。

でも、それでも残された時間を、自分の選んだ方法で、最後まで自分らしく生きて欲しいと思うのは、綺麗事なのでしょうか。

その凍りついた心が、タイムリミットが来る前に柔らかく、暖かく溶けて、優しい時間を持てるように出来ないものかと、私たちは心底おもうのです。

そんななか、カラを閉ざし頑ななまでに他者を拒否している状況に、医療者が逃げてしまえば、在宅緩和ケアは成り立たなくなってしまいます。

既に経口摂取もできなくなり、緩和のためのオキシコンチンを飲み込めず、泣きながら流し込んでいるという話を聞きました。

消化器の通過障害が進めば、当然飲み込むことは難しく、そうなる前に多くはフェンタニルパッチに切り替えます。

どうしてそれをしてくれないのか?
主治医は、その事実を知らないのかと思い、担当ナースが連携係のナースに確認しました。
「先生は知っていますよ。でも、拒否の強い方で難しい方なので、ご本人からの要望があるまで様子を見ています。」

?????

それこそ、選択肢を提示しなければわからない話ですよね。

難しい人だから、無理強いはしないでつかず離れず・・って、意味が違うと思うのです。

担当ナースは拒否を覚悟で、「もしお嫌なら無理強いはしません。ただこういう方法もあることをお伝えしたいと思いますが、今お話してもいいですか?」と聞くと「わかりました。話してください。」と答えがあり、その上で「それでは、そうしてください。」と、始めてケアを許してくれたそうです。

こちらがきちんと向き合えば、きっと答えてくれるはずです。
難しい人だから、選択肢も提示しないのは、向き合っていないことになるのではないでしょうか。
だいたい、緩和ケアでほかの方法あるかどうかなんて、それこそわかるはず無いじゃないですか。

そこで止まって、待ってればいい話ではないですよね。

捉え方の違い?
じゃなくて、向き合っていないだけ。
拒否されるのが嫌だから?

すごく違和感を感じます。
こういうこと、同じベクトルでケアができないことが、訪問看護では一番のストレスになります。


誰のせいでもないけれど。

2013-01-22 22:08:49 | 訪問看護、緩和ケア
世の中、理不尽なことがすごく多いですね。

人様に迷惑をかけないように、お天道様に恥ずかしくないようにと、働いて働いて生きてきたのに、人生の最後の時間が思わぬ結果になることがあります。
いろいろな経過ではあっても、私たちにはどうしようもないことがたくさんあって、その都度私たちは、ただただ悲しい思いを飲み込むしか術がありません。

子供のいない仲の良い老夫婦がいました。

お国のために戦い、終戦後も一生懸命働いて、定年まで勤め上げ、妻と二人の終の棲家と思っていた場所で、穏やかに生きてきました。

妻は、毎日雀に餌をやることと、庭の草花の世話をすること。
夫は、一日一杯の日本酒をちびちび飲みながらテレビを見ることが、なにより楽しみでした。

二人は、不平不満をな何一つ言わず「今が一番幸せ。なんの不安もないよ。いつ死んでも悔いはない。」そう言っていつも高笑いをしていました。

でも、年を重ねるごとに、妻は認知が進み体調の悪い日もあり、周囲も心配してはいました。


ある日、そんなご夫婦を二人だけで過ごさせることを心配したご親戚が、施設の手配をされました。

お二人で入ることができる特養の順番が来たある日、ご親戚が説得に行ったそうです。

夫は激怒しましたが、それでも試しに泊まりに行くことに不承不承納得しました。

本当は、私たちは夫が拒否をしてくれることを、どこかで期待をしていました。

でも、迎えが来たその日、嫌がる妻を夫が説得したそうです。
「一緒にお泊りに行くんだよ。そして、いいところだったらずっとそこで暮らすんだよ。」と。

そうして、二人は寄り添って車に乗っていってしまったのです。
自慢の家、大好きな庭、毎日やってくる雀や鳩のいる木に、お別れを言うこともなく。


しばらく、私たちは二人が帰ってくるのではないかと、少なからず期待していたのですが、1週間が経ち2週間が経ち、もう帰ってこないのだと実感するようになりました。
時々、私のあとに担当してもらったスタッフと、思い出話をしたりしました。

その後、担当だったケアマネさんにあったとき、こんな話をしてくれました。

「入って何日かは、お父さんがお母さんの部屋に迎えに行って、二人でひがなエレベーターの前にいたそうです。どうしたの?と施設の人が聞くと、『迎えが来るのを待っているんだよ。』と言ったそうです。施設の人も、特別にお父さんの大好物のコーヒーシュガーをくれたり、随分と気を使ってくれたようですが、その後すぐに吐血してしまって、救急車で病院に運ばれて入院してしまいました。ストレス性の胃潰瘍からでした。もう切なくて、何のために入所させたのかと思うと、辛いです。でも、お母さんは認知が進んでいるおかげで、今はすっかり慣れたようですよ。」

言葉が見つかりませんでした。

あの仲の良い老夫婦が、毎日どんな思いで来るはずのない迎えを待っていたのかと思うと、胸がいっぱいになりました。

誰も悪くはないのです。
あのまま二人だけで暮らすのは、確かに限界があったっと思います。
思ったより早くきた順番を、やり過ごせるほどの猶予も、介護力も、遠方にお住まいのご親戚の方にはなかったのだと思います。

今でも、私のデスクの隣にあるホワイトボードには、裸で一杯やっている陽気な老人と一緒の写真が飾ってあります。

もうきっと、彼があの家に戻ってくることは二度とないのでしょう。

この前の大雪のあと、あの家の前を車で通ったスタッフが、こんなことを言っていました。

「○○さんの家の前だけ、雪がそのまま残っていたのよ。その前後は綺麗に雪かきされていたけれど、そこだけ雪がそのままだった。なんだか、悲しかったな。」

あの家の時間は、もう止まってしまったのでしょう。

土日もあれこれ

2013-01-20 21:32:33 | 日々のあれこれ
週休二日といっても、全然休んだ気がしないのは、自分で仕事を作っているからで、家族の用事もあるけれど、そのあいだにあれこれやり始めてしまう貧乏性のおかげでもあります。

昨日も、娘をオープンキャンパスに送ったあと、よせばいいのにコストコに行って、朝っぱらからいろんなものを買いあさってきました。

サーモンやキッチンペーパーや洗剤や、その他もろもろお馴染みのものをカートに入れていると、洗剤売り場にこんなものがありました。


中身は、青いジェルの入ったゴルフボールくらいの透明なもの。
なんだか綺麗でついつい手にとってみました。
説明書きには洗濯洗剤と書いてあります。
水入れた洗濯機に一個放り込んで洗濯物をいれて洗濯するだけ。
90個入りで1478円。
よくよく考えればあまりお安くはありませんね。
でも・・新し物好きの私。
一度はお試ししたいので購入!。

もう一つペットコーナーにあった犬のおもちゃバケツ。
プラスティックのバケツの中に、犬のおもちゃがパックされて777円。
外から見ると5個くらいおもちゃが入っているのにこのお値段。
購入!

帰ってうららさんに見せると、それはそれは大喜びで、バケツをくんくん。
         

中を開けると、おもちゃがこんなに。


でも!!でも!!でも!!

あけたとたんとんでもなく臭いんです。
ゴムと化学薬品の匂い。
鼻をつく刺激臭で、ゴムの輪っかとボールは、とてもじゃないけど遊べる代物ではありませんでした。

夫が「中国製って書いてあるぞ。何を使っているか分からないし、外国で問題になってたろ。捨てたほうがいいよ。有毒な匂いだぞ。」というので、即ゴム製品は取り上げました。
まあ、言われなくてもとても臭くて置いておけませんが・・。

ほかのおもちゃにもその匂いは染み付いていましたが、2個あったぬいぐるみは、ものの30分でうららに分解されてしまい、中綿を食べ始めたのでこれも破棄。

コストコだから、安心していたのでこれはかなりがっかりでした。
今度お店に持って行って、匂いを嗅いでもらうつもりです。

コストコから帰宅後は、生姜の佃煮を作ったり、夕飯の作り置きなどを作り、あれこれ片付け物をして、合間に家族の送迎などをしつつ、あっというまに一日が終わります。
そして今日はと言えば、朝からバナナマフィンを作り、庭の夏みかん18個分のマーマレードを作り、うららに破かれたカーペットを交換し、うららをを散歩がてら動物病院に連れて行き、あっという間に夕方になってしまいました。

あ〜、もうなにやってんだろ〜
もっと寝転がって、昼寝したり漫画読んだり、うららと遊んだりしたかったのに〜。

また、あすからお仕事ですわ。
こうして一週間はどんどん過ぎていくのですね。

あー。
来週こそは、お昼寝三昧したいです。

何とかしたいのに・・。

2013-01-19 23:17:29 | 訪問看護、緩和ケア
「俺は騙されないぞ!」という言葉から始まった訪問看護。

そんな言葉とはうらはらに、次の訪問からはすっかり信頼してくれたKさん。

頑固でワンマンで、それでいて何とも可愛いおじいさんです。

また、電車に乗って好きなところへ行くんだと張り切っていたのですが・・。

腰椎圧迫骨折によるADLの低下に対する訪問看護依頼で始まったものの、短いあいだに次々と襲いかかる病魔に、妻も私たちもなすすべがありませんでした。

訪問の度に新たな問題が発見され、大変な思いをしながら、あちこち検査をしたり、薬を変えたりしてきました。

在宅医も、紹介状を何度も書きましたが、いくつかの科をまたがる病状変化に頭を悩ませていました。

病院というところは変なところで、臓器一つ一つに専門科があるのに、それをひとりの人間が持っているということを、すっかり忘れているような気がします。

頭は見るけど肺は呼吸器なので、改めて来てください。とか泌尿器科のことは、泌尿器に聞いてください。
血尿なのでワーファリンは切ってください。いやいや。もうワーファリンは始めてください。

あちらを立てれば、こちらが立たず・・。

すべてが連動しているはずなのに、あちこちの科をぐるぐると回っているあいだにも、ひとつの体の中でいろんなことがどんどん変化しているのです。
やがて、すっかり寝付いてしまったKさんの、目からは力がなくなって行きました。

「Kさん、外に歩いていくんだって、言っていましたよね。もう少し暖かくなったら、一緒に行きましょうね。桜も見ましょう。」
そう言うと「外か・・。行けるかな・・。」と。

「行くんです。一緒に。」

弱々しく頷いたKさんは、すぐにウトウトと眠り始めました。

どうしたら、また頑固で元気なKさんに戻ってくれるのか・・。
奥さんもだいぶお疲れの様子。
いつも、献身的に介護されていて、奥さんの体も心配です。

もう少し、総合的に全体を見てもらえないのでしょうか。
いつから病院は、こんな変な見方しかしなくなったのでしょうか。
専門ごとに見るのはいいけど、総合的に診れるところがないのは、すごくおかしいですよね。
総合診療科って言っても、最初だけですね。
振り分けられてしまったら、あとは専門ごとにぐるぐる回っては、それぞれの話を聞くだけなんて、本当におかしな話です。

私たちも、それに振り回されているような気もします。

どうしていけばいいのかな・・。
私は、Kさんと散歩をする日が来るのを、まだ諦めたくはないのです。

デイのお泊りって、なんだろう。

2013-01-17 21:27:24 | 訪問看護、緩和ケア
ここ数年、デイサービスに行ってそのままお泊りできるところが増えていますよね。
しかもこれが格安で、ショートステイや小規模多機能よりもはるかに安い1泊500円とかでお泊りできたりします。
デイサービスご利用者さんへのサービスなんでしょうが、この人件費とか管理料はどこから出てくるんでしょうね。
いつも不思議だと思っていました。

そうしたら、ちょっとびっくりする話が聞こえてきました。

あるお泊り付きデイサービスで、お泊り中のご利用者さんがスリッパのまま夜中に出て行って、歩いて自宅に帰ったものの、家には入れず大騒ぎをして、警察沙汰になるまで、スタッフは気がつかなかったという、なんとも仰天な話です。

ショートステイでは考えられない事態ですが、これは介護保険サービスでもなければ、特にうるさく規制されるモノないので、任意で何かあっても自己責任で済んじゃうのでしょうか・・?
漏れ聞く話によれば、その事実もケアマネには一切報告がなく、2週間以上経ってご家族から聞いたそうなので、これも呆れてしまう話ですが。

いくらデイのサービスの一環でも、認知症があっていろいろな周辺症状のある方をお預かりするのに、最低限度戸締りや危険物の管理は必須だと思うのですが・・。

万が一交通事故にあったり、この寒空にスリッパと着の身着のままで歩くのですから、道に迷った挙句凍死なんてことだってありえると思います。

安いし、いつでも預かってくれるから、確かにありがたい話ですし、以前この手のデイサービスのお泊まりだけで、両親を月のほとんど預けっぱなしにしているという話も聞いたことがあります。

だとしたら、もう少しきちんとした管理体制を取る必要があるし、もし出来ないのであれば、そこにどんなリスクがあるかを、きちんと説明した上で利用していただく必要がありますよね。

いったいどんな契約条件なのかもわかりませんので、何とも言えませんが、なんちゃってケアマネとしては、ちょっと考えてしまいました。

やっと書き込み

2013-01-16 22:46:35 | 訪問看護、緩和ケア
まったく、疲労困憊の4日間で、PCを開くのも億劫で、夜はバタンQでした。

日曜日の雪は、本当に驚く程の勢いで道路を白くしていきましたね。

成人式に行く息子を、駅まで送る約束をしていたのですが、急に勢いを増した雪に慌ててスタッドレスタイヤの付け替えに、近くのタイヤ館に行きました。
が、すでに7~8人ほどのタイヤ交換待ちの人がいて、結局1時間半ほど待っての交換になり、息子はその間にバスで出かけていきました。

ちなみに、平成4年生まれは「不遇の平成4年生まれ」と言われるほど、イベントの度に天変地異に見舞われるのです。
バブル崩壊直後に生まれ、「ゆとり教育」とかで変な教育を受け、うちの息子の場合は、高校の入学式は暴風雨、卒業式も大雨、大学の入学式は地震のあとで流れました。
そして成人式が大雪と、なかなかハードなものです。
まあ、それでも本人はいたって脳天気に生きていますが・・。(^_^;)

で、タイヤを替えたあとは、待ってましたとばかり、頼まれごとのため車で出かける羽目になり、夕方になってから出発しました。

このころは、雪から小雨に変わり気温は急激に低下。
ものすごいアイスバーンが出来つつある中、ゆっくりと車を走らせていました。

びっくりしたのは、どんなに雪が降っても幹線道路だけは積もることがなかったのに、中原街道はすっかり真っ白で、2車線道路の片側は、乗り捨てられたトラックや乗用車に、さらに雪が降り積もっていて、走っている車もお尻を振りながらあらぬ方向にハンドルを取られているという状態でした。

スタットレスタイヤでも、半分凍った雪道の坂道では、全く制御不能になります。

急な坂道で立ち往生している車が端に寄るのを待っていたら、自分が今度は動けなくなって、押してもらって脱出することができて、いつもの時間も3倍ほどかかって帰宅する羽目になりました。

もう、これで日曜日はクタクタです。
昨日は、案の定積もったままの雪がガチガチにかたまり、道は混乱状態でした。
ステーションの車は、駐車場から出ることさえ困難で、その日の訪問で安定されている方はお休みをいただいたり、日にちを変更していただき、絶対行く必要のある方でタイムスケジュールを組み、私の車でスタッフを送り迎えしました。

ちょっと路地に入れば、ガリガリの真っ白で、車体のお腹をガリガリすりながら、半日以上凍った道路を走り続け、午後からの訪問もなかなか大変で、家に帰った時にはもうへとへとでした。


そして今日、やっと幹線道路や大きめの脇道はなんとかなったので、通常訪問をすることができました。

もし、万が一この雪が二日も続いたら、いったいこのあたりはどうなってしまうんでしょうね。

雪はほとんど降らないと安心していましたが、天変地異のやたら起きるこの頃、とんでもないことになってしまうかもしれません。
地域としても、少し対応を考えないと、死者が出てもおかしくないのではと思います。



それじゃあ、訪問看護ステーションとしては、一体何ができるのかな??

訪問車のタイヤを変えるといっても、、雪道に慣れないスタッフには、かなりリスクがあります。
ペーパードライバーから訪問のために区内だけ走れるようになったスタッフにとっては、エンジンブレーキだって怪しい人もいて、やはりリスクがありすぎますますよね。

そして二日たった今日、脇道はいまだアイススケート場のようなところもあって、やっぱりまだ気をぬけません。

さっきうららの散歩に、夜の街に出ましたが、なんといきなり滑って転びました。Σ(゜д゜lll)
誰も見ていなくて良かったです。超恥ずかしいですわ・・。(^_^;)

そんなわけで、やっと更新をと思ったものの、再び愚痴になってしまいました。

なんというか、正月明けそうそう波乱の幕開けとなりました。

ステーションの患者さんはといえば、このところでバタバタと入院されて、またまたスケジュールの空きが増えてきています。
新患さんも、開始直後に入院をおすすめすることになったり、訪問自体がキャンセルになったり、退院の予定が伸びてしまったりと、どうもうまく回転しません。

なかなか思うようにはいかないもです。

今週の金曜日には、悪名高い「情報公表制度」の調査が入るので、あすはその準備がメインになります。

毎日、一つ一つ課題をこなしながら、この山を超えていかないとね。



ぼやきたい日もあるんです。

2013-01-11 23:05:31 | 訪問看護、緩和ケア
ケアマネともども、ずっと振り回されて、すごい時間を費やして、ああでもないこうでもないと考え、あちこちに連携依頼の電話をして、話し合いを重ねた患者さんがいました。

でも、結果自分たちで勝手に談判して、なんで??と思える病棟に入院が決定したと連絡が入りました。

一番必要なのは、その科じゃないはず・・。

でも、その理由も、これからそこで何をするのか、並行して一番問題となっている治療は行えるのかも分からずじまい。

病院連携室からはなんの情報も得られず、外来にも電話をしましたが「さあ・・わかりません。」との返事。

行政は、「ねェ〜。困りますよね〜。ひどいですよね〜。」というばかり。

はい。わかりました。もういいです。

バカみたいですね。
私たち。

物事には限界がありますから、連携の全く取れない、みんな好き放題で何がしたいのかも見えない案件は、終了にします。

これだけ、連携を取ろうとしても、全く無反応な病院にも、もう呆れてしまいました。

情報を提供しようとしただけ無駄でしたので、要請がない限りこちらから連絡もしないこととしました。

本当に、こういう形での撤退は、すごく嫌な気持ちになります。

結局、こうして好き放題をやっていれば、それで済んでしまうわけで、言った者勝ち。やったものがちなのでしょう。

こうして、私たちの税金は湯水のようにながれていくわけです。


この案件に振り回された約3週間とも決別します。
あとは、行政と病院にお任せするだけですから。


というわけで、空回りした私とケアマネは、すっきりと次のケースに向かいます。

ところで、毎年恒例の石油ストーブまかない料理ですが、今年の第一弾は大好評のおしるこです。

毎年、必ず一回は作ります。
朝からことことストーブで煮込めば、昼過ぎには美味しいお汁粉の出来上がりです。

   

お餅はそれぞれが自分で焼いて入れます。

寒ーい日の訪問の合間に、甘くて暖かいおしるこを、みんなでワイワイ食べると、嫌なことも忘れて、気持ちがほっこりします。

今日は、さらに瀬谷麹(竹村町の糀屋さんです。)の甘酒も買ってきました。

本当の米麹の甘酒。
甘酒といっても酒粕ではないので、アルコール分は全くなくて、ほんのり甘くていい香りのホットドリンクです。

これで腹立たしさも、緩和されてました。
今週から来週にかけて、新患さんがどんどん来ています。
来週も、一生懸命前に進むしか道はありません。


このところ、かなり自分自身の体力・気力の低下が堪えていて、いろいろな困難に遭遇するたび、実はしんどいなあと思ってしまいます。
なんだか、世の中は不公平だなぁ・・。
何もかも恵まれて、人生を楽しんでいる人たちがいる一方で、次々と不幸が起こったり、辛い出来事に翻弄されたりする人もいます。

「試練は乗り越えられる人にしか訪れない。そして乗り越えられた時に人は強く大きくなれるんだ。」っていうけれど・・。

きっとそうなのだと思う反面、なんだかそれって随分と不公平な気もして、こんなに辛いなら別に強くも大きくもならなくていいや・・なんて思ったりもします。

でも・・
どんなに辛い境遇でも、いつも明るく周囲にも気配りを絶やさず、今自分が出来ることをやっている人がいるのも事実です。

私だったら耐えられないだろうという悲しみと苦しみの連鎖のなかで、残り少ない時間を清貧の中で全うしようとしている人を目の当たりにすると、なーんて自分はだらしないのだろうかと恥ずかしくもあり・・。

はあ、やっぱりまだまだなんだなぁ。私。


そんなことを行きつもどりつ考えながら、今日も一日が過ぎていきました。

とりとめない話ばかりを書き連ねてはいますが、とりあえずブツブツぼやきたい日もあるのです。



見えない壁

2013-01-09 23:39:24 | 訪問看護、緩和ケア
初回訪問の時に、いつもいつも受け入れてもらえるわけではありません。

「俺は騙されないぞ!」初回訪問の時にそう言った患者さんは、今は私たちを待っていてくれます。

けれど、そんなにうまくいくことばかりでもないのです。

ケアマネさんと初めて訪問して「こんにちは。はじめまして。」と言って挨拶をした時の彼女の表情に、強い拒否があるのを感じました。

「ナニシニキタノ?」そう言っているような空気が、彼女の周囲から感じられます。

表情を消して、一瞥すると視線を外して目を伏せてしまう・・。

質問には、ごく簡単にそっけなく答えてはくれますが、たぶん本当の苦しみはわからないように押し込んでいるのでしょう。

きっと本当は、痛みや息苦しさや、身の置き所のないだるさが体を押し包んでいるはずなのに、何かに対する怒りや絶望が彼女に強固な鎧を纏わせているようです。

「疲れるから、もういいから。何もして欲しいことはないの。次々いろんな人が来て、もういい加減にして・・」

サービスの始まりには、確かにいろんな人がやってきて契約やら説明やら、初回訪問やらと忙しくなります。
具合の悪いときのは、本当に鬱陶しくて辛いのだと思います。

それでも、ご家族からのご希望もあり、訪問看護が始まりました。

在宅療養を決意するまでに、どんな辛いことがあったのか、どんなひどい言葉を聞かされたのか・・
医療者への不信感は、関わった医療者の知らないところで、一人の患者さんの心を閉ざしてしまったようでした。
また、彼女の身に起きたそれまでの悲しみや不幸も、その心をいじめ続けてきたようでした。


私ができることは、ここに私たちがいることを伝えるしかありませんでした。

「嫌なことはしません。ただ週に一度だけご主人が安心するように、主治医の先生と見守らせてください。そしてもし、何かお手伝いすることがあったら、いつでも声をかけてくださいね。」

そう言って、失礼することにしました。

レスキューの薬さえ、もしかしたらこれからも拒否していくのかもしれません。


何もしてほしいことはないです。
ただ、夫がそばにいてくれれば、最後までそっとしておいてくれればいいです。
もう、何も必要としない。


でも、人生の終わりのわずかの時間、怒りや不信の中で過ごして欲しくはない・・
穏やかで、優しい時間の中で過ごして欲しい。

なるべくふたりの時間を邪魔することなく、苦痛を我慢することなく、心が安らぐ時間をもって欲しいなと思います。

今は、つかず離れづ見守るときだと思っています。
もし、そのままだとしても致し方ないけれど、「助けて。」と言われた時には、すぐにそばに行ける。
それが私たちのできることです。



カンファレンスは重要

2013-01-07 20:59:36 | 訪問看護、緩和ケア
カンファレンスというのは、会議・競技という意味で、医療関係者が一般的に使う言葉です。

なので、退院前共同指導とか言っても、私たちにとっては退院前カンファになります。

困難事例に遭遇したときは、私たちカンファを行います。

地域での支援という意味では、行政からの参加を要請します。
支援の対象によりますが、障害担当、保護担当、高齢福祉担当などがあり、子供が対象だと母子家庭支援センターや児相、学校カウンセラーや教師なども参加することとなります。

そこに、利用中のサービス担当者が入り、地域ぐるみでどう支援するのかを話し合うのです。


前回も書きましたが、私は現在の日本の抱える問題が、ひとりひとりの支援の仕方を、一つ一つ考え直していくことで大きな改革をもたらすのではないかと考えています。

公的な資金を、いかに効率的に使っていくか、その対象者をいかにいい状態(社会参加や就労なども含め)にもっていくかということです。

ただ、漫然というままにサービスを入れるのではなく、悪化させてしまった病状を改善させ、人としての尊厳を取り戻すために、言いなりならない勇気を周囲の関係者が持つこと。

そのために各サービス担当者から、それぞれ情報提供がされ、現在の問題の全体像が見えてきます。

その中から問題点をクローズアップして、それに対する対応策を考えます。

そして、私たちは同じ方向性を持って支援の体制を整えてくのです。

ただ、ここに対象者の意思も反映させていかなければなりません。
これが難しいのです。

何年かまえに、言われるままに医療費から通院と称する飛行機代まで何年にもわたって支払い続けた自治体の話がありましたが、限られた資金の中であくまでも平等に分配されるべきだと思います。

少なくとも、僅かな年金暮らしの中で、精一杯やりくりしながら慎ましく、必要なサービスや医療を選択して使っている人々よりも、なんでも使い放題、言いたい放題であってはいけないと思います。

そのために、今なにが必要で何が不要なのか、治療する意思があるのか、そのためにはいいことばかりの選択は出来ないのだということを説明すること、それができなければ治療のためのサービスは受けられないという毅然とした姿勢を見せる必要があると思うのです。

今回、全員一致で方向性が決まりました。

やっと、関係者が揃って情報を共有することができたのです。

12月の後半になって引き継いだケースですから、実際は2週間ちょっとの関わりです。
うちに変わったとたん、がんがんいろんなことを言って騒いだので、周囲はちょっとうるさく感じたかもしれませんが、やっぱり見過ごせない問題でした。
でも、結果オーライにできたらいいかなと思います。
まだまだ、先は長い話ですが、この方の将来が、私たち同世代の人として明るいものであってほしいと思います。

波乱の仕事始め!

2013-01-04 23:24:27 | 訪問看護、緩和ケア
いよいよ25年のお仕事がスタートです。

ひゃあ〜。

開けてみればまあ、いろいろな問題が起きていて、訪問は詰まっていて、一体どこから手をつけようか状態でしたが、とりあえず今日のところは収集することができました。

しかし・・人それぞれ価値観が違うとは言え、その価値観に沿うということは、大変なことだと思います。
それがあまりにもかけ離れたところにあったり、選択する必要のある時期に選択する道を選べない、選ぶことを避ける(逃げる?)場合だったり、療養自体を遠隔操作しようとするご家族に振り回されたりと、まあいろいろ対応には苦慮するわけです。

それぞれの療養の形に沿うとは言っても、「何でもかんでもしたいようにする。」ということを受け入れるのとはかなり違います。

療養のスタイルを押し付けたり、マニュアル的にケアを押し付けたりすることも違うと思います。

権利ばかり振りかざされても、その方がすべき義務を一切しないのであれば、それに対して享受することは、「言いなりになる。」と同じだとも思います。

それぞれの思いに沿う。
一方では、「言いなりなるのではない。」

両極のようで、実はベクトルは同じ方向を向くようにする。

うーん、難しいですね。


いくつかの病気を抱え、合併症を持ち、心身の不安定さの中で、家族関係の問題を抱え、それでも好き放題を許してきた今までのサポート体制が、さらに状況の悪化を生んでいることを指摘して、手を尽くして入院先を確保した方が、さっさと自己退院をしてきました。

2週間状況を見て、これ以上好き放題をすることで、さらなる悪化と生命危機を招き、膨大な介護保険料と医療保険料を垂れ流すことになると話し合った結果、たくさんの人の協力と、連携での入院でした。

その人なりの理由はあるかもしれない。

でも、その理由が自分勝手な権利の主張や「好きにしたい。」だけではダメです。

「治そう。」という努力や、「自分で頑張ろう。」という努力もなく、「タダだからいくらでも頼める。」「やってくれてあたりまえ。」「ああして、こうして、でもあれは嫌これは嫌。」と言うままにサービスをやたら導入するとしたら、それは国の根幹を揺るがす行為となります。

欧米では、たとえばCOPDの治療中に喫煙をした場合、「治療する意思がない。」として、治療をしてもらえなくなるそうです。

そこまでする必要があるのかどうかは別として、国としてどうすべきか、行政主導でどうしたらこの悪循環を断ち切るのか、を考えて欲しいと思います。

実はこういうケースはたくさんあって、実際問題いちいち構っていられないほど、行政だって大変なのは承知の上での話です。

基本は、苦痛のない穏やかな在宅生活を支援する事です。
環境を整え、清潔で人としての基本的な最低限度の生活を保証するべきなのです。
けれど、それが寝たきり状態や、褥瘡まみれに状態を作ったり、生活意欲や労働意欲を削ぐものであってはいけないと思います。

ああ・・・
疲れた〜(; ̄д ̄)