goo blog サービス終了のお知らせ 

隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

2007.あなたのいない記憶

2020年11月04日 | サスペンス

 

 

あなたのいない記憶
読了日 2020/11/04
著 者 辻堂ゆめ
出版社 宝島社
形 態 単行本
ページ数 334
発行日 2016/11/05
ISBN 978-4-8002-6237-0

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

ログへの投稿が大分日を開けてしまった。これが初めての事ではないが、毎度毎度の不規則な投稿は、余計に自分のいい加減さをひけらかしているようだから、少し改めようとは思いながらもなかなか直らない。


いよいよと言った感じのアメリカ大統領選挙が始まって(投票は昨日11月3日だった)、テレビは各局選挙一色かと思ったが、そうでもなく日常の番組を流しているところが多い。
まあ、それはそうだ、いくら影響を及ぼすとはいえ、他国の首長選挙に一日中関わっているわけにもいかないだろう。しかし僕にとっても大いなる関心事で、現職、対抗馬の争いは他の何よりも興味がある。
それでも興味があるといった程度で、僕の生活に直接響くものではないが・・・。
しかし、良きにつけ悪しきにつけドナルド・トランプ氏の存在感は何物にも勝っている。そんな姿を見ていると、前回のヒラリー・クリントン氏との選挙戦の時のように、バイデン氏の有利とされている州も、ふたを開けてみればひっくり返って、けっきょくはトランプ氏の再選、てな結果になるのかどうか?僕にはわからないが、案外そんなところに落ち着く可能性もある、のではないか?そんなことも考えられるのだ。

 

 

ふと、思い出してAmazonで著者の作品を検索、タイトルに惹かれて図書館で借りてきた。 初めて彼女の作品と出逢ったのは、もう3年も前の事で宝島社の「このミス大賞」の優秀作品に選ばれたデビュー作『いなくなった私へ』というファンタジックなミステリーだった。もう内容はすっかり忘れたが、僕の好みの内容だったことだけが頭に残っている。
東大卒の才媛と言うことからもデビュー作に惹かれた一因だったが、今や東大在学中の秀才たちが、テレビのクイズ番組で活躍しており、視聴者を喜ばせている。昔は東大を出て大蔵省(現在の財務省)の官僚になるのが、一つの出世の道と考えられていた時代もあり(現在も相変わらずの様相か)、時代の変遷を感じる。
まあ、いろいろあるが僕にとっては、その才能を活かして面白いミステリーを生みだしてくれることを大いに歓迎するところだ。
歳をとったせいなのだろうが、近ごろと言うか大分前から、ミステリーに対して昔のようなときめきを感じなくなってきている。情報過多の時代だからか?様々な情報が入り乱れる中、過剰ともいえる出版社の広告やキャッチコピーが、新作ミステリーへの勧誘を邪魔しているような気がしてならない。
僕の個人的な思いかもしれないが、否、ここでは全く僕の個人的な思いを書いているのだが、それでもたまに新作ミステリーを読んで、衝撃とも言える面白さを感じることもあるから、ミステリー読書をやめられないでいるのだ。

 

 

きな作家の作品を次々と漁るように読むのは、決して落胆することがない、という安易な思いがあるからだが、一つには新たな作者の作品が自分の好みに合うかどうかが分からないということにも起因する。
だから、思いがけず初めての作家の作品が、面白く読めた時には望外の喜びを感じるのだろう。めったに無いことだが。
先月(9月)に出版社の広告がメールマガジンで何度か続いているのが気になって、2作続けて読んだが、期待していた程でなかったが、多分それは僕の受け入れ方が、時期に合わなかったからではないかと思っている。
過去に何度かそういうことがあって、全く駄作だと思っていた作品を、気を取り直して何か月か、あるいは何年かしてから読み直して、その面白さを認識したということがあった。
それこそが読書の醍醐味だ。

 

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

 


2006.夜がどれほど暗くても

2020年10月14日 | サスペンス

  

夜がどれほど暗くても
読了日 2020/08/31
著 者 中山七里
出版社 角川春樹事務所
形 態 単行本
ページ数 281
発行日 2020/03/18
ISBN 978-4-7584-1347-3

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

月11日に予約申し込みをして、ようやく順番が回ってきた5冊の内の1冊が本書だ。 相変わらず人気の高い中山氏だが、それにも増してその旺盛な執筆振りに、唯々驚くほかない。何にしても身体に気を付けて、面白い物語の紡ぎ手を長く保ってほしい。
実は本書から後の3冊は、前の2回(科警研のホームズの2巻)よりも、先に読み終わっていたのだ。科警研のホームズを読み始めた時に、図書館からの通知が来たため、借りに行って先に読んでしまったということだ。
僕の読書はとにかく順不同で節操も何もあったものではないから、そのとき読みたいと思った本があれば、途中だろうが読みかけの本があろうが、そんなことはお構いなくほったらかしにしてしまうという、そんな所があって・・・。いやいやそればかりでなく図書館の本は、2週間で返す必要がある、と言うこともあるから、予約した本の順番が来ればどうしても先に急ぐことになってしまうのだ。
いつも読み終われば早く読もうが、遅く読もうが内容に変わりがあるわけではないと思うのだが、それでも新作を早く読みたいと思うのが人情だと、変な納得感を得ようとするのがいつもの事だ。
(ここまでは9月の初めに書いてあった)

 

 

本書は、大手出版社に勤める志賀倫成が、息子の殺人容疑に関して、参考人として警視庁への同行を求められるという、少しばかりショッキングなシーンが描かれる。スタートから脅かされて一体どんなストーリーになるのだろう?そんな疑問が頭に浮かぶ。
作中の探偵役と推理合戦をするのだが、残念なことに僕はミステリファンと言うだけで、実際の推理や捜査は全くダメで、犯人を当てたこともなければ、仮定すらもできない。僕が中山七里氏の作品に惹かれるのは、もちろんどんでん返しの帝王と言われるその作風にある。
だから読んでいる途中であれこれ容疑者を想定することはあえてしない。結末の驚きを壊してしまうような気がするからだ。そんな気遣いは僕に限って必要ないことはすでに書いた通り。歳をとって益々回転の鈍くなった頭は使わず、もっぱらストーリーの展開を追うのみで、満足する僕だが時にはぼんやりと、こいつが怪しいと思うこともあり、別にデータから類推したわけでもなく、ただ単にお粗末な勘が働くだけの事だ。

 

 

日はもう10月も半ばに差し掛かった14日だ。僕の怠け癖がまた出て、ブログへの投稿が2か月も間があいてしまった。この本を読み終わったのは8月31日で、当然の事ながら僕はほとんどその内容を忘れている。ノートの記録はメモ程度の事しかないから、この記事を書くため図書館でもう一度本書を借りてきた。 とは言えざっと読んだところで、記事を書けるわけでもないのだが、それでもブロガーとしての最低限のマナーだという、僕の矜持もあって・・・などときれいごとを言ってられない、2か月も投稿を放っておいたのだから。 そんなことは僕にとって珍しいことでもなく、特に図書館で借りて読んだ本の時は、往々にして同様の事が発生する。近ごろは特に多くなっている。3回に1回程度同じことを書いているような気がして、全くお恥ずかしい。

 


にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村


2003.冬雷

2020年09月15日 | サスペンス

 

 

冬雷
読了日 2020/08/06
著 者 逸木裕
出版社 東京創元社
形 態 文庫
ページ数 368
発行日 2020/04/30
ISBN 978-4-488-42721-4

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

日(9月14日 月曜日)いすみ市大原の親戚から訃報が知らされた。何と、僕の中学の同級生が亡くなったというのだ。正に青天の霹靂とはこういうことをさすのだと感じた。
彼は僕の同級生と言うばかりでなく、我が家のカミさんの弟でもある。それについてはここでも前に簡単に書いたことがあるが、若い頃僕は彼のところに遊びに行っていて、カミさんと出逢って一緒になったという経緯があって、いわば彼は僕ら夫婦の結びの神でもあったのだ。
まあ、それはともかくとして、彼は家業の電気工事店の社長として、長く社員を率いて活動していたが、2-3年前に胃癌を発症して全摘を行っていた。そんなことから、何度か入退院を繰り返しており、病状が危ぶまれていたとはいえ、見た目は割と元気だったから、まさかこんなに早く逝ってしまうとは思っていなかった。
こうなってみると人の命なんて、本当に危うく儚いものだと思わずにはいられない。
葬儀は明日16日水曜日に行うということなので、カミさんと二人で参列する。
この歳になると、だんだん知る人が少なくなるのは、自然の摂理だとは言うものの、寂しくなる。

 

 

このところなんとなく気になる本が目について、なけなしの金をはたくことになっている。
出来るならば、いや出来ることはできるのだが、その図書館を利用することだ。だが、僕は、気になる作品を自分のものにして読みたいのだ。貧乏なくせにそうした不相応な欲望が頭をもたげて、買うことに精を出す。
そして気に入れば読後暫くは手元に置くことにする。いずれは狭い部屋に置ききれずに、手放すことになるのだが・・・・。
どうも我ながら訳の分からない性格が、時々こうして顔を出すものだから、いつでも懐不如意の状態が続く。
今となっては、金があろうがなかろうが日常生活に何ら支障をきたすものでもないが、いや支障はあるか!
こうしたみみっちい話はさておいて、こんな新しい作者や作品が僕の眼に入るのは、出版社のメールマガジンからだ。この読書記録を始めた頃は、長いこと小説を読むということからは萎えていたため、出版事情に疎くなっており、ミステリー作品の発行事情が全くと言って良いほど分からず、僕のパソコン事情もお粗末な状態だったから、いろいろと環境のせいにするのはどうかと思うが、実際そんな所だったのだ。

 

 

0年も前は今では大昔だ。
だが、そんな昔も今では不都合なことも懐かしく思い出すのはなぜだろう?いやいやそんなことはさておいて、本書も東京創元社のメールマガジンの紹介に依って知ったのだが、見た途端心に引っかかるものがあったのだろう、Amazonの中古本を我がものしてしまったのだ。
前回書いたが、僕が本を買うのはとりあえず本書が最後で、当分は図書館を利用することになる。
そんなことをここで強調しなくてもいいのだが、いくらかは自分への戒めと――ならないか。


前首相が病のために退いて、昨日はその後継者選びが実施されて、現官房長官が自民党総裁となった。初めから出来レース(選挙)だったとは言いながら、自民党本部は厳粛な空気に包まれて、粛々と後継選びが実施された。
召集される国会において、次期首相に選出されることがほぼ決定している。
前首相の陰に寄り添うような印象だった官房長官だが、こうなってみると表の顔とは異なる実情が、なんとなく垣間見えるような気もしてくるから不思議だ。

 

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

 


2002.銀色の国

2020年09月10日 | サスペンス

 

銀色の国
読了日 2020/08/04
著 者 逸木裕
出版社 東京創元社
形 態 単行本
ページ数 381
発行日 2020/05/29
ISBN 978-4-488-02809-1

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

うだいぶ前に書いた文章の内容が、少し古い印象を与えるかもしれない。それでも新型コロナウィルスの感染状況は、依然としてその勢いを止めることがなく、不気味な感じを現し続けている。
2千冊と言う目標を達成したから、と言うわけでもないのだが、なんとなく力が抜けてここに書くことにも、情熱を傾けられなくなったみたいだ。僕のようないたって凡人が今までよく続けてこられたというのが、どうやら本音のようだ。
それでも思い返せば、何人もの好きな作家諸氏を知ることが出来たこと、さらにはそのいくつもの作品を読むことが出来たこと、好きな作品を読みながらミステリーの奥深さを感じられたこと等々、20年と言う短い期間だったが、いろいろ考えさせることにも出会ってきた。
改めて言うことでもないが、そんな素晴らしい読書を続けてこられたことに、少なからず感謝をしている。 と言うことで、以下は8月初旬に書いたものだ。

 

 

新たな感染者数が過去最高を示す数値が、毎日のように更新される様子を見ていると、何やら落ち着かない雰囲気が漂い、そうした所に出かけることない僕も、何かしなければならないというような気になる。
まさかこんなに早く第二波が来るとも思っていなかったから、三密にもかかわりなく過ごしているので、感染することはないから、割合落ち着いた日常を過ごしていたが、一体どんな必要があって接待を伴い三密の発生するところへ出かけなければならないのだろう?とおもうが、やむを得ない事情もあるのだろう。
それより政府として確たる対策を講じる用意がないのが、理解できないことだ。何の学も経験も知識もない僕には、偉そうなことは言えないが、東京都の毎日の感染者数の推移を見ていると、無策、無作為に寄る正にパンデミックに近い状態を生み出している、と言う思いが湧く。

 

 

し時間が経てば自分のバカさ加減がよくわかるが、なかなかその時点では分からないから厄介なのだ。いやいや、厄介だ、では済まされないのだ。絶えずここで告白しているように、僕はあまり裕福ではなくどちらかと言えば貧乏と言える部類に入る。
実は本を買う金にも不自由しているくらいなのだ。それでもなおかつ後先考えずに、その時に持ってる金を惜しげもなく本につぎ込むという、愚行を成すのが僕という人間だ。
そんな自己批判をしても何の役にも立たないが、そうしたことをここに書くことの反省に依って、いくらかは後の行動に役立つのではと思うが、実のところ何の役にも立っていないのが悩ましいところだ。

しかし、読みたいと思わせる魅力を感じる作品が、次々と現れて僕の懐を寒からしめるのは、まだ良いとして、新たな作者がそうした作品を携えて、デビューするのも世の趨勢と言えるのか?

 

 

実は次なる僕の標的もすでに決まっており、そちらも何とか都合して、手に入れるつもりでいる。たかがわずかな本代で、身上をつぶすことはないと思うが、それが終わったらしばらくは新たに本を買うことを控える決心をしている。
声を大にして言うほどの事ではない、図書館に数冊の予約をしてあるだけの事だ。

もっと前にもその図書館の利用をしていれば、僕の読書人生は今よりも華やかなものになっただろうとは思うが、いまさらそんなことを言っても間に合わない。40年も前に千葉市から木更津市に越してきて、当時木更津在住の作家がサントリー・ミステリー大賞を受賞したということで、木更津市立図書館で作家の後援会が開催されて、僕はその講演を聞きに行ったことから、図書館を利用することになったのだった。
作家の名は典厩五郎氏、作品名は『土壇場でハリーライム』というスパイ小説だった。が、木更津市在住の作家と言うことから、木更津市立図書館にはその全作品がそろっているのではないかと思う。
余分な話になった。

 

て本作品は、自殺を防止することを目的とした、NPOの活動を描いた物語なのだが、一方ではコンピュータアプリケーションによる、集団自殺へ導くということを企てる者もいて、世は複雑怪奇。
物語は二方向から進んでいく。人生に夢も希望も見いだせず、自殺願望を抱えた若い女性。一方では、世の中の自殺者を事前に助けたいと願って、NPOを立ち上げた男性と、その意思を尊重して一緒に働くことにした女性。
並行して進む二つの視点が、どこでどういう形で結びつくのか、想像もつかないまま物語は進む。
主人公たちは、いや主人公の一人はアプリを立ち上げ、集団自殺を企てる者を探して、四方八方駆け回るのだが、簡単に見つけることはできない。そればかりか次第に彼を取り巻く者たちからも、浮く存在になっていく。

 

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

 


1997.怪物の木こり

2020年07月08日 | サスペンス

 

 

怪物の木こり
読了日 2020/07/06
著 者 倉井眉介
出版社 宝島社
形 態 文庫
ページ数 318
発行日 2020/02/20
ISBN 978-4-299-00256-3

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

時は新たに本を買うことを控えており、NETの広告やAmazon、あるいはヤフオクなどの閲覧もしないようにしていた。ところがいつの間にかそうしたことも忘れて、ヤフオクの出品に面白い本が出ていないか、Amazonの中古本に興味のある本がないか、などと毎日見ている。
別に買う目的ではない、などと自分に言い訳をしながら観ていると、そんなことはそっちのけでついつい手を出してしまう。本書もヤフオクにたくさん出品されている中で、一番安く即決で出品されていたので、買ってしまった。
「このミステリーがすごい!」大賞受賞作ということもあって、好みの作品をイメージするタイトルではなかったが、少し興味を持ったのだ。
だが、読み始めてストーリー構成にも、もしかしたら流行りがあるのか?というような疑問を抱く。というのは、少し前に読んだ『屋上のテロリスト』を、思い出したからだ。内容も登場人物にも全く似たところはないのだが、我々が住んでいる日常とは、ほんの少し相いれないような感覚を覚えたからだ。
多分それは僕の個人的な感情の流れで、そんなことを言っても他の人には、理解しがたいところだろうから、こだわらないでおこう。

 

 

物語の中で重要な枠割を持つ、脳チップに関していえば、僕は日ごろから将来科学や医学の進歩に依って、人間の記憶にもコンピュータと同様、メモリーが増設される時代が来るかもしれない、などという冗談というか希望というか、そんな思いを持つことがある。
SFじみた事柄とサイコパス、あるいは人間の心理というちょっとかかわりのないようなストーリーの展開に、多少の戸惑いを感じることもあって、先に書いたように決して僕の好みではなかったが、結構お終いまで僕にしては読み通した。
そういえば「このミス大賞」の受賞作には、この手の近い将来には常識となるような、内容のストーリーがいくつもあることを思い出す。中には面白くないと感じるものもあったが、僕は受賞作に傑作が多いことも感じており、これからも注目していくだろうことを再認識する。
たまには好み以外の作品も読んでみるものだ。

 

 

のところ東京都の新たな新型コロナウィルス感染者の増加と、西日本、特に九州地方の豪雨災害のニュースで、もちきりのテレビ放送に何と言って良いか?災害被害者への思いが胸をつぶす。
ここ何日か強風が止まず、昨年の台風で窓ガラスが割れたことから、夜には南側の窓は雨戸を閉めるようにしている。とかく“のど元過ぎれば・・・”となりがちの僕は、気を付けないと同じ過ちを繰り返すことになるのだ。それにしても風に雨戸が揺れる音は、あまり気持ちのいいものではない。普通は夜には収まるのが風なのだが、梅雨前線の停滞が、その淵を南からの湿った空気と雨とをもたらしているらしい。
夕食後の読書時間も落ち着いて本を読めるような環境にあらず、ウィスキーの量が少しずつ増えてゆく始末だ。
いつ出るとも知れない持病の通風を心配しながら飲む酒は、あまり旨いとは言えないが、それでもほろ酔いの気分が、このところの熟睡への近道となっているから、やめられないでいる。

 

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

 


1983.消えたミステリー

2020年06月04日 | サスペンス

 

 

消えたミステリー
読了日 2020/05/28
著 者 森瑤子
出版社 集英社
形 態 文庫
ページ数 247
発行日 1992/02/25
ISBN 4-08-749785-2

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

々思っていることだが、僕がまだ知らない面白いミステリーは、そっちこっちに有って、それらの本は、 じれったい様に読まれるのを待っている。
そんな状態ではないのかと思っているが、すべての本を探すことは不可能だ。たとえ見つかったとしても、全部読むことは叶わない。そして、探すためには、心ならずも批評家や先人の読後感を頼ることも必要だ(天邪鬼な僕は人の批評に従って読むことを良しとしていないのだ)。しかも読書というものは、感じることは十人十色で、評判の良かった本が必ずしも、僕の好みに合うかどうかは、全く未知数だ。そこが悩ましいところで、最後はどうしても自分の勘に頼ることが多くなる。
それがまた、頼りなくしばしば間違うというか、とんでもなく面白くもおかしくもないものにぶつかることもままある。
そんなことを考えながら、ヤフオクの出品を見ていたら、目についたのが本書だ。『消えた・・・・』何とかというタイトルに会うと、僕の心はざわめく。だが、僕は名前だけは見たことがあるが、森瑤子氏という作家については全く知らない。
どんな作品を書くのだろうと思ったが、タイトルが惹きつける力に勝てず、そんなに高くなかったことも幸いして落札した。

 

 

あまりにお定まりの幕開き、そしてその後のストーリー展開に、何だこれはと思いつつ読み進めて、最後まで引きずられるように読んだ。
ちょっと説明のできない―ネタバレが怖くて―結末だった。
ミステリーの結末について、読者を欺くために、作家はいろいろと工夫を凝らすのだが、なんとも言えない驚きを感じた。同様のたくらみというか、トリックというのか、は読んだことがあるが、予期せぬ驚きが待っていたという感じだ。
途端に僕は知らなかった作家の企みに、「やられた!」という感じを持ったのだった。そして、嬉しくなった。
Wikipediaによれば、この作品は1989年に同じ集英社から刊行されている。
そこで、僕がまだ知らないミステリーの傑作がたくさんあって、僕に読まれるのを待っている、ということに なるのだが、いやいや、こんなところにも隠れて、いや、隠れていたわけではない。僕が知らなかっただけで、こうした文学作品の作家の中には、ミステリーを書かせても一級品を紡ぐ作家は、多くいるのだろう。

 

 

つて、江戸川乱歩氏が雑誌“宝石”の立て直しを図った折に、探偵作家以外の多くの作家に探偵小説を書くことを勧めていた、ことを思い起こす。
その当時その誘いに応えて、ミステリーの傑作をいくつも世に出したのが、戸板康二氏や三浦朱門氏、曽野綾子氏夫妻などだった。一時期僕は『宝石』を定期購読していたから、宝石に掲載されたそれらのミステリーを読んだのだが、もう70年近くも前の事で、2-3日前の事ですら忘れる僕だから、当然のごとく記憶の底からすっぱりと消え去っている。
最近、といっても2007年から8年にかけて、戸板氏の生み出した歌舞伎俳優の名探偵・雅楽の事件簿を紐解いたり、2010年には長年探し求めた曽野綾子氏の、『暗い日曜日』を読むなど、古き良き時代の探偵小説に、郷愁の思いをぶつけていた。
しかし、若かった頃の僕と今の僕とでは、環境を始めとしてあまりにも異なる部分が大きく、その頃の想いが浮かぶはずもなく、それどころかストーリーに対する新たな思いが生まれて、なぜか新鮮な感覚を覚えたのであった。

 

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

 


1976.屋上のテロリスト

2020年05月20日 | サスペンス

 

屋上のテロリスト
読了日 2020/05/03
著 者 知念実希人
出版社 光文社
形 態 文庫
ページ数 366
発行日 2017/04/20
ISBN 978-4-344-77465-3

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

月21日から5月3日まで、なんと12日もかかってようやく読み終えた。1冊の本を2週間近くもかかって読んだのは、今までにないことだが、数ページ読んでは一休みと言ったことを繰り返せばこうなる、ということを改めて確認しても、何の役にも立たない。
読書に集中できないのは最近の僕の特性だ。あまり芳しくないことだから、特性というのは可笑しいか。僕の読書時間は夜が多いから、最近は、従来あまり見なかったテレビを見るようになって、つい漫然と見流すことが多くなり―そうしたテレビの見方が一番僕の嫌いなことだったので、見ないことにしていたのだが―クイズ番組などを見るともなしに見ていると、アッという間に時間は過ぎる。
そんな合間を縫って本を開くものだから、同じところを何度も読んだりすることがあって、一向に進まなかったこともあるのだ。好きな作家の作品をそんな風に読むのは、作者に対しても失礼だと思いながらも、2週間近くもそんなことを続けていた。
残り時間のあまり多くない僕としては、全くの時間の無駄遣いだ。
ということで、著者の作品は前回の『天久鷹央の事件カルテ 魔弾の射手』に次いで24冊目となった。

 

 

何というか本書の内容は、現実世界とは少しばかり異なる様相を呈していた。 第2次世界大戦に敗れた日本は、ポツダム宣言を受託せず、東西に分断された。そして、東西は一触即発の危機をはらんでいる。西日本の、「大統領は(西日本は大統領制を敷いている)開戦の可能性に言及」と、新聞は報道している。
東日本連邦皇国が領有権を主張して、西日本の佐渡島に陸軍を侵攻させているからだ。
そんな中、西東京市、滝山高校の酒井彰人が、屋上から飛び降り自殺を図ろうとした丁度その時、「飛び降りるの?」と、声をかけてきた少女が。
そんな状況から物語は始まる。彼女―佐々木沙希と名乗る―は彰人に「アルバイトをしないか?」と誘いをかけてきた。佐々木沙希は西日本を代表する大企業・四葉グループの会長だという。

 

 

日は息子の入所している福祉施設から、正確には施設利用者(主として知的障碍者)の、保護者の団体である天羽支部から、昨年度の決算報告並びに、今年度の予算案だった。
新型コロナウィルスの感染は、時と所をかまわずに拡大させる。そして、福祉施設や、その利用者にも影響を及ぼすのだ。毎年3月、5月に開催される天羽支部会が中止となっての、書類審査と決済になった次第だ。
不幸中の幸いというか、施設の内、グループホームの主たる所在地は富津市で、感染者ゼロの区域だ。

我が息子が利用しているグループホームの、管理責任者には何度か電話で、様子伺いをしたが、何事もなく利用者は元気で過ごしているとのことだった。利用者たちが健康的な生活を送っていることが、保護者としては何よりの安心。このまま収束に向かってほしい、というのが切なる願いだ。

 

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

 


1975.medium 霊媒探偵 城塚翡翠

2020年05月18日 | サスペンス

 

 

medium 霊媒探偵 城塚翡翠
読了日 2020/04/20
著 者 相沢莎呼
出版社 講談社
形 態 単行本
ページ数 380
発行日 2019/09/10
ISBN 978-4-06-517094-6

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

邪鬼な傾向のある僕は、従来なら決して手にすることのない本だ。
が、最近はそうしたことがなくなったのだろうか?それとも僕の性格を以てしても、読みたくなる魅力的な本なのだろうか?
それはともかくとして、随分と世間の評価は高い。その評判通りに優れたミステリー作品だから、僕に「読め!」と言っているのだろうか?
いろいろと考えさせられる本だが、ヤフオクで適当な価格で落札できたことも幸いだった。
とにかく手にしたからには思い切り楽しむことにしよう。
一般的なミステリー形式―もしそういった形式があるとすればの話―で事件が起きて、状況や証拠から警察の協力して、難事件を解決してきた、推理作家の香月史郎。彼が大学の後輩から紹介されたのは、霊媒師といわれる城塚翡翠という女性だった。
香月はその後輩の倉持結花(ゆいか)と二人で会った城塚翡翠は、少女とも見える若くて、薄くらい部屋のせいか、神秘的な感じのする女性だった。だが、彼女は倉持ばかりか香月の職業まで当てた。

香月はその城塚翡翠の霊視に協力を得て、ますます事件解決に情熱を燃やすのだ。
が、問題は全く証拠を残さない連続殺人鬼だった。城塚翡翠の霊視は証拠にならないため、解決に至るには何とか証拠を固める必要があった。だが、殺人鬼の魔の手は城塚翡翠へと近づいていた。
多くの書店員が驚きと称賛の声を寄せている本書に、僕も同様の読後感を持った。

 

 

数日前に木更津市役所から、「特別定額給付金申請書在中」という封書が届いた。例の一律10万円という給付金だ。マイナンバーカードを持っている人は、オンラインで申請が出来るということだが暗証番号を忘れたなどという問い合わせが、殺到して役所と市民との間で大騒ぎというニュースが、テレビで報じられていた。我が家はマイナンバーカードを申請してなかったから、届いた申請書を記入して、「本人確認書類(運転免許証のコピー)」と「振込口座(通帳のコピー)」を貼付して、今日ポストに投函した。
我が家にとっては、3人分の給付金は、ありがたいが、困窮している世帯にとって、どれほどの助けになるのだろうと、ちょっぴり疑問に感じることも。
2月に中国での新型コロナウィルスの発生ニュースを聞いた時には、世界的な脅威に陥るとは思ってもいなかった。
市役所の説明書には、輸送申請に対しては5月29日から、オンライン申請は5月19日から、それぞれ順次振り込みとの記載がある。木更津市ではどの程度のオンライン申請があったのだろうか?
あまり芳しくなかったマイナンバーカードだが、それでもカードを申請した人は、それなりに居るのだろう。 いずれにしても、楽しみに待つとしよう。

 

 

曜日(16日)のニュースで、アメリカのGMS(ゼネラル・マーチャンダイズ・ストア)、JCペニーが連邦破産法(日本の民事再生法にあたる)を申請したという報道があった。
僕は驚きとともに深い感慨にふけった。ニュースではアメリカの老舗百貨店という解説があったが、日本の百貨店とは少し品ぞろえの点などで異なるが、総合的な品ぞろえと大規模なショッピングモールを経営する企業だ。
僕はサラリーマン現役の頃、このJCペニーやシアーズ・ローバック(現在はシアーズホールディングとなっているようだ)といったGMSを始め、Kマート、トレジュアリー等のDS(ディスカウントストア)、ウルワース、クレスといったVS(ヴァラエティストア)、またビルダースエンポリアム、ハンディマンなどHI(ホームインプルーブメント)、これらチェーンストアの経営を学んだ。
昭和50年から55年ころの話だ。昭和もだんだん遠くなって寂しくなる今日この頃だ。

 

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

 


1973.人面瘡探偵

2020年05月14日 | サスペンス

  

人面瘡探偵
読了日 2020/04/15
著 者 中山七里
出版社 小学館
形 態 単行本
ページ数 301
発行日 2019/11/20
ISBN 978-4-09-386555-5

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

和初期の探偵小説を思わせるような、ちょっと不気味な感じのするタイトルだ。中山七里氏の作品は本書で44冊目となった。それでもまだ、未読の新刊が数冊残っている。
全く驚くばかりの執筆振り。この調子だと生涯何百冊、いや著作は千冊にも達するのではないか!そんな思いを抱かせる健筆だ。
しかも著者の作品は終末で、それまでの流れを一変させるような、いわゆるどんでん返しといわれる、仕掛けが施されているのだ。そこから世間では彼を“どんでん返しの帝王”などと呼んでいる。
そうしたストーリーの流れはデビュー作から続いている。多彩なテーマで物語を紡いでいるのに、必ず終盤でアッと驚くような展開を示すには、前もってマジックの種を用意しておくから、ストーリーの流れに沿って伏線が張り巡らされている。が、残念だが、そういうことはずっと後になってからでないと分からない。
そして、「アッ!そうだったのか。」と、驚くやら、悔しがるやら、ということになる。
だが、僕が著者の作品に惹かれるのは、もちろんそんな事ばかりではない。何よりストーリーの面白さ、登場人物のキャラクターの魅力、また、シリーズ作品の展開等々、惹かれる要素は多々ある。

 

 

話は違うが、最初、昭和初期の探偵小説みたいなタイトルだと書いたが、歳をとった今だから、昔のことを懐かしく感じるのかもしれない。怪談めいた怖い話というのが、当時の探偵小説に多かった。
もちろんそういう話ばかりではないのだが、一般的にそんな解釈がされていたような気がする。横溝正史氏も新青年の頃は、そうしたものを目指していたのかも。そんなところから、僕の想いに至ったのかとも感じている。
もっとも横溝氏の場合は、早い時期にアガサ・クリスティや、ヴァン・ダイン等々の作品から、本格推理を目指して、金田一耕助という名探偵を生み出したことは、ミステリファンの周知の事実だ。
随筆などで明かしているように、横溝氏は自身の作風から、世の大勢からは受け入れられないもの、一部の探偵小説ファンのみが読むものというような認識をしていたらしい。
今は一人歩きの感も免れないような、横溝正史ミステリ大賞も僕などが思っていたのとは、全く異なる方向へと向かっているみたいだ。
話が横の細道に入ってしまった。

 

 

て物語は、相続鑑定士の三津木六兵が、信州随一の山林王・本城蔵之助の死に伴う、遺産相続に関しての依頼に応えて、現地を訪れるところから始まる。
昭和の匂いや風俗が色濃く残った山間の地、家政婦だという鈴原久瑠実の案内で着いた本城家は、そんな山深くの場所だった。そして、見たところあまり芳しくない経済状態が窺われた。
ところで、三津木六兵の右肩には人の顔とも見える傷がある。その人面瘡は、恐ろしく頭が良くて、回転も速いのだが、その反面口が悪く六兵はいつもやり込められている。だが、六兵はしばしば彼の助けを借りて、危急を脱してもいるから、難しい問題はどうしても彼の助けを借りることになるのだ。

相続が絡めば欲得が先行するのが世間一般の通例だが、二束三文と思われた山林が宝の山だと分かった途端、長男、次男と続けて不審死を遂げてしまう。
そんな中で三津木六兵の相続鑑定はどんな結論に至るのか?

 


にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

1968.騒がしい楽園

2020年05月04日 | サスペンス

  

騒がしい楽園
読了日 2020/03/27
著 者 中山七里
出版社 朝日新聞出版
形 態 単行本
ページ数 242
発行日 2020/01/30
ISBN 978-4-02-251662-6

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

月24日図書館からのメールに気付き開くと、「予約の資料が用意できました」という、本書の順番が回ってきた知らせだった。あいにく当日は火曜の休館日だったので翌25日に行って借りてきた。
コロナウィルスの感染予防のため図書館は通常営業は31日まで臨時休館だが、予約などの貸し出しは行っていた。全く厄介なコロナウィルスだ。
という3月の書き出しだが、まだその頃は緊急事態宣言もなく、今よりは少しマシだった。
図書館のみならず、臨時休業のところも多くなって、強制力はないにもかかわらず、営業の自粛が粛々と守られている現状は、感染力の拡大を守ろうとする、市民の力だ。
カバーのイラストから想像できるように、幼稚園か保育園に関わる内容か、と思いながら読み進めると、まさにその通りだった。
子供を預かってある程度の教育を施す、という点では保育園も学校と同様だ。そこで働く神尾舞子という女性が本編の主人公。

 

 

こうしたストーリーで、よくあるパターンの一つに、モンスターペアレンツというのがあって、僕の嫌いなシチュエーションなのだが、そうした一面はあるにはあるが、ここではそれとは少し異なる問題が。
保育園への嫌がらせは池に毒物を混入して、魚やザリガニを死滅させたのが始まりで、飼っていたアヒルの首が落とされる、蛇の死骸が投げ込まれる、そして猫の死骸と続く。舞子の同僚、池波先生は「魚から爬虫類(蛇)鳥、そして哺乳類、最後には霊長類と続くのではないか!?」と不気味な予測をするが、事態はその通りになる。
作者の中山七里氏は、どんでん返しの帝王と言われており、どの作品でも終盤に至り、状況を一変させる結末が提示されて、ミステリーの醍醐味が味わえる作品を提供する。
もちろんこの作品も例外ではなく、保育園への嫌がらせという小さな事件から、大きな事件へと発展させていく過程が見事だ。

 

 

時期保育園の建設が高齢者から、雑音問題として建設に反対する運動が、待機児童を抱える保護者を悩ませる問題となっていた。この物語の中でもそうしたクレームを持ち込む、老年の自治会長が登場する。
待機児童問題や騒音問題と、社会の割とどこにでも存在する課題は、簡単に解決することではないから、時々新聞やテレビで報道されるのを、見聞きするにつけ、他人事とは思えなく悩ましくなるのは、障碍者を子に持つ僕の偏見だろうか?
こうした問題は、意見や立場の異なるもの同士には、なかなか同意点が見いだせない、ということで解決困難の様相を示すのだ。

一向に終息の端緒も見せないコロナ禍も、その道の専門家でさえこれといった解決策を示せない状況だ。我が国の主導?で、ワクチンや薬剤の開発が急速に高まっている。医療関係者たちの努力が報われる事態が、早く訪れることを願う。

 


にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

1960.ルビンの壺が割れた

2020年04月18日 | サスペンス

 

 

ルビンの壺が割れた
読了日 2020/02/24
著 者 宿野かほる
出版社 新潮社
形 態 単行本
ページ数 156
発行日 2017/08/20
ISBN 978-4-10-351161-8

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

書の帯に、“この小説、凄すぎてコピーが書けません。とにかく読んでください!”とあり、ネタバレ厳禁!!の表示も。僕は単純にタイトルに惹かれて買ったのだが、“ルビンの壺”については、表紙のイラストでお分かりのように、二人の人物の向かい合った顔の影絵が示すように、壺の形を示している。
“Wikipediaによれば、1915年頃にデンマークの心理学者エドガー・ルビンが考案した多義図形。”ということだ。僕はその由来はここで初めて知ったが、二つの顔があらわす壺のような形は、中学生のころから知っていた。そうしたものを自分で描いて遊んでいたことを思い出す。
この物語は、初っ端、男から女へと宛てたSNSの文面から始まる。それは女の返事を期待するものではなかった。が、思いがけなくそれに対して女から返事と思われる投稿があった。

まあ、内容はそれくらいにして置こう。作者のたくらみと、登場人物たちのたくらみが二重に読者をとらえる仕掛けが、面白い。
興味のある方は、まずBigBang(ブックバン)という、新潮社の担当者と宿野かほる氏との対談形式の、サイト(https://www.bookbang.jp/review/article/537292)をご覧ください。

 

 

初めて聞く著者名は、それもそのはずで、彼(彼女)はこの作品が初めての小説で、もともと出版の意思はなかったという。そんなこともあり、名前はもちろん性別も不明という、覆面作家としての登場だとのこと。
本の内容からは、女性とも思われるが、男性と感じられるところもあり、どちらとも類推させる。
昔はそうした作家が何人も登場して、読者を欺いたり楽しませたりしたが、この作者は作家を目指していたわけではないというから、隠れた才能が花開いた、そんな感じだ。だが、今の職業に支障があるため名前も性別も明かせないということだ。

発達した低気圧に向かって、湿った空気が押し寄せて激しい雨や風、それに落雷の恐れもあるという、今日の天気だ。外出を控え人との接触を避けるにはいい天候だが、こんな天気には僕の部屋は少し寒く、たった今ストーブを付けたところだ。

 

 

ーヒーを飲みながらミステリーを読むには絶好の環境だ。僕のように何にも予定はなく、出かけるところもない年寄りにはいいかもしれないが、若くてエネルギーを持て余す若者には、緊急事態宣言による外出自粛はつらいことかもしれない。
新型コロナウィルスの感染拡大は、いろいろな所に影響を及ぼしており、息子の入所している社会福祉法人の施設を利用する知的障碍者は、外出を制限されてストレスが溜まっていないか心配だ。
彼らの保護者たちの組織である天羽支部会は、中止となってしまった。通常なら3月に年度末の開催が予定されているが、この騒ぎで一旦4月に延期され、さらに緊急事態宣言で中止となったのだ。
年に3回か4回しか開催されない支部会だが、年々歳を重ねる障害者たちとともに、その保護者たる親たちはさらに加齢を重ねて、そうした集まりに出席でき難くなる。我が天羽支部会も毎回出席人数は20人内外だ。 コロナ禍がいつ治まるかが分からない状況では、開催は不透明の状況だ。

それが原因ではないが、17日の出稿予定を忘れていた。

 

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

 


1957.誘拐遊戯

2020年04月11日 | サスペンス

 

 

誘拐遊戯
読了日 2020/02/11
著 者 知念実希人
出版社 実業之日本社
形 態 文庫
ページ数 396
発行日 2019/10/15
ISBN 978-4-409-55542-3

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

故ミステリー作家は、誘拐事件に惹かれるのだろう?そして、飽きずに次々と作品を生み出すのだろう。そんな疑問を何回かここに書いてきた。最も割に合わない犯罪と言われる“誘拐”。それは実際の事件の経過を見ても分かるように、誘拐事件の99%あるいはそれ以上、犯人側から見たら不成功に終わっているからだ。
作家だけではない、かくいう僕も次はどんな手を使っているのだろうと、次々と誘拐事件を扱った作品に手を出すのは、事件に魅力を感じているからだ。
しかし、営利誘拐は最も卑劣な犯罪と言われており、魅力を感じているなどと言ってはいけないが、あくまでフィクションの中の事だから、勘弁してほしい。

僕が、誘拐事件のミステリーに惹かれたのは、今に始まったことではなく、かなり昔のことで、高木彬光氏が実際の誘拐事件に触発されて書いた(ということになっている?)、『誘拐』(1961)を読んだ頃からだ。
当時痛ましい事件として日本中を騒がせた誘拐事件は、その当時を知っている年代の人には、記憶に残っているだろう「吉展ちゃん事件」だ。
僕の記憶があやふやでネットで確認したら、高木氏の著作はその事件の前だったことが分かり、またしても僕の記憶の不確かさを認識する結果となった。

 

 

まあ、それはそれとして、誘拐事件はフィクションとしては、小説の題材として多く扱われるから、ドラマ化や映画化という、映像となることもかなり多いだろう。
有名なところでは、黒澤明監督の『天国と地獄』でも、エド・マィベイン氏の『キングの身代金』をヒントに、誘拐事件を見事に映像化している。余談だが、この映画では山崎努氏がデビューして、後の活躍を予見させるような名演を見せていた。 他にも天藤真氏の『大誘拐』も、今は亡き緒形拳氏と北林谷栄氏の競演による映画化がされており、僕はだいぶ遅くなってから鑑賞した。
どちらも一級品の映像として、後世に残る作品だと思っている。

 

 

月も中旬だというのに、今朝はかなり寒くて我慢できずにストーブを付けた。差しているのは薄日で部屋を暖めるほどではなかったから。コーヒーを飲みながら僕が読んでいるのは、1,971冊目となる『鬼籍通覧 暁天の星』だ。
今日のブログが1,957番目だから、14冊も先のことになる。こうした現実と読書のギャップがまだまだうずまらない状態で、一致させようと頑張っているが、なかなか思い通りにいかない。
ここ何回かは一日おきにブログに投稿して、ギャップを埋める努力をしている。そんなわけで近いうちには読了日と登校日を近づけることが出来るだろう。
しかし、僕の頭は少しずつ(でもないか)衰えてゆきつつあることを、認識させられた。本書が2017年4月に読んだ『あなたのための誘拐』を、加筆訂正したものだったとは、全く気付かずに読んだということだ。

緊急事態宣言は社会に様々な影響を与えているが、一番効果を期待したい感染者の増加を食い止めることには、今のところあまり効果が表れてないようだ。ありがたくないことに、東京都の新たな感染者の増加は、毎日記録を更新している状態だ。小池都知事の顔が、日に日に焦燥の度合いが増しているように見えるのは、僕の僻目か?

 

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

 


1952.氷姫

2020年04月01日 | サスペンス

 

氷姫
Isprinsessan
読了日 2020/01/11
著 者 カミラ・レックバリ
Camilla Läckberg
訳 者 原邦史朗
出版社 集英社
形 態 長編
ページ数 582
発行日 2009/08/25
ISBN 978-04-08-780584-6

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

近、と言ってもつい先ごろの事なのに、日時も場所も忘れた。
この作者と作品について知ったことだ。多分Amazonのサイトを見ていた時だと思うが定かではない。
サブタイトルの“エリカ&パトリック事件簿”を見て、食指が動いた。ネットで調べるとシリーズが数冊出ていることが分かり、最初の巻から読みたくて、発行日の一番古い本書をAmazonで取り寄せた。
まだ50ページにも及ばないところで、これを書いているから、僕の期待通りの面白いストーリーかどうかは、分からないがそれでも僕は期待に胸を膨らませながら読んでいる。

スウェーデンのミステリー作品が話題になっているが、もともとスウェーデンのミステリーと言えば、マイ・シューバル&ペール・ヴァールー夫妻の刑事マルティンベックのシリーズが映画化やドラマ化されて、古くからお馴染みだった。
近年では惜しくも早逝したスティーグ・ラーソン氏の「ミレニアム」シリーズが世界的なベストセラーで、社会現象をも引き起こした。
他にも「刑事ヴァランダー」シリーズのヘニング・マンケル氏など、多くの作品が翻訳出版されている。
そうした中でこの作品のタイトルを見つけたので、興味を持たされた。

 

 

物語は、作者の出身地でもあるスウェーデンはフィエルバッカという地方が舞台となっている。
海辺の古い屋敷の浴室でアレクサンドル・ヴィークネルが全裸の死体で発見される。第一発見者はエイラート・バリという画家だが、彼に誘(いざな)われて、屋敷に入ったエリカも発見者となる。
サブタイトルともなっているエリカは、エリカ・ファルクというのが正式名で伝記作家。そして、かつては被害者アレクスの親友だったが、彼女が結婚するころには間柄が遠くなっており、最近のアレクスがどういう状態だったかもわからなかった。
屋敷はアレクスの祖父が建てたもので、アレクスはヘンリック・ヴィークネルと結婚後もたびたびこの屋敷に来ていたようだった。
そんなアレクスが「自殺などするはずがない・・・」というのが、母親のビルギット・カールグレンの言い分だった。
警察の初動捜査に現れた刑事の、パトリック・ヘードストレムはエリカの幼馴染だ。ということでエリカは捜査に加わることになる。

この長い物語も、ある種の「幻の女」を思わせるところがあって、アレクスの知らなかった人物像が、次第に明らかになっていく過程で、事件の真相が見えてくるというストーリー展開に、ミステリーの面白さが見えてくるのだ。

 

 

月中旬から下旬並み、ところによっては25℃などという夏日を思わせる日もあった。そんな暖かな日が続いた 後に、真冬の寒さが戻ってきたから、余計に寒さを感じている。
気候の変動は何かこのところの新型コロナウィルスの影響はないのだろうが、増え続ける感染者の傾向は収まるどころか、勢いを増しているようだ。3月30日には、コメディアンの志村けん氏がそのウィルスによる肺炎で亡くなった。また、脚本家の宮藤官九郎氏も新型コロナウィルスに感染しているということが発表されるなど、芸能界にもその波紋が広がっている。
彼らがどうして新型コロナウィルスに感染したかは知らないが、悲しい出来事だ。
今日から新年度の始まりだが、いろいろと予定されていた行事が、中止されたり変更になるといった事態は、前代未聞の事だ。

 

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

1948.死にゆく者の祈り

2020年03月24日 | サスペンス

  

死にゆく者の祈り
読了日 2019/12/14
著 者 中山七里
出版社 新潮社
形 態 単行本
ページ数 317
発行日 2019/09/20
ISBN 978-4-10-331270-3

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

誨師(きょうかいし)というのがこの物語の主人公だ。教誨師とは死刑囚に宗教を教え諭す仕事だ。
導願寺の僧侶、高輪顕真は堀田明憲という死刑囚の、刑の執行に立ち会った日の二日後、同じ教誨師の定法から、集合教誨を頼まれる。囚人たちを一堂に集めての教誨だ。
当日、東京拘置所の教壇に立った顕真は、囚人たちの中に思いがけない人物を発見する。
看守の話によれば、その人物はすれ違ったカップルに鼻の形を笑われて、殺害した死刑囚だという。関根要一というその男こそ、学生時代に高輪顕真の命を救った親友だった。関根要一が鼻を笑われたくらいで、人を殺すようなことをする筈がないと、顕真は思い関根と接見する。
だが関根は自分の非を認める以外の事は一切しゃべらなかった。高輪顕真の調査が始まる。

タイムリミット・サスペンスは今までに何作か読んできたが、いつでも心躍り、いや心を躍らせてはいけないのかもしれない。いつ執行命令が下るかもしれない、死刑囚の話だから・・・。

 

 

僕は元来酒飲みの血を引いている。うんと若い頃は全くアルコールを受け付けなかったのが、ある時突然それまで、ただ苦い飲み物だと思っていた、ビールのうまさに目覚めて、それからは時にバカ飲みをするくらいになり、そしてまたある時突然受け付けなくなるのだ。 なんだかわけの分からない僕の体質だが、今度も突然ワインが飲めるようになって、いや、ワインのみならず、ウィスキーの旨さも蘇った。 体の変調はアルコールのみならず、若い頃からの頭痛持ちで悩まされていたのが、40代半ばか50台に近くなったころからか、いつの間にか頭痛がしなくなった。これは良い方向に向かったのだから、変調というのはおかしいか? 人の体の働きについてはDNAの解析などにより、かなり分かってきたことも多いが、まだまだ不明なことは多いと聞く。時々僕はその不思議さに驚かされるのだ。

 

 

れにしても新型コロナウィルスの勢いは、いまだとどまるところを知らない。
世界各国に比べて我が国の感染者は少ないとはいえ、毎日どこかで新たな感染者が発生している。世界的な感染者の動向から、WHOがパンデミック宣言をしたことにより、東京2020・オリンピック・パラリンピックの開催が危ぶまれており、予定通りの開催を宣言していたIOCも、世界各国からの批判を受け開催時期の延長を検討することになった。
4週間で結論を出すということだが、問題は簡単ではなさそうだ。

お気楽な僕などはどういう結論になるにしても、左程の影響を被るわけではないから、深刻にはならないが、オリンピックを目指して過酷な練習、身体作りをしてきたアスリートたちの心境はいかに?
また、東京都を始め競技が行われる予定地の、施設などの維持に課題が発生しているという。関係者たちは考えるだけで気が滅入るのではないだろうか。
そんないろいろな問題とはかかわりなく、早朝から晴れ上がった空から、僕の部屋には暖かな陽が降り注いでいる。

 


にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

1945.黄昏の光と影

2020年03月11日 | サスペンス

 

 

黄昏の光と影
読了日 2019/12/25
著 者 ">柴田哲孝
出版社 光文社
形 態 単行本
ページ数 290
発行日 2014/01/20
ISBN 978-4-334-92923-7

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

日、3月11日は9年前に起こった東日本大震災の日だ。 今でもあの日のテレビで見た映像は忘れることのできない衝撃的なものだった。実際に被害にあった人、身近で大切な人を失った人は、どんな日々を送ってきたのだろうかと、その心の中は想像することさえ出来ないでいるが、僕は昭和20年3月の東京大空襲を思い出す。当時5歳だった僕はほんの一部分しか覚えていないのだが、まだ1歳だった弟を背にしたお袋に手を引かれて、火の海の中を隅田公園に逃れたことが、鮮明に頭に浮かぶことから、まったく事情は異なるが東日本大震災のさ中にいた人たちの、どうしようもなかった気持ちが多少なりとも、分かるような気もするのだ。
時々テレビで報道される現在の福島県や宮城県の、被災地の模様は残念ながら完全復興したとは思えないところも多く、我々他県の人々から次第に忘れ去られていくのではないかという、現地の人たちの想いをどう受け止めればいいのか?
なんともやるせない気持ちになるのだ。

相変わらず毎日、新たな感染者が発生している、新型コロナウィルスの勢いは止まらない。
先の見えないウィルスの脅威は、その正体がはっきりと分かっていないことにもよる。その繁殖力や性質が分からないことには、効果的な薬剤の開発もままならないときているから、厄介なのだ。世界的にも優秀とされる我が国の化学者たちだから、一刻も早い解決法を見出してほしいものだ。

 

 

そんな状況の中とは思えないような今日の天候は、晴れて暖かく―というより服装によっては暑さを感じるくらいだ。
読書記録をブログに投稿するため、ばかりではないが僕は過去に読んだ本についてのデータを、余さずデジタル記録として保存している。
主としてExcelとWordのデータだが、数が多くなると時にはその更新を忘れることもあるので見直しが必要だ。先日もそうした修正作業を行っていたら、1400番台のデータを見ることになり、柴田哲孝氏の『下山事件』の記録が目に入り、読み返すとその当時本当は本書を読みたかったのに、新刊だった本書は人気が高く、図書館で借りることが出来なかったので、仕方なく在庫していた『下山事件』を読んだということだった。
そこで遅まきながら改めて目に入った本書を借りてきたというわけだ。

 

 

馬区石神井のハイツ長谷川というマンションの一室で、老人の死体が発見された。
石神井警察の刑事・片倉らが部屋を調べると、スーツケースに収まった女の白骨死体も見つかった。そんなおかしな事件を追って、刑事たちの、歩く、歩く、歩く、とにかく歩く、といった印象が長く続く。
片倉康孝刑事と、新米の部下・柳井、二人の刑事が上司を説き伏せて、岐阜へ出張しての捜査だが、時折若い刑事が鋭いところを見せることに興味が惹かれる。

まったく進展を見せない事件を諦めず、しつこく追いかける片倉が、休暇を取ってまで一人名古屋まで向かおうとする中、新幹線のホームで好物の鳥めしを買おうとすると、そこに現れた柳井が、「鳥めしは買ってあります」と袋を差し出すのだった。
こうした泣かせる成り行きが、ところどころに現れて、この刑事たちのコンビが事件の核心に迫ることを願わずにはいられなくなる。

 

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村