隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

0330.遠きに目ありて

2003年01月24日 | 連作短編集
遠きに目ありて
読 了 日 2003/01/24
著  者 天藤真
出 版 社 東京創元社
形  態 文庫
ページ数 406
発 行 日 2001/08/03
ISBN 4-488-40801-X

 

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書も安楽椅子探偵の系譜で紹介されていた1冊。
著者の作は、1昨年9月に初めて読んだ「大誘拐」(126.参照)があるが、その見事な筋書きと、面白さに感動したものだ。
本作はそれとは全く違った面白さで、またまた感動を新たにした。
ストーリーは、成城署の捜査主任・真名部警部が引越し先で同じ町内に住む女流作家と知り合いになり、作品のモデルとなった少年を紹介されるところから始まる。 その少年は脳性麻痺のため殆ど全身が不自由で、わずかに自由が利く左手の指を使って、本のページを繰ったり、カナタイプを打って感想文を綴ったりする。警部は、少年にオセロゲームを教えて一緒にゲームをするが、、少年は次第に強くなり、署内では腕自慢の警部を負かすようになり、その頭脳の優秀さに驚かされる。そしてその後、もっと驚くことが・・・。

安楽椅子ならぬ、この車椅子探偵の少年には、モデルがあり、それも実在のモデルではなく、作家・仁木悦子氏の「青じろい季節」に脇役として登場していた少年である。著者のあとがきによれば、主人公のイメージに苦しんでいた時、天啓のようにひらめいたのが、仁木作品の「青じろい季節」だったという。
著者がこの少年のキャラクターを主人公にして作品を書くことを仁木氏は快く承諾したという。巻末の解説で仁木悦子氏の夫君である後藤安彦氏もそう書いている。
障害者を主人公に据えたこの作品を読んで、僕は知的障害で福祉施設に入所している息子のことを重ねあわせ、何度も涙が出るのを禁じえなかった。著者の優しさが物語のそこここに表れている作品である。

 

 

初出誌(幻影城)
# タイトル 発行月・号
1 多すぎる証人 1976年1月号
2 宙を飛ぶ死 1976年2月号
3 出口のない街 1976年3 月号
4 見えない白い手 1976年4月号
5 完全な不在 1976年5- 6月号

 

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