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Narashino Geography 23 ポストモダニティのネットワーク社会

2021-03-24 23:32:07 | 地理学

ポストモダニティのネットワーク社会


スマートシティ、スーパーシティ
21世紀は20世紀型のモダンな世界(近代の生産力至上主義)が大きく転換して、ポストモダニティの社会(脱近代・これまでのあり方を見直す)に変質してきています。自動車会社の「トヨタ」がスマートシティ(※1)の実験都市を富士山麓に建設しているのも、自動車産業、特にエンジン型の自動車の見通しが危うくなっているからです。
(※1) トヨタの「スマートシティ」(Woven City ウーブンシティ(※2))は「AIやビッグデータを活用した未来都市」を謳(うた)った政府の「スーパーシティ」構想と軌を一(いつ)にするものです。
昨年5月安倍政権が「スーパーシティ法」を成立させました。

スーパーシティ法は
①さまざまな規制や市民の権利を撤廃することにより、国や自治体がもっている個人情報や、民間企業が持つ行動履歴などの個人データを一元化して国と民間企業が完全に国民を支配する
②監視社会化をもたらす
などの危険性が指摘されています。


(※2) 「ウーブン・シティ」というのは「織られた都市」(網の目のように道が織り込まれ合う街)という意味だそうです。トヨタの創業者「豊田佐吉」が自動織機を発明して繊維会社を始めたことにもちなんでネーミングされたようです。

ガソリン自動車から電気自動車へ
ボクの授業では40年前に「後40年ほどで原油は枯渇する」(当時の年間生産量で確認埋蔵量を割った年数)という予測を示しながら、「自動車会社が電気自動車の開発に本腰を入れたら、そろそろかも…」と話していました。現状は原油枯渇でなく、ほかの要因で自動車産業は変化しています。

個人情報、個人の行動履歴が丸裸にされ、監視される社会
まずは自動車が電器製品として一般に普及し、その後、さまざまな製品がネットワーク化されたITO(インフォメーション・テクノロジー・アウトソーシング:コンピュータでの情報管理の外部委託)のシステムが構築されていくことが予想されます。それが「明るい社会」なのかは疑問です。個人情報の多くが蓄積され、プライバシーが侵食されていきそうです。すでに、クレジットカードなどで、個人の購買情報が蓄積され、交通系のICカードのデータで個人の行動履歴もほとんど把握されています。メールのやり取りも探る気になれば、キーワードで簡単にリストアップができ、米国などでは実際に、テロ対策などに運用されています。
(日本人の個人情報がLINEを通じて中国や韓国で見られる、ということが最近問題になりました)

「手書きの手紙」がもっとも安全

現在、秘匿性が最も高い通信システムは郵便です。それも、手書きのお手紙が最もプライバシーを守る手段です。
英語ではe-mailに対し、普通の郵便はsnail mail(snail=かたつむり のようにノロノロしたメール)と言います。手書きのsnail mail の安全さが、今後見直されてくるかも知れないですね。

デジタル庁、GIGAスクール構想。「道具」に振り回されることが心配

便利な世界が、「幸福で良い世界」なのかは吟味する必要があります。日本でもデジタル庁が設置されそうですが、学校でも生徒全員にタブレット端末を持たせるというGIGAスクール構想が進められ、教科書もデジタル化される動きが進んでいます。

GIGAスクールにおける数々の懸念について - 考察 (fc2.com)

学校、教員はこの急速な変化に対応する余裕がなく、「道具」に振り回されることが心配です。この数年から10年ほどは学校のICT(情報通信技術:Information and Communication Technology)化によって混乱が起こることを覚悟しておく必要がありそうです。

権力や行政が市民を監視、支配する「ディストピア」

社会全体がデジタル化されていくことは必然の変化ですが、どのような社会を構築していくかは慎重な議論と吟味が必要です。単にデジタルから距離を置くことが懸命な判断とは言えないように思います。賢くデジタル化に対応する知恵が必要な時代です。特に権力や行政がデジタルの「力」によって市民を監視し,支配する姿は「ディストピア」(「ユートピア」の反対語で、「こんな世界、絶対イヤ、というような世界」)のように思えます。
テクノロジーが貧しい人々を苦しめる「デジタル・ディストピア」とは? - GIGAZINE

「ディストピア」を描いた映画
ハンガー・ゲーム(富裕層が支配する地球。貧しい者は「死にたくなければ他の者たちを倒す」ゲームを強制される。ミャンマー民衆の「三本指」のルーツはこの映画)

ロスト・エモーション(感情のない人間しか生存を許されない未来社会)
ザ・サークル(SNSの行きつく先は、24時間監視される社会。牢獄そのもの)

デジタル社会に対応するグランド・セオリーが生まれることを期待
現在進行中のデジタル社会に対応する新・資本論のようなグランド・セオリー(一般理論)が生まれることを期待しています。

エシカル消費、フェアトレード、「消費は地球への投票行動」
さて、社会の必然的変化に振り回されないよう、賢く生きるにはどのような知恵が必要でしょうか。日本には「新しいものが良いもの」という文化がありますが、新しいものにすぐ飛びつかず、落ち着いて考えることが大切だと思います。日本社会には世界の人々が持つ宗教的な規範がありません。その結果、明確な倫理観がなく、どうしても個人的利益優先の行動に走りがちです。自己中心的な利益追求に走らず、賢い生き方を模索することも大切です。「安いから買う」という、単純な消費ではなく、「消費は地球への投票行動」という意識を持つことも重要です。最近では「エシカル消費」と呼ばれる、倫理的な消費行動を求める動きがあります。フェアトレードという、適正な生産と流通と組み合わせて、社会の新しいスタイルとして定着しつつあります。

(エシカル消費、フェアトレードについては、「考える地理授業」でも触れました)
Narashino Geography ⑬ 考える地理授業 - 住みたい習志野

AIのディープラーニングに期待と不安

AI(人工知能)のディープラーニング(深層学習)(※1)にも、期待と不安があります。AIに与えるアルゴリズム(計算、情報処理の手続き)(※2)によっては、人類は想像以上のインパクトを受ける可能性があります。
SF映画の「ターミネーター」のようなAIの暴走によって人類が危機に瀕することも絶対にないとは言えないからです。
(※1)「ディープラーニング」とは、人間や動物の脳神経回路をモデルとしたアルゴリズムを多層構造化したもの。藤井聡太さんとディープラーニングしたAIによる将棋の対局が有名ですね。
(※2)アルゴリズムという言葉は、中央アジアのホラズム(アラビア語でフワーリズム)出身の科学者アル=フワーリズミー(الخوارزمي:ホラズム出身の人、という意味)に由来。アル=フワーリズミーというアラビア語がラテン語でalgorismusと翻訳され、英語の Algorithm になりました。


ターミネーター

AIを人より上に置き、”神的”な権力を与えるのは危険

あるいはAIに“神的”な権力を与え、人よりも賢明な判断を求めることも危険でしょう。常に正しい判断の積み重ねが結果として間違っていることもあるからです。

モダニズム(近代主義)の合理性万能からポストモダン(脱近代)の批判的な思考へ

モダニズムの合理性万能にポストモダニティは懐疑的です。常に正解はないと考えるのがポストモダンの特徴の一つです。複雑な情報化社会を賢く生きることは至難ですが、クリティカル(批判的)に物事を考える努力が一層大切です。(近)

 

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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2021-03-26 17:26:33
https://news.yahoo.co.jp/articles/f5601a47aa0ada5fb595c5af0aae0b19a32e8af4
マイナンバーの中国流失問題

https://news.yahoo.co.jp/articles/904298871f54af119764d80227418463b953107a
マイナンバーカードの健保証利用延期

知らない間に、コンピューターに飼い慣らされる時代が来るらしい。
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