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★最悪だょと新入社員は言った=「北海タイムス物語」を読む (109)

2016年05月30日 | 新聞

(5月28日付の続きです。写真は、本文と関係ありません)

小説新潮に、増田俊也さん(50)の「北海タイムス物語」が連載されている。
僕は以前、北海タイムスと提携していた「日刊スポーツ北海道」に知人がいたので、札幌の北海タイムスに何回か行ったことがあった。
というわけで、増田さんの青春物語@新聞記者編ともいえる同小説に注目——の第109回。

【小説の時代設定と、主な登場人物】
バブルど真ん中! 1990(平成2)年4月中旬@北海タイムス札幌本社ビル。
▼僕=北海タイムス新入社員・野々村巡洋(ののむら・じゅんよう)。東京出身23歳、早大卒
▼浦ユリ子(うら・ゆりこ)=野々村と同期。札幌南高→早大政経卒24歳。道新受験も不合格。現在、道庁クラブ付き遊軍
▼河邑太郎(かわむら・たろう)=野々村と同期入社、東京出身23歳、早大二文露文科卒。現在、道警担当

【 以下、小説新潮2016年1月号=連載④ 459ページから 】
「それでさ、俺、編集局に上がってデスクの綾部さん❶に聞いたんだ。
驚くなよ。綾部さんも年収二百万ないんだって」
「あの人、たしか三十代後半じゃなかったか……」
いや、四十二歳だよ❷。そこまでいっても上がってないってことだ。
それで俺、それとなく木佐木部長❶にも聞いたんだよ。
そしたら笑って『俺も同じくらい❸だ』って言ってた。
管理職になると超勤料つかないから、編集局長も編集局次長もおんなじくらい❸だってよ。みんな二百万前後だ」
「冗談だろ……」
「冗談でそんなこと言うかよ。絶望だよ。最悪だよ」
河邑はイライラしながらコーヒーに口をつけ「熱!」と言って、カップを皿に戻した。
「とにかく引っ越せ。五万も六万も家賃に払ってたら首吊りもんだ」
「でも敷金と礼金払ってるからすぐには……」



❶編集局に上がってデスクの綾部さん/木佐木部長
不明なことを編集局ですぐ取材する(発言者の)社会部・河邑くんは機動力があるね。フットワーク大事だよ、うん。
同くんは新聞社9社、テレビ局4社を受けたが連敗。なんとか北タイに合格するも、早くも退職&ステップアップ転社を計画している……フットワーク、大事だよ。
木佐木(きさき)社会部長は萬田編集局次長兼整理部長と出世争いレースをしていたが敗れた、という設定になっている。

❷いや、四十二歳だよ
河邑くんのきめ細かな取材は、なかなかいいね!
年齢というのはかなり重要なデータで、同業賃金を見るときのスケールになる。

❸同じくらい/おんなじくらい
あっ、校閲部の人なら、
「困ったなぁ、2行ごとに漢字と平仮名表記があるなぁ。手を入れちゃおーかなぁ。入れちゃいたいなぁ」
と思ったはず。
校閲部の〝表記統一したい病〟。
でも著作物なので、このまま行ったほうがいいよね(→ゲラに付箋貼って作者・筆者に問い合わせましょう)。

————というわけで、続く。

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