私が働きながら子育てをしていたころ、保育月刊誌「子どものしあわせ」を購読していて、表紙の絵が、いわさきちひろさんの絵でした。
毎月の表紙絵が待ち遠しいくらいに楽しみにしていたことを思い出します。
やわらかい水彩のにじんだぼかし色の中に、キリッとしたお顔のデッサンの表情が印象的です。
しかし、ちひろさんがこのような童画にたどり着くまでに、望まぬ結婚の破綻、戦争ですべてを失った人生のどん底、生活を賭して血のにじむようなデッサンの勉強。
めぐり合った最愛の夫を、筆一本で支えた過酷な時期の努力。
授かった長男を見つめる目が、子どもの絵により深くつながっていく。
芸術性の高さは勿論のこと、社会的なテーマは(挿絵の著作権や、反戦の意志など)後に続く人たちに影響を与えたと言われます。
物語絵本が中心だった時代に、子どもの内面を描いたちひろの絵本は「感じる絵本」という扉を開いたといわれるそうです。
安曇野にある「 ちひろ美術館」に北アルプス登山の後に立ち寄ったことがありますが、北アルプスの山やまを背景に田園が広がって、子ども連れでなくっても休まる空間でした。
童女のような表情のちひろさんに、このような派乱の人生、病との闘い、家族愛と不屈の精神の絵本画家の人生に、深く深くこころに落ちるものがありました。
毎年カレンダーの時期になると、ちひろカレンダーが出るのがうなづけます。